鬱ゲー世界の魔法少女たちを助けるために俺ができる幾つかのこと   作:それは違うよ!

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マルチバッドエンド搭載型ゲーム

 このクソゲーのチュートリアルを犠牲なしで突破できたことは非常に大きい。

 なにせ、俺たちの中では最強戦力である譲葉アンジュが死なずに済んだということだからな。

 アンジュの固有魔法である「星の聖剣(エクステラカリバー)」の効果は極めてシンプルで、エーテルライト──魔力を注げば注ぐほど刀身が巨大化する一本の剣だ。

 

 それだけならよくあるシンプルな効果の魔法でしかない。

 だが、そこに無尽蔵に等しいアンジュの魔力貯蔵量が加わることで、彼女は「最優」の名をほしいままにしているのだ。

 本編だとチュートリアルで退場したのが惜しすぎるんだよな。キャラ性能もどうせこのステージで退場するんだから盛れるだけ盛っとけみたいな感じだったし。

 

「しかし、だな……」

 

 ダイダラボッチをぶちのめせたのは大きい。

 間違いなく、この先に待ち受けているマルチバッドエンドを覆す一手になりうるだろう。

 しかし、だ。

 

 原作である「魔法少女マギカ⭐︎ドラグーンZwei」だと、管理官が死亡して基地も壊滅したという理由で魔法少女たちは国連軍の拠点を転々としていき、その度に拠点の壊滅あるいは本人の死亡、もしくは両方という結末を迎えていくのだが、俺が生き残ってしまったことで、どう転ぶかがわからなくなってしまった。

 

「まあ……なんとかなるだろ、俺はそこそこ権力あるっぽいし……」

 

 ぽつりと呟く。

 少なくとも基地司令クラスの権限は持ち合わせているのだから、魔法少女たちを死なせないために、指揮をとり続けることはできるだろう。

 基地司令クラスなのにEMに乗って前線まで出向いているのは我ながらどうかと思うけど、フィクションのお約束にツッコミを入れても虚しいだけだからな。

 

「……管理官」

「ん? おお、梯フタバか。なにか用か?」

「……あなたの指揮によって多くの住民が救われた。それは正しいことです」

「そうすることが軍人の責務だからな。で、なぜ君は俺を呪い殺したそうな目で見ているんだ」

 

 梯フタバは、気難しい魔法少女だ。

 譲葉アンジュと似たような固有魔法を持っていて、なおかつ魔力量で彼女に劣るとなれば、どうしても比較され続ける。

 持ち前の正義感で強がりを貫き通しているが、「次席」の立場に甘んじている現状には忸怩たる思いを抱いているのだろう。

 

 だから、てっきり「なんで私とアンジュを組ませたんですか」みたいな批判が飛んでくると思っていたんだが。

 

「あなたは、本当に管理官なのですか?」

 

 思ったより本質を突いたとこを攻めてきたね、君。

 

「……俺が何者なのかどうかが、そんなに重要なのか?」

「……少なくとも昨日までのあなたは、桜木ノアの予言を重視したりしませんでした。無論、私とアンジュを組ませて出撃させるようなことも、しなかったはずです」

 

 フタバが俯きながら呟いた言葉に、俺は頭を抱えたくなった。

 嘘だろお前。

 このエブリデイ世界崩壊の危機みたいな世界で、椅子を尻で磨くことに腐心していたのか? 「俺」インストール前の俺こと成田は?

 

「何者なのですか、あなたは」

 

 ……そんなやつがいきなり真っ当に作戦指揮をとり始めたんだから、当然疑われるよなあ。

 とはいえ、この世界が実はゲームの世界で、俺の正体はそれを遊んでいたプレイヤーです、なんて言ったところで、信じてもらえるはずがない。

 生真面目な梯フタバなら尚更だろう。

 

「俺は自分の行動で俺が何者かを証明するつもりだよ。その方が、君も信じられるだろう」

「目の前の答えから逃げるのは、正しくありません」

「逃げていないさ、俺が俺であると証明できるのは、君たちの客観的な観測があるからだよ」

「……それは」

「だから、見定めるつもりでいてくれて構わない。少なくとも俺は、君たちに害があるような行動はとらないつもりだから」

「……失礼しました、ではそのようにいたします」

 

 フタバは、踵を返して去っていく。

 生真面目すぎるきらいがある彼女には、これぐらい言っておかないと、本人が納得しないだろう。

 しかし、自業自得とはいえ、信頼度が底辺からのスタートなのが泣けてくる。

 

 この様子だと、わざわざコンタクトを取ってこなかっただけで、アンジュも多かれ少なかれ似たような感じだろうからなあ。

 

「さて……戦後処理は現場に任せるとして、俺は」

 

 まずやるべきことを頭の中に浮かべて、整理する。

 俺の知っている「魔法少女マギカ⭐︎ドラグーンZwei」のトゥルーエンドは、とうとう二人しかいなくなった魔法少女──いがみ合っていたノアとフタバが思いの丈を互いにぶちまけながら、首都圏全土を巻き込んだ自爆でラスボスを倒す、というものだ。

 ふざけているのか。なんで三千時間もやった末に辿り着いたトゥルーエンドで俺は全滅百合心中エンドを見せつけられなきゃいけないんだ。

 

 そんなわけでトゥルーエンドも断固拒否。

 グッドエンド? ねえよそんなもん。

 バッドエンドも断固拒否、となればもう、手探りでやっていくしかない。

 

 存在しないグッドエンドを探すにあたって鍵になってくるのは、やはり桜木ノアの存在だろう。

 他の魔法少女がなにかしら戦闘に役立つ固有魔法を覚えている中で、彼女の「五分後の未来を見る」魔法というのは効果が極めて限定的だ。

 だから、ノアの立場は──悪い。それはもうめちゃくちゃに悪い。

 

「どうかしたんですかい、隊長」

 

 どうしたものかと考えを巡らせていると、EMを降りた、羆のような大男がのっそり、俺の顔を覗き込んできた。

 

「……いや、少し考えごとをしていて。今回の作戦の成功に一番寄与したのは誰だと思う、斎藤大尉」

「誰ってそりゃあ……隊長でしょうよ。バンカーバスターなんて、今時あんな埃被った代物を持ち出すなんて発想、どこから──」

「俺はただ使えるものを使っただけだよ。それを準備する五分間が大事だったんだ」

「ってぇと、つまり?」

「桜木ノア。管理番号十三番……彼女の存在はこれからの戦局を左右する鍵になるかもしれない」

 

 意味ありげに呟いて、俺は基地に帰還するため、EMに再び乗り込んだ。

 この世界を最悪のバッドエンドで終わらせないためにも、まずは、小さなところから少しずつ。

 ──予言の魔法少女、桜木ノアの地位を向上させよう!

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