人類削減計画(に巻き込まれたオレ、転移先で頑張ります) 作:つりーはうす
ある日、その夢を見なかった人類は一人もいなかった
老若男女、民族、年齢、それら全ての要素関係なく、すべての人類が同じ光景を“見せられた”
どこまでも続く白い空間
地平も空もなくただ“在る”だけの場所
そこに"ソレ"はいた
姿はよく見えないし輪郭すら曖昧
だが、それでも誰もが直感した
これは"人ではない"と
『人類よ』
"ソレ"を認識した直後、声が届いた
耳からではなく脳内に直接流し込まれるような、そんな不快で未知な感覚を味わいながら声は続いた
『これより、汝らに試練を与える』
淡々とした声音
感情の揺らぎは一切ない
『生存せよ、適応せよ、淘汰されるな』
一言、唯それだけだった
理由も、説明も、一切ない
『観測を開始する』
そう一方的に宣告すると同時に世界は暗転した
人類が目を覚ました瞬間、世界は何も変わっていなかった
だが、少しずつではあるが世界はざわめきに包まれ始めた
『お前も見たのか?』
『同じ夢……?』
『は? ただの作り話だろ』
至る所で同じやり取りが何度も繰り返されていた
笑い飛ばす者
不安を隠せない者
すでに“ナニか”を確信している者
だが、そのどれもが確証には至らない
ただ一つ、全員に共通していたのはあの声が頭から離れないということだけだった。
変化は翌日の昼に訪れた
前触れはなく突然だった
『っ……!?』
違和感
気づいたときには各自の右手中指に“ソレ”が嵌っていた
装飾はなく掠れた銀色の指輪
外そうとしてもびくともしない
『なんだよ、これ……』
至る所でざわめきが広がる
そして世界中で同じ現象が起きていることを誰もが直感した次の瞬間
指輪から光が滲み、空中に薄く透けたモニターのようなものが現れた
そして
『確認した』
夢での白い、何もない空間で聞こえた声が辺りを響かせた
『全個体への接続を完了』
無機質な宣告
辺りは騒めきだしたが
『一週間後、試練を行う』
その一言に辺りは一瞬で凍りついた
『選ばれし者は我が選定した世界へと転移する』
短い言葉
だが、その意味はあまりにも重い
『選定基準は開示しない』
誰かが息を呑む音がした
『拒否権は存在しない』
絶望がゆっくりと広がっていく
『これは全人類に平等ではない』
これは夢ではないと悟った
『以上』
そして、モニターは何事もなかったかのように消えた。
声が消えると同時に辺りは悲鳴が上がり始めた
その日、世界は終わらなかった
だが、確実に“壊れ始めた”
泣き崩れる者
怒号を上げる者
祈り始める者
ただ立ち尽くす者
誰もが理解した
あれは夢ではないのだと
逃げ場のない現実だと
そして一週間後
すべてが始まる