【超かぐや姫×FGO】パン屋のぐだ子とバイトの彩葉   作:生徒会副長

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⑪真実が死んだ!この人でなし!

 

 

 

「よーっす! あれ? ヤチヨちゃんも彩葉に呼ばれたクチ?」

 

 そう言いながらミーティングルームに入ってきた帝アキラさん。彼はプロゲーマー兼アイドルチーム『ブラックオニキス』リーダーにして、彩葉ちゃんのお兄さんだ。

 ヤチヨが帝に返答した。

 

「コラボライブで乱入してきた連中について、情報交換がしたいって彩葉から連絡があってねー。そういう帝様は、妹想いなんだねぇ」

「妹の為なら、千里も一里ってね」

 

 さすが仮想空間の王者と仮想空間の創造神。気さくに話せる間柄らしい。コラボライブこそやったことはないけれど、KASSENでの共闘や雑談コラボ配信はやったことあるもんね。

 

「んでそっちは……配信で見た覚えあるな……。かぐやちゃんとの動画でよく出てた……ROKAちゃん、だったっけ?」

「あ、はい。綾紬芦花です。彩葉は同じクラスの友達で……。よろしくお願いします」

 

 芦花ちゃんが頭を下げた後、帝の目はマシュに向けられた。

 

「それとそっちは……法螺貝を吹き鳴らしながら盾で突撃するメカクレのシールダー……」

「ご存知頂けて光栄です、帝アキラさん。ぐだぐだチャンネルの家老マシュです。リアルネームはマシュ・キリエライトです」

「どうも。マシュの相棒、ぐだ子です。リアルだと彩葉ちゃんのバイト先の店長、藤丸立香です」

 

 マシュの法螺貝が認知されていて嬉しい気持ちを抑えつつ、私はマシュに続いて名乗っておいた。

 

「彩葉のバイト先……? あぁ、あんたが……。 リアルネームは酒寄朝日だ。よろしくな」

「ブラックオニキスの雷……駒沢雷だ。乃依、お前を挨拶しておけ」

「はいはーい。乃依だよ☆ よろしくね♡」

 

 帝に続いて、雷さんと乃依くんも自己紹介してくれる。特に乃依くんなんか指でハートまで作ってくれちゃって。

 

「雷さん、乃依くん、よろしくね! 乃依くん、今日も最高にカワイイね! 写真撮っていい?」

「んー? それぐらいのファンサはお安い御用☆」

 

 早速私はツクヨミ内で使えるカメラアプリを起動し、可愛く決めポーズをしてくれる乃依くんを撮影していく。あとついでにブラックオニキスのスリーショットと、私とマシュと乃依くんのスリーショットも。

 乃依くんは自認男性でアバターも男性だけど、着ている服は地雷系和風メイド。演技で無理にそういうことをしているライバーもツクヨミには居るけれど、乃依くんは違う。

 男の子として女の子の格好をする自分が好きで、自信に溢れてる。作画(ビジュ)はもちろんだけど、そういう心持ちまで込みで、乃依くんはかわいいから好きだなー。

 まぁ彩葉ちゃんがヤチヨを推す熱意には負けちゃうけどね。

 6回目のシャッターを押した頃、檜の襖を開けて誰かが入ってきた。ムササビのような小さいケモミミとお団子状のポニーテールが目を引くアバターの女の子だ。たしか……真実ちゃん、だったかな?

 

「お邪魔しまー……って! 帝サマァ!?」

 

 帝を見た真実ちゃんが、驚愕で目を見開く。それに対して、帝はフッと微笑んでから言った。

 

「よぉ真実……。今日は彩葉の為に来てくれて……サンキューな」

「ぎ……ぎょわぁぁぁぁああああっっ!?」

 

 帝の、少女漫画に出てきそうなキラキラなスマイルには攻撃判定でもあったのか──マミちゃんが昏倒した!? そういえばかぐやちゃんとブラックオニキスのKASSENのときもこの子って倒れてたな!?

 

「真実が死んだっ!」

「「「この人でなし!!」」」

 

 ヤチヨが出題したネットミームカルタ。すかさず正答したのは、私とマシュと帝だった。

 すると、芦花ちゃんと乃依くんが言った。

 

「……これ、何かの名台詞なんですか?」

「あー、元ネタは『サウス・パーク・ファンタズム』ってアニメ。オレが生まれたときぐらいのアニメかな☆」

「乃依さんって何才ですか?」

「じゅうご〜♡」

 

 紅い槍に心臓を貫かれたような衝撃だった。

 えっ……? 『サウス・パーク・ファンタズム』(通称サウファン)って……。私とマシュが東京駅で出会った年の秋アニメだから……15年前!?

 15年という数字が、やたら身体を重たくする。まるで玉手箱を開けてしまった浦島太郎に振りかかる年月の重みのように──。

 

「ぐぉぉぉぉ……」

「せ、先輩っ!?」

 

 私は大袈裟な演技をして、項垂れながら床に手をつく。

 ……まぁ実際15年経ってるんだから仕方ない。

 この15年という年月の重みすら、喜劇(コメディー)に変えてやろうじゃないか。

 私は、私を助け起こそうとしてくれるマシュに対して言う。

 

「ごめんね、マシュ……。マシュと出会ったときはフレッシュな高校生だった藤丸立香も……今ではもうシワシワのお婆ちゃんです……ガクリ」

「先輩っ!? この前のコラボライブでお姫様がどうのこうのと言っていた先輩は何処へ行ってしまったんですかっ! せんぱーーいっ!!」

 

 そんな私の演技にノッてきたのか、ヤチヨも「ヨヨヨ〜〜……」と嘆きつつ、私にもたれかかってきた。

 

「ヤッチョも8000年前はブイブイ言わせてたお姫様だったけど〜〜。今では電子の海の隅っこで数万人の人を前に歌ってるだけの、8000歳の歌手なのです〜〜。ヨヨヨ……」

 

 そんなヤチヨの自虐ならぬ自慢芸にツッコミを入れたのは、新しく部屋に入ってきた“彼女”だった。

 

「年とか関係なく、ヤチヨは世界一の歌姫だよっ! そう……。世界、イチの……」

 

 いつもの狐耳がトレードマークのアバターで、彩葉ちゃんが入ってきた。ツッコミ役としてこの部屋に入ってきた割に、顔はコメディなものではなくシリアスなものになっていた。

 

「ごめん、みんな。待たせちゃったみたい」

「別にいま0時15分ジャストだし、いいんじゃねぇの?」

 

 そう言う帝を皮切りに、みんな朗らかに「おつかれー」「お疲れ様です」と言った具合に、彩葉ちゃんと挨拶を交わし合う。

 床とお友達になっている真実ちゃんを除いて……。

 

「真実〜〜? これ、かぐやが作ったジェノベーゼ! これはかぐやが握った白甘鯛のお寿司! これはかぐやが麺から作ったラーメン!」

 

 グルメインフルエンサーである真実ちゃんの目を醒まさせようと、彩葉ちゃんはかぐやちゃんの手料理の写真を次々に見せる。

 しかし真実ちゃんは「えへへ……。帝さまぁ……」と夢見心地だ。

 

「仕方ない、マシュ! プランBだ!」

「プランBと言いたいだけでは? まぁ……やってみます」

 

 私がプランBを発令すると、色々なグルメ写真を試している彩葉ちゃんの横にマシュが屈んで、ある写真を見せた。それは……。

 

「真実さん。こちら、藤丸ベーカリーで9月13日から発売する『さつまいも黒蜜デニッシュ』のサンプル画像なのですが……」

 

 それは、国産紅はるかを使用した蜜芋ペーストをデニッシュ生地に折り込んだパンだ。表面にさつまいもチップと黒蜜をトッピングし、焼いたときや口内で噛み締めたときに甘~い蜜が溢れ出す、価格も美味しさも贅沢なスイーツパンだ。

 

「ほわっ!? 美味しそーー!! 味覚の秋、焼き芋の甘い香りがぁ……あれっ?」

 

 電子の涎を垂らしつつ、真実ちゃんは目を醒ました。

 代わる代わる皆が真実ちゃんに挨拶する中、私の傍にいるヤチヨが呟いていた。宙に浮いてくるくる回りながら。

 

「いいなー。ヤチヨもさつまいも黒蜜デニッシュ食べたいなー」

「ツクヨミで味覚を再現するのって、そんなに難しいの? 視覚と聴覚は完璧なのに?」

 

 私が訊ねると、ヤチヨは「んー」と顎に手を当てて考えながら答えた。

 

「光や音って、数値で測れるじゃない? カンデラとかヘルツとか。でも味ってすごく複雑で、数字じゃ表現できないものが多いから難しいんだよねぇ〜」

 

 あー、なるほど? 味にも、塩分濃度とか糖度とかの数値は一応あるけど……。

 

「……同じ糖度でも、さつまいもの甘さと黒蜜の甘さは違うものだし、美味しいと思うかは人それぞれ……みたいな感じ?」

「そうそう。なんだか人の感情みたいだよねぇ〜〜。喜怒哀楽の数値ぐらいじゃ表現し切れない、みたいな〜〜?」

「ん? その理屈だと、味覚をツクヨミで再現できる日って、意外と遠くないんじゃない?」

 

 私がそう聞くと、ヤチヨは海のように青い目をパチパチさせた。

 私は続けて言う。

 

「だってヤチヨは人間と同じように、感情を持って生きてるんだから」

 

 ヤチヨは嘘もつくし、間違えることもあるし、芝居だってする。欲望だってある。

 今だってそうだ。軽いノリで『ヤチヨもさつまいも黒蜜デニッシュ食べたいなー』なんて言ったフリをしているけれど、どうも私には本気で言いたい気持ちを隠した演技に見えてならない。

 そんなヤチヨを、私は心を持たない機械や人工知能とは、どうしても思えなかった。

 少し住む世界が違うだけの、命ある隣人であり友人だ。

 するとヤチヨは、「ヨヨヨ……!」とわざとらしく、アメリカンクラッカーのような涙の玉をコミカルに揺らして見せた。本物の涙を隠すように。

 

「ヤッチョGPTに『お前を消す方法』とか聞いてくる人もいる中で、ぐだ子はそんなことを言ってくれるなんてぇ〜〜! ヤチヨは果報者なのですっ!」

「それ聞いてくるヤツは人の心とかないんか??」

 

 またヤチヨとネットミームカルタに興じるのも良いかと思ったけれど、それより先に彩葉ちゃんの号令が聞こえた。

 

「みんな! 今日は来てくれてありがとう! 真実も起きたし、そろそろ私の話を聞いてほしい! 私が隠してた……かぐやの秘密も含めて……」

 

 私とヤチヨは表情を引き締め、ソファーに座った。私の横にはマシュが座りに来る。

 芦花ちゃんと真実ちゃん、ブラックオニキスの3人、私とマシュとヤチヨ。8人の視線を集めながら、彩葉ちゃんは語り始めた。

 それは月から地球にやって来た、2030年のかぐや姫の物語だった──。

 

 

 

 






Q:サウス・パーク・ファンタズムって何?
A:この世界において「ランサーが死んだ!」「このヒトデナシ!」のミームを生み出したアニメ。内容はあんま決めてません。

Q:なんで帝は「法螺貝を吹き鳴らしながら盾で突撃するメカクレのシールダー」を知ってるの?
A:マシュ(家老マシュ)は配信頻度が高くないからプロゲーマーとコラボしたりヤチヨカップでランキング入りしたりはしていないものの、一部で妙な人気を獲得している……というイメージです。
カードゲーム界隈やポケモン対戦環境などで「日本選手権や世界大会で優れた成績を残している訳ではないけれど構築やプレイングが独特過ぎて妙に知名度がある人」をイメージしてもらえばいいかと思います。

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