TS眷属にされたので、勇者よりも先に魔王殺しの聖剣集めます。――ダンジョン使って、のんびりスローライフ 作:あでぃかりん
勇者、リアリスの説明だと聖剣に導かれ、魔王を倒すもの。
でも皆の話は割とまちまちなんだ。ある王国では異世界から召喚された英雄の称号だったり、国や地域によって扱いは千差万別だ。
そしてその中で有力なのが、女神教の率いる勇者パーティ。
特に僕達に問題なのは彼らが聖剣のうちの1本を保持しているって事だった。
「えっと、女神教の勇者がこの国に来る?」
「戦争の加勢に呼ばれたらしいですわ」
「聞く所によると、あんまいい噂は聞かねぇぜ。女癖や酒癖も悪いし、女神教自体もそうだが、異種族に対して弾圧なんか繰り返してんだ」
「それ、許せないよ!」
鬼族や他種族は悪じゃない。
弾圧したり、自由を侵害するのは良くないよ。
「でもなんでこの国に来たんだろう?
その考え方なら女神教は帝国の方がテリトリーにならないかい?」
そんなリアリスの疑問に、テールが切り込む。
「簡単ですわ、宗派が違いますの。女神教の中でも、異種族を奴隷として酷使する派閥と綺麗さっぱり全滅させる派閥があるのです。そして、両者は仲が悪いのですわ」
帝国は異種族の奴隷を使う女神教だったけど、どっちにしろ敵だよね。
でも話してもいないのに敵と決めつけるのもなんか悪い気がする。
「なるほど、どう調理するか。こちらの勝利目標は聖剣の獲得で後は余力なんだよね」
「僕は、勇者と話してみたい。絶対な敵なのか、わかんないで戦うのはしたくないんだ」
「俺は反対だ。ちゃんと聞いてたか? 酒癖と女癖が悪い勇者だぞ? カモとネギが一緒に居るようなもんだろ」
「そうですわ、勇者との交渉は必要かもしれませんが、アシュとだけは合わせたくないですわ」
フレットとテールが合わせて反対する。
「んー、じゃあいったんここに呼んでみる? ここ異種族いっぱいいるし、呼んだら来ないかな?」
『はっ?』
リアリスの尻尾はいつものようにゆらゆら揺れていた
「それは完全に襲撃させる前提だよな」
「で、でも、優しい人なら幸せな鬼族を見て納得してくれる可能性も……」
「ありませんわ。リアリスのは鬼族を囮に勇者をおびき寄せる戦略ですことよ」
「……囮」
やっと鬼族のみんなが落ち着きを取り戻せたのに、それを壊しちゃったら意味がないよ
「アシュちゃんが嫌そうなので他の案で行くか」
「じゃあ、次王都をダンジョンに取り込んで……」
「もっとダメ!!」
◆◆◆
「危険じゃないかな。バックアップはするけど、リスクはあるよ?」
「リアリスに任せると国が崩壊する事はよくわかりましたの」
「んと、勇者に色仕掛けして、ダンジョンまで誘導する。んだよね?」
「むぅ、色々アイテムは持たせるけど心配だなー」
リアリスの心配性が止まらない。
「私達も行くから」
「4人行動ならそれなりに防御力になりますよ」
テール、ルリヤ、アルナスの3人と一緒に、勇者をダンジョンに誘ってそこでお話をする作戦だ。
本当は会ってすぐ話したいけど、リアリスが絶対ダメと許可を出さなかったし、全員に止められた。
◆◆◆
ここは女神教の教会。王都のはずれに孤児院と併設されている場所だ。
孤児達は楽しそうに遊び回っている。皆痩せてはいるけど、食べてないレベルじゃないし良い孤児院なんだろう。
ただ僕達を見ると慌てて教会の中に入っていってしまった。うん、人攫いか悪い貴族だと思われちゃったのかも。
「魔王が、復活しました。女神様のお告げです!! どうか、女神教にお心添えを」
え、なんで知ってるの!?
色々バレてる? もしかして僕たちの事も……
「心配しなくて良いですわ。女神教は一貫して魔王復活と騒いでますの。もう数百年以上唱えて居るので誰も信用しませんわ」
そうか、狼少年の故事みたい。ずっと言い続けてる事で、かえって信用をなくしちゃったんだ
「失礼ですが、前触れは届いて居るはずです」
「勇者とは会わせられません。貴族は勇者という称号の神聖さをわかっていないのです。我々女神教の信徒でもなかなかお目にかかれない勇者に会わせろ等と……」
(王族貴族と宗教的権威は仲が悪い事が多いんだよね、さてどうする? 帰る?)
まだ会ってないのに帰らないよ。でも、どうやって会おうか……
「ん、何か落ちてきた。石の付いた紙?」
(汚い字だね。えっと、今晩、裏のキャバレイで会おうby勇者)
上から覗いてた!?
「……もう行かなくてもいい気がしてきましたわ」
◆◆◆
「よし、アシュちゃんを推しにするでござる」
それが第一声だった。
夜中のキャバレイ、勇者の言動はよくわからなかった。
ただ、フレットやへラード、シャナルマト君とは違う身の危険を感じたんだ。
「拙者、異世界から来た勇者、キヨタカ 魔物狩りを得意とする、モンスターハンターキヨタカですぞ」
「あはは、キヨタカ、語ってやれよ。俺達の武勇伝を!」
笑って煽るのは、いかにも戦士という風貌の肌の浅黒いおじさん
「……」
そして両目を布で隠しフードを深く被る魔法使いらしき老人だった。
そして武勇伝に出て来たのは……
(異種族の虐殺史、しかも酒の席で楽しそうに語る)
「どうして? 同じ人間じゃないの?」
僕は涙ながらに訴える。でもキヨタカは笑いながらこう答えた。
「あはは、奴らはモンスターでありますぞ。倒して剥ぎ取るのはモンスターハンターの努め」
(あー、完全に毒されてる、ね)
こいつを止めたい。もう犠牲が出ないようにしたい。どうしたらいい?
(んー、一度離脱しよう。また会う約束だけしておけばいつでもおびき寄せられる)
うん
◆◆◆
「はぁはぁ」
話を聞いただけで気持ちが悪い。
最悪な気分。
どうして、あんな考えができるのかが分からない。
魔族だから。鬼族だから。モンスターだから。
そんな理由だけで、殺していいなんて。
ツヴァイとモノの顔が浮かんだ。
あの二人が殺されたり、おもちゃみたいに弄ばれたら……
僕、は、ゆ、る、せ、な、い
(アシュちゃん、心をしっかり持って、それに飲まれちゃダメだ)
リアリスの優しい声で視界が戻る。
そこには心配そうに見つめるルリヤがいた。
「ごめん、アシュ、聖剣盗めなかった」
「えっと、聖剣盗むつもりだったの!?」
「隙があれば盗めた。実際隙だらけだった」
ルリヤは重要な点を指摘した。
「でもあの勇者、剣持ってなかった」
「え」
「ルリヤどこまで見ましたの? 荷物にも、背中にもなかった?」
「うん、教会に置いてきている? 勇者がいないうちに忍び込んで取って来る?」
(いやいや、おかしいよ。聖剣は勇者に付随していた。私の知覚がそう認知してるんだ)
「え、勇者聖剣持ってたって?」
(んー、私をごまかした? いや、女神本体じゃなければそんなこと不可能なはず……)
「女神っているの?」
(あれは、ただの邪神だよ。箱庭にめんどくさいオブジェクト配置して楽しんでる存在なんだ)
魔王に邪神って呼ばれる女神って……
「とりあえず今議論しても仕方ありませんわ」
テールは手をパンパンと叩いた
「今やる事はダンジョンに誘導する事ですわ。相手の手の内が分からない以上、一番安全な場所に追い込むのが先決ですわよ」
(まぁ、ダンジョン内ならいくらでも調べられる、かなぁ?)
「とりあえず服までは無いって確定」
ルリヤが申告する、盗賊ってすごい。
「それでどうやってダンジョンに連れて行こう」
そう発言すると、みんなの視線がこちらを向く。
「えっと、何?」
「最初の作戦でよろしくてよ」
「えっと、最初って事は……」
「色仕掛けしてダンジョンに誘い込む!?」
「多分釣れてますから引っ張るだけですわ」
「ふえー」