総合評価2700pt行きました! 皆さんありがとうございます!
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あればあるほど上がります!
――12月24日。
世間一般で言うなら、この日はクリスマスイブ。冬の寒さに息を白くしながら、人々はこの聖なる日の到来を祝い、ケーキやご馳走に舌鼓を打ち、家族や友人、恋人と楽しく過ごす。幼い子供であれば、サンタクロースのプレゼントを心待ちにして眠りにつくこともあるかもしれない。
「……って、そんな感じの楽しい日になるはずだったんだけどなぁ」
寒空の下でぼやく社美胡は、腕を組み、足をクロスさせて白い息をはぁと吐く。
そのため息に込められた感情は、言うまでもなく憂鬱。自身の庇護にある愛媛の片隅の住人であり、10年来の大親友である八百歳比名子とともに過ごすはずだったクリスマス。それがこうも最悪の形で崩壊してしまうなど、憂鬱以外の何という言葉でたとえられようか。
「クソ、宿儺の野郎……」
――2018年のクリスマスイブは、呪術師達にとっては単なるめでたい日ではない。史上最強の術師、両面宿儺との決戦の日だ。
呪術全盛平安の世に、誰に憚られることもなく「呪いの王」の異名を
千年の時を経てなお、両面宿儺の強大さは欠片も薄れることなく美胡の心的外傷として存在しているのだ。
相対する五条悟の生得術式「無下限呪術」の絶体不可侵も驚異的かつ極悪で、突破という選択肢を強制的に削ぐような理不尽極まりない権能であることは美胡とて重々承知だ。
が、宿儺は宿儺なので、何がしかの手段を講じて突破してくる気がしてならない。
そうなった場合、五条によって極限まで削られているであろう宿儺に、第二波として高専勢力が一斉攻撃を仕掛ける。美胡もまた、その一員として組み込まれている。
確かに、両面宿儺を打倒するには最も効果的な作戦。とはいえどれほど消耗していようと宿儺は宿儺なので、美胡が向かうのもまた死地であることに違いは無い。――が、この日発生するであろう死地は、宿儺との決戦の場に選ばれた渋谷の地だけではない。
此度のクリスマス――美胡は美味しい食べ物を食べることはおろか、比名子と同じ場所で過ごすことすらできやしない。作戦会議でそう決まったからだ。
親友から物理的に距離を離されることにアンニュイな心地を感じながら、美胡はぼんやりと比名子を……正確には、比名子の召喚した式神を見ていた。
「――それじゃ、行ってきます」
呪術高専東京校玄関前。そこに集った高専勢力の呪術師達に向け、そう言ってはにかむ比名子。彼女は今、己が有する“海”の術式、その能力の一つ「死累累湧軍」にて召喚された大きな魚の側に立っている。
シファクティヌスと呼ばれるその魚は、中生代白亜紀の北アメリカからヨーロッパの広域に生息していた硬骨魚類の一種だ。最大体長は6メートル、口腔に夥しい数の鋭い歯を備える獰猛な肉食魚であり、遊泳速度は最高時速60キロにもおよんだという。名前の由来はラテン語の「剣」と「輝き」で……話が逸れた。
彼女がそんなに大きな魚を召喚したのは理由がある。――比名子と共にもう一つの死地へ赴く3名の呪術師もまた、その背に乗せて運ぶ必要があるからだ。
もう一つの死地――そう、
「宿儺戦と同時に羂索達へ奇襲をかける、か」
死滅回游を開催した全ての黒幕である羂索。奴もまた、五条が宿儺との戦いで手一杯となるこのタイミングを狙って行動を開始するだろう。
その目的は日本の人間および天元との「超重複同化」。これを達成する条件は、羂索が追加した
だがはっきり言って、それを行うのが羂索一人であるのなら、話はいとも簡単に終わる。
今羂索の元へ飛び立とうとしている比名子――現代最強の術師たる五条悟に最も近い彼女であれば、呪術師千年選手の羂索であっても鼻歌交じりに瞬殺してしまえるからだ。
宿儺とて、五条と比名子を同時に相手すれば確実に負ける。仮に宿儺側の戦力が羂索と従者である裏梅だけなら、羂索をサクッと殺った比名子が渋谷へと蜻蛉返りし、五条に加勢して宿儺も殺して試合終了。美胡は比名子と共にチキンとケーキを食べられるだろう。隣にいけ好かない半魚人もいるかもしれないが。
だが現実はそうはならず、羂索とことを構えることは比名子であれど死と隣り合わせとなる。――あざみが、彼の隣にいるからだ。
「あざみ……」
数日前、過去の悪縁をきっかけに鹿紫雲一に体をくまなく破壊され、やむなく人魚の肉を食して不死身になった美胡を呪いでぐずぐずに溶かした術師。
半魚人――近江汐莉の気紛れで不死身にされ、以来汐莉を恨み続ける事でしか生きる意志を担保できなくなった哀れな女。そしてその果て、恨みの矛先を汐莉以外の部外者へと向けた許されざる悪人だ。
その術式「茫洋」の権能は絶大かつ正体不明。対象を溶解させる概念の波、魂の繋がりを辿ることによる敵対者の観測、海に入ることによる完全な隠密など、一つ一つが極めて強力な異能を複数保有する理不尽な術式は、これを所持しているというだけでその者の位地を五条悟や宿儺のラインまでせり上げる。
比名子達の考察により、「茫洋」の本質は“境界の曖昧化”であること。そして「茫洋」の成り立ちはあざみの生来持っていた術式と、汐莉の持っているという“水”の術式――“海”の術式の名残り――が
それ故に立てられた作戦――伏黒恵の式神、八握剣異戒神将魔虚羅に弱点を探らせる。
伏黒の術式「十種影法術」で使用できる式神の一つである魔虚羅、その能力はあらゆる事象への「適応」。
五条悟をして対処法を間違えれば詰み、いずれ「無下限術式」にすら適応するというとんでもない式神。だからこそ魔虚羅が「茫洋」に対しどう適応したかを参照にすれば、あざみの弱点も自ずとわかるという寸法だ。
――羂索およびあざみの宿儺戦への介入を防ぐため、奇襲を仕掛けるメンバーは4人。
言わずもがな伏黒恵と、露呈したあざみの弱点を突いて仕留める役割の比名子。また、比名子は羂索とあざみを分断する要員でもある。
もう2人が、分断後に孤立した羂索と激突する髙羽史彦。そして、そこでできた隙を刺す要員として、気配が極めて薄い禪院真希が選ばれた。
術師達が高専に集結してから12月24日までのおよそ一ヶ月、その間に繰り返された作戦会議において選定された必要最低限のメンバーが以上の4人だ。
宿儺戦を前に戦力を分けるのはナンセンス。故に術師総員で考え抜いた末に選ばれたため、この人員に対する受け止め方はほとんどがおおむね好意的だ。
その証拠が、シファクティヌスの式神の背に乗ろうとしている比名子達にかける声だ。
頑張れよとか、頼んだぞとか、どれもが暖かくて優しい。その隅っこで愚痴っていた美胡もまた、彼らに倣って比名子に声をかけようとし――ふと、少し不満げに立っている人物に気づいた。
「……乙骨君?」
美胡に続いて気づいた比名子がそう声をかけた人物――乙骨憂太は、腕を組んで険しい視線を四人に向けている。
だが、その目の中にある感情は、怒りというにはやや柔らかい。どちらかというと、不貞腐れた子供がむくれているような。
「……憂太。羂索を殺した後の『呪霊操術』の暴走は」
「八百歳さんの式神でも対処できる。分かってるよ。リカちゃんの力が無くても人的被害なしに食い止められる手段があるなら、これ以上は僕の駄々だ」
乙骨の考えていることを読み取って理路整然と窘める真希に対し、乙骨もまたその意見に肯定する。
羂索の「呪霊操術」の規模――渋谷での呪霊放出を最大とするならば、広範囲に拡散する前ならば比名子の反転術式を用いれば対処可能。特級呪術師である彼がそれを分からないはずがない。
きっとこれは、彼の言ったことが全てだ。
恩師である五条の親友、その肉体を弄ぶ羂索。五条に二度も親友を殺させないためにも、羂索は自分の手で終わらせたいという願望。
本当は、真希の役割を乙骨が担いたい――けれど羂索を殺す役割は、乙骨よりも適任がいるから。
「だから僕はここに残る。万が一五条先生が負けて宿儺と戦うことになった時、
「ハッ!」
「ありがとう、乙骨君」
乙骨はかつて特級過呪怨霊・祈本里香に憑かれていた時、五条に秘匿処刑から庇ってもらった恩がある。だからこそ、その五条を苦しめる羂索を仕留めたいという思いは
その役割を冷静に、理性的に譲ってくれたことに真希は痛快に笑い、比名子は感謝する。
そうして自分たちの役割の重さを改めて認識し、二人が身を引き締めていると――、
「――流石に、八百歳先輩の背中をぶっ叩くのはねぇか!」
そう言って、虎杖悠仁が上げかけた手を下ろしたのは、比名子がシファクティヌスに乗ろうとした直前だった。
それは比名子達が羂索達のいる岩手に向かおうとする前、宿儺との戦いに五条を送り出した時の乱暴に背中をひっぱたく激励――筋骨隆々で体格のいい五条ならともかく、見かけだけなら線の細い少女でしかない比名子にそれをやるのは絵面が悪すぎる。
それを踏まえての、冗談交じりの発言なのだろう。あざみとの決戦に向けて気を張り詰める比名子を和らげる彼なりの気遣いだ。
言った虎杖もからからと笑っているし、きっと彼は、比名子にリラックスして欲しかったのだと思う。
――でも、比名子が今している顔は、それとは程遠いものだった。
「……虎杖君」
――沈痛。
唇をきゅっと結び、眉が下がり、顔全体に影が差した表情。それを表すのに最も適切な言葉だった。
ピリピリと気を張った顔からは確かに変化したものの、望んだ方向とは真逆の向きであったため、虎杖は「あれ?」と当惑する。
ややもすれば京都校交流会の時のオッパッピー事件のように、また自分はやらかしてしまったのか? そんなことが頭によぎり、嫌な汗を流す虎杖。
――それに対し、比名子は言った。
「虎杖君は……」
「ん……?」
「虎杖君は、本当に、それで良かったの……?」
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――虎杖悠仁はすでに、脹相の弟を取り込んでいる。
脹相――彼は呪霊と人間の混血であり、その弟もまた例外ではない。脹相の“呪力を血液に変換する”特異体質と生得術式「赤血操術」もまた、弟達は保有している。
その体質と術式を虎杖に受け継がせるため、死産となった4番から9番目の弟の亡骸を食し、取り込んだのだ。
そしてその目論見通り、虎杖は血液変換体質および拙いながら「赤血操術」を手に入れた。
――すなわち、虎杖は名実ともに人間ではなくなった。
人間には到底存在しえない特異体質を手にし、脹相と同じ、呪いと人間の狭間に迷いこんだ。
それはとりもなおさず、肉体構造が呪霊に寄るということで――、
「言ったじゃない。それをしたらきっと私みたいになるよって。みんなに置いて行かれて、何百年も生き永らえることになる――貴方の望みが、叶わなくなるって」
体が呪霊に近づけば、寿命もまた呪霊に近づく。
不老とは言わないまでも、呪霊と人間の混血になることは、老化のスピードが極端に遅くなるはず――肉体組成が呪霊に近い人魚の血で寿命が伸びた比名子は、感覚的にそれを察することが出来た。
「大勢に囲まれて死ぬ」――彼の唯一の肉親だった祖父の遺した言葉であり、彼の望み。比名子もまた、彼自身の口から聞いている。
虎杖は友達が多い。きっと虎杖は、死ぬ時は彼らに見送ってほしいはずだ。
でも、もうそれは叶わない。叶わないのだ。
「……八百歳先輩に言われた時、そりゃびっくりしたし、迷いもしたよ。怖いとも思った。友達が先に死ぬのも、呪いと混ざった俺の事を皆がどう思うか考えるのも」
「だったら……」
「でも」
「アイツを殺すためなら、なんでも喰ってやる」
目の前に立った虎杖、今までの彼の言葉が嘘なんじゃないかと錯覚しかねないくらい、怒気の孕んだ声。
それは虎杖の肉体に寄生し、散々暴力、暴虐、暴威を振るって人々を蹂躙した宿儺への途方もない怒りだ。
一ヶ月の修行を経てなお、比名子と虎杖の間には術師として確たる隔たりがある。そんな生物としての垣根を取り払い、眩暈を起こしてしまうくらい、虎杖の怒りは濃密だった。
比名子にはわかる。どんな説得の言葉を用意しても、この怒りはどうにかできるものではないと。
そんな激情を目の当たりにして、比名子は心をぎゅっと掴まれたように苦しくなって――我知らず、瞳に涙を滲ませていた。
「……八百歳先輩?」
「……私は……貴方に……」
宿儺の罪を背負ってほしくなかった。
絶望に堕ちた比名子の心を虎杖に救ってもらったあの日、虎杖の口から語られた、地獄のような生まれとその日々。
その、死と血に満ちた壮絶な道のりは、比名子の心に収まりきらぬほどの同情と哀しみを齎した。
――だが、それ以上に心に溢れた感情は、虎杖が宿儺の罪を自分のものとして受け入れていることに対する怒りだ。
『――俺は、人をいっぱい殺した』
違うだろう。それは虎杖の体を乗っ取った宿儺がやったことだろう。貴方の罪ではないだろう。
どうして、それを背負おうとする。比名子の心を照らしてくれるような、雪のように優しい眩さを持った貴方が、どうして苦しまなければならない。
そしてなぜ、比名子は苦しむ彼に何もしてやれないのか。いつもそうだ。比名子は自分を大切にしてくれるひとに対して、何一つ返すことが――、
「……八百歳先輩のしてくれたことは無駄なんかじゃないよ。何も知らずに喰うより、ちゃんと知って覚悟を決めれた方が、心持ちはずっとマシだと思う。先輩の期待したのとは、逆の結果だと思うけど」
「…………」
「……あのさ、
「……400年、くらいだと思う」
ちょうど、比名子が得た時間の半分くらいの年数。そう考えれば、虎杖の置かれた状況は比名子よりかはマシに見えるかもしれない。
でも、だから何だというのか。400年も生きることのできる人間などいない。虎杖が緩やかに年を取っていく間に、今共に戦う仲間はどんどんと死を迎え――、
「――じゃあさ、俺が死ぬ時に先輩が看取ってくれたら、爺ちゃんの願いも少しは叶ったって言えるかもな」
「…………へ」
「ま、無理にとは口が裂けても言えないけどさ」
そんな言葉を添えてぶつけられた虎杖の発言、それが見事に虚を突き、比名子は顔を上げて目を真ん丸にしてしまう。
幼少の頃から変わらない驚き顔で、比名子はしばし虎杖の顔を見つめ――やがて、こみ上げてくる可笑しさに唇を緩めた。
「ふふっ……酷い人。死にたい願いに寄り添ってくれたのと同じ口で、悠久の時を生きろって言うなんて」
「だから無理にとは言わねぇって……でも、そうなったら寂しくなくなるかもなって思っただけだよ」
困ったように頭を掻く虎杖。その様子を見て、やっぱり可笑しくて笑ってしまう。
不思議だ。あんなにも苦しかった胸の中が、ころころと変わる虎杖の顔を見てるだけですっと晴れていく感じがする。
「――今のは惜しかったですよ、悠仁」
と、虎杖の横からぴょこりと顔を出す黒髪の少女。
上目遣いで虎杖と目を合わせる汐莉、その言葉の意味が分からず、虎杖は首を傾げる。
「惜しい?」
「今の比名子の笑顔、あの頃の比名子のものに近かったですから」
クスクスと笑う汐莉の発言に、比名子は思わずぞっとして口を手で塞ぐ。
危なかった。もし汐莉の採点で合格圏内に入ってしまったら、汐莉は血の“契り”に従って比名子を殺しに来る。そうなったら汐莉を逆に殺し返すほかなくなってしまうから。
「…………今は、まだ、ダメ。せめてこの最終局面じゃなくて、全部終わってからじゃないと」
「おや、全部終わったらあの頃のように笑ってくれるんですか?」
「………………………………」
「煮え切らない子ですねー」
はいともいいえとも言えない比名子に、汐莉は呆れたように言葉を残す。
とはいえ、そこに怒りは欠片もなく、出来の悪い子に対してしょうがないなと笑いかけるような優しさがあった。
「まあ、いいです。私の願いについては、この戦いが終わってからたっぷり向き合ってもらうことにしましょう」
「おう、そうしろそうしろ。それに比名子、一回髙羽の奴に大笑いさせられてるから、もっかいそうやって笑うのも遠い未来じゃないだろうしね」
「その話はやめなさい。やめろ」
さらに横から近づいてきた美胡に揚げ足を取られ、汐莉は青筋を立てて襲い掛かる。
比名子をあの頃のような笑顔にするという至上命題が、よりにもよって自分が最も苦手な人間によって、自分が寝てる間に叶えられたのである。こうなるのも無理はない。
そのまま妖怪大決戦を繰り広げかねない二人が可笑しくって、愛おしくって。
――比名子は取っ組み合う二人に近づき、ぎゅっと抱きしめた。
「――この戦いでは、私は二人と離れちゃう。だから、戦いが終わったら、沢山話をしよっか。あの時は大変だったとか、あの攻撃が怖かったとか、そんな他愛もない話を」
「――――」
戦場へ赴く前に、二人の体温を忘れぬよう、力を込めてぎゅぅぅっと抱きしめる。
何なら少し呪力も込めて、二人が苦しそうにするまでたっぷりと堪能して、漸く腕を離した。
シファクティヌスの式神には、伏黒達三人が既に乗り込んでいる。
これ以上待たせるのも申し訳ないので、比名子もぴょいと飛び乗った。
浮上していく式神の上から、比名子は汐莉と美胡に言う。
「――またね、二人とも」
向かう先が死地であると、そう感じさせないように、できるだけいつもの口調で。それでも、万感の想いを込めて。
きょとんと、二人は少し驚いたように見えたけど――、
「――ええ、また」
「生きて、帰ってくるんだよ」
比名子の想いと等量のものを込めて、汐莉と美胡も返してくれた。
「――八百歳さん。五条先生の準備が整いました。戦いが始まる前に、そろそろ」
スマホを確認しながら、伏黒が比名子を急かす。名残惜しいが、そろそろ行く時間だ。
――離れ行く比名子達4人に向け、高専の皆が声をかける。
「絶対帰って来んのよ!」
「今度弟たちとも一緒に遊んであげて!」
「あとでもっとカワイイ服、一緒に選んだげるわ!」
暖かい言葉がたくさん、去り行く背中にかけられる。
そんな中で、やっぱり彼の声は、比名子の耳にはひときわ大きく聞こえてきて。
「――またな、八百歳先輩!」
手を挙げて大きく手を振る虎杖に、比名子は精一杯の笑顔で返す。
「――うん、また!」
それを最後に、暖かい声援はおぼろになって、やがて聞こえなくなっていく。
けれど完全に聞こえなくなる前に――、
「――やっぱり、あの頃には今少し足りませんね」
と、汐莉の少し残念そうな声が耳に届いたのだった。
「――――悠仁」
「ん? 何だよ」
「――オマエが天国に逝く時は、きっと俺も、隣にいるよ」
「……………………ん。あんがと、脹相」