TS眷属にされたので、勇者よりも先に魔王殺しの聖剣集めます。――ダンジョン使って、のんびりスローライフ   作:あでぃかりん

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第31話・魔王を倒せない勇者の話

 

「うわぁ聖剣、よどでベトベトですわー」

 テールは汚い物を触るように聖剣を扱った。

 

 キヨタカを捕まえ、聖剣と引き離した。

 ミッションとしては終わってる。

 

 後は、キヨタカをどうするかだった。

 

「キヨタカ自体強い。ただ聖剣の成長方向が良くなかった」

 

 ルリヤがそう総括する。

 

「リアリスさんは、先ほど対人特化と言いました。なら、聖剣を使って異種族の皆様を制圧していたと言う実績になります」

 

アルナスがそう付け加えた。

 

「うん、そういう使い方しかしなかったから、聖剣自体の成長もそれに特化したんだ」

 

 リアリスはそう僕たちに語りかけた。

 聖剣を悪いことに使ったら、悪い聖剣になるって事?

 

「ちょっとだけ違うけどね。聖剣に正義とか悪とかない。ただ使い手によって成長していくんだ」

 

「リアリス、水を用意してくださる。徹底的な洗浄が必要ですわ」

 

 

 

「さて、キヨタカ自体をどうする?」

 

 リアリスは僕を見つめる。

 

「我が一族の敵、わしに任せてはもらえないでしょうか」

 

 でも、それはキヨタカを殺すって事になる。それに僕は最初に聞いた言葉が気になっていた。

 

「異世界から来たって最初にキヨタカが言ってたよね。あれ、どういう意味?」

 

「事情を知っても罪自体は変わらない。その上で知りたい?」

 

 リアリスの言葉に僕は首を縦に振った。

 

 お爺さんの気持ちもわかる。僕にももう大切な人がいるから、許せないと思う。

 

 でも、何も知らないで命の処遇を決めるのも嫌だった。

 

 

 

 

 キヨタカは弁明を始めなかった。

 

「元の世界? なぜそんな話をせねばいかぬでござるか?」

 

 そしてキャロキョロと抜け出せないか見回っている。

 

「はぁ、んじゃ君がどういう経緯でモンスターハンターなんかをしていたのかを教えてくれる?」

 

「良いですぞ、そもそも女神教の教えに感銘を受けたからですが……」

 

 そう続く話は、難しいものではなかった。

 

 女神教の教えに従って、村や街を異種族から取り返す。と言う名の下に、目の前の敵を倒す英雄譚。

 

 それが、どういう人たちなのか、どんなストーリーがあったのか、キヨタカは全くわかっていなかった。

 

「話、聞かなかったの?」

 

「ん? 女神教の支援者たちからは盛大に祝われましたぞ」

 

「そうじゃなくて、異種族に……」

 

「モンスターは倒すもの。そいつらの命乞いを聞いてなにになるですぞ」

 

「こいつ、言わせておけばペラペラと!」

 

「あ、お爺さん。ごめんなさい」

 

 反射的に謝ってしまった。

 

「いや、アシュ殿には感謝しております」

 

 お爺さんは悔しそうに語った。

 一つ目一族の敵を討つため、女神教に侵入した事。運良くキヨタカのパーティに忍び込めた事。

 仲間として信用されるため、同胞である異種族を手に掛けた事。

 

 そして、お爺さんは話を終えた後、キヨタカから目を離し歩き出した。

 

「真に倒すべきはこいつではない。所詮こいつは手足でしかない、操っていた女神教こそ真の敵なのだと」

 

「女神教が、我々の声を封殺し、実行者がその命を奪う。そういう仕組みなのです。ならば女神教自体を倒さねば第二第三のこいつらが現れるだけだ」

 

 お爺さんの言葉は強くて、そしてなんだか寂しそうだった。

 

 

 

 

 お爺さんは、秘密裏に仲間を集める旅に出るそうだ。 対女神教を掲げ、世界を回る過酷な旅になる。

 

「リアリス、わかんないよ。お爺さんが正しいの? 女神教には孤児たちがいて、平和そうだった。それも嘘なの?」

 

僕はリアリスに問い正す。

 

「アシュちゃんはそれでいい。孤児院はきっと良いことをしてる。でも、異種族狩りは悪い、そしてその2つは同時に存在する」

 

リアリスは優しく諭した。

 

「もし、お爺さんの組織が異種族狩りをやめさせるために、孤児たちを攻撃する。でもそれは良いこと? 悪いこと?」

 

 僕は、さらに質問する。

 

「んー、悪いと思う、けどわかんないかな。善悪ってのは相対的なんだ。絶対良いことも絶対悪い事もない」

 

「じゃあ、何を信じればいいの?」

 

 僕は難しくて、頭がパンクしそうだったんだ。

 

「別に陣営ごと信じなくていいんじゃない?」

 

「え?」

 

「孤児を助けたなら、それは良いこと。異種族を殺したなら、それは悪いこと。女神教だから、お爺さん側だからって、全部まとめて決めなくていい」

 

「……一個ずつ考える」

 

「そうそう。そこは面倒だけど楽しちゃいけない部分なんだ」

 

 リアリスの言葉が染みる。

 

 そうか、楽せず考え続ける。

 それが全部正しいって信じるのではなくて、ちゃんと考える。それが大切なんだ。

 

 「リアリス、洗剤とかありませんの、全然汚れ落ちませんわー」

 

 テールが、悲鳴を上げる。

 

 「拙者、もう忘れられてるでござる!?」

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