TSミステリアスダウナーお姉さんとして少年少女を惑わし続けてきた転生者の末路   作:ソナラ

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5 お姉さんはいつでもアレ

 アレからレヴィスさんに「私は絶対惑わされませんから」と正面切って言われてしまった。

 やっぱりバレてらっしゃるうううううう。

 今までバレたことなかったのにいいいい。

 え、こんなガバガバでバレないわけないって?

 まぁ確かに、いずれルルアーシャも冷静になって私がカスのお姉さんであることがバレてしまうかもしれない。

 誰かしら冷静になって、私の性癖に気付いてしまうこともあるだろう。

 でも、今はまだそうじゃない。

 だって私が彼らと関わったのはほんの限られた時期だけだし、再会して現実の私を見るまでは私を冷静に判断することはないはずだ。

 我ながら最悪なことしかいってないな。

 

 もし仮にバレることがあるとしたら、それこそ冷静になる時間があった場合。

 レヴィスさんはこのパターンだ。

 二十年前、あの頃私はまだカスのお姉さんじゃなかったけど、なんとなく声をかけてしまったのだ。

 今思えば、ミス姉の原型はあの頃からできてたんだな。

 で、レヴィスさんは二十年も経ってるし、私の格好があの頃と違うから私がかつて話しかけてきたお姉さんだと気づかなかったのだろう。

 でも、理想化された過去のお姉さんと、今の私には凄まじいギャップがある。

 加えて私のことを聞いたのがルルアーシャさんからの伝聞だったのもあって、私を冷静に判断することができたんだな。

 

 ――何にしても、これで一つはっきりした。

 多分私は、ミス姉になる前からやらかしている。

 ただ、今回は明らかに自分がレヴィスさんを焼いてしまったと言うのはすぐに思い出すことができた。

 忘れることはないんだから、心当たりさえあれば思い出すことは可能だ。

 しかし、()()()()()()()場合は?

 二十年前の私なんて、意図してミス姉行為を働くことこそないけど、意識せずにやっていることはあるはずなのだ。

 だから私は、一体どれほどの数やらかしているか、見当もつかないのである。

 

 

 □

 

 

 王都までの道のりで、時折街を通過する。

 その際に高級宿に泊まってゆっくりできていてサイコーって話はしていたけど、街の中の楽しみは一つじゃない。

 単純に普段立ち寄らない街や、数年ぶりに訪れる街を散策するだけでも面白い。

 今日私が散策しているこの街は、街にダンジョンが存在する、この世界では冒険者街と呼ばれる街。

 冒険者の行き交う、他の街と比べて雰囲気は乱暴だけど活気に満ちた街だ。

 

 ルルアーシャとレヴィスさんは、食料の調達に赴いている。

 これから私と二人は、龍桜山脈と呼ばれる山の街道を越えて、アルシュタイン領へ向かうことになっていた。

 王都に向かうには、ルルアーシャの実家を通らないといけないってわけ。

 ただなんか、その龍桜山脈で最近不穏な事が起きてるらしいんだよなぁ。

 何事もないといいけど。

 

「あの……失礼します」

 

 不意に声をかけられた。

 冒険者街で声をかけられるとは思っていなかったから、少し驚く。

 けれども顔には出さず、いつもの微笑みで振り返る。

 すると、私は思わず声を出しそうになった。

 

「ミリナさんで……あってますでしょうか」

 

 げえっ! 昔ちょっと顔を合わせた人!

 もう二十年以上前だった上に、当時の彼は十代の少年だったから、風貌は随分変わっている。

 けど、私の精霊記憶力と精霊頭脳は凄まじく、二十年前のこともきっちり覚えているし、そんな彼が成長すればこうなるだろうなと言うのを瞬時に判断してくれる。

 間違いない、二十年前にこの街でコレクションを処分していた時に、それを買って行った子だ!

 それが、今は三十代のナイスミドルになっている。

 

「ドアルブくんかい? 久しぶりだねえ」

「……っ!!」

 

 私が彼――ドアルブくんの名前を呼ぶと、ドアルブくんは目を見開く。

 まさか覚えているとは思わなかっただろう。

 私も、精霊じゃなかったら忘れてると自信を持って言えるぞ。

 自信を持つな? はい……

 

「ま、まさか覚えていてくださるとは……」

「見ての通り、私は長命種だからね。少し記憶力が特別なんだよ」

「ええ……あの頃からお変わりなく……」

 

 私の容姿は四十年前から今のままだからな。

 本気を出した時以外は、人間とほぼ姿形が変わらないとはいえ、流石に容姿が一切変わっていなければ長命種と言っても信じてもらえる。

 長命種自体は珍しいとはいえいないわけじゃないから、隠す必要もない。

 

「アレから……ずっとお礼を言いたかったのです。まさかこのようなところで会えるとは……」

「ふふふ、奇縁もあったものだねえ」

「はい! あの時ミリナさんに救われたから、今の俺があるんです!」

 

 …………ええと。

 

「買い被りすぎかもしれないよ? 私は君にお守りを一つ売っただけなんだから」

「それのおかげで、俺は救われたんです!」

 

 まったまった。

 いやいやいや、絶対ないだろうそんなこと!

 今から二十年前に、私は生活費のためにコレクションを処分していた。

 魔道具とかそう言うやつで、高価なものばかり。

 それが並ぶ露店にドアルブくんはやってきたのだ。

 ドアルブくんはそれを買うことができない。

 無論、高価なものを買う金なんてドアルブくんにはない。

 そこで渡したのがお守りだ。

 魔力を紙に浸透させて袋に入れる。

 そして非常時に浸透した魔力を吸引することで魔力を回復できると言う簡単な魔道具。

 魔力の豊富な子供が小遣い稼ぎに作るような代物だ。

 ()()()()を使ったとは言え、魔力量そのものは市販のものとそう変わらない。

 相場と比べるとそこそこ安いけど、別に特別なものでもなんでもないのだ。

 

「その魔道具に入っていた貴方の魔力は特別なものでした! 魔力を回復させると同時にあらゆる呪いすら消し飛ばしてしまう!」

「ふふふ……それで?」

 

 それマジ? 初めて知ったんだけど。

 

「それを俺が偶然持っていたおかげで、有名冒険者パーティの冒険者が助かって、俺もパーティに入れてもらえたんです!」

「それはよかったじゃないか」

「ありがとうございます。それで助かった冒険者が、今度は偶然貴族の令嬢を誘拐から救いまして。その場で貴族の令嬢を助けられたのはその人だけだったから、お守りがなかったら貴族の令嬢が攫われてたんです」

 

 へえ、そんな偶然もあるのかあ。

 

「で、今度は色々あって貴族の令嬢と、ミリナさんのお守りで助かった冒険者のお兄さんが結婚することになりまして。俺たち冒険者パーティはその縁で色々な仕事を受けられるようになったんです」

 

 私が助けた人は女の人らしい。

 一瞬寝取られじゃないかー! って言いそうになっちゃった。

 

「そうして実績を積んだ俺たちパーティが、なんと竜退治を偶然請け負うことになりました」

 

 名誉なことだなあ。

 

「そして俺が最終的に竜にとどめを刺してドラゴンスレイヤーになったんです! 仲間からも祝福されて、ミリナさんのお守りで助かった人は今は俺の奥さんです!」

 

 うんうん。

 えーと、とりあえず。

 

 

 そんなことある!?

 

 

 完全に私のお守りが全ての始まりじゃん。

 あの時何の気無しに売ったお守りにそんな因果が絡むことある!?

 偶然にしたって出来過ぎだよ!

 と言うか、もし仮にこんな感じのやらかしが各地に点在しているとしたら……

 

 無理! 把握するの絶対無理!

 

 なんなら救世の旅にも知らない形で関わってるかもしれないじゃん!

 いくら私がろくでなし系ミステリアスお姉さんだからって、これはいくらなんでも事故だよお!

 とりあえずその場は全力でいつも通り雰囲気たっぷりにいいことを言ってドアルブくんを送り出した。

 

 ……けどよくよく考えると、ここで雰囲気たっぷりに送り出すからまた余罪が増えるんじゃないかなあ!?




それでもこれまで培ってきたミス姉をやめられないあね――――
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