超かぐや姫!〜縄文時代から時を超えて〜   作:ウミウシになりたい

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楽しんでいただけたら幸いです!ぜひ!超かぐや姫!見よう!


縄文時代って言葉通じる人がいなくて勘弁

「………はぁ」

 

俺は静かにため息を吐く。いつも通りの何もない日常がまた始まるからだ。

 

時は縄文時代、娯楽も飯も圧倒的に不足している時代。特に現代を生きた身としては、とてもではないが耐えられないそんな時代だ。

 

本来なら各々に役割があり、その役割をこなすことで時間の暇つぶしをしていたが…生憎と

 

「さみぃ…」ブルッ

 

外は雪模様で、辺り一面真っ白になっており狩りができそうもない。それに、冬で活動できる時間なんかたかがしれているため行動したとて、それ程時間潰しできるもんじゃないが…。

 

それなら、同じ時代に生きる縄文人と会話すればいいって?ははっ………赤さんの頃から、言葉を聴いても本当に理解が及ばない未知の言語であったため会話ができないのだ。なんだよ、方言が更に訛りに訛ったかのような言語。本当に君は言語として発声しているのか?と、疑問に思ったことも暫し…考えるのを止めた。そのため、友人と呼べるような者は存在しないという………悲しい。

 

中途半端に生きた現代の知識が邪魔をしているようにしか思えない。何度、この記憶を恨めしく思ったか、数え切れないくらいだ。

 

それでも、こんな俺が集落で村八分にされていない理由は相応にあるというものだ。

ウトウトと、やっと眠りそうな具合になっていくが…途端に周囲が慌ただしくなる気配を感じた。それに、こちらに走ってくるように足音が近くなっている。

そして、ひょこっと入口から顔を見せたかと思うと、悲壮感が感じられる面持ちで縄文人が言う。

 

「¥€%##$¥€+÷!!!」

 

「───分かった、ここに来たってことは狩りか」

 

そう、俺は狩りを生業としてこの村に順応したのだ。というか、これしかやることがない…という理由だが。

 

 

 

「すぅーふぅ〜」

 

俺は弓に手を掛けて、構える。狩りは自然体でいること、悠然と構えること、恐れを抑制すること、この三つが個人的に重要だと思っている。

相手は、獲物がいなかったのだろうか?一匹の狼が夢中で何かを貪っていた。

狼が一匹なのは…まあアイツは村八分みたいなことされたんだろうな。なんで集落を襲ったんだと、そういう理由で。狼もバカじゃない、人間の集落を襲うのはそれ相応のリスクを兼ねるということを、十分以上に知っている。その掟を破った狼を見捨てたのか、その狼以外に息づく生命の気配は、ない。

 

吐息が白く、ハッキリと蒸気を纏いだされる。いつしか、その境界が曖昧となり完全に溶け込んだのか、息が白つくことはない。

照準を絞って、相手を見据える。ほんの些細なミスが命取りになる。キリキリと悲鳴をあげる弓のしなり、その音に目もくれずがっつく狼。

 

そして、その時はきた。狼が満足したのか貪るのをやめ、帰ろうと顔を上げたその一瞬。

 

ヒュン!

 

風を切り裂く音とともに、その矢が狼を目掛けて飛来する。命を奪おうと、寸分違わず一点を目掛けて。

 

「………命中か。よしよし、上々だ」

 

狼は、脳天を矢で射抜かれて倒れ伏した。狩りはもう終わりだ。

 

俺は、なーむーとその死体に手を合わせて、狩りが終わったぞーと、報告するために村に帰った。

いやー、いつも狩りした後は回収してくれる人がいるのは助かる。回収までは面倒臭いので、そこはもう集落の人に丸投げだ。

 

「はあ〜あ、現代に…戻りてぇ」

 

俺は、ポツリとそう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

明くる冬、俺は春の訪れとともに、海にいた。海は良い。いつ見ても、見慣れたような景色を俺に見せてくれる最高な場所。集落の人らは、海を畏れているようで中々こちらに顔を見せない。本当に、このまま身を海に委ねたいと何度思ったか。とても気持ちが落ち着くのに。

 

現代では見られないような、青く透明で底も簡単に見れるような美しい海。さざ波の音に、時折聴こえる、春を報せる鳥の音。

 

本当に、俺は現代へとまた戻りたい。赤子の時から幾千幾万、何度思っただろうか。俺が村八分にされていないのは、言葉を解すことができない俺でも貴重な存在なのか。はたまた命を失っても惜しくない人材だからだろうか。

狩りは己の好き、でやっているとしても本来なら、集落全体でやるものである。事実、突発的に集落の男同士が狩りをしようと、集まりそれに追随する者達でやっている。

 

「ああー、落ち着くなあ…戻りたくねぇ…集落に」

 

そのため、針の筵といわんばかりに居心地か大層悪いのだ。冬を除いて。

 

俺は寝落ちする算段で、砂浜へと横になる。寝づらいが、戻るよりかは随分マシだ。俺はすっかり寝る面持ちで、事実この後寝た。

 

 

「………うん…?あぁ、もう夜か」

 

 

時間はもう夜になっているのだろう。辺りは静まりかえり深い夜の帳が、顔を覗かせていた。

俺は、起き上がり背中を鳴らして空を見上げる。やはり随分と星が見える。いつも、空は神秘的で変わらない姿を見せてくれる、ありがたい存在だ。

 

 

「…あ?流れ星!お願いごとお願いごとッ!帰れますように帰れますように帰れますようにッ!」

 

 

よっし!とガッツポーズを決める。普段は迷信なんかは信じない性質だが、この時ばかりは拝み倒させてもらおう。願掛けはタダだからな。

しかし、流れ星に異変があったのか軌道を変えてしまっている…?あれ?目に見えて軌道変えることって、流れ星でもあるのか?

 

「あれ?こっちに来てね…?いや、気の所為?」

 

なぜだが胸騒ぎする身体と、警笛を鳴らす勘。そんなことあり得るはずがない、と頭が理解を拒否するって………!

 

「ッ危険な兆候じゃねぇか!」

 

 

俺は慌てて、その場を後にすることにした。うーん、暫く寄るのは止めとこう。と、心に誓いを立ててその場を離れて、集落へと向かった。

 

ドボーーン!!!ザッバーーーン!!!

 

ふぅー………よしよし、危機回避危機回避…気にはなるが、もう動く気力がないため明日にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜10年後〜

 

 

 

 

 

俺は最後の生き残りだった、集落の人を看取って空を見上げた。

なんで、と疑問をしまい…しまって…。

 

俺はあの日を思い出す。呑気に昼寝をかまして夜に帰ってきた、その時見た村の惨状を。狼が群れをなして集落の人々へと、襲いかかってきていた。

 

なぜ?どうして?と、胸中に広がる思いを蓋にして弓へと手を伸ばして応戦した。

男達の怒号が、女達の悲鳴が村中にどよめく中で、淡々と弓で狼を仕留めていく。

 

そして、狼を討伐しきった後………集落はもう立て直しができない程に損害を受けた。それはもう、悲惨だった。

鼻に擽る、血の匂いに汗と泥に混じった腐臭、四肢を失い喚く怪我人、子供の亡骸を抱く女、原型を留めた死に損ない。

 

その人達の意識の矛先が、俺に向かっているようで………俺は罪の意識が際限なしに高まって…だって、俺は依頼みたいなもので…狼をやっただけなのに、どうして。が、はやり頭の中でグルグルとその言葉だけがこだまするだけだった。

 

俺はせめてもの償いとして、残った集落の人々が穏やかに過ごせるようにと必死に頑張った。

薪を焚べて、危険な動物を追い払い、ひたすら食材を集める毎日。素人が応急処置をしても、止まらない死が広がる日常。

 

俺は最期をただひたすら看取って、看取って…最後にいつの間にか、俺は見知らぬ女に抱擁されて、その最期を見届けた。その女は最後、俺のせいじゃないといわんばかりに、力強く抱き締めてきて…逝った。

 

「『ありがとう』」

 

「なんなんだよ…俺は、情けないな………本当に、情けない…」

 

とめどなく涙が溢れる。最後まで、俺は同じ時を生きる人を直視せず、ダラダラと生を全うしていた。それが、こんな暖かい眼差しで見つめられるとは、思いもしなかった。

思えば、俺の負担にならないよう、各々ができることをやっていたような気もする。全部やらないと、と追い詰められるほどに俺の視野は曇りに曇っていた。

 

実際に食材集めが終わり帰って来たら、火を絶やさずに待っていた男衆や俺がボッーとしていた中、食材を料理にした女衆。そこに俺は微塵も気付かなかった。

 

そういうものだと愚かにも思っていたのだろうか。勝手に火は消えることなく、料理もいつの間にかあるものだと。

この今を生きる時代は、ゲームだと何処か思っていたツケが今になって激しい後悔を催す。

 

何年、何十年生きた今。やっと、俺の生は始まった。

 

 

いつの日かの砂浜へと赴いた。全ての始まりであるかのような音を告げて、そのままにしていたあの場所へと。

 

 

─────♪♪♪

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪

 

 

歩き、近付くたびに、何処か身に覚えのある音がする。その音に俺は誘われるがままに、足が勝手に歩みを止めない。

 

 

「ハッ…そんな筈がない、そんなこと…あってたまるか」

 

 

この時代に似つかわしくない音楽。しかし、俺には驚く程に馴染むその音の正体は、果たしてなんなのだろうか。

未開の地で生きる人をスクープする若者か、はたまた原住民にインタビューだとか。ありもしない妄想が脳内に溢れ出る。

しかし、そんなものはまやかしと思い込む。

 

俺はさっきまでの決意を奮い立せようと、意を決して向かった。

 

 

「………何だ?これ?」

 

 

俺の眼前には、妙にメタリックな色艶をした竹の子があった。周辺には竹藪などないため、ここにあるのは些かどころか完全に不自然な代物。

ところで、さっきまで音が聴こえていたが…俺がこの竹の子へと近付いたところで切れてしまった。どうやら、この竹の子からおかしなメロディを垂れ流ししていたらしい。

 

これをどうしたものか、と俺は考える。試しに触ってみると、硬く明らかに竹の子ではないと分かる、メタルボディ。冷ややかとしていて、夏場にはもってこいな物といえるだろうが──

 

 

「…ッねえねえ!ここが何処か分かる!?もしくは何年?!」

 

 

「あっ?知らないな?………ッ?!」

 

 

明らかにこの森には響く筈がない、元気な明るい少女の声。俺は最大限に警戒をして弓を構え始める。もう、ここがゲームの場所だと思うことは、ない。

 

 

「わわっ!私は敵じゃないよ!だから、その弓を下ろして、ね?お願いだから〜!」

 

 

「…だったら姿を見せてくれ、そうしたら考える…もし間違いを起こそうとしたら、躊躇なく射抜く」

 

 

「はいはい!私は敵じゃないからねえ〜?よーし!姿見て驚かないでね?!行っくよー!」

 

 

「ッ!」

 

 

俺は、何処から来ても良いように耳をそば立てて足音を聞く。だが、足音らしいものは未だになく…かわりに───

 

 

───ぴょこぴょこ

 

 

と、耳を疑う音が聴こえる。それも、まんまぴょこぴょこ言ってるような、作り物めいた擬音。

やがて、近くなって来たので俺は迷わず地面へと視線を向けた。

すると、ナマコに見える謎の生き物がこちらを見上げて、目をキラキラとさせていた。

 

 

「ふっふーん!私のこと知りたい?知りたい〜?どーしてもって言うなら教えるけど」

 

 

「んじゃ、俺は帰るわ。幻覚見てるみたいだし、横になろっかな〜」

 

 

幻覚というものは、精神疾患の上でかなり重度に入るものだと記憶している。俺も平気なフリをしていたが、身体は大丈夫でも精神面は大丈夫では無かったようだ。

 

俺は目を擦りながら、帰路へとつこうとした直後。

 

 

「えぇー!待って待って!私、1人ボッチでー!君がいなくなったらダメ~!!!もう意地悪しないからー!」

 

 

「………幻覚じゃーない、か…」

 

 

「うんうん!幻覚じゃないよ〜!実在するよ〜!?」

 

 

目を擦りに擦り、ナマコへと視線をもう一回向ける。すると、こちらを窺っているのか目が合う。目が合うや否や、うるうると涙を溜めて上目遣いのような所作でジッと見つめてきた。

はぁ〜と、ため息を吐いて俺は話すことにした。ここは現実だ現実なんだと、己に言い聞かせてしっかりと向き合う。

 

 

 

「〜〜〜それからー!ねぇ?聴いてる?あっ、それで〜〜〜〜」

 

 

「聞いてる聞いてる…」

 

 

俺は、元人間だというウミウシであるかぐやの火の玉ストレート(会話)を交わしながら話を聞いた。ツクヨミだのなんだの、彩葉がどうだの、ヤチヨがどうだの、と話しが途切れそうにない。

 

 

「あっ!そういえば忘れてた〜!ここって………何年…?」

 

 

「あ〜〜〜、そう、だなあ」

 

 

話を聴いていて思った。ここは明らかに彼女が語るような年代ではないと、ハッキリと。それをまるで、この時代であったかのように語っているのは果たして何故なのか。

最後に言い淀んだのは、何らかの確証がないからなのだろうか。口振り的には俺よりも遙か先っぽいが…。

 

 

「………縄文時代だ。ここは…」

 

 

「………?聞き…間違い?縄文時代って何年のこと?そもそも縄文時代って何…?」

 

 

ウミウシがみるみるうちに、萎んでいく。そんなかぐやに対して俺は話を伸ばしてもしょうがないと思い口にする。

 

 

「…およそ1万5000年〜1万年続いた時代が、縄文時代だ。ここが何年とか何年前だとか…見当もつかない…それほど縄文時代は詳しくないが…タテアナジュウキョダカラナア」

 

 

「ッ…いち、まんねん…まえ?あは、あはは、そう、なんだあ…。そう…なんだあ。………うっ、グスッひっく…嘘とか、ついてない?」

 

 

「………ああ」

 

 

俺がそう肯定すると、ウミウシが泣き崩れるように身を縮こませた。俺はそんなかぐやを、とうに警戒を解いていた手で不器用ながらに身を包ませた。

悲しみには、人肌が落ち着く。暖かな生命に満ち溢れたその体温は万物を癒やすものだと、俺は女の最期で気付いた。

それを少しでも分け与えたくて、見知らぬ人にされるのは違うものだと思うが…そうだったら、怒る気力でも湧いて俺を好きなだけ罵れ、と思った。

 

そう思うくらいには、その元人間だというウミウシからは悲しみに満ちて、つぶらな瞳から涙でいっぱいいっぱいだった。さっきまでの俺と姿が重なる。どうしようもない俺は、女の抱擁で勘違いに気付いて泣いて…かぐやは、何らかの目的を達成できずに泣いて…いや、悲しみに同情しているだけか。

 

俺は、そんなかぐやに何も上手いことが言えず、ただ傍にいた。

 

 

「………ねえ、君の名前は?」

 

 

どうやら、泣き止んで包んでいた手の中から、ひょこっとかぐやが顔を出す。メンタル面の回復が早い、俺も見習いたいくらいの早さだ。

 

 

「俺の名前は…ハルだよ。ただの、ハル」

 

 

「ハルね!分かった!私は改めてッ!かぐやって言うんだよ!これからよろしくね!」

 

 

うん…?と、俺は頷いていて、かぐやはよっしゃ!といわんばかりに身体をよじり、手の中から出てきて俺の頭の上へとぴょんとジャンプして着地してきた。

 

 

「………???動いて欲しいな〜?ほら、私の今の身体って小さいからさ〜?それに、ヤチヨに会っても直ぐに見付けるため!さー!レッツゴー!」

 

 

「……はいはい、りょーかい。動きますよっと、落ちないようにしろよ?」

 

 

分かったー!と元気よく返事を返すウミウシ。

 

なお、余談だがあのメタリック竹の子はタイムマシーンで、かぐやは月の姫様だとか、彩葉はすごいんだよーとか、色々とくちゃべってくれた。

そして、俺の服装については…独特なファッションだし人それぞれだからと、見過ごしていたらしい。失礼な、この時代だと当たり前の服装だよ。この縄文ファッションは。

 

 

 

「ふぅ…ついたついた。ここが俺の拠点だ」

 

 

「おーー!!!………?ボロ屋…?」

 

 

「違うに決まってるだろ…ここがれっきとした俺の住居だ。それに、この時代のポピュラーな住居だぞ。失礼な」

 

 

「へぇ!そうなんだ!」

 

 

ごめんね!と興奮して俺の家の中を見るのだろう。俺の頭の上から離れてあっちこっちへと動き見ていた。

そんなかぐやに対して、俺は死体はちゃんと土葬しといて良かったな…と、心の底から思う。死体を見ていたら、気分も落ち込むし何より、何かあったのだろうかと、悟らせてしまうかもしれないからだ。

と、俺は植物の藁を中に入れた獣皮の上へと寛ぎ姿勢へと入る。無論、徹底的に水で洗い、火で燻して乾燥させてを2回繰り返した物で定期的にやっている獣皮だ。

 

そんな寛ぐ姿勢になった俺に、かぐやが徐ろに口を開いた。

 

 

「ハルってさ?ここの時代の人?それとも違う人?私としては、違う人だって思うけど…」

 

 

まあ、そうだろうな。と当然の疑問が俺に投げかけられた。その質問に対して俺は、快く応じる。

 

 

「ああ、かぐやの察しのとおり俺はこの時代の人じゃない。だけど、今を生きてる人だ」

 

 

「んー?つまり?どいうことかな?」

 

 

「あー、現代日本から生まれ変わってここにきた人っていうことだ」

 

やっぱりー!と、鷹揚に頷くウミウシ…。やはりコミカルというかギャグのように思えて気が鈍る。

 

 

「じゃあさ!ハル以外にも、人はいる?会ってみたくて〜」

 

 

「………いない」

 

 

「…………そう、なんだ。ごめんね」

 

 

俺の顔が強張ったのが分かったのだろうか。かぐやは鳴りを潜めて静かにこちらを見つめてきていた。

 

 

 

 

〜10年経過〜

 

 

 

可笑しい。俺の身体は老いるどころかずっと、全盛期ですよというように勘や身体能力が極まっていた。

もうすぐ俺は、この時代の定年かもしくは最長の30を超えて40歳半ば。

 

あいも変わらず、オレはかぐやと一緒に生きていた。

 

 

「むぅー!ヤチヨどこなの〜?!姿が見えなーい!」

 

 

「本当にいるのか…?ヤチヨっていう子は」

 

 

「いるもん!いるもーん!だって8000年前からって言ってたし…いたら今がどの辺りかって正確に分かるじゃん!それに、助けてもらえるかも!」

 

はいはい、と今日も今日とてそうかもねと、と相槌をする。かぐやの言うヤチヨは見当たらないが、ここのところかぐやの弾丸トークは止まる一方どころか日毎に勢いは増していた。

俺としてもそんな元気なかぐやに、心を救われているような面もあるため何も言えないが。

 

10年経過したとて、俺の生活は変わりなくたった一人…いや、ウミウシのかぐやと一緒で元集落を維持していた。俺がどんなに偏見な目で見ていようと、変わらぬ慈愛をもって受け入れてくれた集落。

今思えば、俺は好きで一人で狩りをしているのだと思われていたのかもしれない。もっと、早く知っていれば誘えたのだろうか。

俺は、ありもしない想像をする。もう、いないというのに。

 

 

「………時々、寂しそうな顔を見せるよね…?その、理由、聞いてもいい…?少しでも、その悲しみを分けてもらえたらなって」

 

そろそろ、良いだろうか。俺がこの集落に執着する理由を、きっと、今まで我慢していたであろう心優しい少女に、俺はようやく心を開いた。

 

 

───

 

 

 

かぐやSide

 

 

 

そう、なんだ。とハルが言っていたこの場所に執着する理由を、静かに聞いて納得した。

 

私は未だにこの時代についての、見識が浅いため…言えることは少なかったが月並みな言葉で、慰めてそれからハルは横になって寝た。

 

酷く穏やかで、いつも静かに私の話しを聞いてくれるハルが、いつもとは何処か違って憑き物が落ちたような深い眠りを刻んでいる。

 

私は、始めは2030年に地球に到着する予定だった。しかし、隕石に衝突してその計画が頓挫した。

ちゃんと、上司に引き継いで…タイムマシーンも完成させて、あともう一息…だったのに。

 

不時着した後、何も無くて見知らぬ風景がそこにはあった。けれど、大幅なズレは無いだろうと高を括って私はその時を待った。

これ程大きい音は間違いなく、人が来るだろう、と。ツクヨミでも、リアルでも、彩葉と共に配信していた私は人間の好奇心というのは際限がないものだと、よく知っている。

 

つまり、人が来る、そして竹の子を見付ける、それから私が声をかける。という段取りは上手くいくはずだったのだ。

思い出を口ずさむ。忘れず刻むために、紛らわせるために。

 

彩葉がデビューしてくれた数多の楽曲のメロディーが、私の口から流れる。無論、ヤチヨと彩葉と三人でやった歌もとても大切な思い出だ。だが、口ずさむ度に

 

 

寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい

 

彩葉は見つけてくれる彩葉彩葉彩葉彩葉彩葉彩葉彩葉彩葉彩葉はなんでどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして約束したのにしたのにしたのにしたのにしたのにしたのに

 

 

苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい

 

 

また、私はメロディーを刻む。忘れないためにも、彩葉に見つけてもらえるためにも。

何一つ、先が見えなくても。変わらずに思い出を口ずさむ。楽しい思い出は一瞬のようだったのに、ただ今はひたすら長い、長い1日だ。やつ当たっても今は変わらない。だから、誰かに見つけてもらえるために、今日もメロディーを刻むのだ。

そんな1日が始まろうとした矢先に───

 

──ザッザッザッ

 

 

明らかに野生動物とは思えない、足音で規則正しく音を発している。果たして、それは本当に人だった。

 

見慣れぬ服装をしているが、やっと会えた人。訝しげにもと光る竹、を見詰めているが私はそれどころじゃない。

 

やっと会えた人で、見知った言語を一言喋ったもしかしたら!という人物。何が何でもコンタクトを取るべく、思念体をひねり出した。慌てて思念体をひねり出したのが悪かったのか、座標がズレたが少しのミスだ。

私は、一目散に思っている事を言った。

 

 

「…ッねえねえ!ここが何処か分かる!?もしくは何年?!」

 

すると、相手はぶっきらぼうに知らない、といいますます警戒を強める姿勢になった。

そんな相手に、私は敵じゃないよ!と言って姿を見せた。なお、その際警戒を一層緩めるために効果音付きのオプションでの登場だ。何としても答えてもらわねば…そして、もう一人というのは、嫌だ。

 

 

これには、相手も戸惑ったのか弓を下ろして、下を向いてこちらを向く。その姿に安堵して、私は次々と矢継ぎ早に私はこうだったよー!と思い思いにかたってしまった。

そして、改めて場所や年代について質問した後に、私は後悔した。

 

彩葉…ごめんね、私…ドジっちゃったみたいだ。どうやら、私はおよそ1万年前に…来ちゃったみたいだ。そりゃあ、私のこと見付けれる筈がないよね。

あははッ…どうしてだろう、涙があふれて止まらない。

 

私はいつの間にか、相手の手のひらの中にいて鼓動が聴こえた。

私に、温度を感じるようなそんな高機能は付いていない。思念体のウミウシは必要最低限で動かしているため、そんな余裕はないのが実情だ。

 

しかし、今だけはそれがありがたかった。人目も憚らず思いっきり泣いた。あなたの、手の中に包まれて。

 

その後は、名前を聞いてハルと分かった。私は気持ちを持ち直して元気よく改めて自己紹介をして、ついて行くことにした。本当に…一人は、つらかったから。

 

 

暫く経って、ハルの周りに人はいないことが、直ぐに分かった。しかし、そのことを一旦問いただししてみると、顔が強張りまるで聞いてくれるな、と言っているようで安易に質問したことに申し訳なさを感じた。

 

そして、ハルについては何か違和感があるなーと思っていたが、どうやら現代の日本から生まれ変わった人だという。だからあーと、私は一人納得していた。

あまり、歴史に触れない私とて言語というものは長い歴史の中で形作られるというのは知っている。何故なら、彩葉が私に朗読してくれた竹の取った物語?で古語を習うらしく、昔の日本語だよ、と教えてもらったことがあるからだ。

 

そんな日本語でも、翻訳機能を作動させることなく意思疎通ができるというのは、私の知っている日本語であるからに違いない。だから、ハルの違和感がある程度分かって満足だ。

 

それからというもの、ハルは何処へ出掛けるといったことはなく集落に留まり、遠征しよー!と声掛けしても、1日2日で集落へと戻ってこれるような場所ばかり。

幾ら私でも察しはつくというものだ。ハルは、この集落に並々ならぬ思いがあると。それは最初に、この集落以外の人はー?と軽々しく質問してしまった以来、そんな疑問が日増しに増していく。一体、ハルのこの集落で何が起こったのだろうかと。

 

今日は、それを聞いて…そして、ああ…ハルも、やはり一人なんだ。、ハルから2回目の言葉なのに実感が湧いてくる。それは、真に迫った心の声だったからだろうか。

 

それに対して…私は心の何処かで仄暗い喜びを感じた。いやいや、と首を横に振るが…私は彩葉一筋で、これからも尚、彩葉だけだ。ただ、今だけはハルの傍に寄って、その初めて見たであろう穏やかな顔付きを、暫し見詰めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




縄文時代に10年まで生きるのを保たせるのってすごいよね()
なお、最後の相手は憎からず主人公を想っていた女の子だったりしたり…?会話していれば、こっちの言語覚えて会話できたかもしれないほどの才女でした。
そんな女の子よりかぐやが大事!ハッキリ分かんだね!

誤字脱字報告ありがとうございます!4/8より
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