白い新妻の憂鬱   作:南天 ヤスカド

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疑惑

迷彩服の男たちが廊下を駆けてくる。

 

「こっちだ!!」

2人が向かったと思われる

畑の方面に出るドアの手前の廊下に

大勢の足音が響き渡る。

床には奇妙な臭気とともに

黒い粉末が撒かれていた。

 

「!!全員下がれ!!……これは………!!」

 

次の瞬間、爆発音とともに出入口のドアが吹き飛んだ。

 

「たーまやー♪」

「いいのかなあ……」

 

トレーナーたちはその様子を

十分距離を取った屋外から眺めていた。

 

「少量だからあんまり威力はないねえ」

 

鉄製のドアが見事に吹き飛んでいるが。

「トレーナーさん、あれは……」

「詳細省くけどトイレ用洗剤や

 肥料や除草剤をアレコレするとああやって

 火薬ができるんだ。

 あとは時限式の発火装置があればいい。

 これも難しくはない」

当然ながら真似してはいけない。

「興味あるなら教えようか?」

「いいです結構です…あなたは

 一体何者なんですか?」

「トレーナーだよ?」

あの軍団を文字通りひき肉にしようと思えば

できたがさすがに生徒の前で

そんな凄惨な真似はできない。

 

「テロリストには名前すら与えない」

 

これは鉄則である。

学園内を占拠しつつある

相手の正体が分からないうちは

あまり安易に「強制的」な排除はすべきではない。

場合によっては彼らの「犠牲」が

彼らの仲間に大義名分を与えかねないからだ。

 

ただ、生徒や仲間に危害を加えたり、

加える可能性が大きくなれば

容赦なくトレーナーは彼らを殲滅する。

 

「い、一旦退却〜!!!!!!」

 

バタバタと、文字通り這々の体で

迷彩服の男たちは去っていった。

ド◯フのコントのように煤だらけだ。

 

「……しかしなんというか……

 あれでちゃんと訓練を受けてるのかなあ?」

「どういうことですか?」

 

トレーナーは正直、この安易な仕掛けに

彼らが引っかかるとは思わなかった。

「『釣り野伏』とはちょっと違うけど、

 偽装退却ってやつをやったんだよ。

 まあ、囮だね。狭い通路に誘い込んだ。

 ここに大挙して押し寄せれば

 一網打尽にされても仕方がない。」

罠と見るのが妥当だろう。

「はあ……そんなもんですか……」

「………こっちの方は来ないね」

「こっち?」

 

爆発まで起きたのに依然、

警備隊は一人も姿を見せない。

本来なら一分以内には

駆けつけるよう訓練されている。

「警備の連中さ。君が遅刻して来た時、

 校門に警備員はいたかい?」

「………そういえば、誰も………」

どの門にも開門から最終下校時刻まで

必ず警備員は立っているはずだ。

「変だなとは思ったけど急いでて……。

 詰所まではのぞいてないんですけど」

 

本当にあの迷彩服軍団が学園の

警備隊を倒したのだろうか。

「通ったのは正門?」

「はい」

「今日の正門担当は………」

今朝トレーナーが出勤してきた時

正門ににいたのは昨日の

トラック侵入の際の担当だった。

 

彼とてそこそこの手練だ。

無闇に侵入を許すとは思えない。

そもそも持ち場を離れていた、

離れざるを得ない状況に陥ったということだ。

 

─考えたくはないが─

 

迷彩服の男たちが落としていった

装備品の中に見慣れたものを見つけた。

 

警備隊支給のサバイバルナイフだ。

 

柄の部分に警備隊の部隊章である

星に鞭が交差した意匠が刻まれていた。

 

「…ありゃあ……」

 

─やはり内通者か。

 

さっきの連中の中に警備隊の人間がいたのだ。

ならば違和感も合点が行く。

恐らく、それは1名ではないだろう。

ナイフをポケットにしまう。

 

「君もおいで。一人は危ない。

 まあ俺といても危ないかもしれないけど

 一人よりはマシだよ」

「……どこに行くんです?」

「総合警備室」

 

そこは施設内すべての防犯カメラの映像が見られる。

そこにも警備隊が常駐しているが

一連の異変に対応していない。

 

一方、もし侵入者側がそこを制圧しているなら

こちらの行動などとっくに筒抜けだが

その様子もないことから、

まだ彼らの手中にも堕ちていないと考えた。

 

だが内通者がいれば時間の問題だ。

 

トレーナーは校舎と反対の方に歩を進める。

「???こっち、畑ですよ??」

「本当は内緒だけど、特別に教えてあげるよ」

 

農機具や肥料をしまう倉庫に入ると、

床下収納に降りていく。

 

「足元気をつけてね」

 

収納のさらに奥の壁に

ロッカーが放置されていた。

 

その内部にあるテンキーを入力すると

ロッカーの奥の部分が開き、通路が現れた。

「どうなってるんですか、この学園…」

「学園の通常の経路が使用できない時の

 通路が至る所にあるんだよ。

 ここの建物って図面よく見る

 とデッドスペースみたいな

 箇所がいくつもあるけど、ほとんどそれ」

壁が妙に分厚かったり、

奇妙に太い柱や梁であったり

外から見るともう一部屋あるのではないかと

思われる場所が多々ある。

 

通路を進むととても小さなエレベーターがあった。

エレベーターの定員は二人とある。

「こいつは警備室直通ではあるけど……」

彼はそれは使わず、狭い、

ほぼはしごのような階段に向かう。

奇妙に太い柱、の中身がこれらだ。

 

「エレベーターは使えないんですか?」

「今の状況だと先回りされてる可能性あるもん。

 ドア開いた途端蜂の巣にされそうだし」

嫌でしょさすがに、と平然という。

 

「………本当にあなた何者なんですか?」

「俺?ちょっと特殊な訓練を受けたトレーナー」

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