Re:術式が百式観音ってマ? 作:隣の家に晩飯凸する止まらないゴルシ
藤井名入にとって大抵の任務は退屈なものである。彼の相対する呪霊は大抵良くても一級、時折上層部からの「嫌がらせ」で特級と当たることがあるが、それでも大体のやつは彼が術式を使うとすぐに祓われる。
つまり、骨のある奴とこれまで戦ったことがない。良くも悪くも彼の術式はゴリ押しが効いてしまう(何より、それくらいしか出来ない)ものであるから、それでお終いなのだ。
「先輩。やっぱ、所定の位置には有りませんでした」
伏黒だ。彼は今回の目標物─両面宿儺の指の話をしている。両面宿儺というのは呪術全盛期である平安の世を脅かした最強の呪術師(であると名入は認識している)で、残っている資料は兎に角強かったとしか書いていない。名入が思うに、きっと戦って生き残った者がいないのだ。それ故にまともな情報が伝わらず、そのような形になったのであろうと予想している。
宿儺はやがて自身の魂を指に込めて二十分割したらしく、今回の「指」はそのうち一つだ。
そもそもの任務の発端は、学校などに溜まっていく呪いの受け皿(要は呪力を吸収してくれる体の良い魔除け)として宿儺の指が設置されていたはずが、どうやら何者かに見つかって所定の位置を離れたらしかったのが始まりだ。
それが何者の仕業がは未だ分からぬが、重要なのはそれが「動かされた」ということであった。
魔除けとして設置されていたことに加え、宿儺の指はそもそもが超特級の呪物。それ自体に宿る呪力量は莫大なもので、それに釣られた呪霊が引き寄せられる。つまり、周辺被害が増える。
そのために彼らが回収に来たが─。
「どうする? 残穢もあんまり感じられんだろ? 手詰まりだぜ、こりゃ」
「全くです。一度、補助監督に連絡した方が……」
彼らは今ある高校の敷地内にいる。彼らはその高校の生徒ではないが、さも当然かのように敷地に入っていた(当然許可はない)
放課後ということで、部活に励んでいる学生が多く、グラウンドはかなり賑わっていた。
その中に……。
「んっ?」
「な………」
明らかに通常では感じないプレッシャーを二人は感じた。名入もそれを感じたのは初めてだったはずだ。
「(間違いない、指か!)」
「先輩、アイツ─!」
二人は脱兎の如く駆け出し、そのプレッシャーの持ち主に近づこうとしたが、その持ち主は彼らを遥かに超える爆発的な脚力を見せて走り去った。
これには伏黒も名入も閉口した。何となればそれは走り去った持ち主がただの一般人だったからである。
呪力を操作しているケはちっとも感じられず、その割には呪力で身体を強化しているのかと言うほどの速さに面食らったのだ。
「アイツ、速すぎるだろ………」
「アレが術師じゃないのが驚きですよ、俺は」
結局、彼らは夜間に学校に忍び込むことを余儀なくされたのだ。
時刻は夜二十四時。日を跨いだ時に、彼らは校舎へと侵入した。目的はやはり一貫して指の回収である。残穢らしい残穢が見当たらず、四苦八苦しつつ彼らは奔走していた。
「くそ……でかいな、この校舎!」
「一棟だけですけどね! それでも一つ一つ確認する暇が無い!」
廊下を走って、階段を登ってはまた走る。殆ど流し見程度であるが、それでもきっちり教室や部屋の中は確認している。
「ん………!?」
「先輩!?」
名入が立ち止まる。伏黒は何を感じたのか、とは訊かなかった。階級も上、常日頃から鍛錬に付き合ってくれている人が、何か感じるならばそれはおそらく─。
「伏黒、このまま行け! 呪霊は俺が引き受ける!」
「分かりました!」
呪霊。伏黒は今になって気付いた。己の後ろにいるのは一体ニ体の数では無い。無数に─それも、今の伏黒恵では勝つのが難しいレベルの呪い。
刹那、轟音。伏黒は振り向かず走った。
「さて………」
一人残された名入がポツリと言う。
「数が多いな」
前にいるのは無数の呪霊。それに相対するのはただ一人。
再び、轟音が建物を揺らした。それは名入の術式で発生するものだ。これでもまだマシな方で、酷い時はそもそも攻撃前の段階で建物に致命的なダメージが入る。
名入は先の二撃で相対した呪霊の全てを祓い切っていた。準一級に分類される呪霊も多数いたが、それらをまとめて二発で祓い切る。
「しかし、これだけの量がどうして……宿儺の指、それ程なのか?」
そうこうしているうちに、今度は名入の背後から呪霊の気配がした。
「うし──」
が、それが祓われる。
「は………」
祓ったのは伏黒? いいや、違う。今のは明らかに一級並みの気配だった。今の伏黒には祓えない。では誰が──。
煙の向こうに名入は目撃した。指の主を。
歴代最強の呪術師、両面宿儺を
若干短めで申し訳ない