【超かぐや姫×FGO】パン屋のぐだ子とバイトの彩葉   作:生徒会副長

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⑫サブリーダー・藤丸立香

 

 

 

 

 彩葉ちゃんが聞かせてくれたかぐやちゃんの秘密。

 それはまさに、2030年に生まれたおとぎ話だった。

 七色に光るゲーミング電柱から、赤ん坊のかぐやちゃんを拾ったこと。

 たった3日で、かぐやちゃんは玉のように可愛い立派な女の子に育ったこと。

 ライバーとして活躍する中でガッポガッポとお金を稼いだり、求婚されたりしたのは私達も知るとおり。

 そして、2030年9月12日、月の住民──月人(つきじん)という人達が、かぐやちゃんを迎えに来ること。

 普通に考えれば非科学的であり得ない話なのだけれど……。

 

「かーーっ! かぐやちゃんが月のプリンセスとはっ! ……わかるっ!」

 

 そう唸る帝を筆頭に、各々が納得し、彩葉ちゃんの話を信じていた。

 

「やっぱり築地生まれじゃなかったんだ……」

「海に行ったときも肌真っ白だったもんねぇ……」

 

 真実ちゃんと芦花ちゃんも思い当たる節はあったらしい。かく言う私もその一人だ。

 

「かぐやちゃんは無垢すぎるし、芝居や演技がないって前々から思ってたんだよね。まだ地球に来て2ヶ月なら納得だなぁ」

 

 無垢や無知を演じるライバーというのは多い。

 『製造されたばかりのロボット』って設定とか、『本能寺の変のあとタイムスリップした織田信長』を演じてるとか。

 そういうライバーの演技を見抜いたり、ボロを出す瞬間を目撃したりするのは面白い。しかしかぐやちゃんは、疑うことが馬鹿馬鹿しくなるような純白の輝きに満ちていた。

 マシュが質問をする。

 

「一応お聞きしますが、月はやはり、かぐやさんの配信の言葉を借りるなら『つまらない』場所──なのでしょうか? それなら納得です」

 

 彩葉ちゃんが少し俯いてから答える。

 

「月は仮想の世界と似ているらしいです。月には温度も味も匂いもなくて……。かぐや以外の月人は、心や感情を持たないデータやNPCのような存在らしいです。そして永遠に、何年も何百年も同じことを繰り返すだけだと……」

「それは……。『生きている』とは言い難いですね。いえ、私はそれを……『生きている』と表現したくはありません」

 

 そしてこのまま何もしなければ、御伽噺の筋書き通りに、かぐやちゃんはそこへ帰るのだ。

 空っぽでつまらない、永遠なる月の世界へ。

 竹取物語の筋書き通りなら、天の羽衣で記憶を消された上で──。

 

「ヤチヨ。かぐやを守ることって、できないのかな……?」

 

 縋るような声色で、彩葉ちゃんは訊ねた。

 

「調べてみたけど、誰がどこからアクセスしてるかも分からなかったんだよねぇ〜。だから垢BANやファイアウォールでは防ぎようがなくって……。ゴメン……」

「うぅん。仕方ない。しかた……ないよ……」

 

 顔を曇らせる彩葉ちゃんと、室内の一同。じわりじわりと絶望の闇が広がっていく……が……。

 

「でもよぉ。仕方ないで済ませられないから、俺達をここへ呼んだんだろ?」

「えっ……」

 

 そこに光をもたらしたのは彩葉ちゃんのお兄さん──帝だった。微かな期待の眼を向けた彩葉ちゃんに対し、帝は不敵な笑みを見せてくれた。

 

「お前やそこにいるぐだ子の剣は、月人に通用しただろ? KASSENでぶん殴って叩き斬って蹴飛ばして……追い払えばいいじゃねぇか。それとも何? 延々と飽きもせずつまんねー世界に引きこもってるような連中に、大人しくかぐやちゃんを引き渡す気か? そんなもん解釈違いもいいところなんだけど?」

 

 帝が部屋にいる一人一人に目線を送る。目線を受け取った各々が、決意を秘めた目で頷いた。もちろん私やマシュも。そして彩葉ちゃんも──。

 

「……私もやる! 何をどこまで出来るか分からないけれど……よろしくお願いします!」

 

 そう言って頭を下げた彩葉ちゃんを見た私は、

 

「もちろん!」

 

 そう明るく元気に返事をしていた。

 

「困ったときはお互い様だよ。ねぇマシュ?」

「はい! みんなで一緒に、かぐやさんを守りましょう!」

 

 他のみんなも、それぞれ頷いていた。

 

「来年もまた、皆で海行こうね!」

「温泉も行こー!」

 

 皆の心が一つになったところで、帝が提案する。

 

「んじゃ、ここからは作戦会議だな! とりあえず総大将は、俺ってことでいいか?」

「心強いです。帝アキラさん、ぜひお願いします」

 

 そう言ってからマシュが拍手し始め、全員がそれに続いた。

 帝アキラは、ツクヨミが誇る最強ゲーマーであり、彩葉ちゃんのお兄さんだ。ヤチヨカップ終了後にかぐやちゃん推しガチ勢を公言してもいる。異論などあろうはずもなく、真実ちゃんに至っては「私が……帝サマの配下に……!?」と言いつつ顔を赤らめてすらいる。

 

「よろしくゥ! んじゃ、総大将として仕切らせてもらうぜ? なぁヤチヨちゃん」

「おっ? なんだいなんだい?」

 

 帝がヤチヨに訊ねた。

 

「ヤチヨちゃんって、KASSENに参加したらやっぱりセキュリティとかのパフォーマンスって落ちんの? システムとかセキュリティとかの面で月人の対策をしてくれるなら、なんだかんだでそれが一番助かるんだけど?」

 

 そういえば、帝以外に総大将に相応しい人がもう一人いる。

 そう、ツクヨミの管理人であるヤチヨだ。もし月人来襲がツクヨミの危機だとすれば、ヤチヨが陣頭に立てばいい。いや、立つべきだ。

 しかし彼女は穏やかに答える。

 

「……そういうことなら、ヤッチョは裏方仕事に徹しようかな〜。ヤッチョのスペックの全てを、月人対策に使ってみるよ」

 

 うん……? なぜ立候補すらしなかったのか……? 帝の顔を立てただけ……? 或いは本当に、スペックの問題……?

 私が抱いた疑問が表層に出るより先に、話は前へ進んでいく。

 彩葉ちゃんが言った。

 

「あ、ヤチヨ。裏方仕事をするならついでに頼みたいことがあって……」

「ほうほう、何でも言ってごらんよ彩葉」

「かぐやの卒業ライブ……ヤチヨがプロデュースとか音響をやってくれないかな。私は月人との戦いに……かぐやを守ることに専念したいから」

「うっふっふ〜! おまかせあれ〜〜!」

 

 何だか扇の使い方が芝居臭い気がする。うん。やっぱりヤチヨは何か隠している気がするけど……今は黙っていよう。ここで和を乱すのは良くない。

 続いて帝が、真剣な眼で言った。

 

「あとな……。9月12日まで何が起こるか分からねぇし、当日だって月人が何をしてくるか分かったもんじゃない。竹取物語の通りなら、俺が戦意を喪失しちまう可能性だってある。そこでだ……」

 

 彼の鋭い眼光が向けられた先は──え? 私?

 

「サブリーダーとして、俺はそこのぐだ子……藤丸立香を指名したい」

「……いいよ」

 

 うーむ。またずいぶん演じ甲斐のある大役を貰っちゃったな……。

 

──※──

 

「おお! あの最強のプロゲーマー・帝アキラが総大将を務める月の軍勢との戦で、先輩がサブリーダーに……! ついにこの時が来た! と言わざるを得ません!」

 

 どんな時だよ。

 世界藤丸ベーカリー計画といい、マシュは私をどうしたいのさ? なんか私よりむしろマシュの方が嬉しそうに興奮してる気がするぞ?

 

「……やるのはいいけど、指名してくれた理由は聞きたいかな」

 

 他の面々も納得する理由じゃないと、意味のない肩書きになっちゃうし。

 

「この中で人の上に立ち、人を率いる仕事をしてんのはアンタだけだ。それに、アンタはあのライブ会場で月人を斬ってる。咄嗟に恥とか恐怖を振り切ってあんなことができるなんざ、大したもんだ」

 

 ニヤリとしながら、帝は私をそう褒めてくれる。正直、あの剣を抜いた瞬間より、今のほうが恥ずかしい気がしてしまう。

 だって私、誰かを救うための行動を恥じることって無いから……。うーん、まぁそういうところがサブリーダーに向いてるって言いたいのかな?

 

「月人との戦いじゃ何が待ってるか分からないからな。ゲームのテクニックより、そのリーダーシップ、人徳や度胸、咄嗟の判断力をアテにさせてもらいたい」

 

 そこまで私を評価してくれているなら、もう断われないし、断りたくないな。

 

「……うん、わかった! やるからには最善を尽くすっ! サブリーダーの藤丸立香です。改めてよろしく!」

 

 親指を立てて軽くポーズを決めると、皆がパチパチパチ……と拍手してくれる。

 

「じゃ、夜も遅いし、連絡先の交換をして今日は一旦解散でいいか。雷と乃依は先に帰って……“アレ”の準備をしてくれ」

 

 “アレ”が何なのかは分からないけれど、乃依くんが眉間の皺を寄せたのを見る限り、何かしら手間暇がかかるものみたいだ。

 

「えー? アレぇ? めんどー」

「リーダーの命令は絶対だ。では、失礼する」

「へいへーい。じゃ、またねー☆」

 

 クールな態度で諌める雷さんと共に、乃依くんは先にログアウトしていった。

 そこから先は、連絡先の交換タイムだった。雷さんと乃依くんの連絡先も、ちゃんと帝が教えてくれた。

 連絡先を交換するとき、真実ちゃんが楽しげに提案してくれた。

 

「藤丸さん、さっき副店長のマシュさんや彩葉と話してたんですけど……さつまいも黒蜜デニッシュの宣伝配信、やりませんか? かぐやも一緒に!」

「おっ! いいね〜!」

 

 私とて経営者なので、もちろん真実ちゃん(グルメ系インフルエンサー・まみまみ)やかぐやちゃん程のライバーに宣伝してもらえるなら大歓迎だ。

 ただ、問題は……。

 

「それって……決戦より前がいい? 後がいい?」

 

 負けても悔いが残らないように、やり尽くすか。

 勝ってからのお楽しみとして、残しておくか。

 既に彩葉ちゃんと真実ちゃんの間で話は済んでいたようだったが……論点が私の想像とは少しズレていた。

 

「……前がいいって、彩葉と話してました。月人に勝ったとしても、かぐやちゃんのライバーとしての活動は一旦引退することになるだろうから……って」

「あー、なるほど?」

 

 言われてみればそうか。引退に伴って卒業ライブまでしたクセに、次の日からまたフツーに配信をしてたら、流石に炎上してしまう。

 それに彩葉ちゃんは高校2年生だ。学校や受験勉強で忙しいはず。ライバーとしては確かに、この辺りが潮時なのかもしれない。

 

(月人との戦いがどんな結果になっても、悔いが残らないか──っていう辺りに答えが出てないのは気になるけど……)

 

 その二択を示すにせよ答えを出すにせよ、それは本人達でなければ。

 まぁとりあえず、

 

「よし、わかった。じゃ、卒業ライブのことも配信動画のこともコミコミで、連絡先交換しなきゃね」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 こうして私は、真実ちゃんとも連絡先交換を済ませた。そして、コラボ配信の約束を交わす。

 

(あとは……)

 

 帝とも約束を交わしている。なんでも、最後までミーティングルームに残って、話に付き合って欲しいとのことだ。

 

(いい機会かもしれないね)

 

 なぜ彩葉ちゃんが、今まで一人で頑張ることに固執していたのか? かぐやちゃんとの出会いという荒療治でないと覆らないほどに。

 その疑問に、帝は答えてくれるだろうか……。

 

 




月の軍勢と戦うまでに、もうちっとだけエピソード挟むんじゃ
(酒寄家の過去、マシュの過去、さつまいも黒蜜デニッシュのコラボ配信)

続きを楽しみにして頂けると幸いです。
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