【超かぐや姫×FGO】パン屋のぐだ子とバイトの彩葉 作:生徒会副長
月人の天守閣は、巨大な菩薩像のような形をしている。その顔面に一定以上のダメージを与えれば相手の天守閣は落ちる。
天守閣を守るように、まさにその巨大菩薩像を縮小コピーしたような月人が2体、私の行く手を遮っていた。
敵のリーダーとサブリーダー……。
メインシステムとルーラーだ……。
「うぉおおおおおお────ッッ!!」
私と並ぶように、赤い影が飛び出してきた。
パンケーキ防衛隊の、私達のリーダー……帝アキラだ。
「やるじゃん帝! よく一人でここまで来れたね!」
「おう藤丸! お前こそ芦花の力を借りたとはいえ、よくもまぁ──」
帝が彼女の名前を出したのと同時であった。
彼女の戦いの終わりを告げる通知が表示されたのは。
▶ROKAがミニオンに撃破されました。
そして、芦花ちゃんの悲痛な願いの声が届いた……。
『すみません……。藤丸さん……アキラさん……。私の分まで……お願いします……!』
改めて、私と帝は倒すべき相手を見定めた。
「……やるぞ、帝! 芦花ちゃんの分まで……!」
「おう、藤丸! 乃依の分まで……!」
私は咄嗟に二刀を合身させ、剣を八相に構えた。
『
『此処に、
『零の先に! 私は至る!!』
……ごめんね、顔も名前も思い出せない誰か。
でも貴女なら……花の咲くような笑顔で、きっと許してくれる気がする……。
(貴女の剣の名前と太刀筋──ちょっと借りるね!!)
八相の構えから、剣を振り下ろすその技は──。
「剣轟抜刀! 伊舎那──大天象!!」
その一太刀はメインシステムに直撃し、大理石のような足場に地割れのような痕跡を刻んでみせる。
しかし──。
(……硬い!)
こっちはチートで限界を超える攻撃力を得ているのに、メインシステムのHPは1割ほどしか減っていない。メインシステムが盾代わりになったので、天守閣にもダメージが入っていない。
そして今の攻撃で、大技を使うのに必要なゲージも使い切った。
視界の隅では、どうやら帝とルーラーの対決も似たようなことになっているようだ。
倒せないし無視できない……そんな肉壁として、ルーラーとメインシステムが立ちはだかっている……。
メインシステムもルーラーも反撃はしてこない。案山子のように棒立ちのままだ。どうやら受けに徹するつもりらしい。
(……だったら……!)
実はツクヨミには……KASSENには……ある。ゲージを使わなくても凄まじい威力を発揮できる技が。
払う代償は難易度。今まで一度も成功したことなんてない。
ゲーム、アニメ、ライトノベルの世界に名を轟かす必殺技を元ネタとする、超ロマン技。彩葉ちゃんですら20回に1回ぐらいしか成功しないって、いつぞや言ってたけど……。
(ロマン技だって……? 上等だ、やってやる!)
左手の刀を斜め上から振り下ろす。
猶予1フレームの神業的なタイミングで、右手の刀による斬り上げ攻撃。
猶予1フレームで、今度は左手で薙ぎ払いをして──。
(…………駄目……か…………)
猶予1フレームの16連撃コンボ技、『剣嵐の流星雨』。流星が煌めくような、怒涛の連続攻撃。それを繰り出す中、再び私の脳は、時間が止まったかのような感覚の中で思考を巡らせる。
この技が失敗するかもしれない……という問題に悩んでいるのではない。
『この技が成功したとしてもメインシステムは倒せない』というのが問題なのだ。
『剣嵐の流星雨』の合計ダメージは、三撃目までのダメージからだいたい計算できる。最終結果としては、メインシステムのHPが1割ちょっと残ることになるだろう。
ましてや、その後に月人の天守閣を落とさなければ勝てない。相手の、無傷の天守閣を……だ。
対するこちらの天守閣の耐久値は、もはや風前の灯だ。マシュはよく守ってくれたし、彩葉ちゃんもいま必死に守っているだろうけど……。
(このKASSENは……もう……負け……)
もういっそ……やめちゃおうか……。
チートを使ったせいか、なんか身体中の筋肉と神経が悲鳴あげてるし……。
活性アンプルを打ったせいか、なんか変な幻覚っていうか記憶っていうか……
ほら……今だって……。
────簡単だよ。ゲーム
……名前も顔も思い出せないけれど……。
その人は医者で、
────ボクにもキミにも、いつか終わりはやってくる。その時まで、たくさんのタスクをこなすんだ────
その人の教えが、言葉が、
「────うぉおおおおおおッッ!!」
『剣嵐の流星雨』の四撃目。右手で逆袈裟斬りを放つ。
(まだだ──。まだ────!)
理屈ではない何かで理解した。
彩葉ちゃんや芦花ちゃん相手に、散々偉そうな講釈を垂れたけれど──。
その多くはきっと……
この一瞬を生きる私が為すことも、きっと受け継ぐ誰かがいるはずで──!
(まだ──終わっちゃいない!!)
五撃目、六撃目、七撃目も当然猶予1フレー厶のコンボだったが、
────そうそう、おまえたちがそう言うならしょうがないよな! もうとっくに地獄の底だけどなぁ! こうなったら底の底まで付き合うぜ!────
────キャプテン、シオン、次弾装填だ! 徹底的にやるぞ~~!────
八撃目から十撃目まで──。
回転斬りや十文字斬りも交えて、いよいよ刃が星の光を宿してくる──。
────神も運命も悲劇も関係ない。ただ征くと決めたから征くのだ。己の決めた夢と願いに、この身ひとつで向かい合うのだ!────
────身はたとえ 武蔵の野辺に朽ちぬとも 留めおかまし大和魂……。ああ、今こそ……狂い狂って為す時だ!────
十一撃目から十四撃目──。
『ここで何をしようと敗北は覆らない。おまえを殺したところで結果は何も変わらない』
『……これは何の意味もない戦いだ。以前の私では、考えようのない選択だ。だが──』
十五撃目。二刀による刺突をメインシステムの胸元へ叩き込みながら、
『……戦う理由は、あるんでしょ?』
十六撃目──。
メインシステムの心臓を抉り出すかのように、二刀を外側へ引き裂いた──。
『……私があなたでも、同じことをするよ──』
16連撃技、『剣嵐の流星雨』は全て入った……けど……。
(……やっぱり……)
メインシステムのHPは……1割ほど、残っている……。
未来は決まっていて、運命は変えられない──。
(────ちぇっ。あと少し……だったんだけどな……)
急速に精神と身体の熱が抜けていき──。
糸が切れた人形のように身体が倒れていく──。
────はずだった。
『先輩ッッ!!』
彼女の、マシュの声が聞こえた。
その瞬間溢れ出したのは、ここではない何処か──
私の為に笑ってくれたマシュ。
私の為に泣いてくれたマシュ。
マシュの為に手を差し出した私。
私の為に手を差し出してくれたマシュ。
(嗚呼そうだ──)
二刀流を使った十六連撃も、まぁご立派な必殺技だろう。
でも──!
いつだって──!
記憶を失っていたって──!
私の最大の武器は──!
(このクソ度胸と……心を宿す右手だ────!!)
命を燃やすつもりで、無理矢理身体を動かした──。
刀を手放すことで、『剣嵐の流星雨』終了後の硬直をキャンセル!
握り締めた拳で、渾身の右ストレートをぶちかます──!!
(もうこの期に及んでは、かぐや姫を連れ帰る
腕の腱が切れたんじゃないかと思うほどの激痛が走る。
ゲームのプログラムが、デジタルの神が、私の行動を縛ろうとする。
それでも、なお──。
(無傷で帰れると思うなよ!!)
私の拳は、止まらない──。
(せめて一発──殴らせろ!!)
その瞬間、メインシステムは初めて感情というものを見せた気がした。
驚愕で開いた眼。『こんな流れは脚本になかったはずだ!』とでも言いたげな。
しかしもう遅い──。
何のエフェクトが発動したのか分からないが、私の右手の甲が、盾のような紋様を描いて赤く輝いた気がした──。
その拳を振り抜きながら、私は叫ぶ──!
「生きる為だぁぁああああああ────っっ!!」
私の右ストレートが顔面に直撃したメインシステムは、ミサイルのような勢いでぶっ飛ばされて、天守閣に激突する。
天守閣とメインシステムが、爆風に包まれた。
すると目まぐるしく、通知が表示されていく──。
>>帝がルーラーを撃破しました。
▶ぐだ子が自爆しました。
>>ぐだ子がメインシステムを撃破しました。
▶パンケーキ防衛隊の天守閣が落とされました。
▶WINNER/?????
▶LOSE/パンケーキ防衛隊
「…………ははっ」
自覚はないけれど、私の右ストレートは、自爆攻撃に分類されるものだったらしい。
アバターを桜のエフェクトと共に霧散させながら……私は乾いた笑い声を漏らす。
パンケーキ防衛隊が負ける未来は、あらかじめ決まっていたのかもしれないけど──。
かぐや姫が月へ帰る運命は、変えられなかったけど──。
「…………やり残したことは…………ない……」
切れるカードは全て切った。チートにまで手を出して、最後の右ストレートは自爆攻撃として扱われて、現実の体力もアバターのHPもスッカラカンだ。
月人は多分、無傷の天守閣を保ったまま勝つつもりだったんだろう。しかし最後に、私が一矢報いてやった。
天守閣を落とされた以上、パンケーキ防衛隊は確かに負けた。しかし、こっちは彩葉ちゃんとかぐやちゃんと帝が生存し、相手はセイバーとキャスターしか生存していない。生存者数ではこっちの勝ちだ。
だから……。
たとえ言い訳みたいでも──。
たとえ強がりだったとしても──。
この結末は──。
「…………ゲーム
私が流した涙も、私のツクヨミにおける肉体も……桜の花びらとともに、風となって消えていった──。
──※──
「……先輩……先輩……!」
私を揺さぶる手の感触と、私を呼ぶ声で、意識が覚醒した。
無論私を目覚めさせたのは……。
「……ん……? マシュ……?」
KASSENの決着と同時に、私は気絶していたらしい。そして現在地は月人の天守閣前ではなかった。
「ここは……」
「パンケーキ防衛隊の天守閣前です。KASSENが終わったので座敷牢は解除されています。いますが……」
マシュがそう言い淀む。私が意識を失っている間に転移が行われたのだろう。黒鬼の3人や芦花ちゃんや真実ちゃんもすぐ傍にいる。
ここから……物語の結末を見守ろう……ということだろう……。
天守閣のすぐ傍にある広い台場では、彩葉ちゃんが月人に囲まれながら、呆然と立ち尽くしていた。『囲む』と言っても、月人達は恭しく膝を着いている。まるで彩葉ちゃんを貴賓として丁重に扱っているかのようだ。
そして天守閣の頂点では……かぐやちゃんとメインシステムの月人が、顔を合わせていた。上空には大量の月人が浮かんでいるほか、光る雲のようにも、湖面に映った満月のようにも見える乗り物で、月人達は天守閣に乗り付けていた。
「はるばるようこそ」
かぐやちゃんの表情は、よく知る旧友と再会したかのように、穏やかなものだった……。
着ているのも──部分的にミニスカートっぽい改造はされているが──十二単衣で、本当にお姫様みたいだった……。
「逃げちゃってゴメンっ。でも……すっごい、すっごい、楽しかったんだ!」
メインシステムは表情を変えないし何も話さない。しかし、どこか嬉しそうにかぐやちゃんの話を聞いているように見えた。
「あなたも……楽しかったんじゃない? 天守閣にダメージが入らないまま、完勝できると思ってたでしょ? 藤丸店長にぶん殴られて、天守閣にもダメージが入って、びっくりしたでしょ」
メインシステムはほんの少しだけ、ゆっくり頷く動作をしてみせた。ただそれだけのことが、月人の驚きや感情を最大限に表しているように見えた。
「じゃあ……帰ろっか」
かぐやちゃんはそう言って、光る雲に足を踏み入れた。
光る雲はゆっくりと、空高くへ舞い上がっていく。大勢の月人と、犬DOGEをお供にして。
これが単なる旅立ちならどれだけ良かったことだろう。実際は続きのある旅ではなく、永遠という名の終幕だ。
「最高の卒業ライブでした! いっぱいお土産もらっちゃった。みんなありがとう!」
観客席からファンの声が響く。「最高だった!」とか……「愛してるぞー!」とか……「帰らないでー!」とか……色々。
そんな彼らに、かぐや姫は最後の言葉を贈った。
優しい……優しすぎる笑顔。どことなくヤチヨに近いものを感じてしまう笑顔で……。
「えへへ。名残惜しいけど……これでお終い! みんな……バイバイっ! さようならっ! あと……」
かぐやちゃんの唇が動くが、
私は読唇術を心得ていないので、正確に何を言っているかは読み取れない。
しかし、演劇の経験と生来の直感から、私は台詞の内容が分かった気がした。
多分……きっと……最期の台詞は……。
────いろは、だいすき──。
そしていよいよ……御伽噺の終幕が再現される。
かぐや姫は月人に、美しい天の羽衣を着せられる
「あぁ……そん……な……」
かぐや姫の眼から、色彩が消え失せる。
愛着は持たず、悲しみを感じない。
希望を知らず、死が訪れることもない。
かぐや姫は、永遠なる世界の住民に戻った──。
「待って……行かないでよ……かぐや……」
かぐや姫を乗せ、月へと帰っていく光の舟。
追いかけようとするけれど、地球人の足ではどうしようもなく、老人のように生気のない歩みを踏むしかない彩葉ちゃん。
「まだ……したいこと……いっぱいあるって……」
彩葉ちゃんの為に、駆け出した人がいた。
まだ私の視覚に活性アンプルの名残があったのだろうか──。
間違いなく──芦花ちゃんが最初の一人だった。
彼女に遅れること1フレーム差で、帝と私が同時に駆け出した。
他の面々も、それに続くように走り出して、彩葉ちゃんのもとへ向かっていく……。
パンケーキ防衛隊が彩葉ちゃんの周りに集まったとき……ツクヨミの夜空にはもう……誰もいなかった。
かぐや姫も、月の軍勢も──。
しいて言うならば、雪のように舞い落ちる光の粒だけが、かの姫君の面影を宿していた……。
【あとがき】
《戦績まとめ》
帝アキラ/今回のMVP。撃破数3。いろPと協力してセイバーとキャスターを撃破。単独でルーラーを撃破。最後まで生存したことも込みで考えると流石の貫禄である。
雷/ほぼ単独でアサシンを撃破(撃破数1)。実は序盤、後衛で守りの要として活躍しつつ、大量の地雷を設置していた。雷の地雷がなければもっと早くパンケーキ防衛隊の天守閣は落とされていた。
乃依/撃破数2。帝と協力してバーサーカー撃破。雷と協力してアーチャーを撃破。それ以前にも遠距離攻撃で戦線を支え続けた。
ぐだ子/撃破数2。家老マシュと協力してライダー撃破。単独でメインシステム撃破。また、撃破は出来なかったがセイバーに重傷を負わせた他、相手の天守閣に僅かながら損傷を与えた。プロゲーマーでないことを考えると準MVPと言って差し支えない。
家老マシュ/まみまみと協力してアサシンを撃破。撃破数は1だが、前半はぐだ子をよく護り、後半は天守閣をよく護った。
ROKA/ぐだ子&家老マシュと合わせて3人がかりでライダー撃破。撃破数は1だが、ぐだ子をメインシステムのところまで送り届ける為の捨て石・踏み台になった点は特筆に値する。
まみまみ/ROKAと協力してランサー撃破。後半は天守閣の防衛戦力となった。まみまみが特別弱い訳ではなく、他がおかしい(強すぎる)と言える。
いろP/帝と協力してバーサーカーを撃破。まみまみと家老マシュが落ちた後は天守閣防衛を一人でこなしていた。『もしいろPも活性アンプル(チート)を使っていたら』という仮定の話をするのは無粋である。使わせないという選択もまた、帝とぐだ子なりの配慮であり愛なのだから。
かぐや/卒業ライブに集中しており、倒したのは数体のミニオンのみ。『もしかぐやも全力で戦っていたら』という仮定をファンもぐだ子も考えたくはなるが、最期に歌うことを選んだのはかぐやである。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
サーヴァントの出番?
あとでちゃんとあるんじゃよ。
もうちょいと続くんじゃよ。
Q:剣嵐の流星雨の元ネタって?
A:コメント欄に書いてくださいな(笑)
次回更新は8月16日(日)を予定しております。
原作(超かぐや姫)だと彩葉が部屋に引きこもってる間に起こっていた出来事を描けるの、楽しみだなぁ!(ゲス顔)
感想などお待ちしております。