ルリハの冒険〜魔王の復活と勇者の帰還   作:nocomimi

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エピローグ
呪いを逆転せしもの


「終わったよ...これで。何もかも」

 

勇者リンクは呟くように言った。その顔は疲弊し切っていたが、先ほどまで皮膚をのたうっていた紋様は綺麗に消え去っていた。

 

魔神の身体はその殆どが溶け去っていて、わずかに骨がいくつか転がっているのみだった。そこから湧き上がっていた紫の霧も、平原の風で吹き散らされていった。

 

「い...いったい..リンク殿、これは?」

 

アッシュが剣を血払いするのも忘れ、勇者に近づいた。ルリハも信じがたい思いで周囲を見回しながら続いた。

 

コツン...とブーツの足先に何かが触れる。ふと見下ろしたルリハはギョッとして目を見開いた。それはノクス博士の頭部だった。まだその口が僅かに震えている。

 

ルリハは顔をしかめながらノクス博士の頭部から離れると、剣を血払いして鞘に納めた。

 

ふと勇者リンクを見ると、剣を鞘に納めることさえせず俯いている。ずっと押し黙ったままだ。ルリハはその表情を見て不思議に思った。

 

そこには苦闘を制した安堵感も、勝利を誇る祝勝の感情も欠片も見当たらない。ルリハの胸には説明のつかない心配の念が浮かんできた。

 

「リンク兄い....」

 

「リンク殿。先ほどの液体は一体?」

 

アッシュが同時に口を開いた。勇者はふと顔を上げると、また目を伏せた。

 

しばらく黙っていたあと、彼は重い口を開いた。

 

「妖精たちの...........血さ」

 

ほとんど聞き取れないほどの小さな声だった。だがそれを聞いたルリハは驚きと衝撃で息が止まりそうになった。

 

―――妖精たち。

 

正義の側に立って戦う者が力尽きたとき、それを蘇らせ、力づける小さな精霊。だが、妖精は、その務めを終えたら死ぬ。いわば自らの命と引き換えに、正しき者を救うのだ。

 

「よ...妖精たちが....」

 

アッシュも驚きのあまり口ごもった。ルリハは厳粛な思いで胸が塞がれ、顔を上げることさえできなかった。

 

「魔王の呪いを逆転させる唯一の方法が....これだったんだ。だから彼らは....」

 

勇者リンクは呟くように言うと、言葉を切った。

 

何度も唾を飲み込むと、彼は続けた。

 

「あの子たちは...『世界を救うためなら喜んで捧げます』って笑いながら.......」

 

アッシュは呆然と宙を見つめていた。ルリハも言葉を発することができなかった。

 

やがて、リンクは肩を震わせ始めた。その口から、押さえきれない感情が込み上げてくるのが聞こえた。

 

リンクは顔を伏せると、必死で何かをこらえるように拳を握っていた。だが、果たせなかった。やがて彼は低く押さえた声で嗚咽し始めた。

 

夜の平原に吹く風で、足元の草が揺れる。離れた場所から、ハイラル軍兵士たちの歓呼の声が聞こえる。だが、リンクの嗚咽が途切れ途切れに響く中、アッシュとルリハは押し黙ったままだった。

 

やがてリンクは声を上げて泣き始めた。まるで赤ん坊のような泣き声だった。それを見たアッシュは、手に持った剣を放り出すと、リンクに歩み寄って彼をしっかりと抱擁した。

 

「リンク殿...泣くなとは申さぬ。だが....」

 

アッシュは言葉を探しながら両手で相手の背中を軽く叩くと、続けた。

 

「だが、貴殿は勇者としての務めを立派に果たした。一度ならず二度までも。ご自分を責めるのはよされよ」

 

リンクは、その言葉に答えるように何度か頷いた。だが嗚咽を押さえるのには時間がかかった。ルリハもまた、リンクの傍に近寄ってその肩に手を置いた。

 

「リンク殿。こちらはルリハ嬢。モイ殿のご息女だ。覚えておいでか?」

 

アッシュが抱擁をやめ、リンクの注意を引いた。すると彼は、驚いたように目をしばたたかせた。

 

「ルリハ?ルリハって....」

 

「リンク兄い!ひどいよ。あたしのこと忘れてたの?」

 

ルリハが睨むと、リンクは心からの喜びと驚きを顔に浮かべながら言った。

 

「ルリハ...!あのルリハかぁ!わからなかったよ!」

 

リンクはアッシュから身体を離すと、ルリハに向き直った。

 

「もう十年も会ってなかったから。...ごめん!でも、随分美人さんになったなぁ。母さんにそっくりだ」

 

そして、もう一度ルリハの顔を見直すと、彼は付け加えた。

 

「でも、髪の色と目つきは父さん似だね」

 

「うん。性格も似てるってよく言われる」

 

「じゃあダジャレには要注意だな」

 

リンクはいたずらっぽくウィンクした。

 

「うん。絶対言わないようにしてる」

 

「勇者リンク殿!」

 

その時、背後から軍曹と兵士たちが駆け寄ってきた。その横では、ドンゴ以下ゴロン族の戦士たちが族長ダルボスを助け起こしている。

 

「リンク殿。涙を拭かれよ。貴殿と話をしたい者が大勢おるゆえ」

 

アッシュが囁く。リンクは慌てて懐を探り始めたが、ハンカチが見つからない。それを見て、ルリハは苦笑しながら自分のを取り出して差し出した。

 

「こちらはバルド軍曹。鉄球つき戦棍を使わせたら天下一品だ」

 

アッシュの紹介でバルドが敬礼し、口を開いた。

 

「光栄です。本官が剣を志したのもリンク殿の武勇伝を聞いたゆえ。どうか今後もご指導願いたい」

 

「武勇伝なんて...大したもんじゃないよ。ただ夢中になって剣を振り回してただけさ」

 

リンクは笑って謙遜した。

 

「からかわないでいただきたい。振り回しただけで魔王を二度までも倒されるとは....貴公が無比の剣の天才だという印象が強まってしまいますぞ」

 

バルドの言葉にリンクが力なく微笑んだ。すると、他の兵士たちも周囲に群がってくる。我れ先に自己紹介し、一言でも言葉を交わそうと押し迫ってきた。

 

だが、ルリハがふと視線を後方に移すと、リンクルが所在無げに突っ立っているのが見えた。ボウガンをホルスターに引っ掛け、手を腰の後ろに組んで、なぜか浮かない顔をしている。

 

アッシュがそれに気づいて手招きした。

 

「リンクル嬢、こちらへ。勇者リンク殿を紹介したい」

 

リンクルは不貞腐れたような表情で渋々近づいてくる。アッシュは兵士たちに囲まれたリンクの注意を引いた。

 

「リンク殿。こちらはリンクル嬢。歳は若いが、立派な弓手であり戦士だ」

 

それを聞いたリンクが照れくさそうに手を差し出した。

 

「僕にちなんで名付けられた子に会うなんて...時代を感じるなぁ」

 

彼はリンクルと握手しながら言った。

 

「よろしく。君は僕の娘みたいなものだね」

 

「ううん。全然違うよ」

 

リンクルが突っけんどんな口調で、目も合わさずに言った。

 

「え...?あんた何言って...」

 

ルリハが驚いて叱りつけようとすると、リンクルは目を伏せて続けた。

 

「うち...勇気もないし、泣いてばっかだったし、仲間に助けられてばっかだった。だから全然違う。おんなじなのは名前だけだもん。.....この名前も恥ずかしいくらいだし」

 

それを聞いた勇者リンクは、少し黙っていたが、やがて微笑んで言った。

 

「僕も最初は戦いが怖かった。いや、今でも怖いさ。それに....」

 

彼は遠くに目をやるとこう続けた。

 

「それに、どの戦いも、仲間の助けなしには勝つことなんてできなかった。僕ひとりの力で勝った戦いなんて、ひとつもなかったよ。ただのひとつもね。だから.....」

 

驚いて目を丸くするリンクルの肩に手を乗せると、勇者リンクは言葉を継いだ。

 

「だから、やっぱり君は僕と同じだよ。怖いけど戦う。仲間がいるから、戦える。おんなじだろ?」

 

リンクルは言葉もなく相手の顔を見つめていたが、やがて彼女の目にみるみるうちに涙が溢れてきた。

 

「リンクル....言ったじゃない。あんたはあたしの妹で、仲間だって。頼りにしてるって」

 

ルリハが妹分の肩に手を置くと、彼女はそれを振り払った。だが押さえきれない嗚咽が湧いてきて、リンクルは顔を覆って泣き始めた。

 

「意地っぱり。もういい加減にしなさい」

 

ルリハは優しくリンクルの頭を撫でながら、後ろから抱きしめた。リンクルは大声で泣きじゃくりながら、ルリハに向き直って抱きついた。

 

「いやぁ...本当に死んだかと思ったよ」

 

背後から近寄って声をかけてきたのはシャッド博士だった。泣き止んだリンクルが涙を拭くのも忘れ目を丸くする。

 

「シャッドおじさん......無事なの?」

 

「ルダ先生のおかげさ」

 

シャッドは微笑んだ。額に乾いた血がこびりついている。彼は背後に固まっている兵士たちの集団を指さした。横たわった負傷者たち一人ひとりに手を置いて、女医が祈祷しているのが見えた。

 

ルリハが空を見上げると、いつの間にかあの黒雲が消え去り、夜空は晴れ渡っていた。無数の星がまたたいている。

 

「.......お前らともこれでお別れだゴロな」

 

ドンゴが近づいてきた。ようやく立ち直ったダルボス族長と、付き添いのゴロン戦士たちは早くも出発の準備をしている。

 

「ドンゴおじさん....また会いたいな。会えるかな?」

 

ルリハは思わず言った。するとドンゴは頭を掻いた。

 

「さあな....迷ってるゴロ。鉱山に戻るか、行商を続けるか....」

 

するとリンクルは迷わずにドンゴの胸に飛び込んだ。彼は困惑顔で彼女をそっと抱きしめた。しばらくそうしていた後、リンクルは顔を上げて言った。

 

「...なんかおじさんのお腹って意外とプニプニしてるんだね」

 

ドンゴは驚いて口を開けると慌てて叫んだ。

 

「ち...違うゴロ!これは筋肉だゴロよ!」

 

「どっちでもいいじゃない。見栄っ張りね」

 

いつの間にかルダが近くに来ていた。その顔には深い疲労の色が刻まれていた一方で、全てをやりきったかのような晴れ晴れとした表情だった。

 

彼女が先ほどまで治療していた兵士たちの群れから歓声が漏れた。

 

「し......信じられん。あんな重傷だったのに」

 

「こんな激戦で戦死者なしとは.......」

 

「まさに女神の奇跡だ!」

 

ドンゴは右手を女医に差し出した。

 

「先生、世話になったゴロ」

 

「世話なんかしてないわ。これからもしたくはないわね」

 

「わかった。岩塩は控えるゴロ」

 

そう言うとドンゴはゴロン族たちの群れに合流した。幾つもの岩の塊が転がりながら南の方に去っていく。それを見送ったあと、ルリハとリンクルとルダは兵士たちとともに城下町に帰った。

 

* * * * * * * * * * * * * 

 

「リンクル!あんたいつまで寝てんのよ!もうすぐ昼よ!」

 

ルリハは妹分の布団を引きはがすと揺り起こした。二人は兵舎に泊めてもらったのだ。ルリハは夜が明けると長く寝ていられないたちなので、起床し、配られた朝食を食べ、兵士たちとともに素振りをし、戻ってきてもまだリンクルは寝ていた。

 

「お姉ちゃん....あんなに頑張ったんだから少しくらいいいじゃん」

 

「だからって昼夜逆転したらよくないじゃない。さ、起きて」

 

「お姉ちゃん体力鬼過ぎ...どういう身体してんの?」

 

リンクルは目をこすりながらやっとのことで上体を起こす。その時、扉を激しく叩く音がした。寝ぼけ眼だったリンクルはビクっと肩を震わせた。

 

「ルリハ、リンクル。至急来てくれ」

 

ドアを開けると、軍曹が立っている。なぜか鎖帷子ではなく礼服を着ていた。

 

「どうしたの?また鬼が出たとか?」

 

ルリハは剣を掴むと外に出た。リンクルが顔を洗う間、イライラしながら待っていると、軍曹の部下の小隊の兵士たちも集まってきた。

 

「お姉ちゃん、二人でデート楽しんできなよ。うちはゆっくり....」

 

そう言いながら出てきたリンクルは、ただならぬ雰囲気に驚いて口を閉ざした。

 

「行くぞ」

 

軍曹が言う。一行は中庭を横切って前庭に入ると、城の建物に入っていった。リンクルは不思議そうに言った。

 

「ねえ、いったいなに?またうちら取り調べされるの?」

 

「そうかもね。あんたが悪いことしたのがバレたんじゃない?」

 

ルリハが意地悪顔で微笑んで答えた。だがリンクルは鼻を鳴らした。

 

「ヘンッ...そんな見え透いた嘘、もう騙されないもんね!」

 

彼女は階段を登りながら続けた。

 

「うち当ててみる。きっと....女王さまがご褒美くれるんだよ!」

 

「ないない。それはない。昨日の今日でそれはないよ」

 

ルリハは一笑に付した。一行は会議室を横切り、長い長い廊下と階段を進んだ。だが、あまりにも道中が長いのでルリハの胸にもだんだん疑問が湧いてきた。

 

「ねえ軍曹...これって」

 

「いいからついてこい」

 

ルリハの疑問にバルドは取り付く島もない。

 

「『ついてこい』...だって!よかったねお姉ちゃん」

 

「あんたは黙ってて!」

 

リンクルがイジってくるのを叱りつけながらも、ルリハの胸中にはある予感が浮かんできた。

 

―――もしかして?―――

 

やがて一行は謁見の間の入り口にたどり着いた。執事がやってきて礼儀作法を事細かに注意すると、皆を中に通した。

 

顔を上げると、部屋の奥に玉座がある。廷臣たちが数人その横に立っていた。

 

「ほら、うちの言ったとおりじゃん」

 

リンクルが得意げに耳打ちしてくる。ルリハは呆然としてしまった。

 

「うそ....でしょ?」

 

ふと背後を振り返ると、アッシュとシャッド博士と勇者リンクが三人並んで部屋に入ってきた。アッシュはピカピカに輝く新品の甲冑、シャッドは燕尾服だったが、リンクだけはいつものチュニック姿だった。

 

「お急ぎください。皆さまお待ちです」

 

執事に促され最後に入ってきたのはルダだった。診察の途中だったのか、首から聴診器を提げたままだ。

 

全員が横に並び膝をかがめると、ゼルダ女王がしずしずと入ってきた。

 

ルリハはもはや現実感が湧かなかった。ゼルダ女王が一人一人に言葉をかけ、勲章を手渡していく。

 

彼女はリンクの傍に立つと言った。

 

「リンク...あなたには本当に苦労をかけました。二度までもこの王国を救ってくれたことに感謝の言葉も見当たらないほどです」

 

「女王陛下...僕は....やるべきことをしたまでです。生まれ変わっても同じことをしたでしょう。ですが.......」

 

勇者リンクは頭を下げると答えた。

 

「ですが....陛下。これからは故郷の村で農夫として暮らしてもいいでしょうか?」

 

それを聞いたゼルダ女王は少し黙って相手を見つめた。その目が揺れているようにルリハには見えた。彼女は軽く溜め息をついたあと言った。

 

「...本当に...苦労をかけましたね。もちろんです。あなたの暮らしに平安があるように祈っています」

 

女王は次にアッシュに近づいた。

 

「アッシュ....あなたはじつに子供の頃から我が王国の守りびとでした。あなたはいつも私にとっての誇りでした。でも....」

 

少し口ごもると女王は言葉を継いだ。

 

「もうすぐあなたは軍を去ると聞きました。あなたに不自由な思いをさせてしまい、心苦しい限りです。どうか...わたしの謝罪を受け取ってください」

 

女王が頭を下げようとするのを、アッシュは慌てて立ち上がり押し止めた。

 

「陛下、もったいないことです。私はこれまでの軍務、何ひとつ悔いることはありません。それに....」

 

彼女は再び膝をかがめると、付け加えた。

 

「民間剣士に戻ろうとも、王国のためこの命を捧げるという誓いには何一つ変わりはありません。どうか、ご安心ください」

 

それを聞くと女王は安堵したように微笑んだ。次にシャッド博士が勲章を受け取った。

 

「あなたは十六年前と変らない勇気を示してくれました。あなたのような人が王城内にいるのはなんと心強いことでしょう」

 

女王の言葉にシャッド博士ははにかんだ。

 

「いやぁ...女王陛下。今回、僕のはムチャな蛮勇でした。ルダ先生がいなければ死んでいたでしょう」

 

「もし奇跡があるとしたら、あなたのような勇気あるひとのためだと私は信じます」

 

女王はそう言ってシャッドの肩に手を置いた。

 

ルリハの順番が回ってきたとき、彼女は緊張のあまり頭が真っ白になってしまった。どうにか受け答えを済ませると、隣のリンクルは全く物怖じすることなくゼルダ女王と会話している。

 

「すごい!これピカピカしてる!本物の金みたい!」

 

勲章を受け取ったリンクルが叫ぶと、女王は微笑んで答えた。まるで自ら産み落とした赤子を見るような微笑みだった。

 

「あなたの勇気は本物の金よりもはるかに値打ちがあります。それよりは劣りますが、せめてもの私からの感謝の気持ちです」

 

「ありがと〜女王さま!大事にするね!」

 

次に女王はルダ女医の傍らに進んで声をかけた。

 

「仕事の途中で呼び立ててしまったようですね...でも、それには理由があるのです。どうかこらえてくださいね」

 

次にゼルダ女王のとった行動を見て、その場にいた一同は息を呑んだ。女王は、ルダの前で身をかがめ、目線を合わせて相手の手を取ったのだ。

 

「ルダ...あなたが私の近くにいるうちに、あなたの示した勇気に私がどれほど感謝しているか、時を移すことなく公に言い表したかったのです」

 

他の列席者が驚いて見つめるなか、女王は語りかけた。するとルダは答えた。

 

「女王陛下、私はただ幾人かを癒やしただけでございます。このような光栄は身に余ります」

 

だが女王は相手の手を離さず、その目を見つめながら言った。

 

「私は、あなたがどれほど大きな犠牲を払ってくれたかを知っています。ですから....私は....」

 

女王は目を伏せ、そしてもう一度相手を見ると続けた。

 

「このことを決して忘れません。たとえあなたがどこに行こうとも」

 

軍曹以下小隊の兵士たちも勲章を受け取った。やがて一行は後ろ向きに謁見の間を退出し、長い階段を下って中庭に戻った。

 

すると、アッシュがやおらルリハに向き直った。

 

「ルリハ嬢。弟子入りの約束の件だが」

 

「は....ハイ!」

 

その言葉を聞いてルリハは思わず背筋を正した。

 

「私は軍を辞職後、町に剣術道場を設立する。貴女にはその立ち上げ事務全般を手伝ってもらいたい」

 

「え?事務?....あの、剣術の稽古は...?」

 

戸惑ったルリハが尋ねるとアッシュは冷徹な口調で続けた。

 

「その代わり貴女の稽古は回数無制限・無償で行う。それから軌道に乗ったら給与も払う。だが....」

 

そこでアッシュはニヤリと笑った。

 

「覚悟しておけ。私は厳しいぞ」

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