ルリハの冒険〜魔王の復活と勇者の帰還   作:nocomimi

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巨人対巨人

「族長!話があるゴロ」

 

ドンゴが声を上げた。談笑していたゴロン族の男たちが一斉にこちらを見た。ドンゴの横にいたルリハたちに気づいたのか、数人が怪訝そうな表情をした。

 

「....ん?...おお、ドンゴか。久しぶりだな」

 

族長はひときわ巨大な身体を動かしてこちらに向き直った。ルリハは思わず唾を飲み込んだ。座っていても、高さが三メートルはありそうだ。立ち上がったら文字通り雲を突くような巨躯だろう。

 

「最近は行商に精を出してるそうだな。だがたまには鉱山に戻ったらどうだ?お前もそろそろ一人前の鉱夫頭になれるくらい経験を積んだことだしな」

 

ルリハは少なからず驚いた。族長の顔はまるで鬼神の石像のようにいかめしい。それなのにその口調は柔和で、言葉には殆どゴロン訛りがない。

 

「....そう言ってもらえるのはありがたいゴロ。今の仕事が区切りがついたら考えるゴロよ」

 

「なんか...想像してたのと違うね。意外と優しくない?」

 

リンクルが呟く。ルダは彼女に囁いた。

 

「族長って一族の父親みたいなものだし、外部との折衝なんかも一手に引き受けてるのよ。脳筋だけではやっていけない地位よ」

 

「うん?人間のお客さんか?」

 

族長がルリハたちに気づいて、やや怪訝な顔をした。ルリハは居住まいを正して礼をした。

 

「お会いできて光栄です、族長さま。あたしは剣士見習いのルリハです。で、こっちが...」

 

「妹のリンクル。よろしくね、族長さん」

 

リンクルが気軽な口調で挨拶する。ルリハはヒヤヒヤした。だが、ルダが進み出て丁寧に礼をすると、族長はそちらに注目したので彼女はホっとした。

 

「レナードの娘ルダです。お久しゅうございます」

 

「なんと....レナード祭司のお嬢さんか。お父様のことは気の毒だったな。お嬢さんがこんな立派になられたのがせめてもの慰めだが..」

 

族長が懇ろな口調で声をかける。ルダは答えた。

 

「お陰さまで私も開業医になることができました。ゴロン族のみなさんにお変わりはありませんか?」

 

「ああ。最近は作業中の事故もなく、皆息災だ。ところでドンゴ.....」

 

族長はドンゴに向き直った。

 

「俺に話がある、と言ったな。それはこの人間のお嬢さん方に関係する用むきなのか?」

 

ルリハは気づいた。族長の目は笑っていない。

 

「その通りだゴロ、族長」

 

ドンゴはそう言うと、一呼吸してから言葉を継いだ。

 

「族長、こいつらを連れて、鉱山の中を調査させてもらいたいゴロ」

 

それを聞いた族長は数瞬黙った。気まずい沈黙が部屋を支配する。周囲にいたゴロンの男たちも、驚きに固まってしまったのか、一言も発しなかった。

 

「...この人間たちを連れて...鉱山を....調査する...と言ったな」

 

やがてダルボスは一言ひとことを確認するように繰り返すと、目を細めてドンゴを見つめた。低いが異様に通る声だった。

 

「俺にはお前の言っていることの意味がわからん。なぜ人間を鉱山に入れねばならんのか、一体何を調べるのか」

 

「族長、人間を鉱山に入れるなんてあんたの世代からしたらありえないような掟破りだってことは俺も知ってるゴロ」

 

ドンゴは両手を広げると説明し始めた。

 

「だが、今とんでもない事態が起きてるゴロ。魔王を蘇らせようと企んでいる男がいて、俺たちはそいつを追ってるゴロ」

 

「ますます意味がわからんな。誰であろうが鉱山の中には俺の許可なしには入れん。それとも俺の目を盗んで誰かが入ったとでも言うのか?」

 

「それは....」

 

族長が厳しい口調で問いかけると、ドンゴが口ごもった。ルリハは非礼かとは思ったが、見かねて横から口を出した。

 

「族長さま。恐れながら....。あたしたちは、ゼルダ女王からのご命を受けてこの調査をしています。魔王を蘇らせんとしているのはノクス博士という狡猾な男です。彼の手下たちは魔物と人間のハイブリッドで、人間には無理な場所でも簡単に....」

 

「俺はドンゴと話をしている、お嬢さん」

 

族長は目も合わせずに一喝した。ルリハは圧に負けて黙らざるを得なかった。するとドンゴがまた口を開いた。

 

「族長、そいつは魔物を操る危険な男ゴロ。そしてもし魔王が蘇ったら俺たち種族もただじゃすまんゴロ」

 

「フン...魔王、魔王とまるで小わっぱのように怯えるのか、ドンゴよ」

 

ダルボスは嘲笑うように言った。

 

「魔王が蘇ったとて何だというのだ?俺たちゴロン族はそんなヤツには負けん。現に十六年前、魔王がハイラル城を奪ったときもこのゴロン鉱山には何一つ異変は起きなかった。そうだろう?」

 

ルリハたちは顔を見合わせた。やはりドンゴの言っていたとおりだ。族長ダルボスの頭の中には、十六年前の事件の記憶が一つも残っていないのだ。

 

「族長....」

 

ドンゴはゆっくりと息を吸うと、言葉を継いだ。

 

「族長。それは違うゴロ。十六年前、あんたは『影の結晶石』に魅入られてマグドフレイモスという怪物に変身してしまったゴロ。だから俺たちはあんたを鉱山の一番奥に幽閉したゴロ。そこに勇者リンクが来て、あんたを正気に戻したゴロよ」

 

部屋の中を、カミソリのような緊張が走った。聞いていたゴロンの男たちは驚愕のあまり目を丸くし、互いに顔を見合わせている。

 

「...長老たちの協議でその話は『なかった』ことにされたゴロが、俺たちゴロン族が魔王だろうがなんだろうが手出しができない最強の種族だと思ってるんだったら、それは違うゴロ」

 

「い...言っちゃった...ね」

 

リンクルが目をパチクリさせながら言う。ルリハは『黙ってて』と目で合図するしかなかった。

 

ドンゴは口をつぐんだ。部屋の中の誰も、咳払い一つしない。

 

だが、やがてダルボス族長はゆっくりと立ち上がった。ルリハはそれを見て息を呑んだ。族長の身長は五メートル、いやそれ以上だ。まるで岩の巨人のようだった。

 

「ド...ン.....ゴ。今....なんと言った?」

 

地響きのような声がした。顔を伏せていた族長が、目を上げた。その目は血走っていた。

 

「族長。十六年前、族長が正気を失っていた間、俺たちは人間の勇者に助けられたゴロ」

 

ドンゴは真っ直ぐ相手の顔を見上げて言った。すると族長は歯の間から唸り声を絞り出すように言った。

 

「....言わせておけば...調子の良いことをベラベラと....」

 

「だから自分たちは人間より強いとか、人間を鉱山に入れないとか、そういう迷信めいた古い考えはもう捨てたほうが良いゴロよ」

 

それでもドンゴは畳み掛けるように被せる。周囲の男たちは、驚愕を通り越して顔に恐怖の色を浮かべ始めた。

 

「だ....ま.....れ.....ぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

ダルボスは地鳴りのような咆哮を上げ、両目を見開いてドンゴを見据えた。その口からは煙がもうもうと上がっている。族長の声に合わせて床が振動しているような気がして、ルリハは思わず一歩下がってしまった。

 

「ダンゴロスにくっついて回っていた小僧っ子が...随分偉くなったもんだなァ...」

 

族長がズイと一歩前に出る。それに呼応するように、周囲の男たちが後退していく。

 

「俺が正気を失っただと?誰に吹き込まれたか知らねェがデタラメを抜かすな!」

 

「お...お姉ちゃん、怖い...」

 

族長の声が部屋に響き渡ると、リンクルがルリハの背中にしがみついてきた。彼女も同じ気持ちだったが、妹分の肩を抱いてなだめるしかなかった。

 

「誰もなにも、ゴロンなら全員が知ってることだゴロよ。知らないのは族長、あんただけだゴロ」

 

ドンゴは覚悟を決めたのか、臆する様子もなく続けた。

 

「なにぃ...?まだ抜かすか!」

 

「あんたの威信が傷つくといけないと思って、言わないでおくことに長老たちが決めたんだゴロ。でも....」

 

ダルボスの地鳴りのような声に負けず、ドンゴがいっそう声を張り上げた。

 

「俺たちはそんな嘘の上にゴロン族の未来を作ることはできないゴロ!」

 

二人の男たちの怒鳴り声が部屋に響き渡り、こだまし、そして消えた。その後には絶望的なほど痛々しい沈黙が残された。

 

周囲の男たちはまるで巨大な捕食者の前に立たされたかのように、ただ固まっている。ルリハたち三人も、身じろぎさえせず成り行きを見守っていた。

 

だが、やがてダルボスがゆっくりと口を開いた。

 

「...面白い。お前が次のゴロンの世代を背負って立つ者になるって言うのか」

 

その声は、先ほどの怒号とは違ってやや柔らかい。それでいて、何かを測るような厳しさと冷たさが籠もっていた。

 

「別に次期族長になろうとかだいそれたことは考えてないゴロ。ただ俺は...」

 

「ゴタクはもういい」

 

ドンゴの返事を、族長は遮った。そして眼の前の土俵を指さした。

 

「これ以上言いたいことがあるなら、『力』で証明してみせろ」

 

* * * * * * * * * * * * *

 

土俵の周囲には、騒動を聞きつけたゴロンたちが続々と詰めかけてくる。もはや満員御礼の様相を呈していた。

 

「ドンゴが族長を怒らせて...?タイマンで決着をつけることになったゴロ?」

 

「あいつバカだゴロなぁ。族長に勝てるヤツなんていないゴロ」

 

「まあ退屈しのぎにちょうどいいゴロ」

 

「いやいや、退屈しのぎで済む相手じゃないゴロ……」

 

「でも見たいゴロ。族長の本気なんて滅多に見られないゴロ」

 

先程まで部屋に漂っていた刃物のような緊張感は消え去り、ゴロンたちは闘技場の見物客のようにそれぞれの期待を口にする。

 

「試合のルールは単純だ。相手を土俵の外に出したら一本。三回外に出されたほうが負けだゴロ」

 

小柄だがガッチリした体格の長老が進み出て宣言した。

 

「相撲ルールじゃあなくって闘技場ルールだゴロ!」

 

「こいつは楽しみだゴロ。パンチ、キック、投げ、なんでもアリだゴロ!」

 

観客たちから歓声が上がった。

 

「ヤレヤレ....儂らの時代には溶岩に浮いた闘技場で決着をつけたもんだゴロ。優しい時代になったもんだゴロなぁ」

 

別の長老が腕を組んで呟いた。

 

「お...お姉ちゃん...聞いた?」

 

密集するゴロンたちの間で身を縮めながらも、リンクルがルリハに囁きかける。ルリハは唖然としつつも頷いた。だが、ルダが冷静な口調で言った。

 

「ドンゴが言った通り、溶岩に落ちてもゴロンは即座に死ぬことはないわ。ただ危険なことに変わりはないけど」

 

「どっちにしたってメチャクチャじゃん....。なんでそんなことすんの?っていうかなんで男子ってケンカで決着つけたがるの?」

 

リンクルは信じがたいといった表情で尋ねる。だがルダは澄まして答えた。

 

「...そういう生き物なのよ。しょうがない人たちよね」

 

「両者位置につくゴロ!」

 

小柄な長老が割れ鐘のような声で呼ばわった。

 

土俵の上にダルボス族長とドンゴが登る。族長の体格は、ドンゴの巨体のはるかに上を行く。まるで大人と子供のようだった。

 

「....言うまでもないゴロが、素手であれば禁止事項は一切ないゴロ。だが、卑怯な戦い方をした者は末代までの笑い者になるゴロ。分かったゴロ?」

 

向き合った族長とドンゴは頷く。ルリハはゴクリと唾を飲み込んだ。彼女の腕を掴むリンクルの手にもギュっと力が入った。

 

「始めッ!」

 

開始の号令がかかる。族長とドンゴはファイティングポーズを取った。

 

だが族長は仕掛けない。拳を握りながらも、相手の出方を見ている様子だった。

 

「ぬおぉぉぉぉぉッ!」

 

ドンゴが雄叫びを上げて殴りかかる。

 

ドゴォッ....!

 

岩のような拳が族長の顔にクリーンヒットした。族長の巨体がわずかに揺らぐ。

 

だが、次の瞬間だった。族長の顔の位置が元に戻った。その顔には笑みが浮かんでいる。歯を剥き出し、目を見開いた、闘気を丸出しにした獣のような微笑だ。

 

ドンゴが再び拳を振り上げる。族長の側頭部にぶち当たり、衝撃音が響き渡った。

 

だが、族長はわずかに身体を揺らしただけだった。

 

「も...もしかしてわざと受けてる?」

 

ルリハは驚きに目を丸くしながら呟いた。

 

「ぬおぉぉぉぉッ!」

 

ドンゴがみたびの雄叫びを上げた。族長は一切避けることなく、そのパンチを顔の真ん中で受け止める。

 

ドガッ....!

 

凄まじい当たりだった。だが、ダルボスは立ち続けていた。

 

「ぞ...族長....!」

 

「あれを喰らって平気だゴロ?」

 

観客たちの間からざわめきが広がる。

 

「この程度か、ドンゴ!」

 

族長はやおら叫ぶと、今度は自分が拳を振り上げた。反射的にガードを上げたドンゴに、巨大な拳が突き進んでいく。

 

ドカァンッ!

 

ドンゴの腕に族長の拳が当たる。よろめいたところに次の拳が襲った。辛うじて防御したドンゴだったが、押されて後ろに下がり始めている。

 

「おじさん...頑張って!」

 

ルリハとリンクルはほぼ同時に叫んだ。ルダもまた、真剣な表情で闘いを見守っている。

 

族長の拳が空気を唸らせてドンゴに襲いかかる。だがドンゴは身を伏せてそれを回避した。一気に突進すると、ガッチリと相手に組み付いた。

 

「がっぷり四つだゴロ!」

 

「だが族長は相撲も強いゴロよ!」

 

観衆が歓声を上げ拳を突き上げる。ドンゴは唸り声を上げながら相手を押し込んだ。だが族長はそれを受け止めるやいなや自分も押し始めた。

 

一進一退の攻防が続く。だが、ドンゴはスタミナが切れたのか、次第に後退し始めた。

 

「おじさん!負けないで!」

 

リンクルが叫ぶ。だが、体格の差はいかんともし難い。やがてドンゴが土俵を割り、長老が手を上げた。

 

「一本だゴロ!両者位置に戻るゴロ!」

 

歓声と野次が耳を聾するばかりに響く。ドンゴは肩を大きく上下させながら土俵に戻った。対する族長は、やや額に汗をかいているだけだ。

 

「始めッ!」

 

長老が叫ぶ。号令がかかるや否や、ドンゴは低い姿勢で突進すると相手の足を取った。だが族長は落ち着いて上から相手を押しつぶすように覆いかぶさる。やがて攻防のすえ族長がドンゴの背後をとった。

 

「投げるゴロ!」

 

観客が叫ぶ。ドンゴは必死に抵抗したが、とうとうダルボスがその身体を丸ごと持ち上げて土俵の外に放り投げた。観客のゴロンたちが十人ほど巻き添えを喰らって倒れた。

 

「一本!位置に戻れ!」

 

再び長老が叫ぶ。ルリハとリンクルは顔を見合わせた。

 

「ど...どうしよう。おじさんが負けちゃう」

 

リンクルが呟いた。ルリハは唇を噛んだ。だが、今は声援を送るか、祈るぐらいしかできることはない。

 

「おじさん!頑張れ!」

 

ルリハは声を大にして叫んだ。だが、それも周囲のゴロンたちの歓声ですぐにかき消された。

 

「始めッ!」

 

号令が響き渡ると、ドンゴは拳を構えて慎重に間合いを測り始めた。対するダルボスは余裕の表情で手招きをしている。

 

「ぬォォォッ!」

 

ドンゴが族長に殴りかかった。族長はそれを受け止める。顎、頬、鼻。次々と拳がヒットするが、族長はそれでも倒れない。

 

「バカ!お前のパンチなんか族長には効かんゴロ!」

 

観客たちから嘲笑が響いた。ドンゴによるひとしきりの攻勢のあと、族長が拳を振り上げる。

 

「パンチってのはこうやるんだぞ!」

 

ドガァッ...!

 

族長の拳をガードしたドンゴが身体ごと揺らされた。二・三歩後退したドンゴがそれでも前に出ようとする。

 

「吹っ飛ばせ!族長!」

 

観衆のほとんどが族長に声援を送っていた。ルリハはリンクルと顔を見合わせた。二人は手を握り合うと、必死で祈り始めた。

 

ドガァッ...!ドガァッ...!

 

まるで破城槌が城門を叩くような音が響く。ドンゴは喰らっても喰らっても、押し返された分だけ前に出る。

 

「さっきからガードしてばかりだぞ!少しは骨を見せてみろ!」

 

族長が挑発した。その瞬間、ドンゴが身体を岩の塊のように丸めた。

 

「ゴロンアタック....とうとう捨て身に出たゴロ!」

 

観客はいっそう盛り上がる。ドンゴは身体を高速回転させて族長に突進した。

 

ドォォォンッ....!

 

族長は両手で受け止める。勢いがついて体重の乗り切った体当たりに、族長が数歩後退した。だがそこまでだった。

 

「ぬぐぉぉぉぉッ!」

 

今度は族長の雄叫びが響く。族長が岩の塊と化したドンゴの身体を両手で持ち上げる。高速回転したままのドンゴの装甲と、ダルボスの手が火花を散らす。

 

「これで終わりゴロ!」

 

観衆も凄まじい盛り上がりを見せた。ルリハとリンクルは思わず目を閉じた。だがルダは、真っ直ぐに闘技の成り行きを見つめていた。

 

族長がドンゴを投げ飛ばそうと頭上に掲げたその瞬間。

 

ドンゴが身体の丸めを解いた。

 

何かが起こる。そう感じたルリハは目を上げた。

 

高速回転したままのドンゴが踵を落とした。

 

まるで精密な蚤のように、その踵が族長の額に突き刺さった。

 

ガンッ......!

 

異様な音が響き渡る。

 

―――次の瞬間、ドンゴが土俵の上に落ち、地響きがした。

 

族長は相変わらず仁王立ちしている。

 

いっぽうドンゴの顔は汗まみれだった。彼は両手を土俵に突いてゆっくりと立ち上がった。

 

だが、族長は動かない。やがて観客が静まりかえり、ついでその間からざわめきが広がり始めた。

 

「...族長?どうしたゴロ?」

 

長老が声を上げ、土俵に上がった。だが彼は族長に近づくと、驚愕の表情を浮かべて呟いた。

 

「....し....失神してるゴロ」

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