噴煙をあげている
比叡改二
高千穂
新高
やがて、前方にラバウル鎮守府が見えてきた―。
帰還ゲートに入り、艤装をはずし、岸壁に上がる
比叡改二
高千穂
新高
「おっかえりぃ〜☆」
「おかえり、比叡。」
と
比叡改二
高千穂
新高
を出迎える
白露改二
と
時雨改二。
「出戻りだけど…また厄介になるよ★」
と言う比叡改二。
「えっと…どちらさまで…?」
と、高千穂と新高を見た白露改二が訊く。
「ラバウル鎮守府配属となりました、装甲巡洋艦高千穂です!!」
「同じく、防空巡洋艦新高です。」
と自己紹介する高千穂と新高。
「えっ?
装甲巡洋艦?
それって、廃止されたはずの艦種なんじゃ?」
と、首をかしげる時雨改二。
「とりあえず、提督に着任の挨拶に行ってくるよ。」
と言う比叡改二。
「案内は…いらないね★」
と言う時雨改二。
「ところで、今の提督は?」
と比叡改二が聞くと、白露改二と時雨改二の表情が曇った。
「
と、声を絞り出す時雨改二。
それを聞いて、比叡改二の表情も曇った。
角田中将は
評判の良くない提督
として有名な人物だからだ…。
角田の執務室に行く途中
「あの…角田提督をご存知なのですか?」
と、高千穂が訊いてきた。
「砲術出身
で、航空戦にも明るい提督だよ。」
と言う比叡改二。
「素晴らしい方じゃないですか☆」
と喜ぶ高千穂に
「たしかに、ウチらみたいな砲撃戦を得意とする
砲撃があまり得意じゃない駆逐艦の
と言う比叡改二。
「気のせいか、なんだか、雰囲気が暗いね?」
と言う新高。
「どうやら…ちょっとした
ブラック鎮守府
になっちゃったみたいだね…。」
と嘆く比叡改二…。
やがて、角田の執務室の前に来た。
執務室のドアをノックし
「戦艦比叡以下2名、入ります!!」
と比叡が言うと、中から
「入れ。」
と、野太い声がした。
ドアを開けて執務室に入る。
執務机には、白い第二種軍装を着た、屈強な体つきの角田中将が座っており、左隣には、角田の前任者であった阿部少将の秘書艦だった妙高が、引き続き、角田の秘書艦となっていた。
「本日付けでラバウル鎮守府に配属となりました
戦艦比叡
装甲巡洋艦高千穂
防空巡洋艦新高
着任いたしました!!」
と、角田に敬礼する
比叡改二
高千穂
新高
「よく来てくれた…。」
と、立ち上がって返礼する角田。
立ち上がった角田の姿は、まさに屈強の海軍軍人だが、身長が170センチほどと、比叡改二や高千穂とあまり変わらない。
むしろ、屈強な体つきゆえ、見た目より背が低く感じられる。
「今晩、歓迎会をする。
それまで、宿舎でゆっくり休め。」
と言う角田。
その時、執務机の電話が鳴った。
「はい、こちら執務室…。」
と、電話に出る妙高改二。
「どうした?」
と訊く角田に
「作戦参謀の
と答える妙高改二。
「おぅ、通してくれ。」
と言う角田。
数分後
「作戦本部の神です。」
と、執務室のドアがノックされた。
「入れ。」
と角田が言うと、執務室のドアを開けて神が入ってきた。
髪を七三分けにした、鼻の下にチョビ髭をはやした、角田よりも背が低い男だった。
それにしても、1月とはいえ、赤道付近のラバウル*1に黒い第一種軍装を着て来て、暑くないのだろうかと思う比叡。
日本は冬なので第一種軍装を着るのは当然として、ここに来るまで着替えていないということは、おそらく、ラバウルがどこなのか、知らなかったのだろう…。
「提督、こちらの方は?」
と訊く比叡改二に
「作戦本部の神大佐だ。
お前達と同じく、本日付けで当鎮守府の作戦参謀に着任した男だ。」
と、比叡達に神を紹介する角田。
「作戦本部の神だ。」
と自己紹介する神。
「戦艦比叡です!!」
「装甲巡洋艦高千穂です!!」
「防空巡洋艦新高です。」
と、神に敬礼する比叡改二達。
「高千穂?
あぁ、君が、あの噂の超甲巡か⋯☆」
と、目を細める神。
「私を存じているのですか?」
と訊く高千穂に
「もちろんだ。
作戦本部でも、君のことは噂になっていたからね。」
と言う神。
「光栄です☆」
と喜ぶ高千穂。
「角田提督。
現在の戦況について教えていただけませんか?」
と言う比叡改二。
「うむ。
去年の
第三次ソロモン海戦
での、お前達の奮戦のおかげで、
あの日以降、
西太平洋に戦場を移した
ようなのだ。」
と言う角田。
「そんな…!?
じゃ、もう、このラバウル鎮守府は意味無いんじゃ…?」
と言う比叡改二に
「そんなことはありません。
深海棲艦が西太平洋に移動したことでパラオやフィリピン、サイパン、
深海棲艦への包囲網を形成
したのです。」
と言う神。
「な…なるほど…☆」
と、壁に掲げられている地図を見る。
「じゃ、私や高千穂がラバウルに配属されたのは…。」
と言う比叡改二に
「主力はパラオに移動させましたが、パラオにのみ戦力を集中させてしまうと、周辺基地との戦力のバランスが悪くなります。
それだと、包囲網の意味が薄れるため、戦力が分散するのは覚悟の上で、比叡と高千穂には、ここラバウルに来てもらいました。」
と言う神。
(左遷じゃなかったんだ…☆)
と、ラバウル鎮守府に配属された理由に納得する比叡改二―。
・
夕方から、宿舎の食堂で
比叡改二
高千穂
新高
の歓迎会が行われた。
歓迎会には角田と神、そして
重巡洋艦
羽黒改二
軽巡洋艦
川内改二
阿賀野
夕張改二
駆逐艦
白露改二
時雨改二
五月雨改二
長波改二
初風改
天霧改二
若月*2
夕凪
が参加した。
角田の秘書艦の妙高改二は、角田の執務室で留守をしている―。
宴もたけなわとなったところで、神が
「ところで、みなさんにお報せしたいことがあります。」
と言いだした。
「何ですか、大佐?」
と訊く比叡改二。
「当鎮守府は
高千穂に旗艦を命じる
ことといたします。」
と宣言する神。
「飲みすぎですよ、大佐☆」
と、神が酔っぱらって冗談を言っていると思った比叡改二。
「いや。
私は酔ってはいませんよ。
高千穂は本来、野戦部隊の旗艦として誕生した
んです。」
と言う神。
「は?
何それ?
戦艦である私が巡洋艦の命令を聞けっていうの…!?」
と抗議する比叡改二に
「あなたは
高千穂は旗艦になるために生まれた
と言った、私の話を聞いていなかったのですか?」
と言う神。
「高千穂…?」
と、高千穂の方に顔を向ける比叡改二。
「はい。
軍令部からも、ラバウル鎮守府の旗艦に就任するよう命令されています。」
という高千穂の発言を聞いて、愕然とする比叡改二…。
「ごめん⋯。
ちょっと…飲みすぎたみたい…。
外の風に当たってくるわ…。」
と、宿舎の食堂から出ていく比叡改二。
「比叡さ—」
と、比叡改二を追いかけようとした高千穂を止める新高。
「新高、どうして…!?」
と訊く高千穂に
「今は1人にしてあげて…。」
と言う新高。
◇
外に出たものの、風は無く、蒸し暑いだけだった。
(何で…
何でこうなるのよ…!!)
と、ふさぎこむ比叡改二…。
思えば、昨年11月のガ島砲撃失敗からこっち、不運まみれだ。
砲撃に失敗しただけでなく、待ち伏せていた深海棲艦との戦闘で妹の霧島改二ともども大破し、霧島改二は退役を余儀なくされた。
そして、西太平洋に進出した深海棲艦を包囲するためとはいえ、姉の金剛改二と妹の榛名改二と離ればなれになった。
挙句、格下の新参者の配下にされた…。
戦艦が巡洋艦の下につくなど屈辱かつ前代未聞だ。
もし、ここに金剛改二と榛名改二がいたら猛反対しただろう。
そもそも、あの神という作戦参謀とやらは何者なのか?
作戦参謀と名乗る以上、戦闘のエキスパートなのだろうが、戦艦を巡洋艦の下につけるあたり
艦娘を戦いの道具としか見ていない
のだろうと思う比叡改二だった…。
◇
角田の秘書艦の妙高改二は、哨戒機からの通信に対応のため、歓迎会に参加するわけにもいかず、角田の執務室で留守をしていた。
(!?)
通信機のブザーが鳴った。
哨戒機からの緊急電だ。
急いで通信機の椅子に座り、レシーバーを耳にあてる。
(
妙高改二は内線電話で角田を呼んだ―。