♢♢月☆☆日
今日はエルちゃんがよちよち歩きが出来るようになった記念の靴、所謂ファーストシューズを買いに靴屋に来ていた。早速エルちゃんに色々な靴を見せてはみたものの、どれもお気に召さない様だ。途中ツバサ君が自信満々でやたら豪華そうな靴を見せていたがそれもダメだった。ってかツバサ君、その靴絶対予算オーバーで買えないぞ。この店の全ての靴を見せ終わったが、エルちゃんは全部気に入らなかったようだ。流石お姫様、そこら辺の靴ではお気に召さないよな…
別の店に行こうとした時、エルちゃんはレジにいるお婆さんが持つ靴が気に入ったらしく、「アレが欲しい!」と言わんばかりに手を伸ばしていた。「あの靴は人の物ですよ?」とツバサ君が言うがエルちゃんは諦めきれない様だ。するとお婆さんがエルちゃんの声に気づいてこちらに来た。
お婆さんは持っていた靴をこちらに譲ろうとしたが、俺は丁重にお断りさせてもらった。確かこのお婆さんにはエルちゃん同様よちよち歩きが出来るようになったお孫さんがおり、息子夫婦と一緒に海外に行く事になっている。だから会えなくなる前にお孫さんに渡す為の靴を買いに来たのだが、息子さんとお孫さんに会えば自分は間違いなく泣いてしまい、それで息子さん達も悲しんでしまう…だからお婆さんは息子一家に会わないと決めた…そんな話が原作にもあったから俺は知っている。俺にとって結構印象的な話だったから覚えている。原作ではソラとましろの助力や後押しもあってお婆さんは無事お孫さんにファーストシューズを渡す事が出来た訳だが、これはアニメではなく現実だ。それに俺はよっぽどの出来事でなければ原作通りに事を進めるつもりはない。
「お婆さんにどんな事情があるかはわかりません。でもこれだけはわかります。その靴はあなたが渡すべき相手にちゃんと渡すべきです。でなければ絶対に後悔しますよ」
「それは…」
「やらない後悔よりやって後悔、ですよ」
「…そうやな。ありがとうな、お嬢ちゃん」
それからお婆さんはレジで会計を済ませ、店を後にした。俺達も次の店に行く為に外へ出た訳だが、案の定エルちゃんは大号泣していた。よっぽどのあの靴が気に入ってたんだな。
「悪かったなエルちゃん…でも大丈夫。あの靴と同じ物をお姉ちゃん達が見つけてやるから。な?」
「え、えるぅ…」
俺がそう説得するとエルちゃんはまだ涙目になっているものの、何とか泣き止んでくれた。それから何件か回ってようやく同じ靴を見つけ、エルちゃんにプレゼントすることが出来た。家に帰ると玄関でヨヨさんが立っており、俺達に見せたいものがあると部屋に案内された。部屋に入るとそこにあったのは大きなトンネルであった。そう、つまりスカイランドに戻れるようになったわけだ。しかし、それは同時に俺達が一緒に暮らせなくなる事を意味している。それにヨヨさんもましろはスカイランドで暮らせないと言っていたし、この世界はスカイランドとは違う。子供はキチンと学校に通わないといけないからな。まぁヨヨさんの計らいで明日の夕方まで時間を貰った訳だが、それでもましろは寂しいと感じている事だろう。
それからあげはさんも呼んで御馳走をたらふく食べ、今日はましろとあげはさんと同じ部屋で寝ていたが、あげはさんのいびきがうるさく、とてもじゃないが眠れなかった。鼻をつまんでやろうかなと思ったがましろに止められてしまった。するとましろから外の空気を吸いに行かないかと提案されたので一緒に外に出る事にしたが、その前にあげはさんにコッソリ置手紙を置いておいた。置手紙には「お気遣い感謝します」と書いておいた。寝たフリだってのは俺にはバレてますからね、あげはさん。
「…ましろ、やっぱ寂しいんだよな?」
「そ、それは…うん、寂しいよ。凄く寂しい…ソラちゃんは?」
「まぁ、寂しくないって言えば噓になるな。でも、離れ離れになってもお前に何かあればすぐに駆け付ける。なんたって俺、ヒーロー目指してんだからな」
「…フフッ、私はとっくにソラちゃんの事をヒーローだって思ってたよ」
「そうか?…ありがとな、ましろ」
ヒーローだと思ってたか…正直俺はまだ未熟だと思うが、素直に喜んでおこう。
「ましろ。明日は夕方まで時間あるしさ、一緒に遊びに行かないか?」
「えっ!?…ソ、ソラちゃんとお出かけ…?」
「ああ。明日が一緒に居られる最後に日だからな…急に言われて困っちまったか?」
「そ、そんな事ないよ!?…うん!明日が楽しみだよ!」
「じゃあ決まりだな」
それからしばらく俺はましろと雑談し、部屋に戻ったのだった。
☆☆月♢♢日
昨日約束した通り、俺とましろは一緒に遊びに出かけた。まず最初にプリティホリックに行って、予想通り俺はましろにメイクされてしまった。俺もお返ししてやりたいが、俺はメイクのやり方とかてんでわかんないからな。下手なことしてましろの可愛い顔を台無しにしたくないので甘んじてメイクされることにした。う~ん…やっぱ俺って結構可愛いよな…いやいや!俺の精神は男だ!メイクなんかで絶対にメス堕ちするもんかよ!
次に向かったのは服を買いに来た時に訪れたショッピングモールだ。ショッピングモールには行ってみたい場所があったのでましろに頼んで一緒に来てもらった。行ってみたかった場所とはゲームセンターだ。ましろは一瞬驚いていたが「確かにソラちゃんが好きそうな場所だね!」と微笑んでいた。ゲームセンターでは協力してゾンビを打ち倒していくゲームをしたり、クレーンゲームでましろが好きそうなぬいぐるみを取ってプレゼントしたりした。それから買い物をしたりしてショッピングモールを出たらもう夕暮れ時になっていた。
「もうこんな時間か…時間が経つのはあっという間だな」
「そうだね…あれ?」
ふと見てみると、ましろの眼から溢れんばかりの涙が流れていた。
「私、どうして…っ?」
別れの時が近づいてきた事を思い出したのか、ましろの涙が止まる事はなかった。こういった時の慰め方がわからず、俺はどうしようか迷ってしまう。考えた末に俺が取った行動は、ましろを優しく抱きしめる事だった。正直これしか思い浮かばなかったもん。
「ソラ…ちゃん?」
「悪い…これしか浮かばなかったんだ…大丈夫。どんなに離れたって、絶対に俺はましろのとこに遊びに行く。ましろだって、寂しくなったら俺ん家に遊びに来ても良い。待ってるからな」
「…うん…うん…っ!」
それからましろはしばらくの間、俺の胸の中で泣き続けた。泣き続けてスッキリしたのか、ましろの顔に笑顔が戻った。「汚しちゃってごめんね」と俺の服を見ながらましろが謝ったが、服が汚れたくらいで起こるほど俺は短気ではない。「ましろの涙は汚れてもないし汚くもない。綺麗な涙だよ」と言ったらましろは何故か顔を赤くしていた。
それから俺はましろ、エルちゃん、ツバサ君と一緒にトンネルを通ってスカイランドに帰ってきた。ましろはスカイランドを観光したいらしく、学校の日までスカイランドで過ごすようだ。ちなみにトンネルの先はスカイランドのお城に繋がっており、トンネルが王様の頭上に開いていたので、俺達は王様を下敷きにして落っこちてしまった。一瞬不敬罪になるんじゃないかと思ったが、エルちゃんの声を聞いた王様と王妃様はすぐさまエルちゃんの側に駆け寄った。エルちゃんが帰ってきた事を国民達に伝え終えた王様達に俺達ソラシド市での出来事を話した。王様はこの一件を引き継いで、俺達にそれぞれの生活に戻る様にと伝えるが、それで俺が引き下がると思ったら大間違いだ。それはましろとツバサ君も同じようだ。
「アンダーグ帝国がどんなに強大だろうが関係ありません。皆の平穏を壊したりする奴はぶちのめすし、助けを求めてる人には手を差し伸べる…それが俺の目指すヒーローです!」
「…ヒーロー、か」
後ろから聞こえたので振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。女性はエルちゃんと王様達の元へ行く。俺は…俺はこの人を知っている。
間違えようがない…シャララさんだ。
「大きくなったな、ソラ」
「はい…お久しぶりです、シャララさん」
「久しぶりか…あれから10年になるんだな」
「そうですね…また会えて嬉しいです」
「ああ…私もだ」
俺とシャララさんの会話を聞いていたましろはシャララさんが俺のヒーローだと気づいたようだ。それから王様が俺達に褒美をやろうと言ってきた。真っ先にツバサ君がエルちゃんのナイトとして側にお仕えしたいと申し出て、王様もそれを承諾した。多分王様は子守りとしてエルちゃんの側にいる事を許したんだと思う。ちなみにましろは褒美を受け取らないと言っていた。ましろ曰く「エルちゃんがお家に帰れた…それだけで私は嬉しいです」だそうだ。俺の方だが、正直俺も褒美はいらない。確か原作だとその褒美として青の護衛隊にソラが入隊するんだよな…前にも日記に書いたが、俺は青の護衛隊に入隊するつもりはない。
…あっ、良い事思いついた。
俺が欲した褒美は、青の護衛隊との訓練だ。青の護衛隊と言えばスカイランドでも有名なチームだ。強い奴もゴロゴロ居る事だろう。特訓には持ってこいだ。
王様とシャララさんも異論がないらしく、すぐに俺の願いを聞き入れてくれた。早速明日から訓練に参加しても良いようだ。やったぜ!