提督が退役しました。これより年金生活に入ります   作:デモステネス

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第23話 Trick or treat(6)

 そういえば日本海軍にはロシア化された駆逐艦がいたのだった。すっかり騙された。それでも私は、最後まで日本人かロシア人か決めかねていたが。半ば憮然、半ば安堵した気分だ。会合地点は、僅か35NM先。港湾棲姫は指定された周波数に合わせた。

 

「コチラ ヒメカミ。かもです オウトウ セヨ。」

「こちら カモデス。お待ちしていた。会合地点、北緯43度丁度、東経151度丁度に来られたし。なお、カモデスの会合地点到着は2時間後を予定。」

「コチラ ヒメカミ。ホクイ43ド チョウド、トウケイ151ド チョウド、ダナ。」

 港湾棲姫は時計を見た。「コチラノ トウチャクハ 2ジカンゴヲ ヨテイ。」

「カモデスは、目一杯賑やかにしているのですぐ分かるはずだ。お目にかかるのを楽しみにしている。」

 

 

「カモデス、ってひどいかも。」

「わかりやすくていいじゃないか。それにカモカモは、秋津洲が先だったんだ。」

「高波ちゃん」 吹雪は高波の向かい合うと両肩に手を置いた。

「司令官のネーミングセンスって、大体どうしようもないの。指揮する時は大淀さんが翻訳し直していたからみんな知らないけど。」

「どうしようもないって、厳しすぎるんじゃないですかねえ、パンツさん。」

「パンツさん?」

「白雪ちゃんが姫で、深雪ちゃんがみゆ吉に比べてひどいと思わない。初雪ちゃんのこたつむりはそうだと思うけれど。」

「あははは」力なく笑う高波であった。

「綾波ちゃんたちなんてね、お薬船隊よ、お薬船隊。アヤナミンエースとか。」

「イソナミンEとか、シキナミンSとか、いかにも効きそうだろう。高波もお薬船隊に入るか。タカナミンTなんてどうだい。」

「怪しい健康食品のお茶みたいなので嫌です。」

「「高波がきっぱり断った!」」柳と吹雪がハモる。

「そこ、驚くところなのかもです?」

「テートク、テートク」

「なに、妖精さん」

「マイクのスイッチ、はいったまま」

「あーっ!」

 

 

 と、人類側がトリオ漫才やっている一方、深海棲艦サイド。

 

「ふざけた奴らだとは思っていたけれど、ただのふざけた奴らじゃなかったわね。」

 

 会合地点まであと16NM。重巡リ級の水上レーダーが停船中の高波を捕えた。同時に高波が発信しているレーダー波を逆探知。性能からいって高波がまだ深海棲艦艦隊を捕えていないのは確実で、その気なら主砲の射程と電探の性能差で一方的に叩き潰せる。

「本当に駆逐艦一隻なんて。とびっきりの大馬鹿ね。ほっぽのことがなければ海の藻屑にして終わりだけれど。」

「どんな間抜けづらをしているか、見に行くのも一興じゃない、飛行場姫。」

「そうね。消し炭にするにしても、先にきちんと説明してあげるのが親切というものよね。」

「親切、じゃあないわ。」港湾棲姫は、笑顔で否定した。

「義務よ。アカウンタビリティー。責任ある者には義務が伴うのよ。どんな愚か者にでも理解できるよう、わかりやすく説明しなければならないわ。」

「選択肢も用意してあげなくちゃね。昼戦で航空攻撃の的になるのがいいのか、夜戦で電探射撃の的になるのがいいのか、選ばせてあげましょう。」

「大切なことよね。人生、自由意思で生きるということは。」大きく頷く港湾棲姫。

「ウフフフフ」

「アハハハハ」

 

 含み笑いする港湾棲姫と高笑いする飛行場姫にヲ級Bが紅茶を差し出した。

「最後の一杯になります。よく味わってお飲みください。」

「最後?まだ茶葉は残ってたはずじゃ」

「固形燃料がなくなりました。」残念そうにヲ級Bは首を振った。「どうしても、ということであれば燃料か砲弾から火薬を抜いてお湯を沸かしますが。」

 冗談ではない。そんな油や硝煙臭い紅茶など飲めるか。

「湯沸かしくらい実艦にあるだろう。」

「規格が合いません、残念ながら。」ヲ級A。「英国風に入れてもよいですが、ポットが小さすぎて一度に二人分しか入れられません。もっとも茶葉も残り僅かですが。」

「ペチェーニエです。これが最後です。」とロ級A。

「あー、もう、わかったわかった。」

 

 自分たちを見つめる部下たちに港湾棲姫は慌てて否定した。「北方棲姫を取り返していないのにそんなマネできるわけないだろう。さっきのは戯れだ。なあ、飛行場姫。」

「そう、取り返すまではちゃんと生かしておいてあげるわ。」

 

 なおも無言で自分たちを見つめる部下を前に二人の姫は心の中で溜息をついた。深海棲艦の長として、それにつけても人類は滅ぼさなければならない、と言うのは義務である。北方棲姫がさらわれた今回のような場合は特に。しかし、今回の相手が妙な奴らで、何か憎めないとは感じていたが、まさか怨念に取りつかれて戦うことしか頭にないはずの部下たちまでそうであったとは。どうにも今回の件はやりづらい。

 

 

 賑やかしとはいっていたが、と深海棲艦たちは呆れた。海の真っただ中、見えるものは海と星しかないわけだが、針路方向の空が明るいな、とは思っていたら相手が電灯艦飾していたのだった。いったいクリスマスか独立記念日と勘違いしていやしないか。そして流星を放っていた。どういう理屈かわからないが、砲弾の速度をはるかに超えた信号弾が音もなく次々と海から空に向かって放たれている。

 

 会合のために速度を落とし近づいていくと、妙な音が聞こえるのがわかった。ヲ級Aがそれが何かを聞きとって顔をほころばせる。

「Highland Laddie,Scotland The Brave,The Black Bearを繰り返し流しています、姫様。」

「我々は、悪魔の旅団じゃないんだが」

 思わず苦笑いする港湾棲姫。どうなったらこういう歓迎方法を思いつくのだ。

「発光信号あり。”シンカイセイカンハ ホンカンニ ジョウカン サレタシ”」

「了解、と送れ。さてさて、どんな奴なのか、顔を拝みに行くぞ」

 

 降ろされていたラッタルを上がると艦娘が一人に妖精さんが4人、出迎えており一斉に敬礼した。

「駆逐艦、吹雪です。お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」

 

 ゲストキャプテンか何かの扱いにいささかの戸惑いを覚えながらも士官室に案内される。主砲は仰角がかけてあり、非戦闘状態をアッピールしている。習慣でマストを見上げれば将旗が掲げられており、無電で話していたのは将官で自ら出張ってきたらしい。艦娘の提督といえば安全な後方の安楽椅子に座って艦娘を指揮するものなのに物珍しい奴がいたものだ。

 

 

「こうやって直にお会いするのは初めてだね。私は、柳佐理。龍驤たちの提督だった男だ。過去形なことに注意されたい。以後、お見知りおきを。

 まあ立ち話もなんだ、どうぞ掛けてくれたまえ。本来なら艦長室にご案内するところだが、生憎駆逐艦の艦長室は狭くてね。これだけの人数は入らないんだ。」と丁寧に椅子を勧める。

「吹雪。お茶を皆さんに。」

「はい、司令官。」

「ところでお菓子はいかがだったろうか。あれはうちのベールヌイお手製でね。本人は自信満々だったが、諸君らの評価も大層気にしていてね。」

「ウマカッタ。」

 港湾棲姫が短く答えると柳は相好を崩した。「それは良かった。ベールヌイも喜ぶだろう。身贔屓に聞こえるかもしれないが、うちのベールヌイは女子力が高くてね。ロシア料理が得意なんだ。なにしろ実艦時代は、日本にいるよりソ連にいた方が長かったからね。和食は月並みだが、洋食はなかなかなものなのだよ。最もソヴィエトだから高級料理は無理だがね。

 ああ、ありがとう。」

 吹雪と高波が紅茶を配り始めた。柳は、深海棲艦にお茶を勧め、毒など入れていないことを示すために最初に口にした。

「私は紅茶がないと生きていけなくてね。たぶん、私を司法解剖したら内臓がタンニンでなめされているのがわかるに違いない。」

 我ながら古い表現だが深海棲艦に通じるかな。そう思って眺めると二人、僅かに表情を崩したのがいた。結構。

 これが生まれも血筋も由緒正しい提督の正式な会見なら喫茶中に仕事の話をするのはマナー違反なのだが、柳は庶民で退役しているし、相手は人間ではない。早々に話を進めることにした。

 

「さて、本題に入る前にいくつか説明をしておきたい。その方が諸君らの疑念も省けると思うのでね。

 まず、北方棲姫だが、一足先に我が家にお招きしている。守役は、航空巡洋艦の最上だ。昼ご飯は無難にお子様ランチで、デザートにはフルーツポンチとバンドケーキ。晩ご飯は、ちらし寿司。デザートは、フルーツパフェにバウムクーヘンだ。気にいってくれると良いのだがね。

 次にこの海域だが、今日からあさってまで。私の大地寮が半径100NMを機動部隊の演習海域に指定してある。他の鎮守府の艦隊は、入ってこない。

 そちらは、近々洋上補給を予定されていると思うが、邪魔は入らないので安心して補給してほしい。なお、アリバイ作りに軽空母龍驤、軽巡龍田、駆逐艦朝霜、谷風、照月とこの高波の6隻が実際に演習する。演習なのでそちらを攻撃する意思はない。どうかそちらも攻撃しないでいただきたい。

 三点目だが、この艦を臨検していただきたい。」

「リンケン、ダト?」

「そう。これから諸君らを我が大地寮にご案内するが、さすがに諸君らの艦隊をそのまま随伴という訳にもいかないからね。この高波に移乗していただく。

 ご案内するのは港湾棲姫と飛行場姫のお二人だ。他の深海棲艦の諸君は、人語を解さないか、話せないと聞いているのでね。

 しかし諸君らもいきなりはいそうですか、という気にはなれないだろう。だから納得のいくまでこの艦を臨検していただきたい。

「ホッポヲ サラッテ コンドハ ワレラカ、ニンゲン。」飛行場姫は嘲笑った。「イササカ ゴウマンガ スギル ノデハ ナイカ。」

「そう見えるだろうねえ。」柳は溜息をついた。「では、私が人質に残るということでいかがかな。」

「ナニッ?」

「ホストが人質とは本末転倒だが、客人の要望なら致し方あるまい。」

「フハハハハ、キニイッタ、キニイッタゾ、ニンゲン。」港湾棲姫が愉快気に笑う。「シカシ、ノコルノハ オマエ デハナイ。カンムスヲ オイテイケ。」

 柳は肩をすぼめた。「すまんな、吹雪」

「携行糧食を一週間分持っていきます。調理セットと。」

「増加食も持って行きたまえ。

 さて、この艦に乗っているのは人間が私、艦娘がそこの吹雪と高波の二人。後は艦付きの妖精さんだ。どうぞ気の済むまで臨検していただきたい。

 吹雪、高波。客人の要求にはすべて応えて差し上げるように。艦の破壊、安全な航行を妨げること、実行不可能なことでもない限り全部だ。」

「はい、司令官。」

 

 港湾棲姫と飛行場姫は目配せを交わし、デハ ワタシガ リンケンシテヤロウ。ミナ、ツイテコイ、と飛行場姫が立ち上がる。そして士官室には柳と港湾棲姫が残った。

 

 

「ナニヲ カンガエテイル、ニンゲン」

「夢を叶えているだけだよ、マイレディ」

「ユメ、ダト?」

「そう。退役したら何をしよう、と現役時代から温めていた夢だ。」

「オマエハ ナニヲ ユメミテ イタノダ?」

「なに、極めて俗物的な夢だよ。一端の男たる者、名士と交わりたい。」

 困惑する港湾棲姫に微笑んで柳は続けた。「しかし、味方を集めて宴会するのなら大なり小なり誰でもやることではないかな。真の大丈夫たる者、敵をも遇する度量を持つものだ。アレクサンドロス大王然り、魏の太祖然り。」

「オマエハ ナニヲ イッテイル?」

「では言い方を変えよう。

 

 深海棲艦とは何か。そんなことを明らかにするのは無理だ。人間の能力を超えている!

 しかし、考えることはできる。深海棲艦とは何なのか。提督になる前からずっと、私は考えてきた。

 

 戦いはおぞましい。敗北はおぞましい。営々と積み重ねてきた訓練を何一つ役立てることなく航空機に追い回され、爆撃され、機銃掃射され、魚雷を打ち込まれる。闇夜で、霧の中で奇襲され、相手をみることもなく電探射撃の的になる。潜水艦に沈められる味方の船を見て歯噛みするが、兵器も訓練も戦術も何もかもがない。

 為す術もなく、ただ敵にやられるために生まれてきたのか。みじめでみじめでたまらないし、死んでも死にきれない。

 

 戦いはおぞましい。勝利はおぞましい。最上の勝利とは、手も足も出ない敵を機械的に始末していく作業に他ならないからだ。奇襲が決まれば胸も踊ろう。膠着からの突破が成功すれば戦術戦略の誉れだろう。しかし、髭剃りで髯を剃る様な作業が最高だって?冗談じゃない。そしてその髯は生きているのだ。意思ある者を物品扱いして無感覚なんて、いったいどこの唯物主義者かね。強制収容所行きの順番を押しつけあう社会がどれだけもった?それを最高とするなんて、あまりにひどい話じゃないか。

 

 そして戦いの深淵を見てしまった者はどうするのだろう。戦いを続けるうちに主だった敵をすべて打ち倒してしまい、残るは新造とは名ばかりの粗製乱造品。動かすのは卵の殻もそのままの新兵を載せて体裁を整えただけの烏合の衆。

 己の全力を振るわなければ打ち倒せない者がもはや味方しかいなくなってしまった時、戦いの深淵を覗いた者はどう思うのだろう。

 己を鍛えあげ、好敵手と相対する。賭け金は己が命。その命のやり取りの輝きと興奮を知る者がもはやその場がないと知った時、一体何を思うのだろう。

 

 

 私は、そのために鎮守府を運営した。艦娘を建造し、艦娘を教育し、艦娘を練成し、艦隊を編成し、艦隊を運用し、艦隊を指揮した。戦いの深淵を知ることもない馬鹿者ども、攻勢限界も知らずただただ前進させることしか知らない猪、戦艦空母の撃沈しか興味のない点取り虫、艦娘の撃沈艦で出世街道を舗装したがる出世亡者は、戦場から退去させた。

 深海棲艦の姫よ。あなたに問おう。

 私が率いた佐世保第八鎮守府の艦娘はどうだったかね。馬鹿どもに率いられて、息も絶え絶えの、ラッキーヒットにすべてを賭ける艦娘と私の艦娘と、どちらが戦って楽しかったかね?」

 

「ヤナギ、ト イッタナ」暫しの沈黙の後、港湾棲姫は口を開いた。「オモシロイ オトコダ。」

「ありがとう。その言葉を聞くために、私は、こうしてここにやってきた。」

「コシャクナ ニンゲント バカリ オモッテイタガ、ニンシキヲ アラタメヨウ。」

「感謝の極み。では、私の招待を受けていただけるだろうか。

 なんともひどいやりかたであったことは認めるが、あなたがたは招待状を送って招く相手ではなかった。」

「ユルス。セイゼイ ワレラヲ モテナスコトダ。」

「御意。 では、お茶をもう一杯いかがかな、マイレディ。」

 

   *   *   *

 

「それでは、艦橋からまいりましょう。 じゅんけーん!」

 

 バスガイドが観光客を案内するが如く深海棲艦の先頭に立って歩く吹雪。その横に縮こまった高波。

「こちらは艦長室です。姫様用にお使いください。なにぶん駆逐艦でこれ以上良い部屋はないのでご容赦を。」

 飛行場姫が中に入って机の引き出しを開けたが、特にこれといったものはない。ロッカーを開けると巫女服と髪飾りが入っていた。

「コレハ ナンダ」

「変装用です。上陸の際にお召し替えください。誰もが扶桑型としか思いません。私としては、乗艦中にお願いしたいところですけれど。」

「ナゼダ」

「無礼を承知の上で申しますが、姫様は、いささか煽情的すぎるのですよ。上司が鼻の下を伸ばすのを誤魔化す姿、というのは部下としては見たくないんです。」

「クックック。ヨカロウ。」

「ありがとうございます。」

 

 一旦廊室に出ると予備室の扉を開ける。「訓練航海中だったので特に何も積んでいません。では上にまいります」

 操舵室の扉を開くと二人の妖精さんがこちらを向いて敬礼した。「殿様ワッチ中です。漂泊中なのでホントに気楽ですね。次」

 暗号室も電信室も電話室も全部電源を切ってあることを確認させた。「識別信号だけは発信していますが、これ切っちゃうと捜索が来ますのでご了承ください。」

 

 戦闘艦橋は全くの無人で、ついに飛行場姫が呆れかえった。「ブヨウジン ニモ ホドガアル。」

「えっ?」吹雪は本当に驚いた。「外洋でこんなに安心していられるって、初めてなんですけど。」

「アンシン ダト?」飛行場姫はまじまじと吹雪をみつめた。「カンムス、オマエハ、ワレラガ オソロシク ナイノカ?」

「本艦は、両姫殿下直率の親衛機動部隊ですよ。これくらい深海棲艦の攻撃から安全な状態って、考えられないです。」

「ソウイウ カンガエカタモ アルカ。」

 感心しながらも訝っていた。この艦娘は全く自分を怖れていない。

「モシ、ワレラガ コノ カンヲ コウゲキシタラ?」

「年貢の納め時と思って諦めるしかないですねー。馬鹿な司令官につきあっていればそういう最期もありでしょう。つける薬ないバカですから、うちの司令官。」

 

 人質云々の会話で深い信頼関係で結ばれているものだと思えば、敵の眼前で馬鹿呼ばわり。飛行場姫の疑念はますます深まった。確かこの艦娘は、提督が着任する際につけられる駆逐艦娘五人のうちの一人であったはずだ。

「オマエハ ショキカン ダナ」

「はい、吹雪です。」

「クチノ ワルイ カンムス デハ ナイナ。」

 うわあ、姫にまで伝わってるよ叢雲ちゃんの評判。吹雪は苦笑いした。

「それは私の4番目の妹です。」

「ナラバ ナゼ テイトクノ ワルグチヲ イウ」

「悪口じゃなくて事実ですから。うちの司令官が海軍一のバカなのは。」

 ベテランの艦娘なら誰でも知っている、と言おうとして相手が深海棲艦なのを思い出した。「海軍最年長の大佐で最年長の少将だったんですよ、うちの司令官。退役したから最年長中将にならずに済みましたけど、そうじゃなかったら最年長の三冠王になるところだったんです。

 あんな突き抜けたバカは死んでも直りません。教育係の私が保証します。」

 まじめな顔で言う吹雪にフモールを感じて思わず笑ってしまう。

「ソウカ。ソンナニ バカカ。」

「馬鹿ですねー。深海棲艦と宴会したい、って言い出すくらい。」じみじみと語って首を振る吹雪。

「さすがに現役の時は自重していたんですけど、退役したらそれもなくなって。どうせ宴会するなら姫や鬼とするんだって、少しは相手の都合考えて欲しいです、はい。

 最初はアイアンボトムサウンドの戦艦棲姫殿下とリコリス飛行場姫殿下を招く、って言っていたんですよ、うちの司令官。止めさせましたけど。」

「ナニッ」

「私たちはいいですけど戦艦棲姫殿下が気詰まりでしょうが。少しは考えてほしいですよね。」

「センカンセイキガ キヅマリ?ドウイウ コトダ。」

「どうもこうも」 吹雪は肩をすくめて両手を広げた。「沈みなさい、って言われたので、オマエガナー、って毎回返り討ちにしてましたから。それに大地寮には北上さんや雪風ちゃんはいませんけど日向さんいますし。

 リコリス殿下には、毛根がー!って帰投の度に叫んでましたけどね、司令官。」

 世辞だとは思ったが、悪い気分ではない。「オマエモ センカンセイキ ヲ シズメタノカ?」

「いやー、無理です。私が鳳翔さんの特別講座基礎課程受講したのはだいぶん後になってからですから。」

 

 飛行場姫はぎょっとして吹雪をみつめた。この艦娘は、ただの改二ではなく鳳翔の直弟子だったのか。道理で恐れ知らずなわけだ。

「リンケンハ ヒツヨウナイ。」飛行場姫は宣言した。「ソレヨリ オマエノ バカ ノコトヲ キカセロ。」

 

 鳳翔の直弟子が馬鹿呼ばわりしつつ最期を共にする信頼を寄せているのだ。ただの有能な軍人やすけこましではあるまい。くだらん小細工もしないだろう。

 

「そうですか。じゃあ本人の前でバカバカいうのもなんですから、船尾の方にまいりましょう。」

「ふぇえぇぇ」

 

 

 深海棲艦の姫と上司の悪口大会、という斜め上な展開に目の前が真っ暗になる高波であった。深海棲艦を宴会に呼ぶ司令官もおかしいですけど、吹雪さんも輪を掛けておかしいかもです。

 




 秋津洲

 秋津洲型飛行艇母艦1番艦。爆装した二式大艇で真珠湾奇襲を実現するために作られた水上機母艦。伊400型といい、一発ネタになけなしのリソース振るのが帝国海軍クオリティ。船沈めてナンボの艦これ世界では二式大艇に攻撃能力がないので、プラットホームの秋津洲は完全に置き物扱いである。「○○かも」となんでも疑問形の語尾が個性。

 砲弾の速度をはるかに超えた信号弾

 天文部の波動砲。光波測距儀の接眼部でストロボ焚いて測距儀を空に向けています。 

 悪魔の旅団

 第二次世界大戦中に編成されたアメリカ軍とカナダ軍の合同コマンド部隊、第1特殊任務部隊の異名。行軍中はバグパイパーがついた。

 殿様ワッチ

 航海当直で、8-12時、20-24時を担当。一番楽な時間帯なので殿様の名がある。

 初期艦

 艦これ世界で提督が初めて任地に赴任する際、従兵として駆逐艦娘をあてがわれる。
選べるのは
 吹雪  特I型1番艦。素直で頑張り屋さんの田舎娘。
 叢雲  特I型5番艦。ほとんどツン。稀にデレの美少女
 漣   特II型9番艦。ネット住民。
 電   特III型4番艦。思わず守ってあげたくなるお子様
 五月雨 白露型6番艦 ドジっ子
の5人。なお、叢雲選んだら元帥になってもアンタ呼ばわりされます。

 アイアンボトムサウンド

 ソロモン諸島、サボ島-フロリダ島-ガダルカナル島間の海域。史実では日米海軍の墓場となり、鉄底海峡(Iron Bottom sound)と名付けられた。
 艦これ世界では古参提督の悪夢。戦艦棲姫はそのラスボス。
 なお、一日あればジェット機も直らあ、とばかりにゲージ回復してくる飛行場姫を倒せず最終ステージまで辿りつけなかった提督が多数だったせいで、ラスボスは飛行場姫、戦艦棲姫は、ボーナス扱いみたいな?

北上

 球磨型軽巡洋艦3番艦。艦これ世界では20射線の魚雷をぶっ放して華麗に敵艦を撃沈する重雷装艦として登場し、提督たちから北神様と崇められている。

 日向

 伊勢型航空戦艦2番艦。松田千秋少将が憑依したかのような驚異の回避力と高い防空能力、強運でもって、大和型でもボコられて退却する海域をしれっと突破する。
 師匠、お願いします。
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