Re:術式が百式観音ってマ? 作:隣の家に晩飯凸する止まらないゴルシ
本文短いです。
生きるというのは不条理を己の内に孕む事である。死とはそれら全てを誰にも知られる事のない記録として昇華させることである。
藤井名入はそれを前世で知った。
藤井名入、19歳、呪術高専所属の一級術師である。彼にはほかの誰にも語ったことのない秘密がある。それは彼が『転生』を経験した者であることだ。
前世は最良ではないが最悪でもない家庭に生まれ、同じく最良ではないが最悪でもない人生を送り、自らそれを終わらせた。今世では何の変哲もない家庭に生まれ、そして術師になった。
術師になった理由は、スカウトを受けたから。子供ながらの憧れがあったのか―彼はスカウト受けて、一も二もなくそれを承諾した。スカウトを貰えたのは彼自身に才能があったからと言うほかない。恵まれた術式、豊富な呪力と、それを運用するために最適化された呪力出力。五条悟の超絶劣化版の様な者であると、彼を初めて見た者はそう言っていた。
だが、特筆するべきは彼の術式である。彼の術式は彼自身の天与呪縛の問題もあり、その姿をほとんど表に出さない。だがその威力たるや強力の一言に尽きる。彼の術式は一撃で大地を破砕し、空を揺らす。
紛う事なき強者。
それが藤井名入という男である。ところ変わって2017年12月、東京某所にて彼は一人の男と対面していた。
「君が藤井くん?」
「どうでしょ。俺の名字は確かに藤井ですけど、名字が藤井の人なんて俺の周りには死ぬほどいますから。だから、貴方の探し求める藤井さんかは分からないなぁ」
「その話口調、どうやら私の探し人は君みたいだね。いやぁ、ずいぶん前から会ってみたかったんだよ」
前髪を少し垂らした男はへらへらした感じでそう言った。その感じが妙に鼻につくが、顔には出さない。なんとなれば、それが悪手になりうるからである。名入は目の前の人間が自分と互角であるか、あるいはそれ以上の―格上の者であることを理解していた。
「そりゃまた奇特な方ですなぁ。俺なんかに、何の用があって?」
名入もいくらか気を抜いているような声音で返す。ちょっと煽っているようなものでもあるが、こういう時はこれくらいがいいと恩師から聞いている。(なお、その恩師が信頼できるが尊敬は出来ない男である事はここでは特筆しない)
「まぁ、ちょっとした勧誘だよ。術師しかいない世界についてどう思う?」
「術師だけかぁ。う~ん………」
名入はわざとらしく悩むしぐさをして、云々唸ってから、目の前の男―夏油傑の眼を見た。彼の眼はそれはもう生き生きとしていて、彼自身水を得た魚の様なものであるのだろうか、どこか子供っぽく、名入りの返答を心待ちにしているようだった。
「発想自体は面白いけど、あんまり興味は湧かない……あぁいや、その世界の行く末を見てみたくはあるけど、それが終わったら余韻に浸る事も無く興味を失くすって感じかなぁ? まぁ、結論としてはあんまり興味がないってことで」
「そうか………残念だね。君は強いから、私も手加減はしない。殺せる隙があるなら殺しに行くし、そのつもりでいいね?」
「今から殺す相手に確認取るんですか?」
夏油はふっ、と笑って、その顔に狂った笑みを張り付けて声を張り上げた。「いいね!」
直後、辺り一面を爆炎が覆い尽くした。
名入はそれを受けて戦闘体制に移行する。術式の使用も視野に入れて、身体を覆う呪力を流動させ始めた。
煙はすぐに晴れたが―夏油は煙の晴れたその先で、翼の生えた呪霊に乗っていた。今からでは術式を発動させたところで、すぐに何処かへ飛び去ってしまうだろう。つまり、たった今彼の命に手をかけるタイミングは失われたのである。
「じゃあね、藤井名入。さっきも言った通り君は強いから、彼らはお土産だ。好きに遊んでおいてくれたまえ」
夏油はそう言うとすぐに空の彼方へ飛び去っていた。より正確には、呪術高専のある方向である。
この場には一級呪霊15体と、名入ただ一人が残された。
「ちえ。俺ってばいっつもこんな役回り」
呪力を立ち昇らせて、手を合わせる。
合掌。
その合掌は、彼の術式発動の合図である。直後に出現した『それ』は、15体の一級呪霊を易々と葬り、そして姿を消した。
それから少しして、夏油傑死亡の報告がもたらされた。名入はそれを特に何も感じぬと言った様相で聞いていた。
ガチで投稿するか死ぬほど迷った末の供養でした。
自分自身継続力が死滅しているので、今回たまたま書きましたが、継続するかは分かりません。
評価いただけたり感想をいただけたり、要は人気が出れば続けるかも。
(春から大学生活なので続けるにしても不定期になりそう)