擬態獣掃討作戦が終了してから2週間が経った。ダンナーベースでの生活は、大変なものだった。就任そうそうに俺は多少の技術を買われ、整備員見習いとして、おやっさんの元で雑用係をしていた。レヴリアスによって荷物の運搬であったり、フォークリフトを駆け、荷卸しや積み込みをしていた。まあ、レヴィからは不評だったが。
『ミスト、なぜレヴリアスがこんな雑用をこなしているのですか?』
「え、あー、俺が出向初日になんでもするって言ったからかな?」
『貴方、それでもアトリーム防衛部隊の一員でしょう』
「ハハ、そうだな。あれから結構経つから、実感も薄くなった」
あれだけ濃ゆかった日々も、随分と前に感じる。
『…まあ、前向きな貴方としてプラス評価としましょう。ですが、それとこれでは話しは別です』
「あー、頼まれたし…」
『断れとは言いませんが、荷物持ちは沽券に関わるのです』
「まあまあ、飛行可能で運搬能力が高いのが、レヴリアスとマジンガーZだけなんだし…」
そう、現在のダンナーベースには、マジンガーチームとダンナーベース組と俺が残っているが、ムラサメなんかの飛行可能な機体は少ないのだ。
『…理解しています。理解していて言っているのです』
「ハハ、まあ、これで終わりだから」
手に持っていたコンテナを下ろす。今日の作業はこれで終了だ。
「おーい、ミストー!レヴリアス固定して上がって良いぞー!」
「はーい!おやっさん、お疲れ様でしたー!…さ、レヴリアスもお疲れ様」
『もっと、労りなさい』
「レヴィもお疲れ様」
『…私には不要です』
レヴリアスを降りた俺は、再度、おやっさん達に挨拶して、シャワー室で汗を流していた。
「……」
「ん?先客か」
「あ、猿渡さん、哨戒終わったんですか?」
「ああ、ミストか。ここは海岸沿いだから心配していたが、今の所は問題ない」
哨戒終わりの猿渡さんは、俺の隣の個室に入った。
「お前の方はどうだ?生活には慣れたか?」
「いやぁ、おやっさん達にも良くして貰ってますからね。まあ、静流さんからは、訓練でしごかれてますが」
「ハハ、それはしょうがないな。…まあ、良かったよ」
猿渡さんの声のトーンが、気持ち落ちた気がする。
「いや、異星人云々はダリウス星とかで、割と身近なんだがどうもお前は心配勝ってな」
「ハハ、レヴィからも言われてますよ」
「おいおい、あの子にも言われているのか」
「ええ、まあ、俺が入隊した時からの付き合いですから。距離が近いんですよ」
少し照れくさくなった。だからか、鼻先がムズムズする。
「はぁ、お前はもう少し静流に鍛えてもらえ」
「え、なんでその話に!?」
その後、何度か理由を聞いてもはぐらかされた。シャワーを終えた俺と猿渡さんは、おそらくみんな集まっていると、食堂に向かうことにした。
「おー、ミストに猿渡さん!こっちに来いよ。みんなで、ゲームしてんだよ」
「へー、何をやっているんですか?」
「簡単なパーティゲームだわさ!兜、もう一回だ!!」
「ボス〜、ミニゲームで何回も負けたからって、コントローラーを回してくださいよ〜」
「そうだぜボス〜、次はおいらの番ですよ!」
「もう、甲児君も交代よ」
食堂のモニターの前で、みんながワイワイしていた。甲児君にボスさん。ヌケさんにムチャさん、弓さんがゲームをしていた。
「わかってるって、ほら、ミストも前に座れよ」
「お、交代か?なら、俺様も代わるか…猿渡さんか?」
「ああ、俺は見ているから良いぞ」
「なら、ボス、おいらですね!」
「ムチャか、ほらよ」
「よっしゃ、勝負だ、ミスト!」
「はい!」
そうして、俺はモニターの前に座る。こうしてゲームをするのは久しぶりになるか。アトリームを離れてからべザートではそんな暇も無かったし、地球に来てからも横目に見るくらいだった。これでも得意なゲームでは、店内大会で準優勝になるくらいにはやっていた。まあ、その度にアンジェリカに小言を言われてたけど。
「そういえば、ミスト君は操作方法は大丈夫なの?」
「ああ、そういえば操作違う可能性があるのか、どうなんだ?」
「あ、えーと、大丈夫そうですね。基本的な部分は前と一緒ですね」
「じゃあ、開始だな!ムチャを倒してやれミスト!」
「ムチャー、ミストに負けるなよ!」
「がんばれー」
「うりゃー!!」
ジャンプとアタック、移動の簡単なゲーム。開始と共に真っ直ぐ突っ込んで来たムチャさんのキャラを、俺はジャンプで避けた。そして、画面端まで行ったキャラを追って、俺のキャラも移動させる。方向転換の隙にアタックを食らわせて、ポイントを先取した。
「うわー!!やったなー」
「おお、良いぞミスト!」
「はい!!」
「ムチャー!!」
「ミストは上手いなぁ」
「初めてなのに凄いわね」
「ゲーム自体は得意なのかもしれないな」
そこからポイントを取り合って、両者マッチポイントとなった。少し、見合った後、俺は先手をとった。真っ直ぐキャラを動かす。ムチャさんは動かず、おそらくジャンプを狙っていると見える。
「──ここだ!」
「──ジャン、プゥ゙!!」
そこで、避けられる手前で、俺は入力を止めた。慣性でゆっくりと進むキャラによって、ジャンプしたムチャさんの真下を取ることができた。そして、真下からの攻撃をムチャさんは避けられず俺の勝利となった。
「よし!」
「凄いわ!ミスト君、ゲーム上手いのね」
「俺はそこまでゲームに明るくないが、上手いなとわかる腕だった」
後ろの猿渡さんと弓さんからお褒めの言葉をもらえた。
「ハハ、ありがとうございます。…でも、これってパーティゲームですよね?格闘ゲームとかじゃなく」
「うう、ミスト、うますぎだぜ…」
「こっら、ムチャー!!なに負けてんだー!」
「でも、ミストが上手かったですよボス〜」
「よっしゃ、ミスト、次は俺とだ!」
そうやって、何回も楽しくゲームをしていた。それは夜まで続き、騒ぎを聞いた静流さんやレヴィに怒られて解散となった。
──翌日AM6:00──
『ミスト、今日の予定ですが』
「ああ、訓練だろ?静流さんが鉄也さん共々鍛えるって言ってた」
『いえ、葵所長より昨夜連絡がありました。朝一番で来るようにと』
だから、こんなに起こすのが早かったのか。にしても──
「…レヴィに連絡が行くのか」
『ミストを良く理解しているようですね』
少し釈然としなかったが、レヴィに急かされ早足で向かった。
「失礼します、ミスト・レックスです」
「…来たか。朝早くですまないな」
部屋に入ると、いつもよりも気持ち着飾った所長が座っていた。
「はい、なにか用事らしいですが…」
「ああ、ちょっとお使いを頼みたい」
「お使いですか?」
「ああ、本当は私が行きたかったが、どうも時間が足りそうになくてな。基地の他の連中には頼りたくないし、消去法でお前になった。すまないが、引き受けてくれないか?」
「はい、わかりました!」
「では、──ここに向かってくれ、移動手段は芝草にメンテナンスを頼んである」
「はい?わかりました」
少し疑問に思ったが、時間がないとのことで、格納庫に走った。
「おー!来たか、ミスト」
「はい!それで、おやっさん、それが──」
「─おう、頼まれとったバイクだ!お前、乗れるんだろ?」
「はい、レヴリアスの許可と一緒に取りました」
「うし。でだ、コイツには少し細工していてな。通信の中継機になるようにしている」
「…中継機、ああ、レヴィの為ですね!」
「ああ、基地外はレヴリアスからの電波は届かないんだろ?だから、コイツでそこを繋げるんだ」
『──その通りです。ミストだけでは心配ですから。昨夜、お願いしておきました』
それから、試乗しての微調整を簡単に行い、俺達は市街に向かって走り出した。
朝早くなので、車の通りも少なく、快適なドライブになっている。行き先は、レヴィの指示が飛ぶから迷うこともない。信号で止まった時に、学生が走っていくのを見送り、俺やアンジェリカの学生時代を思い出していた。俺が小言を言われていた記憶が強いけど。そうして、目的地──宝石店《luck & Fortitude》に辿り着いた。
「ここだ、……luck & Fortitude」
『直訳すると幸運と不屈の精神。─幸運を味方につけ、どんな逆境も強い心で乗り越えていく。地球の宝石店の名前としては普通なのでしょうか?』
「さ、さあ?でも、かっこいいし、意味も力強く感じる」
『そうですね。ミストもこの心意気を参考にしても良いでしょう。ただ、限度もありますが』
「ハハ、わかってるって」
その後、俺達は店主から頑丈な箱を受け取った。来ることを伝えてくれていたのかスムーズだった。サイドポーチにそれを入れて、俺はバイクに向かった。
「よし、これでお使い完了だな?」
『ミスト、まだですよ。それを届けるまでがお使いです』
「あ、うん、そうだな。えーと、来た道は──」
『ミスト、次はここです』
「え?基地じゃないのか?」
『はい、ですのでここに向かいなさい』
「わかったけど…ここって──」
レヴィの案内に従って俺は、市外の教会にバイクを走らせた。急かすレヴィに押され、俺は教会の控室に通された。
「来たか、ご苦労だったなミスト」
「はい、これですね」
サイドポーチから箱を取り出して、所長に手渡した。
「ああ、ちゃんとポーチに入れて来ていたか。レヴィの指導か?他の男どもにはこの気遣いが足りんからな」
『頼まれた物を、無造作にトランクに入れる教育はしていません』
「ハハ」
「まあ、なんであれご苦労だったな。さて、ゴオ!準備できたか?」
「ああ、少しネクタイに手間取った。──ミスト?」
「──猿渡さん!?」
所長に呼ばれ、カーテンから出てきたのは、タキシードを着た猿渡さんだった。
「なんでミストがいるんだ?」
「私がお前の忘れ物を頼んだんだ」
「…そうか、ミスト、ありがとうな」
『なるほど、宝石店、タキシード、おめでとうございます』
「あ、そうか、おめでとうございます!」
「ああ、ありがとう。2人も折角だ参加していってくれ」
「え、あ、俺、正装ないです」
「心配ない、レンタルがある。参加していってくれ」
そうして、採寸の後に準備をするとのことで、一度俺達は教会外で風に当たっていた。
「結婚か…」
『アトリームでは考えていなかったですか?』
「……どうかな?アンジェリカとはそんな仲なのかって、周りからは言われていたけど。お互いにそんなに意識してなかったと思う。アンジェリカも俺の事を弟みたいとか言ってたし」
『……』
アトリームの部隊では、訓練でのミスをアンジェリカに指摘され、隊長が締める事が多かった。その光景を指して、他部隊の同期にからかわれた事は多い。でも、アンジェリカは良く弟みたいって口にしていたから、俺もそんなもんかと思っている。
「隊長はどう思ってたのかな…。アンジェリカとの仲を聞いてきたりはしてこなかったけど」
『……そうですね。ミストには少し早かったですかね』
「なんだよ、もう成人してるけど?」
『貴方の場合は年齢は関係ありません』
「なんだそれ」
その後、準備ができたとスタッフさんが呼びに来てくれた。
「――生命ある限り、あなただけを愛すると誓いますか?」
「「はい!(…)」」
神聖な祭壇に神父と2人だけがいた。これから夫婦になる2人だ。身長差が大きく、見上げる新婦。そのケープを捲る新郎は、絵になっていた。
しかし、幸せは長くは続かなかった。それは口付けを行う時だった。強い揺れが教会を襲った。
「なんだ!」
『ミスト、擬態獣です!!』
「なんだって!?」
「レヴィ、それは本当なんだね!?」
『葵所長、そうです。今、Gガンナーが出撃しました』
「すぐに戻るよ!ゴオ!」
「──わかってる。杏奈、お前は避難しろ!」
「ゴオちん!!」
「ミスト、お前はバイクだったな!?」
「はい!」
「博士を連れて帰ってくれ!俺は一足早く行く!!」
「わかりました!!」
そう言って、猿渡さんはタキシードのまま、教会を飛び出していった。
「ミスト、お前のバイクは?」
「こっちです!レヴィ!」
『早く来なさい!』
急いでバイクに向かい、所長を後ろに俺はバイクを走り出した。横目にはマジンガーZと擬態獣の様子が見えた。振動がこちらにも来る。なんとか横転しないように、瓦礫を避けて走った。
「よし、私は司令室に行くから、貴方も準備して行きな!!」
「はい、レヴィ!!」
『バイクはそこで良いでしょう。自動操縦でカタパルトに行きます。貴方も服を替えなさい』
「ああ!」
すぐに着替えて、俺はレヴリアスに走った。カタパルトで待つレヴリアスは、すぐにハッチを開けた。
「よし、行くぞ!」
『システム、オールグリーン。芝草の腕は本当ね』
「ああ、レヴリアス、行きます!」
「行ってこーい!!」
おやっさんの言葉を背に、レヴリアスは飛び出した。
次からようやく原作部分に入って行きます。