人類削減計画(に巻き込まれたオレ、転移先で頑張ります)   作:つりーはうす

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プロローグ3

夢を見た

いや、「見せられた」と言った方が正しいのかもしれない

 

白、白、白

気づくと辺り一面真っ白な空間に俺はいた

地面も空も境界が曖昧で自分が立っているのか浮いているのかも分からない

ただ一つ、俺の頭上だと感じる方向に、"ソレ"はいた

姿はよくわからん

なのに、確実にそこに何かが"イル"と分かった

そして認識したら体が震え始めた

可笑しい、夢なのに何で怖いんだ?

俺の非凡?な脳が"コイツ"を直視したらダメだと警鐘を鳴らす

理屈じゃない

脳は理解を拒否しているのに本能が勝手に確信していた

 

 

そんな単語が違和感なく俺の頭に浮かんだ直後だ

 

『人類よ』

 

声...ではない

直接頭の内側に流し込まれるような未知の感覚

 

『これより、汝らに試練を与える』

『生存せよ、適応せよ、淘汰されるな』

『観測を開始する』

 

ただそれだけ

説明も何もなく声は消える

勝手に始まって、勝手に喋って、勝手に終わった

おいおい、今時のアプリゲーでもチュートリアルはあるぞ

消えたと同時に体の震えも無くなり、そう強がっていると

 

視界が黒く塗りつぶされた 

 

 

 

 

 

「……は?」

耳音でスマホのアラーム音がけたましく鳴っていた

周りを見渡すといつもの散らかっている見慣れた自分の部屋だった

いつもの朝だ

夢にしては妙に生々しかった

変な汗もかいてるし心臓の鼓動も少しだけ速い

けどまあ...

 

「……試練って」

思わず笑ってしまった

どんな中二病だよ、と

昨日の夜に変な動画でも見たか? それとも寝る前のスマホが原因か?

まあいい、理由なんてどうでもいい

現実は何も変わっていないんだから

少しホッとすると、アラーム音を消し部屋から出た

 

いつも通りの朝だ

いつも通りアプリのデイリーを消化しながら朝食を食べる

俺、白石悠馬のいつも通りのルーティンをこなしながら学校へと向かった

 

 

 

 

 

教室に入るといつも通りだった

誰かが騒いでいて、誰かが寝ていて、誰かがスマホをいじっている

いつも通り何の変哲もない日常だ

なんだ、俺の妄想だったんじゃねえか

そう勝手に結論づけて自分の机に向かおうとすると

 

「ねえ、昨日変な夢見なかった?」

 

俺は思わず声が出た方へと顔を向けた

発信源はクラスの女子グループ

このクラスのカースト上位のコミュ力お化けJKと"アイツ"

 

神城澪

挨拶くらいはする、だけど名前を呼び合うほどの関係ではない、ただのクラスメイト

容姿は端麗

肩までかかるぐらいに伸びている薄く青みがかった髪

胸もまあ、健全な男子校生だと一度は見てしまうぐらいの大きさだ

カースト上位に位置してもおかしくないけど性格的なのか上位にいこうとしない

だが下位でもない

まあクラスの潤滑油みたいな存在だ

 

「え、分かる。なんか白いとこでさ」

「そうそう! で、なんか神様?みたいなのが――」

「『試練がどうこう』ってやつ?」

会話がクラス中に繋がっていく

誰か一人のネタでもなく複数人が同じ内容を口にしていた

 

「……は?」

 

今度は笑えなかった

白い空間

見えない存在

頭に直接響く声

試練

偶然で済ませるには無理がある

 

『マジで言ってる?』 

『いや、普通に怖いんだけど』

『でもさ、夢でしょ?』

『だよね、さすがに...』

そうやってみんな無理やり納得しようとしていた

もちろん俺もその一人だ

現実的に考えればありえない

クラスメイト全員が同じ夢を見るなんてどう考えても異常だ

でも

『……まあ、何も起きてないしな』

結局、誰かが言ったその一言で片付けた。

 

何も変わっていない。 

世界は普通に回っている

ニュースもいつも通り

空も青い

だからきっと大丈夫だ、と

俺はそう思い込むしかなかった。

 

 

 

 

 

そして、翌日の昼

先生の声が単調に教室に響いている

昼飯の後の最初の授業

眠気がピークに差し掛かっていて、正直授業どころじゃない

そう思いながら惰性に先生の話を右から左にと聞きながしていると...

ふと、指先に違和感を覚えた

 

「……ん?」

視線を落とす

右手の中指

いつの間にか

本当に気づかないうちに

銀色の細い指輪が嵌っていた

 

「は……?」

俺はこっそりと外そうとする

指に力を入れてみるのだがびくともしなかった

 

『ちょ、なにこれ!!!』

誰かの声が教室に響き渡った

どうやらこの状況は俺だけじゃないようだ

 

『指輪……?』

『いつの間に!』

『外れないんだけど!!!』

 

教室中が一気に騒つく

全員の指に同じものが嵌っていた

デザインも、大きさも、完全に同一

そして次の瞬間

空中に光が走った。

 

「うわっ!?」

目の前の何もなかった空間に突然半透明の“画面”が浮かび上がる。 

それはまるでSF映画に出てくるような、ホログラムだった

そして

 

『確認した』

 

あの声だった

夢で聞いた、あの声

夢ではなかったんだと

その瞬間ようやく理解した

 

 

 

 

 

 

その後は授業どころじゃなかった

女子は泣いてるし、男子は騒いでる

先生は必死に落ち着かせようとしていたが、その顔は明らかに強張っていた

結局、まともに授業なんてできるはずもなくなし崩し的にその日は終了

で、今帰宅中だ

 

「ただいまー」

 

玄関を開けても返事はない

両親とも共働きだから、この時間帯にいないのはいつものことなんだけど、今日みたいな日くらいは帰ってると思ってたんだけどな

 

「社会人にはなりたくないぜ」

そう小さくぼやきながらリビングへ向かう

テレビをつけると全てのチャンネルで緊急速報が流れていた

どこも同じ内容

同じ“夢”、同じ“宣告”

 

「……俺たちの学校だけじゃねえのかよ」

ドッキリじゃない

そう理解した瞬間じわりと現実感が滲んでくる

その原因となった指輪を再度見つめながらそう思った

 

「…はずれねぇえかな」

下校中から何度も試して無理なことは分かっていたが万が一があるかもしれない

爪を引っ掛けて外そうとしたその瞬間

 

「グッーモーニーング!、人類よ!!!」

「……は?」

指輪から再び画面が映し出すともに場違いな声がリビングに響いた

昼に聞いたあの荘厳で冷徹な声じゃない

明るくて…軽くて…何より…

……バカっぽい

しかも無駄に音がデカい

 

「おおっと、ファーストコンタクトのやり方間違えたかな?まあいいや。君たちの声はコッチには聞こえてないし。んんッ。あーあー、マイクテストマイクテスト、聞こえてますか〜」

「うっっせぇんだよ!!!聞こえてるから音量下げろ!!!」

「君たちの声は聞こえてないんだよ〜悠馬君」

「聞こえてるんじゃねぇか!!!って……」

 

言葉が止まる

なんでこいつ、俺の名前を知ってるんだ?

そう思った瞬間

「もちろん知ってるよ。君と同機した瞬間、君が生まれてから現在の記憶まで全て"ボク"に流れ込んでるからね。まあそう怖がらないで。ボクも君たちと同じく創生者様に造られたモノだから」

「……は?」

一瞬、言葉が出なかった。

なんか重大なことを軽く流してるがとんでもないことを言われた気がする

生まれてから、今までの記憶全部?

同じく創生者に造られた?

背筋を冷たいものがゆっくりとなぞるが、敢えて強がって口を開いた

 

「おい……軽く流してるがストーカーじゃねえか」

「やだなぁ犯罪者扱いしないでくれよ。そうだね、君たちにわかりやすいように例えると……この指輪はi○honeでボクはS○riみたいなモノさ」

「……全員がi○hone持ってると思うなよ」

「でも君は持ってるじゃん」

クソッ、ああ言えばこう言う。

 

「それよりも君、随分落ち着いてるね。他のリンクしている“みんな”からは人類はパニくってるって共有されてるんだけど……。君、恐怖心どこかに捨ててきた?」

「俺をサイコパス扱いすんなよ。怖ーよ、俺も。けど一周回ってなんか落ち着いたわ」

「へー。人間って追い詰められたらパニクるか冷静になるかどっちかに転ぶと思ってたけど、君は冷静になるタイプなんだね。よかったよかった、これで次に進めるよ」

「……次とは?」

「もちろん決まってるじゃないか。“試練”だよ」

 

おいおい、夢じゃねぇのかよ

まとまりきらない思考の中で、"ソイツ"は続ける。

 

「えーと、コホン。『試練に選ばれし者は指輪の色が変化する。選ばれし者は1週間後、我が選定した世界へと転移する。それまでの期間、親しき者、愛する者、世話になった者への別れを伝えるが良い』……以上!!!」

「以上じゃねえよ。情報少なすぎだろ!!!もっと他にねえのかよ」

「これ以上話すことはボクのご主人様から許可は貰ってないので話せませーん。では悠馬君、健闘を祈る!!!」

「おいっ待てやこのストーカー!!!」

 

声が消えると同時にパッ、と画面が消えた

そして部屋はさっきまでの騒がしさが嘘みたいに消えてテレビからの音声のみが響いていた

 

試練

転移

別れ

 

頭の中で先ほど発さられた言葉だけがぐるぐる回る

ふと、クラスの連中の顔が浮かんだ

 

泣いてたやつ

騒いでたやつ

無言だったやつ

あいつらの中にも、“選ばれるやつ”がいるのか?

 

(……いや)

 

首を軽く振る

今そんなことを考えても仕方ない

俺は恐る恐るゆっくりと右手を持ち上げて指輪を見る

 

色は――

 

何も変わっていなかった

銀色のままだ

 

「……はは」

小さく、息が漏れた

 

「なんだよ。選ばれてねえじゃん」

 

肩の力が抜ける

さっきまでの緊張が嘘みたいにほどけていく

ソファに倒れ込むように座り、天井を見上げた

 

(ビビらせやがって……)

 

現実に引き戻された感覚

いつも通りの日常

巻き込まれなかった、自分

その事実にようやく安堵して目を閉じた

 

 

 

 

 

だが――

 

その“安心”がどれほど脆いものか

このときの悠馬はまだ知らなかった

 

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