龍の奇妙な如く   作:肘神さま

1 / 3
ジョジョと龍が如くのクロスオーバー作品です。

苦手な方は戻られることをオススメします。それでも大丈夫な方はどうぞお進みください。



龍の目覚め

1995年 9月30日 神室町

 

キャバクラ、ホストクラブ、バー、風俗店を中心に栄えたアジア最大の歓楽街。ネオンが常に光を失わない事から『眠らない街』とも言われる。実際はヤクザを筆頭に危険な連中が各地から訪れては悪事を働く危険地帯でもある。ここは様々な夢と欲望と暴力の渦巻く街。

 

その街に1台の車が走っていた。

 

田中「兄貴、もうすぐで着きます!」

 

桐生「ああ…」

 

乗っているのは男2人。1人は紫色のシャツを着た坊主頭の男『田中シンジ』。もう1人は灰色のスーツを着た強面の男。東城会直系堂島組舎弟頭補佐『桐生一馬』。

 

見ての通り彼等はカタギの人間ではない。この街を牛耳る『東城会』という関東最大の暴力団組織の一員、つまりヤクザだ。

 

田中「それにしても兄貴、よくあそこから戻って来ましたね!」

 

桐生「またその話か…なんべんも言ってるだろ。俺は堂島組長とは酒を飲んだだけだ」

 

田中「それでもすごいですよ!やっぱり兄貴はヤクザ界の大物になる男ですよ!」

 

桐生「ふん、ヤクザの大物か…」

 

田中「あ、着きました兄貴!」

 

普段はシノギで金を稼いだり、ケツ持ちの店から守代を集めたり、金貸からの回収などを頼まれるのだが、今日は別の仕事でやってきた。

 

田中「ここですか?例の事務所は…」

 

桐生「ああ、ここの事務所からアタッシュケースを取りに行ってほしいとのことだ」

 

田中「はい!そう伺ってます。しかし風間のおやっさん、なんで兄貴に小間使いみたいなことさせるんでしょうね。そんなのなら俺がやるってのに」

 

桐生「シンジ、これは風間のおやっさんから直接頼まれたことだ。どんな事だろうと俺はおやっさんの頼みを断るつもりはない…」

 

田中「そ、そうでしたね!すみません!」

 

桐生「…行ってくる」

 

車から出ると目の前にある事務所へと入っていった。中は何もなくガランとしていた。元々小さな金融業だったが、仕事が上手くいかず3ヶ月で締めた。

 

辺りを見渡すと、奥にポツンと置かれたアタッシュケースがあった。それに触れた瞬間、指に鋭い痛みを感じ、条件反射で手を引っ込めた。

 

桐生「ッ!……なんだ今のは…?」

 

桐生は指の痛みに驚いたが、改めて触れるがさっきのような痛みはなく、そのまま持って事務所を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風間組

 

桐生「失礼します」

 

風間「おう来たか…ご苦労さん」

 

口髭を生やし、杖をつく貫禄のある男『風間新太郎』。桐生の育ての親で、仁義を重んじる極道の鏡のような存在だ。

 

錦山「よう、待ってたぜ桐生!」

 

桐生「錦!どうしてここに?」

 

錦山「今月のアガリを納めに来たらおやっさんから桐生がすごいブツを持ってくるって言うから待ってたんだよ」

 

白いスーツを着た男『錦山彰』。桐生と共にこの極道の道に足を踏み入れた兄弟分だ。

 

桐生はそうだったのかと呟くと風間の前にアタッシュケースを置いた。

 

桐生「頼まれたブツです」

 

風間「すまなかったな、こんなお使いのような事させちまって…」

 

桐生「いえ、俺は構いません。おやっさんの頼みですから」

 

柏木「…ところで親父、この中身は?」

 

顔に傷のある男『柏木修』。風間の右腕と言える存在。

 

錦山「あれ、柏木さんも知らないんですか?」

 

柏木「ああ、ブツが来るまで中身は俺にも話せない重要な物らしい…だからもういいじゃないですか?親父」

 

風間「…そうだな」

 

そう言うと風間はアタッシュケースをゆっくりと開けた。

 

その中身は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『石の破片』だ

 

錦山「……は?」

 

桐生「……」

 

柏木「石…いや、石器か?」

 

風間「ふっ…拍子抜けしたか?」

 

錦山「い、いやだって…なぁ桐生?」

 

桐生「…俺に振るなよ」

 

中身がよくわからない石の破片だとわかり、錦山はあからさまにガクッときた。

 

風間「教えてやろう。こいつは一見ただの石に見えるがな…『成功の可能性』を秘めた石なんだ」

 

桐生「成功…?」

 

風間「4年前、こいつを最初に見つけたのはイタリアのマフィア組織だと言われている」

 

その組織はたった2年でヨーロッパ全土まで及び、イタリアは確実に支配下に置いた。それも、この石を手に入れたことがきっかけらしい。

 

錦山「へぇ〜…ただ石にしか見えないけど、そんなにスゲェもんなのか…」

 

柏木「おい錦山ッ!下手に触るなッ…!!」

 

錦山が触れようとしたが柏木さんに止められた。

 

錦山「す、すみません…!つい…」

 

風間「構わん、別に触れてもいい」

 

触れても良いと言われ、戸惑う。

 

錦山「えっ!?いいんですか…?」

 

風間「当たり前だ。こいつはお前達に渡すために持ってきたんだからな」

 

風間はそう言うと懐から4つの小さな袋を取り出し、破片を1つずつ入れた。

 

風間「こいつは一馬、彰、由美、そして…優子の分だ」

 

錦山「っ!…おやっさん…!」

 

風間「フッ…気休めですまねぇな…だが優子に治って欲しいのは俺も同じだ。こいつは元々優子のためでもあるんだがな…」

 

錦山には優子という妹がいる。その妹は重い心臓病にかかっており、何度も手術を行なっているが一向に良くはならない。

 

風間「こんな神頼みしかできなくてすまねぇ…もっと金を積んでやりてぇが…」

 

錦山「とんでもねぇ!!俺はおやっさん!!…あんたが病院を手配してくれただけでも俺は嬉しいんだ…そのおかげで…優子は今も…!」

 

錦山の言葉に風間はそうか…と笑みを浮かべるが、同時に哀愁のある雰囲気を感じた桐生。

 

桐生「ん…?」

 

それと同時に、視界がぐにゃっと揺れた。

 

柏木「しかし酷いな…俺の分も用意してくれても良かったってのに」

 

風間「しょうがねぇだろ。このカケラ4つにどれだけ金が掛かったと思ってるんだ!」

 

錦山(…一体いくら掛かったんだ……ん?)

 

桐生「うう…」

 

桐生が頭を抑え、苦しそうにしていた。それに気づいた錦山が桐生に手を伸ばそうとするが…

 

 

バタンッ!

 

 

それが届く前に桐生は力尽きたかのように倒れた。

 

錦山「桐生ッ…!!?」

 

風間「なっ!?」

 

柏木「お、おい…!」

 

桐生「はぁ…はぁ…」

 

息を荒げ苦しそうな表情を浮かべる。錦山が桐生に近づき、額を触ると高熱を感じた。

 

錦山「す、すごい熱だ…!」

 

風間「柏木!救急車だ!」

 

柏木「はい!」

 

錦山「おい、しっかりしろ桐生!桐生!!」

 

桐生「に…し……き…」

 

錦山に呼ばれる声が段々と遠くなっていき、次第に視界が黒く狭くなっていき、完全なる闇となった。

 

 

『兄貴すいません!うちのケツ持ちの店でヤクザが暴れてます!』

 

この声は…シンジか…わかった。今行く…

 

『桐生…!行くなら冷麺食ってからにしろ。伸びちまうぞ…!』

 

柏木さん…いえ、折角ですが終わってからいただきます…

 

『心配いらねぇ。俺の部下がもう向かっている。食事してからでも問題ない』

 

おやっさん…ですが…

 

『大丈夫だって!ほらこいよ桐生!』

 

錦…ああ…しょうがねぇな…

 

『おじさん!!』

 

座ろうとした瞬間、何処からか幼い少女の声が聞こえる…

 

俺を呼んでいるようだ…誰だ…?

 

『おじさん!!こっちだよ!!』

 

振り向くと後光が差して姿は見えないが、小さな女の子がこちらに手を伸ばしている。

 

誰だ…お前は…?

 

桐生は少女の手を掴んだ。すると心地の良い光が自分の体を包み込み、次第に闇のかかった世界が白く輝き始めた。

 

そして少女だった物は…龍となった。

 

龍…こいつ…どこかで…いや、知ってる…こいつは…俺の…!

 

 

 

 

 

 

 

 

『思い』は『未来』となる…

 

 

 

 

 

 

 

 

桐生「ん……ここは…?」

 

目が覚めるとそこは白い部屋、病室のようだ。そこには医者と看護婦、錦山、風間のおやっさんがいた。

 

看護「あ!目覚めました!」

 

先生「失礼します」

 

錦山「桐生!良かった…!」

 

桐生「錦…おやっさん…俺は…」

 

ここは東都大学医学部付属病院。日本の中でも5本指に入る医療技術を誇る都内最大の病院。

 

東城会の息がかかった病院でもあり、組の幹部が重大な怪我や病気で入院する際にもよく利用されている。

 

医者が聴診器で確認を取ると特に別状はなく、熱も平熱になっていた。

 

医者「特に問題はないですが、念のため検査をいたしますので安静にしてくださいね」

 

風間「ありがとうございます先生」

 

失礼しますと声掛けをし病室を出た医者。皆一息つき桐生が無事であることを安堵した。

 

風間「桐生、お前…何ともないのか?」

 

桐生「はい…ただおやっさん。俺は何で病院に…」

 

錦山「覚えてねぇのか?お前高熱で倒れたんだぞ…!?」

 

桐生「高熱…俺が…」

 

ガラッ…

 

麗奈「桐生ちゃん!!」

 

由美「一馬!!」

 

『麗奈』。バブル期の頃からある雑居ビルに店を構える『セレナ』をたった一人で切り盛りしてきた桐生や錦山の馴染みの敏腕ママ。

 

もう1人は『澤村由美』。桐生と錦山の幼馴染でセレナで人気No.1のホステスだ。

 

桐生「由美…麗奈…」

 

由美「バカっ!!心配したのよ…!?急に倒れたって聞いて…駆けつけたのよ!!」

 

由美の目には涙が溢れベッドで横になっている桐生に抱きつき泣きじゃくる。

 

麗奈「ほんとびっくりしたわよ…由美ちゃん本気で心配してたわよ?でもよかったわ…無事で…」

 

桐生「…すまん、迷惑かけちまった…」

 

ここの病室にいる皆に謝る。

 

風間「何はともあれお前が無事でよかった…俺はこれから事務所に戻る。何かあれば連絡しろよ」

 

そう言い残し病室を出る風間。

 

錦山「…それじゃあ俺も失礼するぜ。優子のお見舞いの時間だからな」

 

桐生「見舞い…やはりここは東都大学の病院か…悪かったな錦」

 

錦山「全くだ!ったく、何でお前は……頼むから、俺の目の前で消えてくれるなよ…桐生…」

 

桐生「錦…」

 

麗奈「はいはい!暗いのはおしまい!!じゃあ来たついでに私も優子ちゃんの顔見てこようかしら」

 

由美「それだったら、私も!」

 

麗奈が暗い雰囲気を変え、錦山の妹『錦山優子』のお見舞いに行こうと言い出した。

 

錦山「すまねぇ、きっと優子も喜ぶぜ」

 

麗奈「それじゃあ一馬、私達行ってくるわね」

 

桐生「ああ、優子によろしくな」

 

ガチャ…

 

錦山達が出ようとした時、何かが落ちる音がした。皆、音のした方を見るとおもちゃの車があった。

 

錦山「何で車のおもちゃがこんなところに…お前のか桐生?」

 

桐生「いや俺のじゃねぇ…子供が忘れていった物かもな…」

 

麗奈「それじゃあそれ看護婦さんにでも渡しておくわね」

 

桐生「すまないな」

 

この時、あのおもちゃが桐生の人生を変える物であるとは誰も思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後…

 

桐生は完全に回復。どこも異常はなく退院することができ病院を出ようとした時、スーツを着た男と警察官数名が現れた。

 

桐生「なんだあんたら?」

 

刑事「桐生一馬さんですね?昨日、堂島組組長『堂島宗兵』を殺害した疑いで逮捕状が出ています。ご同行を」

 

桐生「なんだと…!!堂島組長が…殺された……?」

 

病院の玄関で突然告げられた凶報に、桐生の頭の中は混乱していた。 暴漢に襲われたような錯覚さえ覚える。 しかし警官たちの表情は厳しく、冗談を言っている様子は微塵もない。

 

刑事「堂島宗兵の服からお前の指紋が出た。更に現場にあった血液からお前のDNA反応が出た。証拠は十分にある」

 

桐生「バカな……!俺はそんなことをしていない!」

 

警察「抵抗するつもりか?」

 

桐生が一歩踏み出すと警官達が一斉に囲む。ここで騒ぎを起こしても得るものはない。それにここには優子もいる。もし暴れれば優子の手術に関わる可能性が出る…下手に逆らえない。

 

桐生「……わかった」

 

渋々応じ、警察に連れてかれた。

 

 

遠くから桐生が捕まる姿を眺める者が3人いた。1人は優子のお見舞いに来ていた錦山。同じ極道に入った兄弟が警察に捕まり信じられない表情で何もできなかった。

 

錦山「桐生…!」

 

 

もう1人は黒いスーツを着てサングラスをかけた金髪の外国人。桐生が警察に連行されるのを確認するとどこかへと行ってしまった。

 

金髪「……」

 

 

そしてもう1人は古びた茶色いコートを着た中年の男。パトカーが遠く去っていくのを見届けるとどこかへと消えてしまった。

 

 

 

 

警察署内 取り調べ室

 

桐生は神室警察署の取調室で取調べを受けていた。勿論、堂島組長殺害の犯人としてだ。

 

伊達「ふざけるな!」

 

桐生の対面に座る刑事『伊達真』が、叫び声を上げて立ち上がった。桐生に向けてではなく、もう1人の刑事に対してだ。

 

刑事「伊達君、落ち着いてくれ」

 

伊達「落ち着けるわけないでしょ!?こいつは組を立ち上げる男だ!こんなわかりきった殺しするわけがねぇ!!」

 

刑事「伊達君、これはヤクザ同士の問題だ。理由は関係ない…それに証拠がある以上、この男がやったことは事実に等しい…」

 

伊達「確かにこいつのDNAと指紋が見つかった…だが!3日も入院していたということがわかったんだぞ!?これをどう説明するんですか!?」

 

伊達が指摘した3日の入院。確かにこれはれっきとしたアリバイになる。

 

しかし、もう一人の刑事は伊達を冷めた目で見つめる。

 

刑事「事件の迅速な解決…それが今求められている全てだ」

 

そう告げた刑事が取調室を出ると、伊達は拳に机を叩きつける。

 

伊達「クソッ…!」

 

己の信念を踏みにじられ、伊達の顔が歪む。

 

桐生「…刑事さん、頼みがあります」

 

桐生が伊達に話しかけてきた。

 

桐生「俺の持ち物の中に、指輪があります。それを若頭の風間に渡してくれませんか?そして…申し訳ありませんでしたと、伝えて下さい」

 

バッ!!

 

伊達「何で俺がそんなことをする義理がある?言っとくが、俺ぁお前を擁護したい訳じゃねえぞ?」

 

桐生の胸ぐらを掴み、怒りが宿る目を向ける。数秒睨むと胸ぐらを離し、背を向けた。

 

伊達「これは独り言だが…堂島組長は、刺殺で亡くなった」

 

桐生「刺殺…?」

 

伊達「刺されたのは頭。形状からしてナイフのような物で一発だ…普通は刺すのなら腹部だ。しかし犯人は何故か頭を一突き…」

 

頭蓋骨は非常に硬く刺すのに10キロ、つまりお米の袋ほどの重さは必要だ。

 

桐生「……」

 

伊達「今わかっているのはこれだけだ…」

 

言い終わると取調室の戸を開けた。

 

伊達「…指輪の件だが…約束はしねぇからな」

 

桐生「はい…」

 

彼は最後にそれだけを告げると、そのまま振り返ること無く取調室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

桐生が捕まり数日が経った…

 

警官「囚人番号1240、面会だ」

 

警官が現れ面会室へと連れてかれた。

 

面会に現れたのは風間組若頭の柏木だった。

 

桐生「柏木さん…!」

 

柏木「よう桐生…」

 

桐生は面会に来たのが柏木で驚いた。

 

すると挨拶するや否や懐の中に手を伸ばし、1枚の白い封筒を差し出した。その封筒には『破門状』と書かれてあった。

 

桐生「破門…?絶縁じゃないんですか?」

 

柏木「……世良会長がそう決めたんだそうだ。これは決定事項だと、親父が言ってた」

 

桐生「風間のおやっさんは…?」

 

柏木「…風間の親父は今動けねぇ。堂島組長が亡くなった後、堂島組の組員は自動的に風間組に吸収された。その手配で忙しい、だから俺が直接お前に伝えに来たんだ」

 

桐生「そうですか……錦は…どうしていますか?」

 

柏木「あいつはお前の代わりに錦山組を立ち上げようと頑張ってる…お前がいつでも戻って来れるようにな」

 

桐生「錦山組…ふっ、そうか…あいつが…」

 

桐生は錦山が組を持ったことに正直喜んだ。小さい頃からずっといたため嬉しく思った。

 

柏木「桐生…俺からも聞きたいことがある。堂島組長をやったのか?」

 

桐生「俺は、誓って殺しはしていません!」

 

柏木「…ふっ、そうだろうな!安心しろ、俺も親父も、錦山もお前が殺しなんて信じちゃいねぇよ」

 

桐生「柏木さん…!」

 

柏木「実は忙しいのはもう一つ、親父はお前の無実を探すために動いてる。だから安心して待ってろ」

 

桐生「ありがとうございます…!」

 

警官「時間だ。出ろ」

 

時間と言われ取り調べ室から外に出ようとする桐生。希望が持てた。そんな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしそれから数日後の面会にシンジが現れ…予期しない話が出た。

 

桐生「なんだと…由美が…!?」

 

田中「はい…数日前、事故で記憶喪失に…それから風間のおやっさんが面倒を見ていたんですが…突然姿を消して行方不明に…」

 

幼馴染の由美が記憶喪失。そして行方不明。知らない間に外で事件が起きていた。

 

田中「今も捜索中だそうです…」

 

桐生「……」

 

信じられずにいた…自分がいない間に、何かが起きていた。

 

桐生「何が…起きてるんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして1ヶ月が過ぎ…

 

「ぎゃあああ…!!」「てめぇ、なんだその態度は!?」

 

受刑者同士の騒ぎが起きた。理由は気に入らないというくだらないことだ。

 

刑務「そこッ! 何やっとるかッ!!」

 

案の定刑務官に連れていかれた。恐らく独房だろう。

 

「ったく、物騒でいけねえな…おっと…こちらさんも物騒なツラしてらぁ…」

 

隣の受刑者がこちらに声をかけてきた。

 

「なぁ、アンタだろ?自分の親を殺したっていうヤクザは…」

 

桐生「黙って食ってろ」

 

冷たくあしらうが受刑者は気にせず続ける。

 

「流石、貫禄だねぇ…『堂島の龍』『堂島組舎弟頭補佐』桐生一馬…ッ!」

 

ブンッ!

 

パシッ!

 

受刑者が持っていたフォークで刺そうとしたが桐生は顔色を変えず簡単に止めた。

 

「お、おい!何やってんだよお前ら…!?」

 

他の受刑者が驚くがそんなことは気にせず、その受刑者の仲間であろう受刑者4人がテーブルを動かし桐生を囲む。

 

「東城会の幹部やったんだ!これぐらい想像してただろッ!」

 

受刑者が武器であろうフォークを構える。

 

「堂島組長があの世で寂しがってるぜ桐生ッ!!」

 

受刑者の1人が襲いにかかる。しかし桐生は両手で受け止め仲間の受刑者にぶん投げた。

 

桐生「オラッ!!」

 

ドガシャッ!!!

 

「ぐあぁ…!!?」

 

「この野郎…!!!」

 

背後にいる仲間が殴りにくるが、瞬時に回し蹴りによるカウンターを喰らわし、吹き飛ばす。

 

桐生「セイヤッ!!」

 

『ぐあああああッ…!!!?』

 

桐生一馬…彼は修羅場を潜ってきた。東城会100人近い相手と死闘を繰り広げ、一度カタギになったがヤクザに戻った異例の存在。

 

たかが5人のチンピラくずれに桐生が負けることはない。

 

桐生「ふん、もう終わりか?」

 

「テメェ…舐めるなッ!!!」

 

フォークを持った受刑者が刺しに行く。桐生は腕を前に出してガードするが、刺された感触がなかった。

 

桐生「…ん?」

 

よく見ればそれはフォークではなく、フィギュア人形だった。

 

「え?」

 

桐生「…舐めてんのか?」

 

ドオオオンッ!!

 

顔面をぶん殴られ気絶。桐生は他の仲間に近寄り、胸ぐらを掴んで無理やり起こさせた。

 

桐生「誰の命令だ?」

 

「せ、世良会長…です…」

 

桐生「何?」

 

刑務「何をやっている!!」

 

刑務官がやってきて桐生を取り押さえた。そしてそのまま懲罰房へと送られた。

 

懲罰房は、刑務所内で受刑者が規則に違反した際に一時的に収容される特別な独居房。違反にもよるが運動禁止や減食などの罰が下される。

 

しかしこの房には磔ようベッドと棍棒が置いてある。

 

桐生をベッドに括り付けると棍棒を持った刑務官が数名現れた。

 

刑務1「堂島の龍…あの桐生一馬はどれだけやれば壊れるんだろうな…?」

 

刑務2「覚悟しろよ…ヤクザ風情が…!」

 

桐生(こいつら…ただの刑務官じゃねぇな…)

 

刑務1「ここは俺達刑務官のストレス発散の場だ。どうせここには刑務官とボコられる囚人がいるだけなんだからな?」

 

刑務官達がこれ見よがしらに棍棒を振り音を鳴らす。その音の中、虫の羽音が桐生は聞こえた。

 

桐生(虫…?)

 

刑務1「おりゃああッ!!」

 

刑務官が棍棒を桐生の頭目掛けて振り下ろす。

 

しかし、棍棒は桐生の頭の前で止まり、動かない。

 

刑務1(な、なんだ…何で動かない…!!?)

 

仲間の刑務官は不思議そうな顔をしているが、桐生は驚いていた。

 

桐生(見えてねぇのか…?)

 

桐生にだけ、自分を守る龍人のような姿が見えることに。

 

刑務1「チキショー…どうなってやがるんだ…!!」

 

ガチャ…

 

刑務1「あ?」

 

「ああ、すいません…ちょっと宜しいですか?」

 

桐生をもう一度殴ろうとした時、1人の刑務官が入ってきた。

 

刑務1「なんだ?見張りはどうした!」

 

「すいません、実は報告がありまして…」

 

刑務2「報告?」

 

刑務官が近づくと…

 

バタバタバタバタ…

 

桐生「…!?」

 

急に倒れ出し、入ってきた刑務官が桐生に近づいてきた。

 

桐生「お前、なんだ…?」

 

「詳しい話は別のところでしましょう」

 

桐生の拘束を解き、連れて懲罰房の扉を開けるとそこは1つの部屋だった。

 

「お、帰ったか」

 

桐生「何…!?」

 

刑務所とは違う清潔感のある部屋だ。そこには茶髪の男もいて、ソファにテレビ、冷蔵庫まである。

 

「驚いたでしょ?克さんのスタンドは便利で良いですよね…」

 

桐生「スタンド…?」

 

刑務官の男は桐生を座らせると茶髪の男の方に行き、『鍵』を渡した。

 

「ありがとう、助かりましたよ」

 

渡すと桐生のところに戻り向かい合うように座った。

 

「それでは、まずは自己紹介から…私はSPW財団の浦安点字(うらやすてんじ)と申します。そしてあっちでお茶を作ってるのは柿谷克(かきたにまさる)さんです」

 

刑務官の男が紹介をするが今の桐生は自己紹介よりも気になることがある。

 

点字「それと、この不思議な現象についても教えます。これは所謂超能力の一種…『スタンド』と言います」

 

桐生「…何なんだ、その『スタンド』ってのは…?」

 

点字が説明する。

 

スタンドとは…超能力の具現化。個人によって形はそれぞれ。

 

スタンド能力は1人に1つ。

 

スタンドの姿はスタンド使いしか見ることは出来ず、スタンドに触れることができるのはスタンドのみ。

 

スタンドがダメージを受けると本体にもダメージがいく。

 

まるで漫画の設定のような話だ。桐生は信じられないでいたが現実に起きて目の当たりにしている。

 

だがもう1つ、気になることがある。

 

桐生「何で俺にその話をした?」

 

点字「…やはり気づいていませんでしたか…はっきりと申し上げます。桐生さん、貴方にも『スタンド』が備わっているんです」

 

桐生「何…!」

 

自分にもスタンドがある。そう言われ驚くが、あの時の龍人のことが頭によぎった。

 

桐生「あれか…!?」

 

点字「ええ、桐生さんの場合恐らく発現したのは高熱での影響でしょう」

 

克「そんで、能力は生まれつきや何かしらの影響で出ることが多い。俺達2人は生まれつきだがな…どうぞ」

 

お茶を出しながら応える克。

 

克「俺のスタンド能力は『ザ・ルーム』。俺が触れたドアの先に『部屋』を作ることができる。ただそれだけ。でも便利だろ?」

 

桐生「この部屋が…スタンド…!?」

 

点字「…では私のもご紹介しましょう」

 

点字の背後から蜂が1匹飛んできた。よく見ればその蜂は機械でできていた。

 

点字「この子は『アービー』。能力は『疲れ』を吸い取り、与えることができます。『疲れ』の量にもよりますが、与えられれば疲労で倒れるか、眠ってしまいます」

 

アービーは桐生に挨拶しているかのようにグルグル回っている。

 

点字「これらが見えているのは桐生さんが『スタンド使い』である証拠です」

 

桐生「……」

 

桐生は目の前にあるお茶を一口飲んだ。

 

桐生「スタンドってのが何かはわかった…それで、お前達は一体俺に何の目的でここへ連れてきた?」

 

点字もお茶を飲み、一息つくと懐からある写真を取り出し桐生に見せた。写真には眼鏡をかけた男が写っていた。年齢は3、40代ぐらいだろう。左耳が欠けている。

 

点字「この男は、堂島殺しの犯人です」

 

桐生「何ッ!?」

 

点字「我々財団の調査でこの男が事務所に現れ堂島を殺したことが発覚。どこかで用意した桐生さんの血液と指紋を現場に残して犯人に仕立て上げた…こんなことができるのはスタンド使いしかできません」

 

克「そしてこいつは、これを持っていた」

 

克が1枚の写真を桐生に見せた。それは仮面で石で作られているのが写真でもわかる。しか見た目が不気味で口から牙が見えており人というよりも『吸血鬼』にも見える。

 

桐生「…こいつは?」

 

克「まだ言えないが、こいつが使われたら人類は終わる…そう言っても過言ではない代物だ」

 

点字「我々財団はこれの『完全破壊』を目的としています。そしてこの男に近づけるのは桐生さん、貴方だけだと我々は思います」

 

桐生「…なぜだ?」

 

点字「桐生さん…『殺人鬼』に会ったことはありますか?」

 

『殺人鬼』…そんな物、早々会ったことはない。

 

桐生「…殺しにきた奴らが殺人鬼のようだから実質会ったことは山ほどあるな…」

 

点字「はははは!確かにそう言えますね…ですが桐生さん、実際一般人が殺人鬼とすれ違い、会っている人はおよそ36人もいるそうなんです。殺人鬼なんて早々会おうと思っても会えない物…アイドルに会うよりも難しい。しかし人はいつの間にか会っている。会っていないのじゃない…『既に会っている』のが正しいんです。そこには必ず人と人を引き寄せる『引力』があるのだと思っています」

 

その『引力』は、一度会えばまた必ずどこかで出会う。そして『スタンド』も同じ…『スタンド』を持つ者は『スタンド』と惹かれ合い出会う。

 

点字「この条件から1番接点があるのは貴方です。協力いただけるのであればそれ相応の報酬をお約束いたします」

 

とても信じられない話。オカルトに近い。だが何処か『説得力』を感じる。妙な気分だ。誰でもそう思ってしまうが、桐生は違う。

 

桐生「…気に食わねぇな…」

 

桐生がお茶を飲み干すと立ち上がり扉へと向かう。

 

桐生「お前らがどういう連中なのかはわかったが、口達者で言ってることは結局は『脅し』に変わりねぇ…だから答えは『いいえ』だ」

 

扉を開けようとドアノブに手を伸ばすが、そこにはアービーが10匹止まっていた。

 

点字「お話は、まだ終わっていません…報酬のことで別に貴方に対してでなくても構いません…」

 

桐生「…!」

 

克「調べさせてもらった。幼馴染の妹が難病だってな?」

 

点字「その妹さんの手術を成功させることもできます」

 

桐生「…本当か…それは?」

 

点字「我々SPW財団は全世界の医療や自然動植物保護がモットーです。あらゆる医療のプロと最新設備が集まる場でもあります。保証します!」

 

桐生「…助かるのか、本当に…?」

 

点字「極道は指を詰める行為はケジメだそうですね…もし失敗するなら、私の指全部かけても構いません」

 

桐生は考えた。これを受けるのは確かに危険かもしれない。だが自分を親殺しにした犯人が見つかるかもしれない。それに優子の命が助かる。

 

桐生(…錦…助けられた恩、今返すぜ…)

 

決心した桐生は点字達の方に振り向く。

 

桐生「…わかった、引き受ける」

 

点字「…ありがとうございますっ!」

 

克「ヤクザを雇うとは…あの人に言わせりゃ、『やれやれ』だな…」

 

点字「それでは、最初に桐生さんのスタンドの名を決めましょうか!」

 

桐生「名前…名前か…」

 

克「見た目が龍だからドラゴンは入れればどうだ?」

 

点字「そんな適当な…」

 

桐生(ドラゴン…確かに入れておけばわかりやすいか…どうしてもドラゴンだけじゃな……俺自身…)

 

桐生は思い出した。自分の姿を…灰色のスーツを着てこれから自分はこれで始めるのだと…

 

桐生「…決めたぜ、お前の名は…」

 

『ドラゴアッシュ』

 

こうして桐生とSPW財団の関係が始まり、奇妙な舞台が幕を上げた。




始まりはこのようになりました。

色んな作品を書けるって楽しいですね。

こんな作者ですがよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。