冒険者ギルドの見積係   作:上殻 点景

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見積NO.1_正しい代金_1-1

「紅の冒険者、この依頼が終わったらどうするんだ」

「オレはしばらく休業だ」

「辞めるのか」

 

「やめねえよ。ただ冒険者ってのは冒険をするものであって、人を殺す仕事じゃねえだろ」

「その、軍人共のおびただしい死体は嫌いか?」

「別に魔物も人間も、斬ってしまえば、ただのクソ袋ってのは変わらん」

「なら、これから冒険者の国を作るのを「断る」……そうか」

 

「まず、オレが頭を使うような職業に向いていると思うか?」

「関係ないさ、どんな仕事もやってみればできるのが、人の可能性だ」

「それが例え、人殺しの英雄でもか?」

「俺の場合はみんなに、望まれちまったんだ。仕方ねェだろ」

 

「ふっ……なら今回の報酬は、自堕落をしながらも楽して稼げる仕事でお願いしとくか」

「そうかそうか。ならオススメのやつがある」

 

 

大地をへだてるように、大河(雄大な道しるべ)が流れていました。

 

その名は口伝にて。大河をたどれば、国に戻れると、古い冒険者がいったからです。

 

西をむけば、流れの始まり。未開地が広がる世界樹の麓。

 

東をみれば、流れの終わり。化物はこびる極東の島々。

 

そして、中央に位置する国を────名無しの国(ノーネイム)、といいます。

 

正式な名称ではありません。名前がないのも不便、という理由だけで付けられた“呼び名”です。

 

当然です。住んでいる連中が、群よりも、個で勝っているのです。真っ当な国になるわけがありません。

 

人口の比率は、国民5に対して、冒険者が5。

 

均等に見える関係は、国土を流れる大河に近づくにつれて、崩れることになります。

 

冒険者の出発地とよばれる、ファーストポイントの港。

 

国家の法よりも、冒険者の法が意味をもつ都市では、今日も荒くれ共の声がひびくのでした。

 

 

「馬車がきたぞォ」

 

叫んでいる人間を越えた車輪をもつ、荷馬車です。

 

軋みをあげる大路地の石畳。凹んだ跡が何本にも残っています。

 

ガコン、石畳が途切れ、黄土色の大地がむきだしな広場に、車輪が着きます。

 

「積み荷を移し替えろ。船が待ってる」

 

“古樹の横”といわれる載積置き場では、肥った男達の姿がありました。

 

きっと上等な食事だけをしているのでしょう。

 

「商人のおっさんたち、そうはいうな。こっちも長旅でつかれているんだ」

「商品は雨季こそは需要のある雨具なんだ。金なら増すぞ」

「そりゃあギルドの方に言ってくれ。俺達は、ただの冒険者だ」

 

冒険者と名乗った男は、細身でした。

 

痩せているというより、筋肉質。長旅を越えるにあたって、筋肉は必要です。

 

「それは隣のギルドでか?」

「馬鹿言え、こんな過疎ったギルドじゃねえよ。港前の商業ギルドでだ」

 

商人はとなりを見ます。

 

古樹とよばれる大木には、不思議なことに小窓がついています。

 

ぐるっと木の幹をまわるように。そして正面に位置する場所には、亀裂。

 

深い亀裂です。のぞきこめば、木製の扉がみえたりもします。

 

「あそこは営業しとんのか?」

「しているさ、もの好きしか集まらんところだがな」

 

「だが看板すらかかっておらんだろ」

「かかっているぞ。上にな」

「上?」

 

商人が思い切り見上げれば、古樹の枝に絡むように、看板が吊られています。

 

鉄でメッキされた板。刻まれている文字は、青色です。

 

────国営冒険者ギルド(ファーストポイント支店)

 

斜めに傾いている看板は、思いのほか綺麗でした。

 

 




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