オサレポケモンバトル   作:ニコラス―NICORUTH―

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式即是空

 

「 照らし出されよ、闇鴉(ヤミカラス)。 」

 

 カードを取り出して式神を召喚する。

現れたのは、巨大な黒いカラス。読んで字のごとくだ。

ただ、周りの人たちにはやはり見えていないようで、オレよりもデカいそいつには、まるで目もくれない。

飛ぶならヨルノズクでも良いのだが、アイツは霊なまじ強すぎて街中の霊に悪影響なので、コイツにした。

コイツとも、まぁ長い付き合いだ。

大昔に神社で拾って以来の。

 

「 B山に飛べ。 」

 

「 リョウカイ、リョウカイ、カァッカァッ! 」

 

 喧しく鳴きながら、オレを背に乗せ、ヤミカラスは空へとその漆黒の翼をはためかせる。

ロンドンの街並みが段々と遠ざかり、人がまるでアリのように小さくなっていく。

青空の中を進むと、別の街が見えては過ぎ去り、また別の街が・・・と繰り返す。

その姿に、いつか見た東京の街並みがダブって見えた。

こうしてみれば、どれだけ違えど、やはり人間は人間であると感じさせられる。

 

 ロンドンの心霊スポットの霊たちも、ワイルドハントも、皆それぞれの時代を生きた。

本人たちがどう思おうが、過去の人間は過去の人間だ。

己の方から来るならよい、能動的に襲うのもそれはオレは許そう。色んな意味で利になるしな。

だが、自分が今の人間たちの世を乗っ取って、また現世を支配するなんてことはあってはならない。

三界の理を崩すなど、誰にも、如何なる神にも許されてはいない。

まして、生者たちの人生すべてを奪い去るなど、以ての外。

 

アーサーの憤りだか、我欲だか動機そのものに付随する感情は分からないが、今は今、昔は昔。その分別が出来てない奴はゴミだ。

だからといって、劣化しすぎるのも問題ではあるのだろうが、自分たちの価値観を、現世の人間に押しつけてはならない。

 

 そして見ろ。目の前にはそれがわからぬバカモノどもの群れ。

例に溺れずワイルドハントの魔犬を連れた、アーサーの兵隊たちだ。

 

「 敵襲!敵襲!コロス!コロス! 」

 

「 構うな。お前は飛ぶことに専念しろ。 」

 

 ヤミカラスは血の気が立っていた。コイツでも十分戦えるのだろうが、それで脚を止められるわけにもいかない。

ここは無難に、こいつで行こう。

頼むぜ。

 

Dimitte me(任せろ)・・・ 」

 

「 来い、炎凰(ファイヤー)。 」

 

「 Phoooooooooooooo!! 」

 

「 アツイ!アツイ!加減シロ!加減シロ! 」

 

 召喚された、白い炎翼が、狩り群れを焼き尽くす。

六壬神課によれば、ここで円卓の一人とエンカするというのが・・・あぁ、こいつだ。

今オレの眼の前で馬に跨って旗を持ちながら焼かれている、いい感じに武装した奴。

 

「 破道の七十八 斬華輪。 」

 

それを破道でぶった斬り、より弱らせたところで形代の中に封じ込めた。

七十番台破道でダウンするほどに消耗しているのだ。

抵抗はできまい。

 

「 ジャンヌダルク、ゲットだぜ。 」

 

 かつて、イングランドとフランスの間で百年に渡って燃え続けた戦火。

それを鎮め、母国を勝利に導いた乙女も、この有様だ。

死の間際はそれはそれは惨たらしいものであったらしく、神の意志と信じて戦った末に国に見放され、死んだ後も安寧も救いもなく、何より死後の今が、人生をかけて、自分の名誉の為に戦ってくれた、母親の想いを踏み躙る形になってしまっているとかなんとか。

それでもアーサーには抗えず、従う他にないと。

憐れなものだよ。まぁ、それもすぐに終わらせてやるが。

 

何故知ってるか?バカ真面目に戦った未来を視たからだ。

西洋に無学なオレだが、ジャンヌダルクのことくらいなら聞いたことはある。

正直、会うならもっと悍ましい呪いを持ってるもんだと思っていた。焼き殺すだけとはお優しいことだ。

悪霊は、その多くが生前から歪んでいたり、非業の死を遂げたことで無念や恨みを抱いたり、死後に何らかの執着を明確に有していたりすることで発生する。

その為、その固有の能力たる呪いは、死因などに由来するものが大半だ。

日本本国はよりその傾向が強い。

彼女たちの場合は、曲がりなりにも聖者と讃えられる位なのだから、性質的には、祈りに近いものもあるのかもしれない。

 

悪霊の癖にまともなのか?そんなのもいるらしい。

あの駄菓子屋の主人、涅マユリの前の代の十二番隊隊長が、そんな霊に会ったことがあるそうな。

自分から決して害を与えないが、どうも生前はどこぞの戦場にいたことがあるらしく、その時の腐れ縁たちが、生者や他の霊に危害を加えていて、本人はそれを苦々しく思っているらしい。

主人は斬魄刀による魂葬を試みたらしいが、なにかによって遮られてしまい、失敗に終わったと。

その後、その霊は何処かへと姿を消したらしいが、肝心なのは、本人に害意がなかったこと。

 

 

オレ自身、そんなのには覚えがある。

 

十人十色とはいったもので、悪霊にも色々いるというわけだ。

まあ、元は人間、この世で最も知能が発達した生き物なのだから、それも当然か。

しかし、世に涅マユリのような天才や、稀代の名君がいれば、逆に救いようのない信じられん馬鹿どももいる。

自分が死に、国も禄でもない末路を辿ったからといって、おお神よとかいいながら数え切れぬ生者たちの人生を食い物にして災いを齎そうとする稀代のうつけ者が。

おそらくはアーサーは、何故ブリテンが滅んだのかもよくわかっていない事だろう。

バカは死んでも治らない。これは事実なのだ。

 

 さて、円卓のおかわりが二人前来たな。

聖女ベタニアのマルタ。嫉妬の悪魔リヴァイアサンの血を引く魔獣タラスクを調伏したことで知られるらしいが、あの分ではおそらく力付くで制したのだろう。

単純なフィジカルタイプは強いからな。

 

もう片方は聖バルバラ。建築家、石工、砲手等の守護聖人で、それを示すが如く、片腕にはガトリングガン、もう片手には巨大なライフル銃、と全身に殺意マシマシのフル武装が為されている。

ここまで来ると生前の時代からだいぶ近代化している印象を受けるが、そんなことはどうだっていい。

 

いずれも真面目に戦えば、かなりの強敵になるだろう。

そう、真面目に戦えば。

 

「 焼き尽くせ。 」

 

「 Phoooooooooooooooooo!! 」

 

 相手が自分に悪魔だのなんだのとレッテルを貼った連中

だからなのか、ファイヤーはヤケに気合が入っているようだった。

熱風を放って、聖者の狩り群れたちを焼却し、さらに高温度の炎を二十の火の鳥の形に変えて、聖女たちの身体を二十回に渡って焼き殺す。

霊だから死なないが、こんなもの喰らえばもちろんたまったものではない。

バルバラはこれで戦闘不能に陥り、全身を焼かれる。一方でマルタはこれを耐えて、燃え盛りながら、真っ直ぐオレの方に飛んでくる。

彼女に何故オレに向かうのかを問うた未来があったな。

応えは、"オレを救う為だと"。

曰く、悪魔に憑かれすぎてるからなんとかと。

神がいなかろうが天国がなかろうが、自分はそうする人間だとも。

なるほど、なんと高潔なことか。明らかに悪霊じゃないじゃないか。余計なお世話だが。

そういう善し悪しに囚われた考え方、良くないと思うがねぇ。

 

 がしかしそんな彼女に敬意を評し、これを使うとしよう。

まずは死覇装を脱いで、それを隙間の中に放り込むと。

これでいい。上が薄くなったが、服が破ける心配もない。

 

本来ならば、隠密機動の長に代々伝わる奥義。

身体に鬼道を纏わせる技。

オレはそれをやはり地獄で学んだ。

白打はからっきしだが、鬼道に富むのでそちらで補って使っている。

 

・・・さて、地獄におわします四楓院様、どうかご照覧あれ。

かの神との遭遇にて得たその御業に、御方の妙技を重ね合わせましてございます。

 

 

 

――――瞬鬨 "星神戦形(しょうじんせんけい)"!!

 

 

 超高度の霊子操作によって、高濃度のオレの鬼道、陰陽道を纏う。

オレ自身の瞬鬨は炎属性。つまり今オレの肩と両腕は本来ならばファイヤーにも負けないほどの炎熱を纏っているところを、いうなれば無属性に変えて、より出力を高めている。

何故炎じゃなければ火力が上がるか?

エネルギー保存の法則というやつだ。

力はなくならない。形を変えて存在し続ける。

属性を無くしたことで、熱やら電気エネルギーやらに割かれてしまう霊力のリソースをより純粋に鬼道そのものに充てられ、身体能力を劇的に強化する。

 

 オレは基本式神に前に立たせて、後ろでふんぞり返るか鬼道撃つのが戦闘スタイル。

これを使うのは余程の強敵、好敵手と認めた時のみ。

そう、例えば、あの神サマとか。

 

「 喰らえッッ!! 」

 

 オレとマルタの右ストレートがぶつかり合う。

拳と拳がせめぎ合うが、ほどなくしてオレが競り勝った。

そして、そのまま二体とも形代の中だ。

 

 バルバラ、マルタ、ゲットだぜ。

 

 

 

 

 

 さて、いよいよB山が見えてきた。辺りには、悪霊や犬の妖精が大勢いる。

アーサーは相次ぐ配下の敗走を受けて、守りを固める方針にシフトしたようだ。

 

だが、もう遅い。ここにオレが来た時点で、お前たちは詰みよ。

 

「 破道の九十九 五龍転滅。 」

 

 霊脈のエネルギーを依代として発動する、破道最強の九十九番。

このB山は地下に土地神が眠っているほどなので、凄まじい霊力が溜まっている。

それらが山肌より噴き出して、五つの白い龍となって、霊たちを蹂躙する。

さあ、偉大な騎士王と愉快なお友だち。

死ぬんなら、お前らだけで死んでもらおうじゃない。

もうとっくに死んでんだろうが。

 

・・・ん?なに?日番谷冬獅郎と同級生だったくらい若手のお前が、なんで五龍転滅使えんだよって?

 

あるんだよ。陰陽道に雨乞いの儀式だか何だかっていう似たような鬼道。

五属性の龍で攻撃するっていうカッコイイヤツが。

それが五行属性の式神を使うから、これを応用して霊脈に置き換える要領で破道の九十九を飛ばしで使えるようになるって師匠が仰っていたし、実際にそうだった。

現在オレは、百歳前後の死神の中でも数少ない、破道の九十九を使用できる一人というわけだな。

あと思い浮かぶといえば、伊勢副隊長か。

 

 

 

 さあ、ご自慢の軍勢は大打撃だが、肝心の王さまは・・・

おお、変わらずど真ん中で堂々としているか。

円卓に列せられし聖者たちの残り三人。

聖ジョージ、新神学者シメオン、聖ヒエロニムス。

さらにその他にも聖クリスティーナ、聖ウァレンティヌス、

アルフレッド大王、大アントニオス、ウルスラ、イノケンティウス一世・・・と名だたる聖者たちを含めた歴史上の偉人らしき霊たちが、アーサーの取り巻きとして一堂に介している。

他にも、妖精とかそういうファンタジーな奴らもまだまだ残っている。

最近ポケモンででてきたフェアリータイプに属するような奴らだ。

五龍転滅でダメージは受けているが、それでもまだ動けるとはやるじゃないか。

ていうか、なんでこいつら尽く女なんだ?

ワイルドハントって女所帯だったのか。

 

まあ、どうだっていいが、こいつら数が多いな。

よし、全員蹴散らすか。

 

―――顕れよ、空即是式。

 

 今の今まで温存していた、この悪行罰示とファイヤーでさらにダメだしだ。

 

 

「 大地に立て、武炉須汰(ブロスター)。 」

 

 なんでこんな解号にしたって?そりゃ、こんなのでてきたら、ねぇ?

なんて思っていると、半開きになって剥き出しになった刀の刀身から、怪しい煙だか瘴気だかが立ち込め、辺りを覆った。

 

「 コワイ!コワイ!コワイ! 」

 

 ヤミカラスがビビっている。まあ、こんなんでは無理もないが、やんごとなき神霊の眷属であるからにはもう少し根性を見せてほしいものだ。

そして、その霧の中からどデカい船が現れれば、なおのこと。

そして、その船の船体が開いて、その上になにかの人影が現れる。

滑走路の上にでも立っているのだろう、それが滑って、船の上から放り出されると、背中からジェットを吹かせて飛行しだした。

今更感があるが、こいつらも元は人間、だよな?

人間ってなんだったっけとこいつを見ると常々思うものだ。

 

その巨躯の長い左手に持った大弓が構えられ、矢が放たれる。

明らかにビキュゥゥウウン!と、矢の風を切るそれではない音の後にそれは聖者たちを二人ほどぶち抜いて、地に伏せさせた。

そして、間も空かずに次弾が次々に射られる。

名だたる聖人たちが、一人また一人と矢の筵にされていく。 

 

所詮は善良さで己を満たすことしか能のない連中だ。

本当の修羅を知る真の兵の敵ではないようだ。

 

これが、鎮西で出会った悪霊、武炉須汰である。

 

大剣鬼のような、鎧武者の装いながら、明らかにそれ以上に異質な存在。

どう見たってこれ、人間じゃないよ。

駆動音とか聞こえるもん。

テレビなんかでみたやつじゃないか。

平安時代どうなってんだと。

 

まあしかし、そんな人間離れした見た目通り、その威力も規格外である。

彼の主兵装は見ての通りの大弓。

霊力の矢をこれで射るのだが、その破壊力たるや計りしれず、山一つ消し飛ばすなど造作もない。

ええい、平安の田舎武士は化物か。

それを乱射するのだから、たまったものではない。

ただ、本人も威力のほどは自覚しているのか、よほどのことがない限りは本気で射ることはほとんどない。

それでもこれなのだから充分であるが。

 

なに?護廷の役目はどうした?過剰戦力だあ?

 

・・・綺麗言で三界のバランスなど保てるものか。

現に今、欧米の魂魄の天秤が危ういというのに。

 

 

 そして、アーサーだが、流石にここまでやられれば、そのまま突っ立ってるわけにもいかなくなり、こっちに向かってき始めていた。

一応、オレは今、ヤミカラスの背に乗ってB山上空にいるので、騎士らしくいい感じのウマに乗ってそれに向かって飛んできている。

 

好都合だ。このまま仕掛けよう。

 

 

 行くぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――卍解 "式即是空"。

 

 いつの間にか着直されていた死覇装の黒が、オレの髪が、白に染められていく。

何故かはわからない。だが、確かなのは、

この世で不変のものはないという事実だけ。

これを使うときは、いつも静かな心持ちになる。

まるで、この世衆生のすべてを知ったような。

悟ったような。

 

 そして、視える。

陰と陽。男と女。

傷と無傷。

そして、

生と死、肉と骨の境界線。

魂魄にさえ、それを見出すことができる。

 

昔読んだ、小説のようだ。それ風にいえば・・・

 

―――直視。

 

それが、オレの卍解とだけ、この場ではいっておこう。

 

そして、もちろんアーサーにも、それが視える。

 

それを一閃。

この北欧に来て、初めて振るった、最後に振るう斬魄刀の斬撃であろう。

 

刹那、騎士の王の首が吹き飛んだ。

死の境界線を斬られたからだ。このように境界を視て干渉するのが、オレの卍解だ。

霊は死なない。首をもがれようが、心臓を抉ろうが、既に肉体を失った彼らはもう、終わりを迎えることはない。

だが、殺すこと、正確には身動きを止めることはできる。

なにもできぬということは、死んでいるのと同義なのだ。

 

これにて勝負あり。

 

斬魄刀の刃をしまい、あっけにとられた間抜けな顔を浮かべた、愚かな王を封じ込められ、狩り群れは、オレという一個人に敗れた。

 

アーサー王、ならびに聖者ども、ゲットだぜ。

 

これが、オレが西洋で為した大仕事である。

 

 

 

 

その後、

 

 

「 面白ぇなぁ、タフ。 」

 

オレは格闘漫画にハマった。

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