プロセカの世界に転生したオタク、過去の俺がヒロインたちに重すぎるフラグを建てすぎていて平和な日常が戻ってこない件 作:雨風 時雨
原作と違う点やキャラ崩壊があるとは思いますが温かい目でよろしくお願いします
既に作り終わってる部分はテンポよく投稿して行きます!!!
高校の放課後。
教室の窓から差し込む夕日は、どこかノスタルジックで、まるで青春アニメのワンシーンのようだった。
俺は机に突っ伏し、特有の倦怠感に包まれながら、いつものようにスマホの画面を眺めていた。
俺の名前は――まあ、適当に呼んでくれ。今はただの、神山高校に通うごく平凡な男子生徒だ。
そう、平凡だ。少なくとも、今日この時までは。
ふと、スマホの画面に目を落とす。そこには何の変哲もない日常の風景が広がっている。
前世の俺は、この画面の向こう側の世界に並々ならぬ執着を持っていた。
アニメやゲーム……特に、この世界に酷似した『プロジェクトセカイ』というゲームにどっぷりと浸かっていたのだ。
推しキャラと会話することを夢想し、二次創作に心を躍らせ、夜な夜な彼女たちの幸福を願う――そんな、どこにでもいるオタクだった。
そして今の俺は、その『プロジェクトセカイ』の世界の中にいる。
……と言っても、今の今まで、その決定的な自覚はなかった。
俺には「前世の記憶」という名の、うっすらとした霧のようなものがあった。
自分が誰で、どこから来たのか。そんな根源的な問いに対する答えは、常に頭の片隅でモヤのように揺らめいていて、決して形を成すことはなかったのだ。
その代わりに、俺はこの世界で「別の何か」を積み上げていた。
困っている人がいれば手を差し伸べ、泣いている人がいれば言葉をかけ、悩んでいる人がいれば、その心の核心に触れるような助言をしてきた。
無自覚に。――まるで、そうすることが義務であるかのように。
「……はぁ。今日も一日、平和だったな」
誰にも聞こえない声で呟く。
だが、その安堵は一瞬で打ち砕かれた。
――ピロリン。
聞き慣れない通知音が響いた。
ミュージックプレイヤーが勝手に起動し、ライブラリの最上段に、見たこともない曲が表示されている。
『Untitled』
ジャケット画像はない。ただ、白一色の無機質な画面。
俺は怪訝に思いながら、そのアイコンをタップした。
その瞬間、頭の中に激しいノイズが走った。
「うぐっ……あ、ああぁっ!!」
頭が割れるような激痛。
視界がホワイトアウトする。
今まで霧の中にあった『前世の記憶』が、濁流となって脳内に流れ込んできた。
――そうだ。俺は知っている。このキャラクターの悩みも、この世界の理も、彼女たちが抱える『想い』の正体も。
と同時に、今の俺の『現世での行い』が、走馬灯のように脳裏を駆け巡る。
奏の閉ざされた部屋で、俺が何をしたか。
まふゆの、空っぽな瞳の奥に何を見つけたか。
みのりの不安を、どんな甘い言葉で塗りつぶしたか。
「……嘘だろ」
呼吸が荒くなる。
記憶が結びついた。
ここは俺が愛したゲームの世界だ。そして、俺はただのオタクじゃない。
俺は、無自覚な『聖人』の皮を被って、彼女たちの人生の核心に土足で踏み込み、自分なしでは生きられないようにしてしまっていた……最悪の加害者だったんだ。
世界が反転する。
教室は消え去り、俺は真っ白な空間――『セカイ』のど真ん中に立たされていた。
目の前には、初音ミクと鏡音リン。
俺が画面越しに憧れ、追い求めた彼女たちが、そこにはいた。
しかし、彼女たちの瞳にはファンに向けたアイドルらしい輝きなどない。
ただ、この世界を作り出した『俺という存在』を冷ややかに見つめる、管理者のような視線があった。
「ようこそ。やっと……『自分』が何者で、何をしてきたか思い出したのね」
ミクが、氷のように静かな声で言った。
リンが、ニヤニヤと楽しそうに笑う。
「びっくりしたよ、本当に。だって、このセカイを作った当の本人が、自分の作った沼に気づいてなかったんだもん。……どんだけ鈍感なの?」
俺は震える足で立ち上がる。
ここが、俺の『想い』が生んだセカイ。
俺が彼女たちを狂わせ、依存させ、逃げ場を奪った結果として具現化した、この世界の裏側。
「……待て、待ってくれ。俺は、ただ……」
「ただ?」
ミクが首を傾げる。
そのあどけない表情のまま、彼女は俺の絶望を肯定するように告げた。
「あなたは自分が救い手だとでも思っているの? ……いいえ。あなたは、彼女たちの『本当の悩み』を解決するふりをして、もっと深い、もっと逃げられない闇へと突き落としただけよ」
冷たい言葉が、心臓に突き刺さる。
頭の中に溢れ出した記憶は、もはや止まらない。
スマホの画面に表示された『Untitled』は、俺がこれから向き合わなければならない、終わりのない泥沼の序曲だった。