善意の剥製   作:タロットゼロ

8 / 18
一夜

午後八時。

都内のテレビ局が流すニュース特集は、

昼間の介護老人ホーム訪問を大きく取り上げていた。

画面中央、

車椅子の老婦人と目線を合わせて微笑むバロネス・エインズワース。

白手袋の指先。

穏やかな声。

整いすぎたほど整った慈善の映像。

スタジオでは司会者が感嘆混じりに語る。

「英国貴族でありながら、ここまで日本の福祉現場に深く関わるとは驚きですね」

「本日も寄付金とは別に、施設設備更新への支援を申し出られたとのことです」

テロップが並ぶ。

【介護施設改修費を個人負担】

【被災児童基金にも追加支援】

【外交ルートで医療物資提供】

画面右下には、

昼間から続く別の速報。

【 海上戦闘後消息不明】

だが視聴者の目線は、

二つのニュースを同時に受け取りながら、

奇妙に片側へ傾き始めていた。

テレビの下。

SNSのリアルタイム表示欄が流れる。

「この人、本当に行動してるのすごい」

「口だけじゃなく金も出してるの強い」

「ヒーローより現実助けてない?」

「施設のおばあちゃん見る目が優しい」

「政治家ってこういう人ならいいのに」

流れは速い。

一分ごとに増える。

別の番組。

討論形式。

コメンテーターが慎重に言葉を選ぶ。

「もちろんヒーローの活動は必要です。ただ……市民が今求めている“安心”と、“目に見える支援”という意味では、バロネスの存在感は非常に大きい」

「最近は災害時でもヒーロー到着より先に民間支援が注目されますからね」

そこで別の出演者が口を挟む。

「ですが、彼女はあまりに急速に支持を集めすぎている」

「それだけ今のヒーロー行政への不満が蓄積していた、ということでもあります」

同時刻。

ネット掲示板。

匿名の書き込みが高速で更新される。

「またヒーロー何もできてなくて草」

「老人ホーム行ってるバロネスの方が平和守ってる感ある」

「海で暴れてるだけより施設寄付の方が助かる」

「ヒーロー税金使うだけじゃん」

「結局、暴れるしかできない連中と違って頭いい」

さらに別スレッド。

話題はより鋭くなる。

「スター来たのに日本政府動けないの草」

「海外ヒーロー来ても政治で止まるの終わってる」

「ヒーローって法律守れって言うくせに自分らは例外扱い欲しがるよな」

「バロネスの言う通り“法を守れ”では?」

そして、

ある投稿が急速に拡散される。

昼間の映像。

車椅子の老人の手を握る才子の静止画。

その下に短い文字。

“助ける人は静かに助ける”

数万件単位で共有。

夜になる頃には、

ランキング上位を占めた。

一方で、

ヒーロー関連タグには別種の空気が漂う。

「で、今日ヒーロー何した?」

「結局また海外頼みだったの?」

「スターが命張ってるのに日本側コメントなし」

「公安って何してんの」

「平和の象徴いなくなってから全部ぐらついてる」

かつて絶対だった信頼が、

目に見えない速度で摩耗していく。

夜。

ホテル最上階。

静かな部屋。

ソファ脇の端末には、

複数言語のトレンド一覧。

日本語。

英語。

フランス語。

どの画面にも、

バロネス・エインズワースの名が並んでいた。

真白才子は端末を見下ろす。

感情は薄い。

喜んでいるようには見えない。

秘書が控えめに報告する。

「国内支持率、今日だけでさらに上昇しています」

「ヒーロー公安委員会への不信ワードも増加」

才子は短く視線を上げた。

「そう」

それだけ。

紅茶の湯気が細く立つ。

窓の外では、

東京の夜景が変わらず広がる。

「明日の被災地訪問は予定通り」

「はい」

「報道は制限しなくていいわ」

秘書が一礼する。

端末にはまだ流れている。

「ヒーローより必要なのはこういう人」

「もうエインズワースが政治やってくれ」

「正直、誰より日本を助けてる」

その文字列を見ながら、

才子は静かにカップを持ち上げた。

誰かを否定する必要すらない。

世論が勝手に削っていく。

ヒーローの威光を。

信頼を。

立つ場所を。

その静かな崩落の音だけが、

夜の部屋に見えないまま積もっていった。

 

地下深く。

外界の喧騒も電波も届かないはずのその空間には、

無数のモニターだけが青白い光を放っていた。

壁一面に並ぶ画面には、

昼間のニュース映像が無音で繰り返されている。

介護老人ホームで老人の手を取るバロネス・エインズワース。

被災地で子どもへ毛布を掛ける姿。

病院へ医療機器搬入を指示する横顔。

完璧だった。

どの角度から映っても、

一分の隙もない。

その中央で、

はゆったりと椅子へ身を預けていた。

片肘を掛け、

指先を軽く組む。

暗闇の中、

口元だけがわずかに浮かぶ。

背後で端末を操作していた部下が、

一枚のデータを差し出す。

「本日までの国内支出報告です」

紙ではない。

暗号化された収支一覧。

複数の名義。

複数の送金経路。

合法寄付。

匿名基金。

設備投資。

物資搬入。

護衛費。

広報費。

数字だけが並ぶ。

「介護施設改修費、六億二千万」

「医療設備更新、三億八千万」

「被災児童基金、二億九千万」

「地方自治体経由支援、三億」

「慰問用物資、広報調整、移動費を含め——」

一拍置く。

「総額、およそ十七億です」

静寂。

モニターの光だけが揺れる。

数秒、

何も返らない。

やがて、

低い笑いが漏れた。

喉の奥で転がすような、

愉悦の混じった笑い。

「……安いねぇ」

その一言。

部屋の空気がわずかに緩む。

オール・フォー・ワンはデータを指先でなぞった。

「たった十七億で」

モニターの中では、

才子が老人へ膝を折って微笑んでいる。

「世論が動き」

別画面。

ネットトレンド。

ヒーロー批判。

バロネス支持。

「政府が怯え」

別画面。

外務省の緊急会議。

「ヒーローが自ら居場所を失っていく」

その声は静かだった。

だからこそ、

妙に耳へ残る。

「爆薬もいらない」

細い指が、

画面の中の才子の横顔をなぞる。

「都市一つ焼く必要もない」

さらに別画面。

昼の老人ホーム。

笑顔。

拍手。

寄付目録。

「十七億で国の神経に毒を回せるなら、これほど効率のいい投資はない」

背後で、

部下が息を潜める。

誰も口を挟まない。

オール・フォー・ワンは少しだけ顎を上げた。

「昔なら、こういう“善意”はもっと高くついたものだ」

モニターが切り替わる。

の速報。

海上戦。

消息不明。

その赤帯を見ても、

彼の声音は変わらない。

「日本政府に援護停止を選ばせ」

「しかも彼女自身は老人の手を握って称賛される」

小さく笑う。

「見事だよ」

視線がわずかに細くなる。

「真白才子」

その名を、

昔を懐かしむように、

あるいは完成品を眺める職人のように呼ぶ。

「君はついに、“拒絶”を社会構造そのものへ植えつけた」

部下の一人が慎重に問う。

「追加資金は」

 

「レディから要求は?」

 

「いえ……ありません」 

 

「なら必要ないよ」

 

即答だった。

「今はまだ」

口元がわずかに上がる。

「世論は自分で増殖する」

ネット画面には、

支持の投稿が流れ続ける。

ヒーローより必要

行動する貴族

日本を救ってるのは誰か

オール・フォー・ワンはその文字列を眺めながら、

深く椅子へ沈む。

「最も安価な支配とは」

指先を軽く打つ。

「人間に、自分で選ばせることだ」

モニターの中で、

才子がまた笑う。

柔らかく。

穏やかに。

その笑顔を見ながら、

彼は満足げに呟いた。

「十七億か」

低い笑い。

「本当に——安い」

 

 

 

午後10時

スイートルームの空気は、

夜が深まるほど静けさを増していた。

昼間まで人の出入りで満ちていた部屋も、

今は厚い絨毯が足音すら吸い込み、

壁際に控える黒服の男の呼吸だけがわずかに存在を示している。

窓の外には、

眠らない都市の灯。

だがその光も、

ここではただ遠い背景にすぎなかった。

ソファに浅く腰掛けた真白才子は、

ティーカップを置いたまま視線を上げる。

「資料は?」

短い一言。

それだけで、

影のように控えていた黒服の男が一歩進み、

一冊の分厚いファイルを恭しく差し出した。

表紙に記号だけが打たれている。

内部に収められているのは、

表には出ない“選別前”の人間たち。

公安でも、

メディアでも拾いきれない、

ヒーロー社会の綻び。

オール・フォー・ワンの網が拾い上げた、

日本のヒーロー界の膿。

才子は無言で表紙を開いた。

最初のページ。

長期休養中。

重傷による復帰未定。

慢性的疼痛。

精神状態不安定。

次。

軽度処分歴。

現場での粗暴対応。

内部注意二回。

次。

飲酒トラブル。

金銭問題。

小規模な女性関係の揉め事。

どれもまだ、

決定的ではない。

だが、

壊れる直前にある。

ページをめくる指先は細く、

一定の速度を崩さない。

まるで、

店頭で並ぶ商品の賞味期限を確認するように、

必要な条件だけを見て切っていく。

「……思ったほど多くないのね」

声に熱はない。

わずかな失望だけが混じる。

「もっと、腐り果てているかと思いましたのに」

黒服は沈黙したまま動かない。

才子は次のページを開く。

彼女が探しているのは、

実力者ではない。

立ちはだかる敵でもない。

必要なのは、

叩けば簡単にひびが入り、

その破片で周囲を汚せるもの。

自尊心だけを残し、

誇りが支えを失っている者。

社会への不満を抱えながら、

まだ自分だけは被害者だと思っている者。

その“中途半端さ”が最も使いやすい。

次。

次。

次。

数分後、

指が止まった。

地方所属。

全国的な知名度なし。

突出した戦歴もない。

過去に重傷。

長期離脱。

復帰後低迷。

酒量増加。

暴言記録あり。

スポンサー離脱。

病院での面会制限中。

写真の中の男は、

疲れていた。

まだ年齢は若い。

だが目だけが、

何年も先に老けている。

才子はそのページを静かに机へ置いた。

「これにしましょう」

黒服が視線だけで確認する。

「……この方の“心の弱さ”」

指先が写真の輪郭をなぞる。

愛おしむように、

だが感情はない。

「とても美味しそうですわ」

資料には、

退院後の短い取材映像も添付されていた。

記者の問いに、

わずかに語気を荒げる場面。

問い詰められると視線が泳ぐ。

怒りを隠せず、

しかし最後には自分で飲み込む。

その“飲み込み方”が浅い。

つまり、

あと少しで溢れる。

「現在は?」

「再手術後。個室療養中です」

「面会は」

「福祉関係者なら病院側は断りにくいかと」

才子は微かに頷く。

昼間の予定表を思い出すように、

端末へ目を落とす。

老人ホーム訪問。

慈善団体会食。

取材一本。

そして——空白。

十分に入る。

「彼に、少しだけ“勇気”を差し上げて」

穏やかな声だった。

だが、

黒服は意味を理解している。

慰めではない。

救済でもない。

「……自分がどれほど社会に虐げられたか」

才子は写真から目を離さない。

「どれほど使い潰されたか」

一拍。

「その“正当な怒り”を、思い出せるくらいには」

病室。

静かな面会。

最初は称賛。

努力。

復帰への敬意。

理解者の顔。

そのあと、

ほんの少しだけ傷口へ触れる。

なぜ戻ったのか。

誰に評価されなかったのか。

何が足りなかったのか。

誰が見捨てたのか。

そして最後に、

本人が最も言われたくない言葉を置く。

自分で壊れる程度に。

「撮影班は自然に」

「はい」

「病院側には寄付名目で」

「承知しました」

才子はファイルを閉じた。

表紙の上へ白い指を重ねる。

「壊れていただく必要はないの」

その声は柔らかい。

「少しだけ、“本音”を見せてくだされば十分」

その一瞬があれば、

見出しになる。

映像になる。

繰り返される。

“慈善訪問中のバロネスへ感情的に掴みかかった療養中ヒーロー”

それだけでいい。

事実がどうであれ、

順番がどうであれ、

一度流れた印象は残る。

窓の外、

夜景は変わらず静かだった。

その光のどこかで、

まだ何も知らない一人の男が、

明日の面会予定を伝えられようとしていた。

 

夜の事務所は、必要以上に静かだった。

壁際のモニターでは、昼間のニュースが無音で流れている。

車椅子の老人に膝を折るバロネスの姿。

柔らかな微笑み。

繰り返される拍手。

その光が、部屋の空気だけをじわじわと冷やしていた。

「……次、出動要請」

事務員の声が、控えめに響く。

「商店街のトラブル。規模は小さいけど……住民からの通報が増えてる」

机の前に立っていた若い女性ヒーローが、わずかに肩を揺らした。

まだ制服は新しい。

靴の先も、ほとんど擦り減っていない。

「……はい」

返事はした。

だが、足が動かない。

視線は机の上に置かれた端末へ落ちている。

画面には、通知がいくつも並んでいた。

未読コメント 127件

メンション 84件

指先が、ほんの少しだけ震える。

一つ、開く。

「またヒーローかよ、来なくていい」

「どうせ遅いんだろ」

「余計なことして被害増やすな」

「金もらってるくせに役に立たない」

スクロール。

「バロネス見習えよ」

「静かに助ける人の邪魔すんな」

「出てくんな」

指が止まる。

息が浅くなる。

「……あの」

小さな声。

事務員が顔を上げる。

「どうした?」

「今回……その……」

言葉が続かない。

喉の奥で、引っかかる。

頭の中に浮かぶのは、現場じゃない。

人の顔でもない。

——カメラ。

——スマホ。

——罵声。

以前の現場。

規制線の向こうで、誰かが叫んでいた。

「遅いんだよ!」

「来るなって言ってんだろ!」

「ヒーロー気取りが!」

助けたはずだった。

けれど、その声の方が強く残っている。

「……私」

やっと出た声は、かすれていた。

「今日は……少し、控えた方が……いいんじゃないかって……」

自分でも何を言っているのか分かっている。

これは提案じゃない。

逃げだ。

事務員の眉がわずかに動く。

「現場は人手が足りてない」

静かな指摘。

正論。

分かっている。

「……はい」

それでも、足が前に出ない。

視線がまた端末へ落ちる。

画面はまだ光っている。

さっきの言葉が、そこに残ったまま。

——来るな

胸の奥が、じわじわと締め付けられる。

「……ごめんなさい」

小さく、呟く。

誰に向けたのかも分からない。

事務員は何も言わなかった。

ただ、次の出動要請を確認するために端末へ目を落とす。

数秒後、

別のヒーローの名前が呼ばれる。

「代替、回せるか」

「……はい、こちらで手配します」

淡々としたやり取り。

それで終わりだった。

彼女はその場に立ったまま、動けない。

モニターの中では、

またあの微笑みが映る。

静かに、

優しく、

誰からも責められない顔で。

「……」

何も言えない。

ただ、手のひらの中で、

端末の光だけが冷たく残っていた。

 

深夜の会議室は、

必要最低限の照明しか点いていなかった。

窓は閉ざされ、

外の街明かりも届かない。

机の上に広げられているのは、

写真、

時系列表、

送金記録、

海外法人登記、

出入国履歴、

そして——

バロネス・エインズワースこと真白才子に関する膨大な資料だった。

だが、

中央に座る公安職員の表情は険しい。

指先で一枚の報告書を机へ叩く。

「頼んでおいた、“あの女”とオール・フォー・ワンのつながりを示すものは」

低く押し殺した声。

「一つくらい見つからないのか」

向かいに座る男——

公安が外部協力として使っている私立探偵は、

肩をすくめるしかなかった。

年季の入った革鞄から追加資料を出しながら、

苦い顔で答える。

「駄目です」

即答だった。

「表に出ている慈善事業、海外財団、寄付金の流れ、秘書の交友、過去の養育施設関係……洗えるところは全部洗いました」

一枚、

一枚、

机へ並べる。

「ですが、全部合法です」

「合法、だと?」

公安職員の眉が吊り上がる。

「不自然なくらい綺麗です。裏口送金もない。違法接触もない。接触者は全員表の肩書きを持ってる」

探偵は小さく舌打ちした。

「むしろ綺麗すぎる」

部屋の空気がさらに重くなる。

才子がこれほど急速に世論を掴み、

ヒーロー社会に影響力を持ちながら、

何一つ汚れが出ない。

それ自体が異常だった。

公安職員は資料をめくる。

老人ホーム慰問。

児童施設寄付。

医療支援。

災害義援金。

どこを切っても非の打ち所がない。

「だが、偶然なはずがない」

吐き捨てるように言う。

「オール・フォー・ワンが沈黙している時期と、あの女の台頭が重なりすぎている」

「ええ」

探偵もそこは否定しない。

「匂いはあります」

「なら掴め」

「だから難しいんです」

探偵は椅子へ深くもたれた。

「相手は痕跡を残さない。近づこうとした人間は全員、“善意しか見ていない”」

短い沈黙。

そこで、

探偵がふと思い出したように視線を上げる。

「……一つだけ」

公安職員の目が動く。

「方法はあります」

「言え」

探偵は少しだけ口角を上げた。

「私より向いてる人間がいる」

机の端へ一枚の名刺を滑らせる。

肩書きは——

フリージャーナリスト。

過激な取材で何度も問題になりながら、

なぜか業界から消えない男。

「突撃型です」

探偵が言う。

「相手の嫌がる質問を笑顔で差し込む。沈黙を作らせない。答えを濁したらそこを掘る」

公安職員が名刺を見る。

「使えるのか」

「少なくとも、“何か言わせる”ことには長けてます」

「相手はバロネス・エインズワースだぞ」

「だからです」

探偵は身を乗り出した。

「探るより、揺らした方が早い」

記者会見、

福祉施設訪問、

寄付発表、

どこかでマイクを差し込む。

唐突に、

核心だけを刺す。

——あなたは誰のために動いているのか。

——なぜここまでヒーローを否定するのか。

——オール・フォー・ワンとの接点は。

一瞬でも目が揺れれば、

そこから拾える。

「本人はこう言ってます」

探偵は名刺を指で押した。

「“ジャーナリストは必ず聞き出してみせますよ。そのかわり報酬は頼みますよ”——だそうです」

公安職員は黙る。

数秒。

そして、

迷いなく言った。

「金に糸目はつけん」

低い声が部屋へ落ちる。

「必要経費として処理する」

名刺を取る。

「だが」

その目が鋭くなる。

「必ず成功させろ」

探偵が頷く。

「失敗した場合は」

「失敗は許さん」

机上の資料の中央。

真白才子の微笑む写真。

老人の手を取り、

子供に笑いかけ、

完璧な角度でカメラへ収まるその姿。

公安職員はその写真を睨みつけた。

「善人の顔をしたまま、この国の空気を変えすぎた」

低く、

ほとんど独白のように漏れる。

「何かあるなら、必ず暴く」

会議室の外では、

深夜の庁舎が静まり返っていた。

その静寂の中で、

次の接触が決まる。

“善意”の中心へ、

最も遠慮のない言葉を持つ人間が送り込まれようとしていた。




お読みいただきありがとうございます。
今回はあえて、スター戦直後の「一晩」の出来事としてここで区切りました。
表の世論、地下の怪物、ホテルの聖女、有望な若手になり得た新人ヒーロー、そして焦る公安。
それぞれの視点が交錯する中で、一晩のうちに「正義」の足元がどれほど脆く崩れ去ったのかを感じていただければ幸いです。
次回、才子の「毒」が療養中のヒーローへ向かいます。感想などいただければ、執筆の大きな励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。