とっても天使なウマ娘さん 作:レース場の散った芝
3天井分+虹結晶です。誰か助けてください。
エピファネイアは10連で来てくれました。でもトータル負けです。誰か助けてください。
でもピサのフィギュアがくるのでOKです。私は何個買えばいいのでしょうか。誰か助けてください。
「今日の天体観測だけどな、たまたまトレセン学園と予定が被って、急遽合同で実施することになった」
「あー……」
昨日の別れ際のブエナの言葉、ようやく分かった。一緒に星空見ようねーってことか。あはーん。合同になったこと知ってたならピサもブエナも教えてくれればよかったのに。というかマジで合同になったのか、すごいな。
友人含め、周りの男子はワーワーキャーキャー騒いでいる。なぜかウマ娘にはとびきり可愛い子しかいないのだ。ピザ然りブエナ然り。そんな子達とワンチャンお近づきになれるのだ、テンションも上がるだろう。
対して女子の視線は非常に冷ややか。すみません、こんな奴らばっかで……。
「シンジ君ははしゃがないんだね」
「んー、まぁね」
「彼女がいるから?」
「そう。まだ彼女じゃないけど」
ピサが彼女というのは周知の事実らしい。まだ彼女じゃないんですけどね。
「お前ら落ち着けー。トレセンの子達に迷惑かけんなよー。あと天体観測は夜だからな―」
「……シンジ君もソワソワするんだね。彼女と会えるから?」
「そう」
ピサとの天体観測デートなのだ。ソワソワしないわけがない。
それはそれとしてさっきから話しかけてくるこの子は一体誰なのだろう。隣クラスの子だよな? 知り合いじゃないんだけど……怖い……。
「お前ら、トレセンの子達に迷惑かけるなよー」
まったく、周りの男子共は……トレセンの人たちが可愛いからってテンション上げちゃって。見てて恥ずかしいよ。まぁ気持ちは分かるけどね。ウマ娘って何故か全員可愛いし。でも俺にとって一番可愛いのはピサだ。だから他の子に目移りなんてたまぁにしかしない。
ところで、ピサはどこにいるのだろうか。早くピサに会いたい。満天の星空の下、ピサと2人きりになって、星座のことを聞きながらイチャイチャしたいです。ピサにオススメしてもらった本は持ってきたし、本を見ながら夜空を見たりしてみたけど全然分からん。星が多すぎてどれがどれか分からんのじゃ。
「だーれだ?」
誰かの手が俺の視界を覆う。え、なにこの幸せなシチュエーション。リア充か? リア充か……。
声はブエナなんだけど、手のモチモチ感がブエナじゃない気がする。完全に感覚の話だけど、昨日握った手と比べてモチモチ感が足りない。
「……ピサ?」
「……シンジさん、そのまま回れ右して?」
「あい。……ぴぇ」
「正解ですよ、シンジさん。嬉しいです」
回れ右するとMK5な距離にピサの綺麗な顔があった。久し振りな感覚である。結構慣れてきたつもりではあったが、不意打ちだと心臓に悪い。
「……こ、こんばんは」
「こんばんは、なんて、なんだか新鮮ですね。夜に話すことはあまりありませんから」
「ブエナも」
「うん、こんばんはシンジさん」
ピサもブエナもトレセンの体操着姿だ。上にジャージを羽織っているけど。学校行事だからだろうか。2人とも年頃の女の子なんだから、多少オシャレさせてあげればいいのに。まぁどんな姿でも可愛いけど。
「……ちなみに、なんで2人が一緒にいるんですか?」
「分かりませんか?」
「ごめんなさい、何となく察してはいます」
「シンジさんに会いたかったからだよ」
「……」
いやね、そうだとは思ってましたよ。ピサはご存じの通りだが、ブエナもなんかイイ感じに想ってくれてるみたいだし。でも直接言葉で伝えられるとやっぱり照れる。仕草とかで伝えられてもそれはそれで照れる。つまりクソザコ防御力である。
「……随分と仲良くなられたのですね」
「まぁ……そう、ですね。ピサとの仲ほどではないですけど」
「そ、そうですか」
「……シンジさんとピサさん、なんでまだ付き合ってないの?」
「ピサにも心の準備とかいろいろあるんだよ」
「……すみません、私の我儘で……」
「いやいやいや、一昨日も言ったけどいくらでも待ちますから。ピサのこと大好きですし」
「シンジさん……」
どうしてそこまで気にするんだろう。両想いになったからといってすぐ付き合う必要もないだろうし。俺はピサと一緒に居られるだけで幸せなんだから、気にしなくていいのに。
もちろんピサと付き合ってイチャイチャしたいという欲もあるけどね。手を繋いだりハグしたりキスしたりしたいなって。でもそこまで大きな欲求じゃない。三大欲求の次くらい。
「……頑張るって決めたから、頑張れ私」
健気だなぁ。あまりにも他人事すぎるかもしれないけど、でも健気で可愛いなぁって、そう思う。
「……あちらに、人が少なくて景色のいい場所があると教えていただいたんです。3人で一緒に行きませんか?」
「いいんですか?」
「もちろんです。ね、シンジさん」
「え、いいですけど。というかそのつもりで来たんじゃないんですか?」
「私はそのつもりでしたよ」
「私は……ピサさんが選ばれるのかなって……」
「2人きりでいようって約束をしてたわけじゃないし。星なんて何人で見てもいいじゃん。ブエナと一緒に居るのも楽しかったし」
「シンジ、さん……うぅ……」
「うぇっ、なんで泣くのっ!? ごめんてっ!」
何か失言をしてしまったのか、ブエナを泣かせてしまった。マズい、女の子を泣かせるなんて最低だ。土下座までは当然するけど、何故泣かせてしまったのかが分からない。
「違うのっ! ごめんね、嬉しくなっちゃって……」
「あー……」
泣き虫とはまた違うけど……嬉し泣きしがちな人のことってなんて呼ぶんだろうね? 嬉し泣きも泣き虫か? なんでもいいけど、とりあえず可愛いね。
「罪なお方ですね」
「え?」
「女の子を泣かせるなんて」
「ちょっとちょっとちょっと、それは誤解がありすぎる」
「シンジさんに泣かされちゃった」
「やめてください、ほんと、お願いなんで」
また変な噂が立ってしまう。現状ですらトレセン学園内では異常人間扱いされていそうなのに。
「あの、ブエナビスタさんですよね!? デビュー戦からずっと見てます! サインください!」
「ほんとっ、嬉しいな、ありがとう」
どうやらブエナのファンの子のようだ。やはりスターウマ娘、うちの高校にも当然のようにファンがいる。
「私もっ!」
「俺もっ!」
「わっ、すごい」
大人気だなー。すごいなー。勝手に列形成されてるし、謎に民度がいい。
「ごめんなさい、先に行っててくれませんか?」
「分かりました。LANEで場所をお送りしますね。行きましょうかシンジさん」
「びぇっ!?」
ピサに手を握られる。そしてそのまま引きずられる。手を重ねたことはあったけど、手を繋ぐのはこれが初めてである。手のひらが幸せしゅぎる……ブエナの時はドキドキしたけど、ピサとはただただ幸せ。嘘、心臓バクバクです。心臓バクバクだし、おててはアツアツだし、頭は沸騰してるしでまともに歩けません。ずるずると引きずられるがまま、されるがままです。
「もうっ、ちゃんと自分で歩いてください」
「むり……このまま……」
「シンジさんがしっかりしてくれないと、私の大切な人だと周りに胸を張れなくなってしまいます」
「はい! しっかりします! しゃっきーん!」
「顔はまだ蕩けていますよ」
「好きな人と手繋いでるんですよ。しゃあないじゃないですか。そういうピサこそ……ピサこそ……」
なんでピサは照れもしてないんだ。手を繋ぐのくらい余裕ですって感じか? まぁでも余裕そう、ピサ繋がるの好きだし。
「うふふ、好きな人と繋がれているんですから、幸せ以外の気持ちはありませんよ」
「俺は心臓バクバクですよ。もちろん幸せですけど。でもそれとこれとは話が別で……ぴぇ」
「本当ですね、心臓がバクバク言っています」
俺の胸に耳を当て、直接心臓の音を聞いてくる。何? 何これ? どういう拷問? 心臓破裂するて。
「ここですよ。ここが一番星がよく見えるそうなんです。シートも持ってきていますから座りましょう」
「はい……ぴぇ」
近い近い近い。肩と肩が密着、超いい匂いがする。横をチラリと見れば大好きなピサの綺麗な顔ががが……。
膝枕とかしてもらったことあるし今更こんなこと言うのかって感じかもしれないけど、好きな人とこんなに密着できるなんて幸せだ。今回は手まで繋いじゃってるし。好きな人の方から繋いできたし。
「なんですか?」
「きょ、今日はやけに積極的じゃないですか? ……昨日のブエナとのお出かけ、やっぱり怒ってます?」
「シンジさんとブエナさんがデートしたからといって、どうして私が妬かなければいけないんでしょうか? 繋がりができることは素敵なことなんですから」
「あの」
「ブエナさんに帽子をプレゼントしたからって、まだ私はプレゼントなんてもらったことないのに、なんて思っていませんから」
「あれは身バレ防止用で……」
「SNSでお二人のデートが話題になっているからといって」
「ちょっと待って、俺それ知らない」
俺刺されない? 東京に帰った途端刺されたりしない? 大丈夫?
「……ブエナさんからデートの様子をうかがって、ブエナさんの気持ちも教えていただいて……手まで繋いだと聞いて、嫉妬しないわけがありません。お二人の間に繋がりができるのは素敵なことです。でも……私が、シンジさんの一番でありたい、です」
「俺にとって一番大好きなのはいつだってピサですよ」
「人生何があるか分かりませんから。私だって特定の誰かを好きになるなんて、シンジさんと出会うまでは思ってもいなかったんですから。同じように、シンジさんにとっての一番が、いつの日かブエナさんになってしまうかもしれません」
「まぁ、ないとは言い切れないですね。可能性は無限大ですから」
こんな弱音を吐くピサは珍しい。でも逆の立場だったら俺も同じかもしれない。ピサのことが好きな他の男が出てきて、そいつとピサが2人でデートをしたりしたら……ひゅっ。
「なんか、すみません。今更ながら事の重大さに気付きました」
「……謝っているのはブエナさんと出かけたことに対してですか?」
「はい」
「シンジさんが謝ることでは……私とシンジさんはまだ付き合っているわけではありませんから。その、両想い、ではあると思いますけど。付き合っていたとしてもシンジさんのことを縛る理由にはなりませんし、シンジさんとブエナさんが繋がりを作ることを否定する理由にもなりません。それを分かっていながら嫉妬してしまっただけなんです」
「そういうもんなんじゃないですかね、恋愛って」
「……1つ、お願い事をしてもいいですか? 私がもう嫉妬してしまわないように」
「俺にできることならなんでも」
「ん……」
こちらに顔を向け、目を閉じ、そのままジッとピサは動かない。……え、なんですか? キスしろってことですか?
「んー……」
え、あの、マジで言ってます? ピサとキスするための心の準備なんて一切してない。というか準備できるわけがない。恋人繋ぎすらまだなのに、ハグすらまだなのに、それらを全部すっ飛ばしてキス? 刻むだろっ! 普通もっと、段階を!
「んっ、んっ!」
早くしろと急かされている気がする。心なしかつないだ手の力も強くなった気がする。
待って待って待って、ほんとにこのままキスしちゃうの? ピサのキス待ち顔だけで心臓止まりそうなのに? もっと雰囲気とか……満点の夜空の下、2人きり、これ以上ない雰囲気か。でもタイミングとか……2人の気持ちが繋がって、誰も見ていない2人だけの世界、これ以上ないタイミングか。これは覚悟決めるしかないっすか? なさそうっすね。
「……」
「……唇にしてほしかったです」
「ヘタレました。ごめんなさい。ぐうの音も出ません」
覚悟はしたもののやっぱり無理でした。近づくほど心臓がバクバクして、もうキスどころではなかった。だから頬へのキスに逃げてしまった。全ては俺の心の弱さが原因、腹を切ってお詫びいたす。
「もうっ。でも、少しシンジさんらしいです。……ちゅっ」
「え……えっ」
「うふふ、これでまた一つ繋がりが増えましたね。私とシンジさんだけの、特別な繋がりが」
今、何された? ほっぺにちゅーされた? ピサから? ほっぺに? ちゅー? え、お返しのつもりですか? 萌える。心臓止まる。さすがのピサも頬を赤く染めてるのが無理無理無理、可愛すぎ。
「……そろそろブエナさんが来そうです。少し離れましょうか」
「あ……」
「そんなに寂しそうな顔をしないでください。私も、寂しくなってしまいます。手くらいは繋いでいましょうか」
物理的な距離は離れてしまったものの、もう一度手を繋ぎなおす。
あんな密着状態からいきなり離れてしまったから、ついつい声に出てしまった。その結果また手を繋げたわけだけども、ピサの表情が甘えん坊な子供を見るそれだ。なんか、イイ。俺、ピサに性癖を壊されてしまいそう。
「あの星の名前、ご存じですか?」
「北極星?」
「北極星はあそこです」
「えっと、ちょっと待ってくださいね……」
持参した本の中からピサが指差す星を探す。満天の星空すぎて、本を見てもどれがどれか分からない。これ1個1個に名前がついてるのかなぁ。
「……あ、もしかしてこれ天の川? だからえっと……ベガ?」
「うふふ、正解です。あちらがアルタイルで、あちらがデネブです。夏の大三角ですよ」
「あー、小学生の時学んだ記憶が……あるような、ないような……」
「天の川はご存じですか?」
「さすがに知ってます。詳しいことはあんまり知らないですけど。あれですよね、彦星と織姫が年一で逢瀬しておせっ……」
「……スケベ」
「すみません、今のはさすがにすみません。男友達と話してる感覚に何故か急になってしまい、勝手に口が……」
「ブエナさんには絶対やっちゃダメですよ。まったくもう……」
「やらないです。ピサの前だけです」
「それはそれでどうかと思います」
「……と、とにかく、彦星と織姫が年一で会うやつですよね」
「はい。ベガが織姫で、アルタイルが彦星ですよ」
小学校の時学んだはずなんだけどなぁ、全然覚えてないや。あの頃は星にも興味なかったし、そんな真面目な生徒じゃなかったし尚更か。
「……ピサさん」
「なんですか?」
「ただ、こうやって2人で星を見上げるというのもいいですね」
「はい、また一緒に行きませんか? 東京にもいいスポットがありますから」
「もちろんです。ピサと一緒ならどこでも行きますよ」
「また一つ、楽しみなことが増えてしまいましたね」
「ピサさん! シンジさん! お待たせしました!」
「ブエナさん、おかえりなさい」
突発サイン会を終えたブエナが来た。心なしか、今日あった時よりも楽しそうな気がする。俺と初対面の時も快く握手に応じてくれたし、多分ブエナにとってファンからの声援というのは嬉しいものなのだろう。楽しそうで何よりだ。
「シンジさんとのことを話したらね、ファンの皆から"頑張って"って言われちゃった」
「え、なに、ファン公認?」
「うん、そうだよ」
ウマ娘界隈民度良すぎない? ガチ恋勢いないの? 俺がピサにガチ恋しているように、ブエナにもガチ恋勢いそうなものだが。うちの高校にガチ恋勢がいないだけかもしれないけど。
「……ところで、シンジさんからすっごくピサさんの匂いがするんだけど、何してたんですか?」
「ひぇ」
ウマ娘の嗅覚怖い。なんで分かるの? ピサが良い匂いするから? 確かにピサは良い匂いだし、嗅いでると落ち着くけど、そんな分かるもんなの? 怖いよ、助けて。
ホメメテオを見て以降、ダンツが可愛くて仕方がありません。
ジェニュインとファレノプシスも気になって仕方がありません。私の財布とこの物語の未来は一体どうなってしまうのでしょうか。誰か助けてください。