第三章と第四章は同時並行で起きたことです。
「ハイドリヒ。
良くも悪くも、お前は爪牙の質に力が引っ張られてしまうだろう。」
「ああ、あれで良かったのだよ。刹那に必要だ。それに、案ずるなよ。私は負けん。
私は波旬を
卿の方こそ、女神を息子に託して良かったのか?」
「他ならぬ彼女自身の願いだからな。
彼女の手で逝けんのは心残りだが、彼女の願いを叶える方が優先だ。」
「では、行こうか。カール。」
「ああ。ハイドリヒ。」
かつてとは違い、並んで歩いていく。
すると、流出の拡大が止まった。だが、力を制限されているような窮屈さは感じない。
「刹那か。」
「ああ。これであれには誰も触れていない。私たちはな。」
波旬の覇道が凝縮している。自己の深奥へ意識を向けている。
身体を掻きむしりながら、ぶつぶつと言葉を漏らしている。
「女が消えた?…訳ではないが、俺に触っていない。
ああ。そうだ!それでいい!誰も俺に触るんじゃない!
…今は誰も触っていない。そのはずだ。
なのに不快感が消えて無くならない。
誰かが俺に触れている。俺にへばりついている。
気持ちが悪いぞ。誰だお前。」
ラインハルトが聖槍に魂を注いでいく。百万の軍勢を、己の魂を、霊気が立ち上り、負荷に耐えきれず彼の全てが自己崩壊を起こしていくが、それでも止めない。
ただ一撃に、全てを乗せる。
メルクリウスもまた、詠唱を開始した。
「
メルクリウスの魂の全てを注いでいく。負荷に耐えきれず彼の全てが自己崩壊を起こしていくが、それでも止めない。
「
ー暗黒天体創造ー
波旬を中心にブラックホールが生み出される。かつて座を持っていた時発動できたものと同等規模の全てを賭けた魂の一撃。
そこにラインハルトの放つ光線が吸い込まれ、全ての魂を突撃させる。
ラインハルトが放った光線は
それがブラックホールによってさらに一点に凝縮され、多元宇宙規模のクエーサーが発生した。
彼らが放てる最大の一撃。初めて行った合わせ技は完全完璧の精度で、どちらの力も食い合うことなく発動した。
肉体が、精神が、魂が崩壊し、消滅していく。
そしてその一撃はー
適当に払った波旬の手で容易く消滅した。
それほどまでに絶対的な質量。
そこには無傷の波旬が佇んでいた。
「鬱陶しい。まずはお前から潰してやる。」
回帰を押し潰し、メルクリウスに波旬の右手が直撃し、メルクリウスが消滅していく。
メルクリウスの消滅によって、自滅因子のラインハルトもまた消えていく。
「なんだ、
そうして、もう一度波旬は自身にへばりつく何かを探し始める。
「
メルクリウスの暗黒天体創造とハイドリヒ卿の全軍突撃の合わせ技は覇道神同士故の威力減少は起こっていないとしていますが、次話で若干補足が入ります。
一見、ハイドリヒ卿が原因でメルクリウスが死んだように見えないですが、ハイドリヒ卿が畸形嚢腫を見つけたせいでこのif√の作戦が通り、本編先輩√のメルクリウス生存に繋がらないよう回帰を行わせなかったと考えれば自滅因子としての役割は果たしているのではないかと考えています。