TSミステリアスダウナーお姉さんとして少年少女を惑わし続けてきた転生者の末路   作:ソナラ

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3 お姉さん旅に出る、そして辻お姉さん行為を働く

 ――結局、ひとまずの方針として王都に向かうことは確定だ。

 式典に参加することが必須なのかは、正直ルルアーシャとの会話だけでは探りきれなかった。

 だってルルアーシャって、ほら、明らかに私へ心酔してるし。

 下手したら狂信とすら言えるかもしれないくらい、私のことをすごいと思ってる。

 嬉しいけどね、ありがたいけどね、情報にバイアスかかりまくってることは間違いない。

 そこで、私は情報を集めるためにも王都に出向くことにしたのだ。

 

 ルルアーシャの誘いを受けること自体は、まずいことじゃない。

 むしろ受けないほうが不義理というものだろう。

 あくまで式典を観覧する者の一人として、ルルアーシャ個人が恩人を招待した。

 そう考えれば、これはごくごく自然なことだからだ。

 幸い私には称号持ちの一級冒険者という立場もあるし、何もおかしくない。

 というわけでルルの馬車に乗って、彼女とともに王都へ向かうこととなったのだ。

 ぶっちゃけ一人なら空飛んだほうが早いんだけど(人外仕草)、ここはルルの面子もあるしお言葉に甘えることにした。

 

「ですからお姉さんの言っていた、ロックバードは空を飛びながら交尾する……というのをこの目で見るときが来るとは思いませんでした」

「ふふふ……ロックだよね」

 

 道中は、ルルアーシャが旅の最中に経験したことで盛り上がった。

 途中、今みたいにこっそり流し込んでいたカスの知識が、変な形で役立っているのを知って内心頭を抱えたりしつつ。

 賑やかな道中だったと思う。

 ただ問題は――救世の旅の内容について一切触れなかったこと。

 これは一般に公開されている情報以外は、機密だから喋れないということなんだろう。

 しかし、私はその一般に知られている情報も把握していない――

 前世の頃から、新聞とかほとんど視ないタイプでした……

 ま、まぁどこかしらで聞く機会もあるだろう。

 流石に本人には聞けないけど……というか、なんかメイドさんの目が怖いし……

 カスの知識の話をしている時も怖かったから、これもしかしてメイドさん私がハリボテミス姉であることに気付いてらっしゃる……?

 まぁでも、確かに気付かれる要素はあるよなぁ。

 でもなぁ……まぁ、いいか。

 

 ともあれ、旅自体は非常に順調だった。

 さすが救世の御子でお嬢様、資金は潤沢で道中の宿も最高級。

 私、最高級の宿に泊まるの好きなんだよね、その宿の温泉と料理とサービスを素人目線で勝手に評価するのが楽しい。

 

 そんな中、事件が起きたのは旅が始まってから十日くらいが経過した頃だった。

 

 

 □

 

 

「――立ち往生、ですか」

「はい、お嬢様。数日前の雨で土砂崩れがあったらしく……撤去が終わるのは明日の昼頃とのことです」

「であれば、今日はここで宿泊ですね。懐かしいですね、旅の途中もこういった立ち往生はよくありました」

「ふふふ、そういう時に周囲の商人や冒険者と交流するのも、旅の醍醐味だねぇ」

「ですね」

 

 ――とのこと。

 街と街を結ぶ山の間を切り開いて作られた街道に、土砂崩れがあった。

 おかげで土砂が崩れた現場には、立ち往生となった冒険者パーティや商人が複数いる。

 中でもルルアーシャの馬車はいかにも貴族って感じだから、周囲の注目を集めていた。

 交流は醍醐味なんて言ったけど……これじゃあ流石に周りが萎縮して、声なんてとてもじゃないけどかけられないな。

 ルルアーシャも、少しだけそれが寂しそうだ。

 しかし私に隙はない、ルルアーシャの希望を叶える方法を私は思いついた。

 

「そうだルルアーシャ、ちょっと耳を貸してほしいな」

「はい、なんでしょう?」

 

 そうして、私はごにょごにょとルルアーシャに案を話す。

 ひいいいい、こっちを視てくるメイドさんの視線が鋭い!

 でも見てくださいよ、ルルアーシャの視線がキラキラと輝いていますよ!

 ――で、しばらくして。

 

「――ですから、私、ルルアーシャ・フォン・アルシュタインが、この土砂の撤去に手を貸したいと考えているのです」

「お、おお……感謝いたします……」

 

 交渉はうまく行ったようだ。

 私が吹き込んだ策は、見ての通り土砂の撤去を手伝うというもの。

 ただこれには難点があって、貴族の名前を出したら向こうが萎縮してしまうだろうということ。

 しかしそこは既に何年も貴族社会を生きつつ、旅で下々の者と貴族として渡り合ったことのあるルルアーシャには慣れたもの。

 いい具合に緊張を解して、土砂の撤去を申し出ることに成功していた。

 後はルルアーシャが魔術でサポートしつつ、いい感じに交流できればそれでいいだろう。

 ルルアーシャが剣にも魔術にも長けていることを私は知っているから、その辺りは心配していない。

 

「……」

「ふふふ……楽しそうだね、ルルアーシャ」

「……そうですね」

 

 そしてそれを見るメイドさん――レヴィスさんというらしい――は、優しげな瞳で見つめていた。

 こちらに対しては相変わらずちょっと視線が鋭いけれど、いくらか険しさが和らいだ気がする。

 で、デレた……?

 

「……おや?」

 

 ふと、私は立ち往生している人々の中に、御者台で一人寂しそうにしている少女を見つけた。

 周囲に親の姿はない。

 で、ルルアーシャの方を見れば……ちょうどルルアーシャとのやり取りを担当していた男女と子供がよく似ているではないか。

 親子だな、とひと目でわかる感じ。

 色々なものを悟った私は、そそそっとその子の方に向かった。

 

「――寂しいのかい?」

「えっ?」

 

 不意に声をかけられて、驚いたのだろう。

 少女は意外そうに顔を上げて、そして少し呆けた様子で口をポカンとさせた。

 私が声を掛けると、たまにこうなる人がいるんだよね。

 全員がそうというわけではないし、もしかしたら私が人ではないと直感的に気付いているのかも。

 見た目は完全に普通のお姉さんなんだけど。

 規則性がないので、どういう理由かはいまいち解っていなかった。

 

「君が寂しそうにしているのを見て、放っておけなかったんだ」

「あ――」

「隣、いいかな」

「う、うん」

 

 そうして、私は御者台に座る。

 少女と二人、遠くで大規模な魔術を使って土砂を動かし始めるルルアーシャに視線を向けた。

 言葉はない、この子が自分の口から話してくれるのを待っているのだ。

 話さないのなら、それで問題ないということだろう。

 

「……パパとママとね、久しぶりに旅行に出かけたの」

「うんうん」

「ずっと二人とも仕事で、アタシ……寂しかったから。ずっと楽しみにしてたんだ」

「でも……土砂の撤去に行っちゃったんだねぇ」

 

 こくり、と少女が頷く。

 仕事熱心な両親、しかし家では子供が寂しそうにしている。

 旅行に出かけて子供を気遣おうとする気持ちもあるけれど、土砂で困っている人たちを見捨てられない。

 だから撤去の手伝いをしている。

 そんなところか。

 土砂の撤去は、この子のご両親がやらなくても、誰かがやってくれるだろう。

 それでも、土砂の撤去を手伝おうとしてしまうのが、この子の両親なわけだ。

 であれば、私のいうべきことは最初から決まっている。

 

「――君のご両親は、すごいね」

「え……?」

「率先して誰かのために動けるなんて、とってもすごいことじゃないか。君はそんな両親が大好きなんだねぇ」

「……!」

 

 流石に何年も子供と関わってきたから、子供の考えていることはそこそこわかるつもりだ。

 その子が欲しい言葉も。

 

「君に魔法の言葉を教えてあげよう」

「魔法の言葉……? お姉さん、魔法使いさんなの?」

「ちょっとだけ、魔法が得意なお姉さんさ」

 

 魔力そのものみたいなものだから、魔術が得意なのは当然だ。

 でも、この魔法は魔術とか魔力とかそんなこと関係ない、とびっきりの大魔法なんだけど。

 

「二人が戻ってきたら、二人にすごいって、大好きって言ってみよう」

「あう……」

「恥ずかしいかい? でも、言葉はちゃんと伝えなきゃ伝わらないんだ。そして君は……その言葉を伝える勇気を、きっと持っている」

 

 そうして私は、できるだけ優しく笑みを浮かべて――

 

 

「私が保証しよう。だって私は、お姉さんだからね」

 

 

 パチンと、ウィンクを混ぜて言葉を送った。

 

 ――その後、私はその子から両親のすごいところをいっぱい聞いた。

 何でも近くの街で大店を経営する大商人とのことで、こりゃすごいと本気で感心しつつ。

 真の狙いはあの子に両親はすごいんだと自信を持ってもらうこと。

 結果、撤去が終わった後に戻ってきた両親に声を掛けることには、あの子は声を大にして両親をすごい、大好きだと言えるようになっていた。

 こうして、子供が幸せにしていると――本当に嬉しい。

 心地よくて、私まで幸せな気分になってくる。

 ああ、今日もいいことをしたなぁ。

 でもちょっと決め台詞の言い方無茶あったよな……まぁいつもあんな感じだし今更だけど。

 

 ――――とか思いながらルルアーシャの馬車に戻ったら、レヴィスさんの視線がさっきより鋭くなっていた。

 

 やっべ。




普段こんな感じで余罪を増やしていますよ、という回。
だいたい半数くらいがまず顔でやられます。
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