先人の遺した遺産、果たしてどういったものか。京楽隊長がああ呼んで、恐竜に一生涯を捧げたというほどなのだから、きっとその人は十二番隊の技術屋らしく、想像もつかないような凄まじい物を残したに違いない。
200年前か。陰陽道の使い手が、今よりずっと多かった頃だ。
滅却師たちを殲滅したのも、その辺り。その方は果たして戦果を挙げられたのか。そもそも参加したのか。
今は、生きてらしているのか。ならば今、どこにいるのか。
ただひたすら獄庫へのワクワクが膨らんでいっている時、懐の通信器に、着信が入る。
苛立ち半分に、誰からの着信かもあまりよく確認せずにその後にガラケーとかって呼ばれるタイプの通信器をパカっと開いて耳に当てた。
「 はい、誰?冬獅郎? 」
『 おいおいサトっちゃん。誰からの着信かはちゃんと見ようぜぇ? 』
「 カツラ。久方ぶりだな。 」
『 おひさつっても、オレちゃんは時々電話寄越してたろぉ。 』
「 この三ヶ月間は電話しなかったじゃないか。最後に寄越したのは帰国して直後の辺りだった。 」
『 いやぁ、悪いと思ってさぁ。サトっちゃんがルッキャさんや雛森副隊長とできてんじゃないかとみんなして思っててさぁ。噂ンなってたぜぇ?あの二人に特別な稽古をつけてるってさ。 』
「 そんなわけないだろう。
片や四大貴族の身内、片や冬獅郎の意中の女だ。
変に手をだしたところで、オレには一銭の得もない。 」
『 だよなぁ。でもオレちゃんとしちゃそのほうが面白いけどよ。それよりもよサトっちゃん。シゲっちがお呼びだぜ。オレちゃんも久しぶりに顔見てぇからよ、ウチ来てくれよ。 』
「 分かった。技術開発局だな。 」
電話を寄越したのは、霊術院からの馴染みだ。周りから浮いていた中で、数少ない親しい友人だった。
二人揃って十二番隊、そして技術開発局に入ったらしいが、元気にしていたのだろうか。
直接会わなかったのか?ほぼ会うタイミングがなかったのだ。
「 まぁ、先ずは会ってみないとな。ほれ、戻れ鱶丸。 」
「 クゥ~ン・・・? 」
「 これ以上お前で出歩いたら、面倒なのと蜂合うからな。戻れったら戻れ。 」
懐疑的な声色で唸る鱶丸を無理やり戻して、オレは別の式神を繰り出した。
特に朽木隊長がね、視線が怖いんだ。
「 来い、闇鴉! 」
『 カァッ!カァッ! 』
「 技術開発局へ飛べ! 」
『 カァッ!マタ知らないトコ!知らないトコ! 』
『 鳥ヅカイガ荒イ!鳥ヅカイガ荒イ! 』
「 うるさい!オレが指示するからそこに飛べばいいんだ! 」
『 了解!了解! 』
ああだこうだというヤミカラスだが、こいつはやけに律儀な霊鳥だ。
なんだかんだ云うことを素直に聞いてくれる。
式神とはやはりいい。御するには死神本人の力が求められ、その存在そのものが死神のステータスとなる。
コミュニケーションだって、この通り取れる。
師匠がいた頃は、本当にたくさん陰陽道を使えるものがいたそうだ。
今となってはほんの一握り位だ。
その頃の人たちは、どれだけ強かったろうか。
そう、京楽隊長の同期だったという、恐竜屋敷の先人も。
どんな方だったのか。
目では知らない過去に思いを馳せながら、黒い鴉の背に乗って、風を受ける。
下を覗けば、瀞霊廷が小さく見える。空からすれば、どこも同じなのだろうか。
式神図鑑
レベル 55
タイプ フェアリー 飛行
臆病な性格。伊勢神宮でレベル49のときにであった。
光るものが好き。
図鑑説明
太陽の神の神使たる伝説の霊鳥にして導きの神。その三足は、天・地・人を表すとされる。
その頃、技術開発局。
「 おーいシゲっちィ、電話しといたぞ・・・うわっいつ見てもグロいなぁ、それ! 」
「 それとはなんだ。これでも一応、護廷を思っての研究なんだぞ? 」
「 いやいやぁ、式神のウケがわりぃの霊術院いた頃から知ってんだろ。 」
「 だからこうして少しでも不安を和らげる為に死神の手を加えたヤツを作ってんだろ。不満点があるなら、それを改善する為に手を尽くすのが科学だ。良い結果がでれば、それだけ見直してくれる奴も自ずとでてくる。丁度使ってくれそうなヤツもいるしな。
お前だって火薬の調合やら霊子手榴弾の開発やらしても、殆ど現場の連中使わねぇじゃん! 」
「 そらあいつらが悪い!弱ぇくせにテメェのメンツばっか気にしてさぁ!刀一本でどうにかなるほど虚は優しくないのによ。 」
「 それは同感。毎年護廷は人手不足だ。だからこそ、こういったのが必要になってくるのに、現場の連中は頭が硬すぎるように感じられてならない。
少しはうちの涅隊長を見習って欲しいもんだよ。 」
「 またまたぁ。実のところそれ、シゲっちのエゴだろ?オレちゃんだってそうだし!それだってその最たるものじゃん。 」
「 それじゃねぇ、トリケラトプスだ。 」
「 ホントかなぁ?トリケラトプスってこんなメカメカしくねぇだろ。オレちゃん映画観てっからわかんぞ。 」
「 当然だろ。こいつの生身の部分は、骨格と大脳だけだからな。そこも勿論、改造済みだ。周りのもそうだぞ。 」
「 うわぁ、マッドォ〜。 」
「 お前も大差ねぇだろ。整霊や虚を相手するに斬魄刀だけじゃ足んないからって、火薬や重火器類作りまくってさ。十一番隊からめちゃくちゃ不評だったろ。 」
「 あんな連中、金魚の糞みたいなもんじゃん。更木剣八っていうでっけぇ強え金魚のさぁ! 」
「 違いないな。それよりも、カツラ。 」
「 何ー? 」
「 こないだのオーロックスよろしくこいつにお前の銃使いたいんだけどさ、いいか? 」
「 これ、アンキロサウルス?そこで培養してるやつ? 」
「 そうそう。そいつにお前の発明品をたくさん金ピカに塗って、引っ付けんだ。会敵した相手に、パンパン乱れ撃って蜂の巣にするって寸法さ。
火力は過剰にしたいから、よろしくな。 」
「 ほーん。尻尾とか手ぇつけないの? 」
「 あんなもの、すばしっこいのには当たらない。後ろを警戒する為のレーダーくらいに留めとくので十分だ。 」
「 マァジィ?アイデンティティ崩壊もいいとこだけども、いいんでない?オレたち技術屋の端くれだしさ。
・・・んで、この設計図と一緒に、別のあるけど、これなに?"完全人造式神"? 」
「 あぁ、それ。今はまだ構想段階のものだ。
多分実現するのは、もう数ヶ月後になるだろうよ。 」
「 へぇ~、楽しみ♪ 」