ルリハの冒険〜魔王の復活と勇者の帰還   作:nocomimi

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戦士たちの墓所

「俺は....卑怯な闘いかたをしたゴロよ。前に進むためとはいえ、この後悔は一生消えんゴロ」

 

ドンゴは溜め息をついて呟いた。

 

ルリハたち四人は、土俵の部屋を通り過ぎて坑道の中を進んでいた。族長が意識を失い、試合はドンゴの勝ちとなったため、彼らは鉱山の調査を許されたのだ。

 

「どうして?蹴りだってオーケーなんでしょ?おじさんメッチャカッコよかったよ」

 

リンクルはドンゴの顔を見上げると無邪気に言った。

 

「クルッて回転して、ビシッて踵落として。うち、ああいうの憧れる!華麗な空中殺法ってヤツ?」

 

「俺が言ったのはそのことじゃないゴロよ」

 

歩を進めながらもドンゴは小声で続けた。

 

「族長は額に古傷があるゴロよ。『影の結晶石』に魅入られて怪物に変身したとき、勇者リンクは正気に戻すため族長の額に貼り付いた魔法の宝玉を三度刺し貫いたゴロ。その余波で、族長は額が弱点になったゴロよ」

 

ドンゴはそう言うと足を止めた。

 

「...俺はそれを知った上で攻撃したゴロよ。俺はもう、一族の誰にも顔向けできんゴロよ」

 

「おじさん....」

 

ルリハはドンゴを見上げた。

 

「ごめんなさい、おじさん。あたしがおじさんに余計なことを頼んだせいで....」

 

ドンゴはしばらく黙っていたが、やがて首を振った。

 

「ルリハ、お前が謝る必要はないゴロ。全ては俺が弱いのがいけないんだゴロ」

 

「そんな.....おじさんが弱いなんて」

 

ルリハは驚いて声を上げた。

 

「いや、俺は弱いゴロ。いっつも兄貴のマネをして、兄貴にくっついて回って、兄貴の一歩後ろを歩いてたゴロ。族長....いや叔父貴も、兄貴のことは高く買ってたゴロ。兄貴がもし今でも生きてたら、きっと次期族長に指名されてたゴロ」

 

ドンゴは続けた。するとルダが静かに言った。

 

「ドンゴ、あなたはお兄さんじゃないし、お兄さんはあなたじゃない。比べること自体無意味よ」

 

「先生には俺の気持ちなんかわからんゴロ」

 

ドンゴは素っ気なく答え、また歩き始めた。

 

一行はやがて開けた部屋に出た。その光景を見たルリハとリンクルは思わず目を見張った。

 

洞窟の床が溶岩だまりになっている。溶岩は高温らしく、オレンジ色に燃え盛っていた。

 

溶岩だまりの上には、細い岩の足場が数本あった。だが、足場のところどころは欠けており、しかもその間から溶岩が間欠泉のように時間を置いて上に向かって噴き出している箇所まである。

 

「こ....ここを渡るの?」

 

リンクルが裏返った声で叫んだ。ルリハも驚愕の思いで思わず首を振った。

 

「行くしかないゴロ。リンクル、念のため時々コンパスを見てくれゴロ」

 

「う...うん。わかった」

 

リンクルが答えた。

 

ルリハは覚悟を決めると、助走をつけて足場の間隙を飛び越えた。だが、リンクルとルダが渡るときには、ドンゴは先に渡ってから長い腕を伸ばして補助した。リンクルが嬉しそうに言った。

 

「おじさん、優しい!きっとモテるよ」

 

「余計な話はいいゴロ。滑って落ちたらお前らは即死だゴロよ」

 

いくつかの間隙を越えると、最後は間欠泉に阻まれた場所だ。まずドンゴが先に渡り、それから間欠泉の収まった瞬間に三人が順番に飛び移るのを受け止めた。

 

「ねえおじさん、彼女とかいないの?結婚してないの?」

 

難所を越えると、緊張を紛らわせるためかリンクルがドンゴに話しかけた。

 

「昔いたこともあったけど、最近は面倒臭くなったゴロよ。独身貴族ってヤツだゴロよ」

 

通路を先導しながらドンゴが答える。リンクルはそんな相手をイジり始めた。

 

「ええぇ〜ッ。面倒臭いって何?そんなトシでもないでしょ?勿体ないじゃん!」

 

「所帯を持つとやることが増えるゴロ。旅行も自由には行けなくなるゴロ」

 

「あ、分かった。いろんな女の人とかわりばんこに遊びたいんでしょ!いけないんだぁ、そういうの!」

 

だがドンゴは呆れたように苦笑すると、何も答えずに次の部屋への扉を開いた。

 

その先は野外だった。広大な空間の中、巨大な鉄の構造物がそびえ立っている。

 

「うわ...ッ〜....凄い!」

 

周囲を見回しながらリンクルが叫んだ。 

 

「選鉱場だゴロ」

 

ドンゴが短く言うと歩き始めた。

 

鉄製の通路を登っていく。通路は丈夫な金網でできているが、はるか下方を見ると一番下は一面が溶岩だまりになっていた。

 

やがて一行は数人のゴロンたちが作業している踊り場に出た。

 

上から岩の塊が次々と落ちてくる。ゴロンたちは値打ちのある鉱石が含まれるものとそうでないものを選り分け、無価値なものをその場に残す。すると、床板がくるりと一回転して、捨てられた岩が眼下の溶岩だまりに落ちていった。

 

岩が溶岩に落ちると炎が立ち上る。それを見たルリハは思わず生唾を飲み込んだ。

 

「おい、悪いがちょっと通してくれゴロ」

 

ドンゴが声をかける。すると作業員たちは驚いたように振り返った。一人が怪訝な顔で尋ねた。

 

「ドンゴ、お前人間なんか連れて何やってるゴロ?」

 

「族長の許可はもらったゴロ。この先でちょっと調べることがあるゴロ」

 

それを聞いた作業員たちは顔を見合わせていたが、やがて肩をすくめた。職長らしき一人が上を見上げて叫んだ。

 

「おおい、一旦ストップだゴロ!」

 

すると岩の流れが止まった。ルリハたち四人は回転する板の周期を見極めながら急いでその場を渡った。

 

「悪ィな。後で一杯奢るゴロ」

 

ドンゴは背後を一瞥すると、その先の扉を開けてルリハたちを入らせた。

 

* * * * * * * * * * * * 

 

こうして一行は、鉱山の中を進んでいった。鉱石を冷やすためのプールや、集めた鉱石を梱包する巨大なプラットフォーム。リンクルはコンパスを手に持ちながらも、目を輝かせてこういったさまざまな設備を眺める。

 

「リンクル、どっちだゴロ?」

 

「え...あ...はい!ええっと、こっち!」

 

ドンゴが時折り促し、リンクルが方角を確認する。やがて四人は巨大な岩壁に開けられた洞窟に入っていった。

 

「うん?この先は....以前族長が乱心したときに幽閉されてた場所だゴロよ」

 

ドンゴが怪訝な表情を浮かべて呟いた。溶岩溜まりの上に設えられた通路を下っていくと、四人は壮麗な作りの回廊に入り、やがて巨大な円形の扉に突き当たった。

 

「ここって何の施設なの?宝物が置いてあるとか?」

 

リンクルが尋ねた。するとドンゴは首を振った。

 

「いや....『戦士たちの墓所』だゴロよ」

 

「『墓所』?」

 

「そうだゴロ。ゴロンの歴代族長や、戦士たちのうち特に名誉ある者の遺体が保存されてるゴロ」

 

それを聞いたルリハは心に思い至るものがあった。

 

「ねえ...だったら...もしかしてお兄さんも...?」

 

「ああ。墓参りに来るのは久しぶりだゴロ....だが」

 

ドンゴは眉をひそめながら続けた。

 

「だが...本当にこんな場所に『魔』の源があるゴロ?」

 

ドンゴは扉に近づいて手をかけると、力を込めた。重々しい音がして扉が転がり始める。

 

扉が開き、巨大な動物が大きく口を開けたような形の戸口をくぐって四人は先に進んだ。

 

* * * * * * * * * * * * 

 

内部は大きな円形の部屋だった。壁の近くには巨大な燭台が並べて立てられている。

 

「ここが....お墓なの?」

 

やや怯えた様子でリンクルが尋ねる。するとドンゴは言った。

 

「ここは葬送の儀式を行う部屋だゴロ。遺体はこの先の部屋に並べられてるゴロよ」

 

それを聞いたルダが尋ねた。

 

「ねえドンゴ、『墓所』の中に侵入できる経路...何か心当たり、ある?」

 

「そんなことは不可能だゴロ」

 

ドンゴは即座に答えた。

 

「棺が並べられた墓所の周囲は全部溶岩だまりだゴロよ。部屋の隅にある通風孔から入れないこともないが、それでも天井を逆さになって歩いて来るのでもない限り.....」

 

それを聞いた瞬間、ルリハの心の中に嫌な予感が膨らんだ。

 

――『天井を逆さになって歩いてこれる敵』。それをあたしたちは既に....――

 

その時だった。

 

「...全く....ずいぶんしつこいんだな、君たちも」

 

部屋の奥から、初老の男の声が聞こえた。

 

ルリハは反射的に身構え、剣を抜いた。背後のリンクルに合図すると、彼女も慌ててコンパスを仕舞い、ホルスターからボウガンを抜き出した。

 

コツ...コツ....コツ....

 

石の床を靴底が打つ音が聞こえる。やがて、部屋の奥の戸口にシルエットが姿を現した。

 

ノクス博士だ。

 

「ババラントを倒してあの場所から脱出するとは大したものだね。だが私の計画は順調に進捗しているよ。既にこの場所での目的も達成した。後は退場するだけだ...そう思っていたところに君たちがやってきたというわけだ」

 

目を凝らすと、博士の背後には、背の高い黒ずくめの男たちが立っている。

 

「博士...もう逃さないわよ!観念しな!」

 

ルリハは剣を構え直すと叫んだ。

 

「君たちは私の大事な部下たちを三体も壊してしまったようだ。なるほど、子供かと思って見くびっていたのは見込み違いだったようだね.....従って」

 

博士はそう言うと、背後を示した。

 

「君たちのために特別なゲストを用意しておいた。なぁに、ついでのことだから、礼には及ばんよ。ただ、魔導石が一つ余ったもので試験的に死体に装着してみたのだよ」

 

「貴様!戦士の遺体に手をつけたゴロか?」

 

ドンゴが血相を変えて怒鳴った。だが博士は怖がる風もなく、低い笑い声を上げた。

 

「手をつけた?ああ、君たちにとっては魂のない死体も...そう...何か...『聖なる』意味合いを持つのだったな。私にとってはただのタンパク質の塊りに過ぎないが」

 

「許さんゴロ!今すぐ目にモノ見せてやるゴロ!」

 

ドンゴが叫ぶ。だが博士は優雅に一礼すると付け加えた。

 

「では、ゆっくり楽しんでくれ給え。幸運を祈ってるよ」

 

「待て!」

 

四人は同時に叫んだ。だが、博士たちの姿が戸口から消え去ると同時に、異様な振動音が近づいてきた。

 

ズシン...ズシン...ズシン...ズシン...

 

「何?どうなってるの?」

 

リンクルが当惑した顔で呟く。ルリハは博士を追いかけようと走り出したが、ルダが引き止めた。

 

「待って!何か来る!」

 

数秒後、戸口に姿を現した何者かの姿を見て、ルリハたちは驚愕に目を見開いた。

 

それはゴロンの男だった。身長は四メートル近くあり、体色はどす黒い。

 

巨大な獣のようなゆっくりとした呼吸音が聞こえてくる。男の額には六角形の大きな宝石のようなものが嵌っていた。その宝石からぼんやりとした光が発せられ、周囲を照らしていた。

 

「あ.....兄貴....!」

 

それを見たドンゴが引きつったような声で呟いた。

 

その途端、巨大な男が凄まじい咆哮を放った。先程の族長の声も比較にならないほどの大きさだ。床が震え、壁から石の破片がパラパラと落ちてきた。

 

そして、かつてダンゴロスだった巨大な男は戸口に身体をねじ込むようにこちらに進んできた。岩が崩れ、天井に割れ目が入る。

 

「下がって!下がって!」

 

ルリハは三人に言った。だが、ドンゴは顔を上げると、唸り声を上げて突進した。

 

「おじさん!」

 

リンクルが叫ぶ。ドンゴは走りながら身体を丸め、岩の塊のように転がってダンゴロスに突進した。

 

ドシ....ンッ...!

 

だが相手はその突進を受け止めると、ドンゴの身体を軽々と持ち上げ、壁に向かって投げつけた。爆発のような衝撃音がして、壁に大きな窪みができた。石の破片が頭上から次々と降ってきて、ルリハたちは頭部を手でかばいながら逃げ惑った。

 

ドンゴは身体の丸めを解き、力なく床に落下して倒れた。ダンゴロスだった男は仁王立ちとなって再び吠えた。その身体から炎が立ち上っている。

 

「マグドフレイモス....!」

 

ルダが慄然とした表情で呟く。マグドフレイモスは敵を探すように首を回していたが、やがてルリハたちに気づくと唸り声を上げながらこちらをピタリと見据えた。

 

「こっちに来る!退避しよう!」

 

ルリハは叫んだ。だが、リンクルは動かない。彼女はボウガンを両手で構えると相手に狙いを据えた。

 

「リンクル....!矢なんかで倒せる相手じゃ...」

 

ルリハは驚いた。ルダも驚愕の目で見ている。だがリンクルは言った。

 

「あの宝玉....きっと魔力の源だよ。パパが昔教えてくれた。もの凄く強い魔物って宝玉から魔力をもらってるって」

 

マグドフレイモスが一歩を踏み出し、こちらに向かって歩き始めた。

 

ドシン...ドシン...ドシン..ドシン

 

地響きの間隔がどんどん短くなる。ルリハは息をするのも忘れて魔物を見つめ、またリンクルを見やった。リンクルの顔は、緊張で蒼白になり、唇が震えている。だが、その目は決意に満ちていた。

 

グアアアアッ...!

 

怪物が恐ろしい叫び声を上げて迫ってくる。距離が詰まる。五メートル。三メートル...

 

ビシュッ....!

 

リンクルが引き金を引いた。ボウガンの弓がしなり、矢が発射される。金属音がして、薄暗がりのなか、怪物の額のあたりで火花が散るのが見えた。

 

――怪物はもう目の前にいる。小柄なリンクルなど一撃で潰されてしまう――

 

ルリハは退避させようとしてリンクルに手を伸ばした。その時ルダが叫んだ。

 

「見て!効いてるわ!」

 

顔を上げると、マグドフレイモスは動きを止め、苦しげな表情で額に手をやっている。

 

グオオォォ....ッ

 

苦悶の唸り声が部屋に響く。その時、ドンゴが叫ぶのが聞こえた。

 

「お前ら!どけゴロ!」

 

岩の塊が高速で転がってくる音が聞こえる。ルリハたち三人はすんでの所で横に飛び退いた。

 

ドカァァァァンッ!

 

怪物の背中に岩の塊と化したドンゴが激突する。マグドフレイモスはバランスを崩して前のめりになり、そして床に倒れ伏した。地響きがして、壁にいくつも亀裂が走った。

 

――今だ。

 

ルリハの脳の中に電流が走った。今しかない。彼女は倒れているマグドフレイモスの頭のあたりに走り寄ると、剣を振り上げ、その額の上に貼り付いている宝玉を思い切り打った。一度、二度、三度。手応えがし、鋭い亀裂音が響く。

 

すると怪物は悲鳴のような声を上げて上体を起こし、額に手をやって悶え苦しみ始めた。

 

「お姉ちゃん、一撃目はうちに任せて。次も絶対外さないから」

 

怪物と距離を取りながらも、リンクルは腰のベルトについた金具でボウガンの弦を引いてコッキングし、呟いた。ルリハは驚きに打たれ、そして次の瞬間答えた。

 

「わかった。頼りにしてるよ、あたしの妹!」

 

怪物はようやく立ち直ると、怒りに呻きながら周囲を見渡す。ドンゴがその背後で立ち上がると叫んだ。

 

「化け物め!俺が相手だゴロ!」

 

だがリンクルはそれに負けない大声で言った。

 

「おじさん、うちのほうに誘導して!」

 

それを聞いたドンゴも目を丸くして口を開けた。そして言った。

 

「まったくムチャな娘だゴロ!人間にしとくには惜しいゴロ!」

 

ドンゴは身体を丸めると、転がりながら怪物の回りを周回し始めた。怪物は惑わされたようにそれを目で追っている。

 

「今だゴロ!」

 

ドンゴが身体の丸めを解いて、リンクルのほうに走り寄る。進み出たリンクルはボウガンを構えた。

 

ドシン...ドシン...ドシン..ドシン

 

巨人のような怪物が迫る音が近づく。だがリンクルは冷静だった。慎重に狙いをつけると引き金を絞る。宝玉に矢が命中し、怪物の動きが鈍った。

 

「ルリハ!遅れるなゴロ!」

 

そう叫ぶと、ドンゴは怪物に突進しその足を取った。我に返った怪物が振りほどこうともがく。だが一瞬遅く、マグドフレイモスはバランスを崩して横倒しになった。

 

地震のような振動が収まらないうちからルリハは走った。怪物の頭に殺到すると、宝玉に剣を何度も振り下ろす。鋭い破壊音がして、宝玉が2つに割れた。

 

――もうすぐ.....――

 

ルリハの心に希望が湧いたその時だった。

 

怪物が凄まじい声を上げて立ち上がり、その身体中から炎が噴き出した。

 

「熱....ッ!」

 

ルリハは両腕で顔を庇いながら後ろに飛び退いた。

 

――鎧で武装していなかったら危ないところだった――

 

やっとのことで顔を上げると、怪物は手を振り上げ、こちらに振り下ろそうとしている。

 

「逃げて!」

 

ルダの声が聞こえた。ルリハは横っ飛びに転がる。さっきまでいた床に怪物の手が食い込み、凄まじい振動が襲ってきた。

 

「ルリハ!次倒したらこないだと同じコンビで決めるゴロ!」

 

ドンゴが叫ぶ。ルリハには一瞬でその意味が分かった。

 

「大男さん!こっちだよ!」

 

リンクルが大声を上げて怪物に手を振る。すると怪物は向き直って威嚇の声を上げ、突進し始めた。

 

だがリンクルが矢を放つ。宝玉を矢が直撃する金属音がして、怪物が足を止めた。

 

「ぬぉぉぉぉぉぉッ!」

 

ドンゴが後ろから怪物の足を取って倒すと、跳躍してその後ろ首にしがみついた。

 

「ルリハ!今だゴロ!」

 

その瞬間ルリハは走った。ドンゴに押さえつけられた怪物が我に返り、暴れ始めた。距離が詰まる。

 

剣を逆手に持つと、ルリハは跳躍して怪物の頭の上に踊りかかった。宝玉の上に剣先が突き刺さる。

 

バキィィィンッ...!

 

怪物の額の宝石が完全に砕け散った。

 

途端にマグドフレイモスは断末魔のような激しい声を上げて立ち上がった。最後の力を振り絞るように両腕を振り回す。吹き飛ばされたドンゴは壁際に転がっていった。

 

だが、体から激しい炎を噴出したかと思うと、怪物はゆっくり膝から崩れ落ち、やがてうつ伏せになって床に倒れた。

 

もうもうたる煙が引いていく。ルリハたちが顔を上げると、そこにはゴロンの巨漢の身体が転がっていた。

 

だが、その顔は猛り狂う怪物の顔ではなく、安らかに微笑む戦士の死に顔だった。

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