提督が退役しました。これより年金生活に入ります 作:デモステネス
女の子百人以上に男はたった独り。マジにハーレム生活、ひょっとしたらあーんなことやこーんなことが。
「なーんてことを考えていた時もありました。」トオイメ
「その前に百人以上の管理職だったんですけどね、自分」
「天然すぎて時と場所がわきまえられないエセ外人に毎回タックル喰らうとか」 テートクぅー!バーニング、ラーヴ!
「神重徳が艦長やってたわけでもないのに、死んでも戦いたがる巡洋艦の出撃を止めなきゃならんとか」 高が主砲と副砲と高角砲を失っただけよ!
「子供と張り合う大人気ないメッチェンの機嫌とって」 Admiral! いいのよ、もっと私を褒めても
「冷たくあしらわれるのはまだいい方で」 何か不知火に落ち度でも
「クソだの、馬鹿だの罵られたり」 こっち見んな、このクソ提督
「初対面でそれって、俺、悪くないよね。原因あるのは向こうだよね。
夜は夜とて、騒ぎたい連中の相手に引っ張り出されるし」 や・せ・ん はーやーくー やーせーん!
「仮眠取ろうとしたら、ちびっこに無茶振りされるし。」 若葉だ。24時間、眠らなくても大丈夫
「名前を名乗っただけで何でも解決するのは塾長だけですから。あんなラムケ親父に船坂弘の体と藤本喜久雄の頭脳搭載したみたいなのを基準にされても無理ですから。
なまじ悪気がないだけ性質が悪いんだよなあ。 ああ、空はあんなに青いのに」
「そんな君にいいものをあげよう」
「師匠、俺は艦娘じゃないから瑞雲は飛ばせないんだが。」
「冗談を言うくらいの余裕は残っているようだな。ほら」
”夜汽車で行くミステリーツアー discover Japan ”
激しく昭和臭の漂うクーポンと切符を日向に渡された。磁気テープじゃない切符って青春18きっぷ以外にあったのかい。
「大淀には私から言っておく。大規模攻勢前だしそれくらい大本営をあやすくらいどうということもないさ。遠征と整備と演習を適当に組んでおくから安心して羽を伸ばしてくるといい。 もっとも最低限の決裁は片付けてからだがな。」
「部下に特別休暇もらう司令官、ねえ。しかし。」
提督は姿勢を正し、敬礼した。「感謝する」
駅についたのは、発車時刻の10分前。仕事を大車輪で片した後、久々に着る平服や持ち物を選んでいたら結構時間がたってしまったのだ。それでも私用で10分前到着だから習慣とは恐ろしい。
「遅かったわね。もっと早く来ればよかったのに。」
「すまん、久々の旅行でちょっと手間取った。」
たった一人にツアコン。しかも旗もって待ってられたとは。いささか気恥ずかしさを感じながら提督は夕張の後に続いた。
「列車は0番ホーム、全席指定です。食堂車はなかなかなものだから色々試していかないと一生後悔するわよ。」
「ふーん、それは楽しみだな。」改札を通り、0番ホームに向かう。
「あれ!あれなのか!」「そう、あれがミステリー列車」
「うそぉおん!なんだよあれ、マジかよ!夕張カメラ持ってない?」
「遅れてきたのが悪いんです。あきらメロン(はぁと)」
「うわーん、俺のバカー!『夜汽車』で何か感づくべきだった!」
機関車正面中央にどでかいヘッドライト。空色のカウル。真っ赤な動輪。客車の色は濃緑色で銀色の屋根。ホームに停車していたのは、満鉄の誇る特急列車あじあ号。妖精さん工廠製作のレプリカであった。
「軌道は狭軌に直してあるのな。テンダーあるけど今の時代に石炭や給水塔は用意できないからディーゼルに機関換装しているのか。 いや待て。どうせやるならハイブリッドだよな。ひょっとして中身HDなのか?カウル被せてりゃわからんし」
発車ベルが鳴り響き、夕張に引き剥がされるまでの数分間、提督は機関車のあちこちにかぶりついていた。
「くっそ、俺氏提督一生の不覚。せめて食堂車を満喫してやる。あんまりラフな格好してこなくてよかったな。」 ありもしないネクタイを直し「よし、では参る。」
「ドーブルイニーチェ、アドミラール。レストランあじあにようこそ。」
中央に機関車のシルエット。その横に”あじあ”日付の入った四角いコースターを敷き、三角のカクテルグラスが置かれた。輝く緑色が美しい。
「ウェルカムドリンク。オリジナルカクテルのグリーンだよ。」
「これがそうか。確か赤もあったんじゃなかったかな。」
「スカーレットだね。食後にどうぞ。まずは川内さんの心づくしの料理を味わってほしいからね。」
「川内が料理?」
「狭い厨房で料理を作らせたら川内さんの右に出る者はいないよ。」
艦娘はそんなところまで船の頃の記憶を引き継いでいるのか。提督は、あらためてВерныйを見た。黒のメイド服、白のカチューシャにエプロン。萌豚なら歓喜のあまり豚のような悲鳴を上げて所構わずフラッシュ焚きまくるに違いない。
「そんなことしたらジャンクにしてあげるけれどね。」
「ははは。ベェールヌイがロシア人枠のウェートレスなら、他にもいるのかな。」
「雪風と雲龍さん。蒙古人枠はいないけれど、そのかわりイタリアさんやレーベがやっているよ。」
「雲龍?ああ、立ち絵のせいか。なんというか、そう。五族協和。国際化万歳だな。」
「インターナツィオナーレ、万歳!だよ。」
「本当に楽しそうだな。」
走行中の列車を軽やかに歩むВерныйの後ろ姿を見ながら提督はつぶやいた。瑞穂は例の万能三方がお盆がわりだし、雲龍は式神に皿やらグラスやら持たせていて、食器棚が動いているようなものだ。あれは捗るに違いない。
「後で厨房の方にも顔出してみるか。ウチの川内にも作ってもらいたいしな。」
「終点、終点です。どなた様もお忘れ物のないようお気をつけください。」
ずいぶん遠くまで来たようだ。朝食の際に朝潮に尋ねてみたのだが、うふふふ、と笑うばかりで相手にされず、イタリアに女の秘密を聞いてはいけませんよ、とたしなめられてしまった。確かに俺はイケメンじゃないが、必要以上にブサメンになった気がする。
「あー、柳提督。こっちこっち」
駅を降り立つと、何人かの艦娘が出迎えに来ていた。ここから分散して宿泊先に向かうそうだ。私のところは最上がオート三輪で出迎えであった。あじあ号にオート三輪って、どこまで昭和なの?ターゲットどこに向けてるんですかねえ。
「荷物は荷台にお願いね。じゃ、行くよー。 ウチのところは何もないところだけどさ、色々イベントも用意してあるから楽しみにしててよね。」
川沿いの田舎道を行くこと暫し。松の木がところどころ突き出す黒板塀の角を曲がると車は停まった。「はーい、一名様、ご案内。」
足音が響き、磯波が現れた。縁側のある、上半分がガラス戸の二十畳敷の部屋に通される。これなら多少転がったところで何かにぶつかりようがない。青畳に手足を伸ばして寝っ転がるって贅沢だよなあ。ちょっと横になるつもりが普段に加えて汽車旅の疲れもあったらしい。あっという間に寝入ってしまい、頬を突っつかれる感触で目を覚ますと深雪と初雪が顔を覗き込んでいた。
「あ、起きた。」
「いつまで寝てるんだよお、提督。さっさと起きて深雪たちと茶、しばこうぜい。」
「お、おう」
「提督連れてきたー」
「まあ、提督。お茶をどうぞ。」
ただお茶を入れるだけなのに流れるような所作が美しい。さすが三隈お嬢様。感心しながらお茶受けに手を伸ばし茶をすする。皆の視線が向いていて、一斉に息を吐いた。なんだ?
「やったね!」うれしそうな声を伊401があげる。
「今夜の提督は、スペシャルステージ、しおいと夜のデートです。うれしいでしょ」
「はい?」
「そうと決まれば先にお風呂入ってきてね。夜は長いよ。」
「そうね、じゃあ、しおいちゃん。お風呂案内してあげて」
鳳翔さん、それありですか。大井は仕方がないわね、と呟いてるし、日向は手灼で我慢するか、とか言ってるし。いささか落ち着かない気持ちで風呂からあがると着替えがジャージだった。普通浴衣じゃないですか?お艦、これはなくない?
夕食は夕食で、自分の一挙一動が注目されているようでどうにも居心地が悪かった。磯風や比叡というならまだしも、鳳翔が料理の腕前を気にするとでも? 口を付けた順番でイベントが決まるとは知らぬ提督であった。
「♪汽車は烟を噴き立てて 今ぞ上野を出でてゆく」
ハイエースに乗せられ目隠しまでさせられた。役どころ逆転なんてものではない。いったい自分はどこにドナドナされていくのだろう。客観的にはロクでもない状況以外にあり得ないのだが、ご機嫌に鉄道唱歌を歌うしおい相手ではなあ。
「着いた!目隠しはまだ外しちゃだめだからね。」
手を取られて車を降りる。言われて目隠しを取れば 「うわあ」
視界一杯に蛍の光が広がっていた。
「しおいのSpecial stageその1、蛍狩りだよ。どうかな」
「凄いな」言葉が続かない。
「じゃ、これで」伊401、提督に捕虫網を渡し「蛍を集めてね。」
捕虫網を振り回すがどうもうまくいかない。遠近感がつかみづらいのと、ふわふわ漂っているように見えてのらりくらりとかわされたり、草の中にいたり。
「どう、集まった?」
「全然採れん。ん?あそこにずいぶんでっかいのがいるな。」
「アレ? アレはやめた方がいいかな」
「なんで」「蛍じゃないし」
「蛍じゃない?」
「蛍じゃないのに、ぼおっと明るく夜に光るものって、なんだろうね。」
意味を考えて血の気が引いた。「しおい、お前怖くないのか。」
「何が?」「人魂が、怖くないのか。」
「提督だって船幽霊のボクたち召喚して闇落ちした深海棲艦を追儺させてるじゃない。いつもボクたちといるのに人魂怖いの?」
俺はコマンダーだと思っていたら、令呪もないのにマスターだった。何を言っているかわからねーと思うが(ry 上官が部下にうろたえている様を見せる訳にはいかない。提督、気を取り直すと捕虫網を構え直して一閃。
* ていとく は さいりうむ を てにいれた *
「ーーーー!」(言葉にならない叫び)
「人魂、って言ったのは提督だからね。ただサイリウム渡すのもつまらないからプロデュースしてみました。 じゃ、次行きまーす。乗って乗って」
素でやってるのか、それとも計算づくか。提督が幼稚な感情とこれからの指揮を計りかねているうちにハイエースは丘の上に着いた。
「しおいのSpecial Stage本番、天体観測です。器材下ろすの手伝って」
ハイエースなのがようやく理解できた。測量用の三脚と人一人入りそうなでっかいケースを積んでいたのだ。「20cm反射望遠鏡だよ。ソンブレロ銀河だって見えるさ。」
「おお、それは凄い。」
言われるまま器材を設置する。でもなぜ経緯台?赤道儀じゃなくて。
「じゃ、まず北極星を探そう。」と、伊401、星図盤とサイリウムを提督に渡す。
「Ursa Minor α、ポラリスね。」
立ち上がり、カシオペアのWと北斗七星を探して指をさす。ずいぶん位置が高いな。いったいあじあ号は、夜の間にどれだけ走ったんだ?
「へえ」伊401はうれしそうな顔をした。「じゃ、牛飼い座、アルクトゥールス」
定番だな。北斗の柄を伸ばして橙色の星を指さす「Bootes α」
「次は獅子座、デネボラ」「Leo βね。そしてVirgo α、スピカ」
「春の大三角、よくできました。じゃ、今度は南天ね。Scorpio α」
アンタレス?まだ見える時間じゃ、っておい。なんでさそり座のSが縦で南中してるんだよ。思わずしおいの顔を見ると、彼女はうれしそうに南の地平線付近に輝く一等星を指さした。「あれが南極老人星。竜骨座のカノープスだよ。」
「どういうことなの?」
北の空、北極星が北緯40°付近を示す一方、南の空、カノープスは北緯10°付近を示している。さそり座と乙女座があの位置じゃ経度もでたらめだ。
「ここはどこでもあって、どこでもない場所。ボクたちはここから分祀されて鎮守府に赴任する。 ユートピアとか、幻想郷とかいろんな言い方をされているけど。
ようこそ。ボクたちの村へ。」
どこでもあるがどこでもないって、そんな子供だましの謎かけがあってたまったよ。信じるも信じないも星座の位置を確認した後では認めざるを得ない。
この後伊401と無茶苦茶天体観測した。
「・・・とく、起きろ。提督。 よし、江田島地震」
敷布団引っぺがされて目が覚めた。妹や幼馴染でもそこまでしませんよ、お伊勢さん。それにしても農業体験とは聞いていたがすいぶん早いんだな。薄明過ぎたくらいじゃないか。久々の天体観測に張り切り過ぎてまだ眠い。
おはようの挨拶もそこそこにオート三輪の荷台に寝っ転がる。鳥のさえずりが心地よい。ゴトゴトいう感触を楽しむこと暫し。トウモロコシ畑に着いた。
「実が斜めになっていて、ひげが赤黒くなっているのが熟しているわ。」
加賀が見本を見せてくれた。「陽が出るまでに片付けましょう。」
一列をもいで籠を畦に置くと蒼龍と飛龍が運んで折りたたみコンテナに積み替え、オート三輪に積んでいく。小一時間で作業は終了した。
「朝ごはんにしましょうか。どうぞ。」
鳳翔が採りたてのトウモロコシの皮を剥いて提督に差し出した。
「え?生で?」
「この品種は、生で食べられるんですよ。黄色くなくて熟していないように見えますけれどね。足が速くて遠くに出荷できないから知名度低いんですけれど。」
半信半疑ながらも一口。「うわ、あまっ!」
「糖度17度。メロンと同じくらいなんです。野菜の形した果物と思ってくださいな。」
「驚いたな」
見れば一航戦も二航戦も一心不乱にかぶりついている。収穫中は半寝ぼけで手だけ動かしていたようなものだが、糖分補給で目も覚めてきたような気がする。
トウモロコシ畑が終わると今度は田んぼに移動。駆逐艦たちが待っていて、デッキブラシを渡された。
「雑草取りです。行きますよ。そーれーっ」
「おーっ、吹雪。張り切ってるな」
「初雪、行くよ。URRRRYYYY」
「ウソだ。初雪が、あの引き籠りの初雪が」
「突っ立ってないで、提督もさっさと行ってください。」
「トホー。磯波に気合入れられた。オフに山の中で甲板清掃のマネごとかよ」
雑草がおもしろいようにスイスイとれる。作業が終わると空母たちがカモの雛を艦載機で田んぼの中に誘導していった。「何してるの、あれ」
「アイガモ農法です。」と白雪。「カモさんは、害虫を食べてお食事兼運動。カモさんが泳ぐと土がかき回されて成長が良くなるし、糞は有機肥料になります。農薬は使わないし、いいことづくめなんですよ。」エッヘン
「へーえ」
「例えばあのようにカラスが来ても」キババババッ 「どぉよ!」
「と、直掩が上がっているので安心です。キツネやヘビが忍び込んでも」
「げえっ、妖怪猫吊るしがあんなに」 猫吊るしが空挺降下している。
「と、備えは万全です。あとはカモさんがもうちょっと高く売れてくれればいいんですけどねー。アイガモって市場が小さくて」
主計科の悩みが尽きることはない。
「水雷戦隊集合。A作業終了、用具収め。」戦闘帽を被った大井が号令をかけた。
「用具収納済みです。」と、吹雪。
「宜しい。帰投、用具換装してF作業に入る。」(ヤッター!)
「単縦陣、第二戦速、我ニ続ケ」 そして訓練歌を歌い出す。
「水雷戦隊出撃だ」 スイライセンタイ シュツゲキダ
「深海棲艦やっつけろ」 シンカイセイカン ヤッツケロ
「突撃」 トツゲキ
「雷撃」 ライゲキ
・・・ ・・・
「北上、F作業なんだよな」 ラバウルキチ ハ ムッツリム
「そうだよー」 ヒアソビシーヤ ニ スンナハ
「なんで掛矢にハンマーなの」 リムツターカ ノ ナゾビーム
「3日前に大雨降ったからねぇ。大物でるかもよー」 ナガト モ ヤマト モ ムツニナル
「F作業だよな」 アラアラ
「楽しい楽しいF作業だよー」
「掛矢なんかどうするんだよ」
「がんがんいくよー」
「うんがー。会話にならねえ」
※ 化石(Fossil)掘りでした。
「地学巡検だったのかよ。北上、ここの地層はいつだ。」
「白亜系と古第三系暁新統だねぇ。」
「岩の種類はなんだ。シルトか。まさか頁岩ではないだろうな。」
「砂岩と泥岩が交互、礫混じり。石灰岩質モジュールがたまに出るよー」
「パーフェクトだ、北上」
「感謝の極み」
* ていとく は あんもないと を てにいれた *
「イノセラムスが外道扱いか。魂消たなあ。」
「F作業終了。お待ちかねのロケットラウンチャーの時間だよー。」
駆逐艦たちから歓声があがる。
「壱番。綾波、行きまーす」
助走をつけてジャンプ。落下点には大井と北上がタ―ポリンを広げて待ち構えており、トランポリンよろしく綾波を空中高く放り上げた。「発射!」
「にゃんぱらり」 宙返りして川の淵に飛び込む。どぼーん。
「弐番。敷波、行くよー」
「発射!」「敷波キーック!」どぼーん。
「残るは」
大井が手をニギニギしながら提督に近付く。
「提督だけだねぇ。」
北上が大井の左をカバーする。
提督は逃げだした。しかし、廻り込まれてしまった。
「水雷戦隊、カカレ」「そーれっ!ワーッショイ、ワーッショイ」
胴上げされて川にどぼーん。
※ 服が乾くまで、みんなで仲良く甲羅干ししました。
温泉の赤のバルブと川の水の黒のバルブを開く。河原の石をコンクリを固めた湯船にお湯が溜まる間に服を脱ぎ、湯船の縁に腰を掛けて足湯を楽しむ。100mくらい先に源泉の白い湯気が上がっているのを見やった。脱衣所以外には垣根も衝立もなく、まさに露天風呂。真っ白なお湯が溜まってからそろそろと湯船に入った。日頃デスクワークで鈍っていた体の節々に、温泉が久々のアウトドア生活で染みるようだ。
「提督、差し入れをお持ちしました。」
お盆に徳利を載せ、髪をアップにしてタオルを巻いた赤城が風呂に入ってきた。うなじが美しい。
「ああ、ありがたい」
酌をして赤城、いかかでしたか、と尋ねる。連発花火にロケット花火で夜戦花火大会や、バスケットにサンドウィッチとワイン詰めてサイクリング&バードウォッチングを思い出した。娑婆じゃ絶対できない遊びだったな。
「楽しかった。明日、帰らなきゃならないのが残念だが」ぐい呑みを空ける。「そう。これでまた戦える。気力が、枯渇スレスレだったのが一気に満タンになったよ。」
赤城に酌をして「赤城も酒を呑むんだなあ。」
「お酒は相手が必要ですからね。食べるだけなら独りでも構いませんが。」
「そうだな。」
「向こうの私にもたまには付き合ってあげてくださいね。ストレス解消法は、いくつもある方がいいし、同じ艦娘につきあわせられないこともありますから。」
* * *
・・・テェートォクゥー! ドドドドドド「バァーニング、ラーヴ!」
腰を落とし、全力疾走から飛びついてきた金剛をリフトした。
「WAO!」
顔を輝かせる金剛を持ち上げたまま言った。「ただいま」
「おかえりなさいデース!」
金剛を降ろした。「いい子にしていたか」
「もちろんデース。」
金剛、提督の顔をまじまじと見つめ「えいっ」頬をつっついた。
「ぷにぷにデース。どこ行ったらこうなったデスか。」腹までつつかれた。
「よしなさい」
「Heyテイトクぅ、ワタシにお土産は」
「ない」「WHY!」
「何もないところだったんだ。化石のクリーニングできるなら話は別だが」
「化石がクリーニング?」
提督は首を振った。「別便でトウモロコシ送ったから夕飯楽しみにしてくれ。びっくりするくらい甘いぞ。」
「ワタシとテートクみたいネー」 休暇は終わった。
※※ 番外 ※※
ピー、ピー、ピー
「一体何個仕掛けたんでしょう。指導教官、やりすぎです。」
「あ、待って。そこは」
倒木にちょっと腰掛けようとした磯波を白雪が慌てて止めようとしたが遅かった。バスーン。腰かけた木の片側が跳ね上がり、空中に放り出される磯波。
「ひゃああぁっ」
そして向こう側でも。ぶしゅーっ。
「きゃあ!けほっ、けほっ」黄色い煙幕が濛々とたつ。
「対潜訓練じゃなくて掃海作業じゃない、どう考えても」
提督が普通に入浴を楽しまなかった場合に備え、覗き見ポイントになりそうな場所に大井が仕掛けたトラップを外しに来た駆逐艦たちが軒並み引っかかっていた。