オサレポケモンバトル   作:ニコラス―NICORUTH―

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しゃあっ、地蔵壊しっ!

 

「 なにっ 」

 

「 なんだぁっ 」

 

 東京都のある自治区。悟が所属する護廷十三隊八番隊の担当する区画だ。

 

 

「 これは一体――― 」

 

 隊士を二人伴って現地に赴いていた同隊副隊長伊勢七緒は困惑していた。彼女の目の前には、無残にもなにか硬いもので叩き割られた地蔵が一体。

 

「 誰が、このようなことを・・・ 」

 

 地蔵だけならば、誰か不信心で素行の悪い 人間の仕業だと考えることができただろうし、七緒も出張ることはないのだろうが、問題は他にある。

 

 その地蔵より漏れ出した、並より強い整の霊圧の残滓。

これである。

 

ここに封じられた悪霊を、誰かが解放した、そしてその場以外に痕跡がないのをみるに、さらにはそれを持ち去った、ということになるのだ。何かも媒介を用いて。

それも、つい最近にだ。

これを、一般の隊士が発見し、地獄蝶を介して連絡が行き渡ったことで、彼女が現場の検証に赴くことになったのである。

 

一応七緒はこのようなことをする人物に心当たりがある。

同隊の五席、今現在の尸魂界において屈指の陰陽道の使い手だ。

 

しかし、よほど強い魂魄で、封印にガタが来始めてもない限り、彼は無闇矢鱈にこういったものの類を解きたがらないことを、時折彼の式神を京楽共々見せられていた七緒は知っていた。

 

並より高い程度の霊力では、そのお眼鏡には敵わない。

 

なにより今彼は東北方面にいる上、少し前まではヨーロッパにいたのだ。

 

禁術である空間転移も覚えてはおらず、仮に使ったのならば、隠密機動がすぐに嗅ぎつけるだろう。

つまりこれはまた別の、何者かの仕業という事になる。

 

 では、果たして誰が、このような行動に及んだのか。

 

 その目的は――――

 

 

 

 

「 しゃあっ 」

 

「 ―――――! 」

 

 あれから数分。雛森と禍巫剣はだだっ広い神社の境内のど真ん中で、格闘を繰り広げている。

黒い死覇装の女と、白い異形の神。血潮を流す大激闘。

なんとまあ、絵になるものか。

桃は、あの呪いの言葉を受けてバトル・ハイな状態になってなお、冷静さを欠いていない。

いや、寧ろ勝つために判断力に精神的なバフがかかっているようにみえる。

俗に言う、ゾーンというやつに入っているようだ。

 

 

斬魄刀を使わずに、鬼道を交えたりしながら白打、灘神影流の技を駆使しているが、凄まじい集中力の下、一打一打を繰り出しているのが見て取れる。明らかに、これまでのそれとは動きが違っている。

六壬神課で垣間見た未来と、受けた攻撃をもとに、頭の中で、相手の動き、能力を分析し、次にどう来るかを予測して戦っている。

この六壬神課は、オレもしょっちゅう使っているが、本来ならば、単独で行使するこの術は、相手に触れて、その者の未来を覗くというものだ。

オレのは鍛え過ぎてその必要がなく、占いというより、未来予知に近い代物になってしまった。

あの戦いの中で、相手がどう来るかを予知して、その攻撃への対処をいち早く打ち出す。

これが、六壬神課という術の真の姿といえる。

最も、オレは陰陽道を戦う術として教えられたので、他の陰陽師に言わせれば、多分違う意見が出てくるかもしれないが。

 

桃にも同じように、陰陽道を叩き込んだ以上は、用途はオレのそれと相違ないはずだ。

 

 

腕部を刃の形に変えての斬撃を躱して、霞打ちを三発繰り出すが、通じてはおらず、ならばと突きを逸らして放った脾腹蹴りも、効果は今一つ。

 

「 手応えが、薄い!? 」

 

「 ―――――!! 」

 

 切り払いを距離を取って回避、そこからさらなる技を使用する。

 

「 灘神影流 鷹鎌脚っ! 」

 

 跳躍し、回し蹴りを放つ。風圧で地面に円ができるほどの力が働く技だ。

今度は、直接ではないにしろ、確かに当たった感覚を覚えたようだ。

 

「 そうか。そういうことかっ 」

 

 桃も少しずつだが、気づくつつあるようだから説明しよう。

 

 この禍巫剣は、全身が霊圧を帯びた紙で構成された式神だ。それ故火には弱いが生半可な火力では焼き殺せず、損傷も即座に修復する。

その性質を活かして攻撃が命中する際に、身体の一部を分解して、衝撃を分散する。

 

 そのため、半端な打撃、斬撃ではまともなダメージを与えることは至難の業。

今の戦いに飢えた桃には、うってつけの相手だ。

鷹廉脚が効いたのは、風圧という見えないレンジまでカバーしきれなかったからなので、そう何度も通じないだろう。

しかしからくりが分かったのならば、対処するのはむずかしくない。

 

「 破道の三十一 赤火砲! 」

 

 鬼道の基本となる技、破道三十番代の一番目。

掌から放たれた火球が白い霊体の腹を焼く。

が、やはり分裂した紙数枚の損傷で済ませ、致命打には至らない。

 

いや、本命は此処からか。

 

「 縛道の六十一 六杖光牢っ 」

 

 汎用性の高さが知られる、縛道の六十一。

その名の通りの六つの光の帯が、禍巫剣を拘束し、身動きを封じる。

これによって、中身が剥き出しになり、さらに、そこに本命の一撃が加えられた。

 

「 灘神影流 釘突きっ 」

 

 命中の寸前で拳を捻って威力を上げ、傷を負った部位をピンポイントで狙い打つ技。

瞬鬨によって炎熱属性を付与され、欠損した部分から内部、というよりは、より多くの紙を狙ったこの一撃は有効打であったらしく、ふっとばされた霊体が、手入れをされなくなって久しい賽銭箱に激突した。

 

「 やったっ 」

 

「 いや、まだだっ 」

 

 やられれば、やり返す。それは当然のことであるし、一時の油断が命取りとなる。これも当たり前だ。

 

上半身だけの状態で立ち上がり、分裂した札紙を桃に向かって飛ばす。

 

しかし、

 

「 破道の七十三 双連蒼火墜っ 」

 

 破道七十番台鬼道によって、諸共に焼き払われる。

流石は鬼道の天才と言われるだけある。

双連蒼火墜詠唱破棄とは大したものだ。

 

さらにそこに彼女の相棒、そう・・・

 

「 弾け!飛・梅!飛・梅!飛・梅! 」

 

 鬼道系斬魄刀、飛梅の火球が連打される。

鬼道を込めることで火力を増すそれは、ここ最近の桃自身の鍛錬によって、さらに威力を増しており、そんなもの何発も喰らえばひとたまりもない。

 

 禍巫剣は、腹が黒焦げ、両腕も燃え落ちている、見るも無残な状態になっていた。そんな自身の式神をカードの中に戻し、

これにて勝敗は決した。

 

「 そこまでっ 」

 

「 お前の勝ちだ、桃。 」

 

「 やったぁ♪ 」

 

 その笑顔は、陽の光のように眩しく感じられた。

また一つ、彼女は試練を乗り越えた。

もはや、あの男の傀儡であった雛森桃ではない。

 

オレはその後カードに入った式神に目をやり、労ってやった。

 

「 お前も、お疲れ様・・・ん? 」

 

 その時、中にいる霊圧が揺らいで少しだけ強まったのを感じ取る。

悪行罰示などの明確に自我を持った式神は、その自我故に使役するには、有効関係を結ぶか、明確に術者の方が力が上であると示すかするしかない。

つまり、式神を運用するには、その式神と縦か横の関係を結ぶ必要があるわけだが、

禍巫剣はどうやら、両方の意味で、桃を気に入ったらしい。

 

 

 後で、こいつを寄越しておくか。きっと、有効的に活用してくれるだろう。

最も、死神の矜持だかなんだかに囚われているようでは、そう出番はないのかもしれないが。

がしかし、将来は式神使いが死神の中で、一定の需要を見せるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 それから数分。オレたちが拠点に戻ると、見覚えのある顔があった。

 

「 お、帰ってきおったな。 」

 

 金色のおかっぱに、白い隊長羽織を羽織った長身の男。

平子真子。現5番隊隊長。桃の上司だ。

迎えに、いらしたようだ。

 

「 ご無沙汰しております、平子隊長。 」

 

「 おう、邪魔しとるで。

・・・桃、また霊圧高なったみたいやな。 」

 

「 ありがとうございます♪ 」

 

「 もうそろそろええやろ、というか、戻って来てもらわんとそらそろ俺らもキツなってくるわぁ。 」

 

 オレからも、言ってやった方がいいかもな。

 

「 桃、そろそろ戻れ。平子隊長だけじゃなく、冬獅郎もお前を心配してるだろうし。 」

 

「 うん、じゃあ、そうするね。 」

 

 ううむ、渡すなら、今か。

 

「 こいつ、持っていけ。お前を気に入ったらしい。

今は弱っているが、尸魂界ならばすぐに回復する。いざとなった時に呼べ。必ず、力になってくれるだろう。 」

 

「 いいの? 」

 

 

「 構わないよ、お前コイツに気に入られてるらしいし。

活かしてくれよ、オレの教えたことも、そいつも。 」

 

 

「 またけったいなもんよこしおって。

ま、んでもそう悪いもんでもないわな。

・・・そうや、悟。 」

 

「 まだなにか? 」

 

「 "獄庫"のアレら、見させてもろたで。

お前、とんでもないもん抑え込んどったんやな。 」

 

 そのひと言を聞いた時、オレの顔が少し強張っている自覚がでる。

 

獄庫。八番隊が管理している倉庫の一つだ。

 

中には、オレや鬼道衆が現世から回収した中でも、危険性が強すぎる呪物や式神をそこに置いており、

 

一般隊士や他の座官はもちろんのこと、隊長副隊長や果てには四大貴族の立ち入りをも禁止している、今では尸魂界屈指の危険地帯となってしまった。

 

八番隊の隊長副隊長に座官以外で、許可なく入れるとすれば、総隊長くらいなものである。

 

そんな場所に平子隊長が赴いたということは、京楽隊長辺りに話を通した、或いは110年に渡って尸魂界を追われていたことから、実際に見せておいた方がよいと隊長自らが招いたのだろうか。

いずれにせよ、平子隊長は目の当たりにしてしまっているのだ。

 

 "人間の、底しれぬ闇を"。

 

 オレが主として対峙する存在、歪んだ整。

虚とはまた異なる悪霊であるこれらは、その多くが、人の暗黒面より生まれいでる。

それらの中でも知り得る限り、恐ろしく、悍ましいものの集う場所。それが、八番隊の倉庫である。

 

「 ・・・あれは、人間のやることとちゃうねん。

あないに言葉にするのも憚られるちゅうんかな、そんな感じの、見たのは久方ぶりや。

そう、"九州におった時以来や"。 」

 

 

 そのときの平子隊長は、いつものニヤケ顔が少し青ざめているように感じた。

それは真っ当な反応だろう。

あんなものを見てしまっては。

 

「 あぁ、済まん。辛気臭くなってもうたな。

お前に会いに来たんは別件もあってな。 」

 

「 別件? 」

 

「 実はこの頃、東京の方で妙なことが起き始めとるようでな。

京楽がお前と相談したいから一度尸魂界に戻れ言うとったわ。 」

 

「 妙なこと? 」

 

「 そいつは、本人に直接聴いた方がええやろ。 」

 

「 では、赴くとしましょう。 」

 

 こうしてオレは、一度尸魂界に戻り、隊長からなにが起こったのかを聞くことになるが、

この時は、あんなことになるとは思いもよらなかったろう。

 

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