TS眷属にされたので、勇者よりも先に魔王殺しの聖剣集めます。――ダンジョン使って、のんびりスローライフ 作:あでぃかりん
「え、えっと、こっち、一緒に行って欲しい場所があるの……」
「あのね、好き、なんだ」
「えっと、えへへ」
◆◆◆
「うわーん、もう嫌……」
僕は挫けそうだった。
(別に不自然じゃないけど、イチコロなんよ。もう少し隙を減らさないと危ない)
「確かに、アシュは隙が多すぎますわ。その場で襲われてもおかしくない。それでは危険すぎますの」
「そういう、リアリスはどうなの? 隙多くない?」
「リアリスから学んではダメですわ。こいつは隙すら利用する狡猾さがありますもの」
「むぅ」
「リアリスの隙はミミック、開けた瞬間ガブリ」
(ミミック扱いは酷い)
「アシュ、もう一度好きって言ってみて」
「えっと、好き」
「なるほど、アシュ好きは禁止ですわ。若干目をそらして、震えながら言うから破壊力が高すぎますの」
「アシュさん、“いきたい場所があるからついて来て”と素直に伝えられますか?」
「う、うん」
「一緒にいきたい所があるの。付いてきて?」
ちょっと震えたけど大丈夫か?
「アシュに演技は向いてない。男を落とす能力が高すぎる」
ルリヤどういう意味?
「……確かに、アシュさんには立っていて貰って、私達が誘うという事にしましょう」
「まあ、そっちが妥当ですわね」
今までの時間なんだったの!?
◆◆◆
うまく、ダンジョン探索を理由に引っ張り出した。勇者だけじゃなくて勇者パーティ相手になったのは若干不安だけど。
出発が夕方ということもあってダンジョンの手前で一泊することになった。
「こいつら、本当にパーティなのでしょうか?」
「荷物は持たない、薪も集めない、料理もしない。どうやってパーティしてきたのでしょう」
アルナスが呆れた声で悪態をつく
はい、今の僕も完全にそれです。ごめんなさい
ルリヤに撫でられた。
「アシュには立ってるって役割がある。冒険の手配は私たちが得意。役割が違うだけ」
「いや、立ってるだけでいいのかな……」
「ただ注意、今晩アシュを狙ってる。危険絶対私たちと一緒にいて」
「危険って聖剣を狙ってる事バレた!?」
「……アシュの貞操」
ルリヤは読唇術が使える。
それで勇者達の会話を大体聞いていたらしい。
「確かに、睡眠薬を食事の中に混ぜますわ。リアリス公認の強いやつですの」
この作戦は効果的だったらしい、勇者達はぐっすり眠りについた。
だけど僕まで眠らせなくても良いじゃん!?
◆◆◆
「リアリス、なんで僕まで睡眠薬飲ませてるの」
(あはは、よく寝れたでしょ)
「……」
(さて、そろそろダンジョンだ。寝てる間の家探しでも、聖剣は見つけられなかった)
(ただ、後は出たどこ勝負でも大丈夫かな)
「アシュちゃん、我が勇姿、見届けるでござる」
キヨタカはダンジョンへの第一歩を……
盛大に踏み外した。
「初手、落とし穴!?」
すると落とし穴からキヨタカが飛び出して来る。
「っち、初手落とし穴とか卑怯でござる。しっかり棘付きとか殺意高すぎ」
(聖剣の力か、でもどう使ったかはわかんない。めんどくさいね)
「じいさん落とし穴、わかってただろう。教えてやればよかったんじゃね?」
「……」
「ダンジョンは危険、私が先導する」
ルリヤが誘導役を買ってでて、勇者パーティとのダンジョン攻略が始まった。
「うぉ、危な!?」
「これ毒矢、当たってたら死んでる」
「このダンジョン殺意高いでござる」
(毒矢失敗。当たる瞬間に弾かれた?)
「石が転がって来た。どうしよう!?」
「アシュちゃん、拙者にお任せを。ふんぬ」
(石が止まった。うーんただ怪力で止めてるわけじゃないな。なにか聖剣由来のからくりがある)
(今度はモンスターと罠、どう処理させてみるか……)
「!?、壁が迫ってきますぞ。しかも前方には重量級モンスター。むむむ」
「壁はお互い反発させる。その隙にモンスターをかっこよく倒す。アシュちゃんは惚れる。これで行きますぞ」
「リアリスの作ったオーガさんが倒されちゃう!? 確かオーガは人間と同じなんだ。助けないと……」
(あ、ちょっと!? アシュ……)
僕はオーガとキヨタカの間に立って叫んだ。
「オーガさんだって生きてるんだ。殺すなんて……」
「アシュちゃん、危ないでござる!?」
「ふぇ?」
僕に迫る鉄の斧、それはオーガから放たれたものだった。
死ぬ、そう思った瞬間斧が別方向に曲がる。
「こいつを倒して、アシュちゃんにいいとこ見せるでござる」
その後見えたのはオーガを撲殺するキヨタカの姿だった。
(危な、危うく介入しかけたよ)
うう、ごめんなさい。
(アシュちゃん、オーガは確かに自我がある。だけどその自我は人間を襲いたいって言う本能なんだ。アシュちゃんの優しさを理解も共感もしない)
自我があっても、仲良くできるとは限らない。ダンジョンのモンスターは危険だった。ポーター時代に散々見てたはず。
だけど、自我があると知って、人間と同じって聞いて、僕はダンジョンのモンスターとも分かりあえるって思ってしまってたんだ。
(聖剣の能力は、引力と斥力を操る能力かな。利便性が高い。攻撃力はさっきのオーガの倒し方を見る限り高くない)
リアリスは即座にキヨタカの能力を分析していた。
◆◆◆
「おお、この豪華な扉はボスの部屋っぽいですな。空けてみますぞ!!」
「やぁ」
そこには魔王がいた。
なんで居るの!?
「おぬしがこのダンジョンのボスでござるな!」
自信満々に問うキヨタカ
「そうそう、直々に君を倒そうと思ってね」
ダンジョンのボスじゃないよ。それ本物の魔王だよ
「こちらは7人、お前は一人。この時点で勝負は決まっておりますぞ」
でもその内訳は、僕、テール、ルリヤ、アルナスはリアリス側だから5対3なんだよ。
「なあ、キヨタカ、こいつら本当に仲間か。結構怪し……」
と、事実を言おうとした戦士は、老人の雷の魔法で昏倒しその場で倒れた。
「女神教の勇者として行った数々の狼藉。一族最後の生き残りとしてお前を討つ」
なんか、魔法使いのお爺さんが突然裏切ってる!?
「昨日事情は聴きました。一つ目族の最後の生き残りだと」
「おじいちゃんも大変だった。女神教の勇者パーティに取り入り復讐の機会をうかがってた」
「貴殿達のおかげでようやく、ようやく悲願を果たせそうだ」
お爺さんは涙ながらに語る。
「あれれ、つまり拙者嵌められた?」
お爺さんは異種族で、後から聞いた話だと、僕が眠らされた日に、テール達が事情を聞いたそう。
つまり6人に対して、キヨタカ一人。
「許せん!! 全員倒して、アシュちゃんは嫁にもらう。ここが勇者の見せ場ですぞ」
あれ? 僕だけなんか違うことない?
(アシュちゃんは危ないから下がっておこうね)
足場が動いて僕を空中に運ぶ、気がつくと石の玉座が完成していた。
確かによく見えるけど、こういうのは魔王がやるやつなんじゃないの?
「やはり、アシュちゃんは囚われの姫君!! お助けしてお嫁さんにしなければ」
変な誤解された。
違うよ。元男だし魔王の眷属だから!?
「ここまで来れば一蓮托生。こいつの聖剣は磁力を操る。その剣身は自分の肉体を傷つけぬ」
へぇー、そうなんだ。
「ゆえに、聖剣を飲み込んで身体に隠しております」
「は、聖剣食べてる? それは気がつかないよ!?」
「まずは、裏切り者のお前からですぞ」
魔法使いのお爺さんの身体がキヨタカの方に引き寄せられる。その磁力を利用してお爺さんを殴りつけた。
酷い。
お爺さんがやられた事でみんなは散開する事となった。
(多分磁力の射程はそんなに長くない。約10mって所)
結構広いよ。しかも加速して近づけるから一人ずつ狙われない?
(そうそう、結構強いよ。だから私が出てきたんだ)
どういう……
その瞬間、リアリスが不用意に前に出る。
「獲物発見でござる」
磁力でリアリスを引っ張ろうとした瞬間、地面からブロックが生える。
「うぉ!?」
自分で引っ張ったブロックに正面衝突しそうな所を寸前で避けるキヨタカ。
その間に、次々と盤面にブロックを配置するリアリス。
「小癪な、こんなものまとめて吹き飛ばしますぞ」
キヨタカは磁力でまとめてブロックを吹き飛ばした、砂塵が舞いみんなが見えにくくなる。大丈夫かな……
「視界が潰れれば」
「私たちも活躍、できる」
砂塵から赤い炎と石の槍がキヨタカの身体を掠める、テールとルリヤの援護攻撃だ。
「っく、これは厳しいですぞ!?」
いける、僕がそう思った時だった。
「だが、捕まえた。これで逆転ですな」
え、リアリスが磁力に引っ張られて行く。
なんで!?
(……なるほど、この能力マーキングもできるのね)
そしてリアリスの顎に拳の一撃を加える。
さらに、腹に一発。
ああ、リアリスが傷ついていく。あのきれいな身体が暴力によって、赤く塗れていく。
リアリス、ダメ。傷ついちゃ……
(アシュちゃんが、前に出るたび私そういう気持ちだったんだよ?)
オーガの前に出た時も?
(怖かった。アシュちゃんは人間並みの能力しかないから……)
「はぁはぁ。軽いね」
リアリスが、血みどろで立ち上がる。
ダメージは明らかなのに、オーガを殺すレベルで殴られてるのに、リアリスは息を詰まらせながらも立ち上がった。
「うわぁぁぁ、こいつなんでござる!?」
キヨタカが恐怖を感じて、リアリスを磁力で吹き飛ばす。
「勇者なのに聖剣を対人戦に特化させすぎ。ちょっと硬い敵すら倒せなくなってる。倒せて、オーガぐらい? 君、何と戦うつもりだったの?」
よろよろとその場で立ち上がり、笑顔を見せる。その表情はまさに魔王と言ったものだった。
「人を捕まえるのには便利だよね。逃げても引き戻せる。武器も逸らせる。集団でも一人ずつ引っ張り出せる。いっぱい来たら弾き飛ばせばいい」
リアリスは口元の血を拭う。
「で、魔王は?」
「……」
「それ、最初から私を殺す気ないでしょ」
リアリスの言葉はキヨタカの行動そのものへの痛烈な批判だった。