妻は寝るとき自分の胸元に顔を寄せるのを好む。
「……重ない?」
「全然軽い」
「頭空っぽ言いたいんかい」
「違うって」
相変わらずちょっとへそ曲がりな
ところがあるがそこもとてもかわいい。
ただし「かわいい」と言うと
「…子供扱いすなっ」
と照れながら拗ねる。
なんだこのかわいい生き物は。
これが尊いという感情なのか。
彼女は神が俺に授けてくれた天使か。
いやむしろ神そのものだろう。
俺の中では三女神より上位だ。
しかしなんだって彼女はこんなに肌が
ツルツルで髪もいい匂いがするんだろう。
女性だしケアしてるのだろうと思ったが
「特にしとらんし風呂で使てんの
アンタと同じやで?」
とのことだった。
どういうことだ。素材の違いか?
それもそうだ。美女とおっさんだものな。
どこもかしこも触り心地がよく
撫で回してるとつい興が乗る。
「………っ……はよ、寝んかい…」
あまりしつこく撫でると怒らせてしまう。
行為の最中や事後に彼女らの
凄まじい脚力で蹴られ文字通り
「再起不能」となる事故は年に数件起こる。
ところで騸馬………という文字が
脳裏に浮かぶのだが一体なんだろう。
ましてや妻は気性難なので
あまりしつこくすれば
俺もその仲間入りとなってしまう。
だが、その点俺はトレーナーとしても
ウマ娘のことは熟知しており
妻のこともちゃんと理解しているので
ちゃんと加減をわきまえ
「あ痛ああああ!!」
「…ホンマねちこいな!!!」
「…うう、ひどいよ………」
噛まれた。
甘噛みと言うには強い部類といったところだ。
まあ彼女らの顎の力なら本気であれば
俺の乳首は今頃本体と分離しているだろう。
「俺が変な性癖に目覚めたらどうするの…?」
「すでに手遅れのような気がするんやけど…
…尻尾の裏へのこだわりとか……」
尻尾の裏は聖域である。
これは愛しい妻でも異論は認めないが
一方で重要なのは誰の尻尾の裏か、である。
「俺は君のもの以外の尻尾の裏に興味ないよ」
「…うげ」
彼女は枕元のティッシュを取り口を覆う。
「そんな嫌がらんでも……」
「そうやない……いや普通にさっきのは
『年度代表口説き文句きしょい男』
選出やけど……
なんやこれ毛やな。うわめっちゃ長っ」
ティッシュに毛を吐き出した。
「乳首に毛ぇ生え散らかってるんか?
口に入ってもた」
「あー、乳首毛ってたまに妙に
一本長いの生えてきててびっくりすることない?
気づかないままめちゃくちゃ伸びてるの」
あれを見つけるたびに
気が付かなかったことに驚く。
その半分くらいで気づけたはず、
という長さになってる。
本人に隠れていつの間に
そこまで伸びていたんだ。
お前は地下活動してたレジスタンスか。
放っておいたら俺は乳首毛に
反乱を起こされるのか。
「さあ、そんなんウチ生えたことないし」
そうだった。俺とは違うんだ。
美しい我が妻に乳首毛などという、
たまたま毛の姿をしてるだけで
実はカビかなんかの親戚ですみたいな
下品なものが生えるわけがない。
「男の人の乳首って何のためにあるんやろな。
使い道ないやんか」
妻は定位置に戻るとさっき噛んだ部分をつつく。
「こら、無断で開発するのやめなさい。
まあ授乳しないからねえ…」
乳首といえば去年の夏に蚊に刺されて
悶絶し、あまりに痒いので
スーッとする痒み止めを塗ったら
2度目の被災をした。
俺の乳首を吸ったのはあの蚊くらいだ。
俺はファースト乳首を蚊に奪われた男なのか。
なんだファースト乳首って。
「いずれ人類は男の乳首の
新たな役割を見つけると思うよ」
「壮大過ぎん?………にしても……
アンタウチよりおっぱいおっきいな…」
こっちはほぼ筋肉だ。面白みはないし
ロマンもへったくれもない。
そもそも胸が大きいからなんだというのか。
それを言うなら彼女の胸だって
モンゴルの大平原を思わせる。
実に雄大じゃないか。ロマンもある。
「誰の胸が大平原やて…?」
!!!思考が読まれただと…?
話題を変えよう。
ええとなんだっけ。男の乳首の有用性だっけ。
「…ふんぎゃろっ!?」
「うわっ何フクキタルみたいな声出しとん…
……なあ、男の人はこれがついとったら
それでええんとちゃうんか?乳首いる?」
「〜っ!!急に強くつかまないでよ!!
デリケートだから!!
小鳥を扱うように慎重に…!!」
「……さっきまでヒクイドリみたいやったやん…」
「君にも同じようなものがついてるよ」
今ひっつかまれたところの相同器官が
ちゃんと女性にもある。
あれも実は特に使い道はない。
それこそ男の乳首みたいなものだ。
「ええ?うちなんもぶら下げてへんよ?」
「まあぶら下がってはないけど…
……ここが相同器官ね」
右腕で彼女を抱き寄せると
反対側の手で該当する部分に触れた。
「───っ!!!!」
俺にしがみついて胸に顔を埋め
声を出さないようにしている。
そんな様子を見るとついつい昂るではないか。
「ヒクイドリなんてかわいいもんだよ?
もはやあんなのは今の俺からしたら
雀レベルだね」
「……あの凶暴さが…っ?」
「君はね、君がどれだけ俺を
魅了してるかまだ分かってない」
声が、仕草が、視線が、なにもかもが。
まったくもって全てが愛おしい。
どうしようもないくらいに。
「君の前では何度でも蘇る
火の鳥とか伝説上の鳥になる自信がある」
「ファッ◯ンクソバードはやめえ…。
蘇るのもうちょい自粛してもろて……っ」
「…………それは無理」
いつもは前から行くが今回は後ろの方で
落ち着いて道中はペースを守り、
勝負どころで仕掛けると後方一気に畳み掛けた。
今回もスタミナ勝負の追い比べとなったが
満足のいくものだった。
次も期待できる内容だ。