とっても天使なウマ娘さん   作:レース場の散った芝

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学生の本分は学業、でも恋愛もしたい

 学生の本分とはなんだろうか。そう、学業である。友達とお出かけだの、恋人とデートだのといった青春ももちろん大事である。高校生生活は人生で一度しかないからね。

 でもやはり一番大事なのは学業である。学んだこと全てが将来役に立つとは限らない。むしろ役に立たないものの方が多いだろう。だが学んだこと自体は無駄にはならない。そもそもテストでちゃんと点取らないと卒業できないしね。

 

 まぁつまり何が言いたいかというとテスト期間辛いです。

 なんなんだよテストって。トレセン学園もテスト期間らしいからなかなかピサさんと会えないし。モーニングコール、というか朝の通話は毎日続けているけども、好きな人に会えないというのは辛いのです。

 一緒に勉強しないかと一度お誘いがあったけど、中高一貫のトレセン学園とうちとじゃ範囲が違ったし、向こうの方がより難しいことをやっていたので、ピサさん側にメリットを提示できないなとお断りした。ここまでピサさんと会えない時間が続くならお受けすればよかったなと、今更ながら思うなど。

 

「はぁ〜」

 

 家に帰ってもテスト勉強やらないといけないんだよなぁ。中間でも結構英語がやばかったから頑張らないといけない。赤点なんて情けないところピサさんに見せたくないし。でもそれがあるから普段より頑張れるかもしれない。恋の力ってすげーや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そちらのテスト期間はいつまででしょうか?』

「来週の金曜日で終わりです。来週の頭から一週間丸々テスト。しんどいなー」

『最近ずっとそればかりですね。そんなにテストはお嫌いですか?』

「嫌いです。勉強自体は嫌いじゃないですけど、テストというイベントは嫌いです。……まぁこれ終わればすぐ夏休みなんで、そのためのもう一踏ん張りだと思えば……なんとか?」

『うふふ、ではテストが終わったら何かご褒美を……』

「へ?」

 

 ご、ご褒美? なんだろう、ハグとか? ……いや、さすがに期待しすぎだよね。まだそこまでの関係値じゃないし。あれ、でも膝枕はOKだったんだよな? もしかして膝枕がご褒美? 最高じゃないですか。頭なでなではついてきますか?

 

『私も金曜日にちょうどテストが終わるんです。ですから放課後一緒にお出かけしませんか?』

「え、ま……え? デート、ですか?」

『受け取り方はシンジさんの自由です。ただのお出かけと受け取っても、デ、デートと受け取っても』

 

 男女が2人きりで出かけるならそれはもうデートでしょ。ピサさんはきっとそういう認識じゃなく、ただの友達とのお出かけなんだろうけど。でも嬉しい。ピサさんが誘ってくれたという事実が嬉しい。

 

「もちろん、デ……お出かけしましょう」

『ありがとうございます。どこか行きたいところはありますか?』

「んー、パッと思いつくところは……ピサさんと一緒にいられるだけで楽しいですから、俺はどこでも大丈夫です」

『そうですか。最近、シンジさんのこの感じにも慣れてきました』

「ピサさん」

『なんですか?』

「好きです。付き合いましょう」

『っ! もうっ』

 

 直球な言葉にはまだまだ弱いようで。最近好きだのなんだのはあまり言ってなかったから耐性がつきにくかったのだろう。きっと今頃顔真っ赤なんだろうなぁ、可愛いなぁ。

 ピサさんの後ろからキャーキャー聞こえるが、今日は談話室なのだろうか。俺の声は聞こえてないだろうから、多分ピサさんの反応を見て楽しんでいるのだろう。楽しそう。恋に恋するって感じだ。知らんけど。 

 

まだ付き合ってませんっ!

 

 ピサさんの友人の方達にはどう認識されてるんだろうか。"片想いの初手求婚野郎が頑張ってる、ぷぷぷ~"って感じ? 非常に的確な評価だ。ガッツリ片想いだし。でも脈アリだとは思うんだけどね、多分。きっと。そうであってくれ。

 

「そろそろ家出ないといけないので切りますね」

『あ、はい。ではまた明日』

「ピサさん」

『好きですよ、シンジさん』

「ん゛」

『また"好き"だとかおっしゃるつもりだったんでしょう? うふふ、たまには反撃をしなければと』

 

 あぁー3秒くらい心臓止まったー。こんなんズルいって。きっと冗談なんだろうけど、不意打ちで好きなんて言われたら死んじゃうって。自分が普段やってること棚に上げるけど、こんなのズルい。反則だ。

 

『では今度こそ、また明日』

「は、はい。また、明日……」

 

 はぁ、ヤバいなぁ。まだ心臓がバクバクしてる。目の前で直接囁かれていたら絶対そのままお亡くなりになっていただろうな。また一段深く、俺は恋に落ちてしまったかもしれない。

 というかピサさん側は大丈夫だろうか。談話室であんなこと言ったんでしょ? 絶対騒ぎになってるよ。大丈夫かなぁ。まぁでもピサさん自身が意図して発言したものだし、いいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまで! 後ろからテスト用紙回収して」

「終わった……」

 

 長いテスト期間が終わった。2つの意味で。解答欄が1個ズレてた。直すのが間に合わなかったので赤点確定だ。終わった……。

 はぁ、これからピサさんとデートなのに……気持ちを切り替えないとピサさんを心配させてしまう。でも完全に俺の凡ミスなので、そう簡単には切り換えられない。手ごたえがあっただけに尚更。

 ピサさんと会って言葉を交わせば気持ちも晴れるだろうか? ……晴れそうな気がする。俺単純だし。

 

『テスト終わりました』

『お疲れ様でした。校門前で待っています』

『早く会いたいのですぐに行きます』

 

 ピサさんの方が俺より早くテストが終わるらしく、うちの高校の校門前での待ち合わせすることになったのだ。できれば来てほしくなかったけど。だってあんな天使が校門前にいたら騒ぎになるし、うちの学校の陽キャ集団にナンパされてしまう。そんなの嫌だ。だからピサさんに来てほしくなかったんだけど……ピサさんが来たいって言うのだから仕方がない。

 

ザワザワ

 

 カラオケだのなんだの、テストが終わって周りは皆大盛り上がりだ。それに巻き込まれないよう、そそくさと、静かに教室を立ち去る。ピサさんを待たせたくないし、早くピサさんに会いたい。クラスメイトとの交流よりも大事なものが俺にはあるのだ。

 

「……あそこだな」

 

 行く人皆校門を通り過ぎるたびにあるところに目を向けている。絶対あそこにピサさんがいる。やはり誰しも天使のことが気になるのだろう。俺と同じだ。ピサさんに対して失礼かもしれないけど、周りから一目置かれるような人とデートできることに優越感を覚える。

 

――ですね

「ピサさんっ、お待たせしましたっ!」

「あっ、シンジさん!」

「あぅ……天使かな」

 

 急いでピサさんのもとに駆けつけると、誰かと話していたようだがすぐにこちらを見て天使のような笑顔を見せてくれる。ヤバいなー、可愛いなー、嬉しいなー。この笑顔を俺に向けてくれるのがただただ嬉しい。たったこれだけのことでテストのことなんかどうでもよくなってしまう。やっぱり俺って単純だ。

 

「待ち人が来たのでこれで失礼します。お話に付き合っていただきありがとうございました」

 

 うちの制服を着ているが、ピサさんの話し相手達はやはりナンパだったのだろう。ピサさんから別れを告げられると露骨に落ち込んでいる。どっかで見たことある顔ぶれだ。隣のクラスの奴らだっけか?  

 ピサさんはナンパ集団には一瞥もせずこちらを向いて駆け寄ってくる。なんかちょっとらしくない気もするけど、いくらピサさんといえどナンパは嫌なのだろうか。

 

「シンジさん、こんにちは」

「お待たせしました。とりあえずここから離れましょうか。注目浴びてますし」

「そうですね」

 

 周りから、特に男から視線が集まる。週明けの学校が怖い。どんな噂が回っているか想像がつかない。でもそれはどうにもできないアンコントラローラブルなことなので、今この瞬間この場で何かをされる前に逃げてしまうのが吉である。

 

「やはり他校の生徒がいるのが珍しいのでしょうか?」

「いや、それはあんまり関係ないかと。ピサさんがとびっきり可愛いから、皆がピサさんに注目してるんです。あとそんなピサさんと一緒にいる俺への嫉妬、とか」

「そ、そうですか……」

「ところでピサさん、制服のまま来たんですね」

「はい。テストが終わってすぐこちらに来ましたから。私服の方がよかったですか?」

「いえ、制服のピサさんも可愛いです。あ、その、私服のピサさんが可愛くないとかじゃなくてですね、私服のピサさんもめっちゃ可愛いです。でも制服姿のピサさんってあまり見慣れてないから、より可愛く見えたと言いますか。私服姿もまだ2回しか見たことないですけど。すみません、長々話しちゃいましたけど、私服のピサさんも、制服のピサさんもどちらも可愛くて大好……」

「シンジさん! テストの方はいかがでしたか!?」

 

 恥ずかしさが限界を超えたであろうピサさんに話を遮られる。顔が真っ赤だ。あまり意識してなかったけど、1ヵ月ぶりくらいの生ピサさんだな。最高だ。

 

「テストはバッチリでした」

「本当ですか?」

「もちろん」

「……」

「すみません、嘘つきました。最後の英語、解答欄ズレてて赤点確定です。慰めてください」

「まぁ、それは……シンジさん、ヨシヨシ。これで元気を出してください。補習頑張ってくださいね」

 

 頭をヨシヨシと撫でられる。幸せだ。補習もがんばろ。補習頑張ったら膝枕してくれないかな。

 

「ところで、これからの話なのですが」

「ピサさんと俺のこれからの話ですか?」

「ち、違います。今日これから何をしましょうか、という話です」

「ですよね。調子に乗りました、すみません」

「まったく、もう……」

 

 ()()()()()()でのこれからの話もいつかはしないといけないのだろうけど。俺が恋愛感情を持っていて、ピサさんと付き合いたいと思っている以上、いつかはピサさんに決断をしてもらわなければならない。でもそれは今日じゃなくていい。さっきのもからかいが目的だし。

 

「今日はぶらりとウィンドウショッピングでいかがでしょうか? シンジさんの行きたいところがなければですけど」

「いいですよ。ぶらぶら目的もなく歩くの好きなので」

「ありがとうございます。では近くのデパートに行きましょう。……そうだ、新しいメンコが出ていたはずですから見に行きたいです」

「メンコってその耳につけてるカバー的なののことでしたっけ?」

「そうですよ」

「着けてたり着けてなかったり、みんなそれぞれ違いますけどけど、何かあるんですか?」

 

 ピサさんも青いリボンのついた可愛らしい耳カバー、もといメンコを着けていて、とても似合っている。けど着けているのは右耳だけだ。レースとか見ているとそもそも着けていない子もいるし、少し気になっていたのだ。

 

「オシャレ目的だったり、落ち着くから着けているという方もいらっしゃりますね」

「ピサさんのそれもオシャレですよね。似合ってます」

「うふふ、ありがとうございます。シンジさんは何か着けないのですか? アクセサリーとか」

「うち校則が厳しくて。まぁあんまりオシャレに興味がないので、校則関係なくプライベートでも着けてないですけど。でもピサさんに相応しい男になるために必要なら、ちゃんとオシャレします」

 

 まずは髪型から始めるといいのだろうか。寝癖を直すくらいは当然やっているけど、ワックスで整えたりとかは一切やってない。こういう小さなことから始めるべきなのだろうか。髪型を整えるのが小さいことなのかは知らないけど、アクセサリーを買いそろえたりするよりは手軽だろう。

 

「んー、私に相応しい男性というのはよく分かりませんが……普段の、ありのままのシンジさんも十分素敵ですよ」

「そ、そうですか?」

「もちろんです。シンジさんがオシャレをしたいのであれば協力しますが、私にふさわしいかどうかなんてことは気にしないでください。周りの誰かが何を言おうと、私自身の意思で、こうしてシンジさんの隣にいるんですから」

「あ……ありがとう、ございますぅ……」

 

 真剣な眼差しで真っすぐ見つめられる。珍しくピサさんから覇気を感じるけど、覇気に気圧されるよりも先にピサさんが可愛いという感情に心が支配される。ピサさんが真剣な話をしてくれてるのは分かってるんだけどね。こんな時でも恋愛脳な俺はクソ野郎なのかもしれない。

 

「……ところで、シンジさんと同じ制服を着た方が多いですね」

「まぁうちの高校の近くですからね」

「心なしか恋人の方達が多いような……」

「うちは共学ですから、そういう関係性の人たちも結構いますよ。テスト期間中デートできなかったから、その分今日デートしてるんじゃないですかね」

 

 まぁデートできないと言っても、どうせ放課後勉強会とかやってるんだろうけどね。このリア充共が。やっぱり俺もピサさんと勉強会すればよかったなぁ。

 

「私達も、周りの方からは恋人のように見えているのでしょうか」

「そうかも、しれませんね」

「そうですよね」

「……嫌でしたか?」

「いえ。嫌だと思うならそもそもシンジさんと2人きりで出かけたりしませんから」

「そっか。そうですよね。愚問でした」

「ふふっ、シンジさんは積極的なのか奥手なのか、よく分かりませんね。どちらのシンジさんも私は好きですけど」

「ぴぇ」

 

 反撃を覚えたピサさんに勝ち越すのはなかなかできなさそう。好きの一言で簡単にダウンさせられてしまう。気軽に好きとか言うのやっぱダメだろ。ピサさんの"好き"は威力が高すぎる。ほんのり赤くなった顔も可愛すぎる。ナーフしましょうナーフ。




ピサと放課後制服デートしたい、したくない? 私は毎日したいです。
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