TS眷属にされたので、勇者よりも先に魔王殺しの聖剣集めます。――ダンジョン使って、のんびりスローライフ 作:あでぃかりん
「うわぁ聖剣、よどでベトベトですわー」
テールは汚い物を触るように聖剣を扱った。
キヨタカを捕まえ、聖剣と引き離した。
ミッションとしては終わってる。
後は、キヨタカをどうするかだった。
「キヨタカ自体強い。ただ聖剣の成長方向が良くなかった」
ルリヤがそう総括する。
「リアリスさんは、先ほど対人特化と言いました。なら、聖剣を使って異種族の皆様を制圧していたと言う実績になります」
アルナスがそう付け加えた。
「うん、そういう使い方しかしなかったから、聖剣自体の成長もそれに特化したんだ」
リアリスはそう僕たちに語りかけた。
聖剣を悪いことに使ったら、悪い聖剣になるって事?
「ちょっとだけ違うけどね。聖剣に正義とか悪とかない。ただ使い手によって成長していくんだ」
「リアリス、水を用意してくださる。徹底的な洗浄が必要ですわ」
「さて、キヨタカ自体をどうする?」
リアリスは僕を見つめる。
「我が一族の敵、わしに任せてはもらえないでしょうか」
でも、それはキヨタカを殺すって事になる。それに僕は最初に聞いた言葉が気になっていた。
「異世界から来たって最初にキヨタカが言ってたよね。あれ、どういう意味?」
「事情を知っても罪自体は変わらない。その上で知りたい?」
リアリスの言葉に僕は首を縦に振った。
お爺さんの気持ちもわかる。僕にももう大切な人がいるから、許せないと思う。
でも、何も知らないで命の処遇を決めるのも嫌だった。
キヨタカは弁明を始めなかった。
「元の世界? なぜそんな話をせねばいかぬでござるか?」
そしてキャロキョロと抜け出せないか見回っている。
「はぁ、んじゃ君がどういう経緯でモンスターハンターなんかをしていたのかを教えてくれる?」
「良いですぞ、そもそも女神教の教えに感銘を受けたからですが……」
そう続く話は、難しいものではなかった。
女神教の教えに従って、村や街を異種族から取り返す。と言う名の下に、目の前の敵を倒す英雄譚。
それが、どういう人たちなのか、どんなストーリーがあったのか、キヨタカは全くわかっていなかった。
「話、聞かなかったの?」
「ん? 女神教の支援者たちからは盛大に祝われましたぞ」
「そうじゃなくて、異種族に……」
「モンスターは倒すもの。そいつらの命乞いを聞いてなにになるですぞ」
「こいつ、言わせておけばペラペラと!」
「あ、お爺さん。ごめんなさい」
反射的に謝ってしまった。
「いや、アシュ殿には感謝しております」
お爺さんは悔しそうに語った。
一つ目一族の敵を討つため、女神教に侵入した事。運良くキヨタカのパーティに忍び込めた事。
仲間として信用されるため、同胞である異種族を手に掛けた事。
そして、お爺さんは話を終えた後、キヨタカから目を離し歩き出した。
「真に倒すべきはこいつではない。所詮こいつは手足でしかない、操っていた女神教こそ真の敵なのだと」
「女神教が、我々の声を封殺し、実行者がその命を奪う。そういう仕組みなのです。ならば女神教自体を倒さねば第二第三のこいつらが現れるだけだ」
お爺さんの言葉は強くて、そしてなんだか寂しそうだった。
お爺さんは、秘密裏に仲間を集める旅に出るそうだ。 対女神教を掲げ、世界を回る過酷な旅になる。
「リアリス、わかんないよ。お爺さんが正しいの? 女神教には孤児たちがいて、平和そうだった。それも嘘なの?」
僕はリアリスに問い正す。
「アシュちゃんはそれでいい。孤児院はきっと良いことをしてる。でも、異種族狩りは悪い、そしてその2つは同時に存在する」
リアリスは優しく諭した。
「もし、お爺さんの組織が異種族狩りをやめさせるために、孤児たちを攻撃する。でもそれは良いこと? 悪いこと?」
僕は、さらに質問する。
「んー、悪いと思う、けどわかんないかな。善悪ってのは相対的なんだ。絶対良いことも絶対悪い事もない」
「じゃあ、何を信じればいいの?」
僕は難しくて、頭がパンクしそうだったんだ。
「別に陣営ごと信じなくていいんじゃない?」
「え?」
「孤児を助けたなら、それは良いこと。異種族を殺したなら、それは悪いこと。女神教だから、お爺さん側だからって、全部まとめて決めなくていい」
「……一個ずつ考える」
「そうそう。そこは面倒だけど楽しちゃいけない部分なんだ」
リアリスの言葉が染みる。
そうか、楽せず考え続ける。
それが全部正しいって信じるのではなくて、ちゃんと考える。それが大切なんだ。
「リアリス、洗剤とかありませんの、全然汚れ落ちませんわー」
テールが、悲鳴を上げる。
「拙者、もう忘れられてるでござる!?」