俺の双子の弟は緑谷出久 ~大魔道士ポップと憑依する竜の騎士~   作:篠原えれの

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1巻
緑谷ポップと緑谷出久


 

 おれの名前は緑谷ポップ。

 昔は色々魔王討伐のために仲間と一緒に旅した魔法使いだったんだけど、転生して今は緑谷出久っていうなんでもない一般人との兄弟で、緑谷出久の双子のお兄ちゃんやってる。

 この緑谷出久くんが無茶苦茶おもしろい。

 

 緑谷出久。ヒーロー好き。

 出久のヒーロー好きっぷりがとまらなさすぎておれまで出久が推してるヒーローのことは大体わかるようになるぐらい出久は毎日のようにおれに話かけてくる。

 とくにオールマイトが大好きでおれと双子なのをいいことにおれにもオールマイトのグッズを推してきて一緒の服をきせようとするぐらいには出久はオールマイトが好きだ。

 

「パジャマだけなら」

「そこは普段着も着ようよ」

「拒否する」

 

 そんなやりとりをしてるうちに、やっぱりポップお兄ちゃんってオールマイトよりも、ダイって言う人の方が好きだよね!とキラキラ目を輝せて話すものでどこでいつ知ったんだその名前と無茶苦茶驚いてると「夢でダイお兄ちゃんにあった!」って話すもんだから「おれには会いに来ねーのに!」と兄弟喧嘩を初めてした。喧嘩したら喧嘩したで「やっぱりポップ兄ちゃんはダイお兄ちゃんのこと好きなんだね!」等開きなおられたので深いため息をしたのは記憶に新しい。

 

 「しかし夢でダイに会うなんてな……もしかしてそれが出久の個性か?」

 「ううん、ダイお兄ちゃんが違うって言ってたよ。ダイお兄ちゃんのドラゴンの騎士の力で会いにきたって言ってた!なんか、ポップ兄ちゃんよりも僕の方が夢に入ってきやすいんだって」

 

 なんじゃそりゃー!ってずっこけていると、出久が話す。

 

 「なんか、僕の個性がそういう感じなんだって。まだ使えないけど……ってダイお兄ちゃんが話してた」

 「そっかー……」

 

 と、返事をしつつも頭の中でぐるぐる考えが巡っていた。

 出久の個性が発言する前からそんな力があるなんて、これはただ事ではない。

 絶対普通じゃない力が出久にもあると考えてたが検査では出久は無個性。

 しばらくそのことでも喧嘩したが、ダイとの繋がりは出久の支えになってた、には違いないだろう。 

 

 検査の時、あの病院の先生が胡散臭かったのは、ダイも分かってたのか、ダイに言われて出久は病院の先生にも母さんにもダイのことを話さなかったらしい。

 とても話かっただろうに、出久はダイとの約束を律儀に守っていた。

 おれももちろん話さななかった。

 一方でおれは呪文のことは公開した方がいいと思い、検査のときは正直に呪文を公開した。

 

 ある一定の言葉を唱えたら使えるおれの呪文は、出久君にも使えるのでは?と出久も使わせてみたが、一番使えそうなメラとか初級呪文は使えなかった。

 親父が火を吹くからもしかして、と思ったが。

 おれも出久から魔力とかを感じなかったので、使えないことにがっかりもびっくりもしなかったがおれはおれで有名になっちまった。

 なんせ使える呪文がとにかくおれは多い。

 個性は基本一つしか使えないと言われている世の中で、誤魔化すのが大変だった。

 おれのこれは呪文を唱えないと使えないからと、おれはおれで、しばらくの間検査尽くしだった。

 だから、個性がなくて大泣きしてる出久にあまり構ってあげることができなかった。

 けど、だからって見下すこともせず。家に帰って来たら慰めたり励ましたりをしていた。

 出久のことが心配で仕方なかったんだ。おれは一応「個性」として呪文が使えるけど、出久にはその「個性」がなかった。それがどれほど彼にとって辛いことか、おれは身近でずっと見てきたからわかる。

 幼馴染の爆豪勝己と喧嘩してるのもよく見てるし、その度喧嘩の仲裁とかしてきたけど……。

 

 ◆

 

 中学三年になって、おれは早々に雄英高校に推薦入学が決まってしまった。

 正直な話、嬉しい気持ちもあるけど、それ以上に複雑だった。

 

「なんで俺じゃなくてお前が推薦入学なんだ緑谷ポップぅぅうう」

「うっせえ、授業中だ馬鹿野郎。そういうところなんじゃねーの」

 

 推薦入学だと無駄に目立つ。今とか。爆豪のうざ絡みが以前にも増して増えた。

 俺も推薦入学だとか生き込んでたの知ってたから余計だな。

 爆豪の爆発をかるくかわしつつ、先生が誇らしげにさらに爆弾を放り投げた。

 弟を馬鹿にするのやめろー!って前にブチギレたから幾分か先生の出久いじりもマシになったけどさ。先生のこういうところ治ってないよね。いい加減にしてほしい。

 

「雄英には爆豪の他に緑谷兄弟が行くって聞いてるが」

 

 爆豪勝己が机に足を乗せたまま、ニヤニヤとこっちを睨んでいる。

 

 「で、弟のデクは……どうなんだ?」

 

 爆豪の目が、明らかに意地悪く細められた。

 クラスメイトたちの視線が一斉に俺と出久に集まる。空気がピリッと張りつめた。 おれはため息をつきながら、爆豪の方を振り返った。

 

 「出久のことはまだ決まってねえよ。推薦はおれだけだ。……お前だって推薦決まってねえのに人のこととやかく言うんじゃねえ」

 「俺は推薦じゃなくても一位で合格するって決めてるからいいんだよ、デクと違ってなぁ?」

 

 爆豪が立ち上がりかけた瞬間、先生が黒板を叩いた。

 

 「お前ら二人とも、そこまで。なんでそうなるんだ」

 「先生が自慢気におれらのこと話すからですぅ」

 むすっとポップが先生に忠告する。

 「……先生がわるかったな。ま、ともあれ雄英への進学希望者が3人もでるのはいいことだと先生は思うぞー。お互い尊重しような!」

 

 そんな感じで授業は盛り下がって、その放課後。

 おれはおれで、雄英推薦は決まってるんだけど実話公安の仕事もいくつか請け負ってる。

 実際ヒーロー活動する訳では無いけど、おれの呪文は回復呪文もあるから、ヒーローの治療とかに駆り出されるわけで。

 

 自慢じゃないけどエンデヴァーとかホークスの治療とかもしたことがあるぜ。

 

 「わりいけど、出久今日もおれ仕事。急患だとよ。先帰っててくれ」

 「わかった。今日は帰れそう?」

 「なんかでかい事件起きたわけじゃなさそうだし、多分帰れる」

 「気をつけて。あと今日はありがとう、兄ちゃん」

 「いつものこった。あ、でも爆豪には気をつけろよ。最近のあいつ、ひでえから」

 「うん」

 

 そう言って別れて。やっぱりというか、おれがいなくなると爆豪の奴マジ出久へのあたりがきつくなるので、早々に帰るよう伝えたが、おれが帰った途端に爆豪による出久いじめが始まった。

 

 ◆

 

 「ポップの奴もういねえのか。ちょうどいいや、てめえに用事があったんだよデク」

 帰ろうとした出久のノートを取り上げる爆豪。出久は出久で、今朝の事件をまとめようと将来の為のヒーロー分析ノートを片付ける途中だった。

 「カツキ何ソレ?」

 「将来の為の……マジか!?く~~~~緑谷!!」

 「な、なにかっちゃん。ノート返してよ」

 爆豪からノートを返して貰おうとすると、爆豪は容赦なく緑谷のノートを爆破した。

 「あーーーー!!!!?ひどい……!!」

 「いくら兄貴が推薦入学だからって調子こいてんじゃねえよクソナード」

 「全然、調子こいてないけど……?」

 「こいてんだわ!てめえらがいなかったら俺はこの平凡な市立中学から初めて!唯一の!「雄英進学者」だったんだ!この際てめえの兄貴はしゃーねえとして、俺は無個性のお前が雄英受けるのが心底気に食わねえ。お前ほど雄英似合わねーやついねえんだわ!だからさ、雄英受けるなよ。クソナード」

 ぽん、となにか言ってみろよといいたげに出久の肩に手をのせる。

 なにか言ったら爆破するからと火花が散っていた。

 言い返したかった。けど、今日はポップがいない。怪我したらしばらく火傷の痛みとか我慢しなきゃいけないだろう。怖くてしかたがなかった。

 ガタガタ震えて、何も言い返せなかった。

 「いやいや……さすがに何か言い返せよ」

 「言ってやんなよ。かわいそうに、中三になってもまだ彼は現実が見えてないのです」

 「そんなにヒーローに就きてんなら効率良い方法があるぜ。来世は個性が宿ると信じて……屋上からのワンチャンダイブ!!」

 その言葉に、出久は思わず睨み返してしまったがすぐに爆豪に爆破の個性で脅されて、何も言い返せなかった。

 

 ◆

 

 「かっちゃんのやつ、いつもポップ兄ちゃんがいないタイミングでひどいこと言ってくるんだ。ポップ兄ちゃんに勝てないからって僕ばっかり」

 

 半泣きだった。泣きそうになりながらもダイに愚痴を話す出久。

 

 『助けてあげられなくてごめんね出久くん。あれはさすがにひどいね』

 「ダイ兄ちゃんは別にいいんだよ。こうして昼間でも話してくれるようになっただけでもすごく嬉しいんだもん」

 『ポップも忠告だけじゃなくてルーラで家まで送るとかしてあげたらいいのに』

 「今日はなんかお迎えの人来てたから無理だったんじゃないかな。黒スーツ着た人が車で迎えに来てたからなんか偉い人の治療じゃないかなぁ。もしかしてオールマイトの治療だったりして」

 『そんな偶然あったりする?!……でもあながちありえなくなさそうなのが……出久くん、後ろなんか来るよ!逃げて!』

 

 橋の下のトンネルを抜けていたらダイが突然慌てながら出久に忠告をしてきた。

 こういう時のダイの忠告はよくあたる。咄嗟に後ろを振り返ったが間に合わなかった。

 

 「Mサイズの……隠れミノ……」

 「敵(ヴィラン)!!?」

 

 マンホールから飛び出してきたヘドロ男が出久を乗っ取ろうと巻き付いてきた。

 

 「大丈ー夫。身体を乗っ取るだけさ。落ち着いて。苦しいのは約45秒……すぐ、楽になるさ。助かるよ、君は俺のヒーローだ……まさかあんなのがこの街に来てるなんて思わなかった」

 「ん゛ーーー!!!」

 「掴めるわけないだろ、流動的なんだから!!!」

 「(息ができない!!身体が……力が入らっ…死ぬ!誰かっ!!!死ぬっ!!嫌っ…)」

 「もう大丈夫だ少年!!私が来た!」

 

 マンホールをぶち破って出てきたのはオールマイトだった。

 

 「TEXAS……SMASH!!」

 「風……圧!?オ……え?!オールマイト!?」

 風圧でオールマイトはヘドロ男を吹き飛ばし。

 透かさずペットボトルにヘドロ男を封じ込めた。

 

 「ヘイ!ヘイ!!」

 

 何度か顔を叩かれて気絶から目を覚ますと、オールマイトから安堵の声が漏れた。

 

 「よかったーー!!元気そうで何よりだ!いやあ良かった!!敵退治に巻き込んでしまった。いつもはこんなミスもしないのだが、オフだったのと慣れない土地でウカれちゃったかな!?・しかし君のおかげでさありがとう!!無事詰められた!!!」

 

 ヘドロ男が無事詰め込まられたペットボトルを出久に見せて。

 出久はオールマイトに出会った感動で思わず感激していた。

 

 「そうだ!サイ、サイン、どっか…」

 『さっきもうしてくれてたよ』

 「ほんとだーーー!?わあああ~~~~!ありがとうございます!!家宝に!!家の宝に!!」

 「じゃあ私はこいつを警察に届けるので!液晶越しにまた会おう!!」

 「え!そんな、もう…?まだ…」

 「プロは常に敵か時間との戦いさ。それでは、今後とも…応援よろしくねーーーーって、コラコラ!!」

 

 勢いよく立ち去ろうとしたオールマイトの足を掴んで、出久は一緒に空を飛んでいた。

 

 『よくやるね、出久君。手放したら死んじゃうから意地でも放さないで』

 ダイから忠告が聞こえてくる。風圧でどうにかなりそうだったが意地でも出久はオール  マイトを掴んで放さなかった。

 「放しなさい!!熱狂が過ぎるぞ!?」

 「今…放すと…死んっ……死んじゃう!」

 「確かに!!」

 『オールマイトも慌ててるね。よっぽど急いでるみたい…(って、血だ。あながちポップの治療、間違いじゃないのかも)思いを伝えたらどうにかなるかも』

 「うん、僕……!あなたに直接……ッ!!いろ、色々、ぼっ、あなた」

 「オーケーオーケー、わかったから目と口閉じな!ゴホッ!んーーー・・shit!!」

 

 彼からの治療を受けたばかりだというのに、もう時間切れかとオールマイトは愚痴を零した。

 

 「怖かった……」

 「全く!!階下の方に話せば降ろしてもらえるだろう。私はマジで時間ないので本当これで!!」

 「待って、あの……」

 「No!!待たない!!」

 

 出久は思いを伝えた。

 

 「『個性』がなくても、ヒーローは出来ますか?!『個性』のない人間でも、あなたみたいになれますか?」

 

 出久は必死だった。必死にオールマイトに聞いていた。

 

「個性が…」

 

  そうして聞いてる間にオールマイトの変身が解けてしまう。

 

 「個性がないせいで、そのせいだけじゃないかもしれないけど、ずっと馬鹿にされてきて……だから……か、わかんないけど、人を救けるってめちゃくちゃかっこいいって思うんです。恐れ知らずの笑顔で助けてくれる!あなたみたいな最高のヒーローに僕も……おおおおおあああああ!!?しぼんでるうーー!?さっきまで……え!?ニセ!?ニセ者!?細ーーー!」

 「私はオールマイトさ」

 

 ゴホッとオールマイトは口から大量に吐血した。

 

 「ウソだーーーー!!!」

 「プールでよく腹筋力み続けている人がいるだろう?あれさ!」

 「ウソだーーーー!!」

 「恐れ知らずの笑顔ね……見られたついでだ少年。間違ってもネットには書き込むな?」

 「……ウソだ……」

 「五年前……敵の襲撃で負った傷だ」

 「ひっ!?」

 「呼吸器官半壊、胃袋全摘、度重なる手術と後遺症で憔悴してしまってね。私のヒーローとしての活動限界は今や一日約三時間程なのさ。そういえば君彼に似ているね、緑谷ポップ君に。そういえば彼にもそのとき治療してもらったよ。小学生だというのに、彼はしっかりしていてね」

 「あ、兄です。双子の兄で……」

 「そうか、君があの緑谷少年の弟か。彼に言われててね、もし弟に会うことがあったらよろしくって。君がそうか。今日も会ったよ」

 「やっぱり今日オールマイトの治療だったんだポップ兄ちゃん。オールマイトの治療をしたって僕、聞いたことないけど、そっか、あの時か。小学三年生の時に、ポップ兄ちゃん魔力を使い切ったって言って寝込んじゃった奴だ」

 「彼には大変世話になったけどね。それにこの傷の件は世間に公表しないでくれって私が頼み込んだから君が知らないのも無理はないよ。人々を笑顔で救い出す平和の象徴は、決して悪に屈してはいけないんだ。私が笑うのは、ヒーローの重圧、そして内に湧く恐怖から己を欺く為さ。プロはいつだって命懸けだよ。「個性」がなくとも成り立つとは、とてもじゃないがあ……口に出来ないね」

 「……はあ……」

 「たとえ君が緑谷少年の弟だとしてもね。個性がないのであれば別に人を救けることに憧れるなら警察官って手もある。「『敵(ヴィラン)』受け取り係」なんて揶揄されちゃいるがあれも立派な仕事だ!……夢見るのは悪いことじゃない、だが、相応に現実も見なくてはな、少年」

 

 と、去ろうとした時、オールマイトはあることに気付く。

 あのペットボトルがないのである。

 

 「……まさか」

 鬼電。鬼電がかかってきたので仕方なく電話を取ると怒号の電話がかかってきた。

 『オールマイト、マジどこに居るんだよ!治療の途中で逃亡しやがって!ヘドロ男捕まえたって聞いたけど?!目の前で今大暴れしてるんだが、おれが捕まえようか?!』

 「緑谷少年、すまない。取り逃がした!君の弟が…」

 『おれの弟がどうしたって?!オールマイト、とっくに時間切れになってるんじゃねーのか。緊急的にヒーロー活動の許可くれ。ヒーローデビューは雄英入ってからのつもりだったのに、ちくしょう』

 「嘱託試験に受かったばかりだったな君は。許可には確か私とホークスと根津校長の許可が必要だったか。二人からの許可は」

 『もう貰ってる』

 「よし、頼んだ緑谷少年!!戦闘を許可する!」

  ピッと電話を切る。

 「今かかってきたのポップ兄ちゃん?!」

 「そうだ。別に彼の治療から逃亡してた訳では無いのだよ緑谷少年」

 「……したんですね、オールマイト。兄ちゃん無茶苦茶怒ってたの聞こえて来ました」

 「すまない」

 

 ◆

 

 オールマイトに連れられて(緑谷弟もいれば幾分かお叱りを受けるのがマシになるのでは?という判断)、現場まで来たが、何分治療の途中でヴィランを見つけて逃亡してしまったのでオールマイトはダメージがひどい。すぐに動ける状況ではなかった。

 

 「動ける状態ではないですね」

 「すまない、情けない」

 「捕まってるのって、かっちゃん……?!」

 「君の友達か。今はお兄さんが戦ってくれているだろう、無個性の君が動いたら駄目だぞ」

 「でも、心配なんです。かっちゃん、助けてって目をしてる」

 

 気付いたときには、飛び出していた。

 

 「って、もういない!すまない、緑谷少年!弟君も行ってしまった!」

 「はあ?!なにしてんだあの野郎監督不届きも大概にしろよ。こっちに来るな、出久!巻き込まれるぞ。ヒャダイン!!」

 

 氷漬けにして爆豪ごとヴィランを捉えるポップ。わあああと歓声があがった。

 

 「かっちゃん!!」

 なんとか爆豪を氷の中から助けようとする出久。

 

 俺は叫びながら、氷の塊に向かって追加で呪文を唱えた。

 

 「出久ッ!仕方ねえ、ベホイミ……!」

 

 軽く回復の光を爆豪に飛ばしてやる。

 氷の中で暴れてる爆豪の怪我を少しでも癒してやらないと、後で面倒くさいことになる。 

 周囲からはすでに野次馬の歓声とスマホのシャッター音が飛び交っていた。

 

 「すげえ、あっという間に捕まえたぞ!氷系のヒーローか」

 「ちげえよ、個性は「呪文」だってよ。炎とか回復系の呪文も使えるんだってよ!」

 「まだ中学生らしい、来年には雄英入るんだってよ。政府公認の嘱託ヒーローだって」

 

 本日、緊急許可による初のヒーロー活動。

 政府公認・嘱託ヒーロー『大魔道士ポップ』として、ネットとニュースで一気に名前が広がることになった。 警察とプロヒーローが到着して、ヘドロ男(と爆豪)を回収し始めた頃。 

 ポップは出久の頭を軽くはたいた。

 

 「バカ野郎……なんで飛び出してくんだよ。無個性のお前が動いてどうすんだ」

 「ご、ごめん……でも、かっちゃんが助けてって目をしてたみたいで……」 

 

 出久は申し訳なさそうにうつむいた。 

 その帰りで爆豪が怒号の一言を浴びせて来た。

 

 「俺はてめえらに助けなんて求めてねえんだよ!嘱託ヒーローだ!?ふざけんな!!どんだけお前は人を見下したら済むんだよ俺一人でどうにかできたったてのに!氷漬けにもしやがって、寒いんだよクソ。デクもだ!助けられてもねえのにでしゃばんなカス!恩売ろうってか?!見下すなよ俺を!!」

 「あ゛?!やんのかこら」

 「うっせえクソナード」

 

 ポップが睨むと仕方ないなとブチギレながら爆豪は帰っていった。

 

 その横で、瘦せたオールマイトが苦笑しながら頭を下げてきた。

 

 「本当にすまない……私のミスだ。治療を途中で放り出してしまったせいで、君たち兄弟に迷惑をかけてしまった」

 「迷惑とかじゃねえよ。でも次はちゃんと治療受けてから動け。おれが何度も直してやってんのに、すぐ無茶すんな」 

 

 と、ポップがぼやくと、オールマイトは小さく笑った。

 

「君は本当にしっかりしているな。双子の弟君も……君に似て、強い意志を持っている」 

 

 出久が少し顔を赤らめて、オールマイトの言葉に反応した。 

 その後、現場の処理が終わってから、俺たちは少し離れたところで三人で話すことになった。 

 

 「取材陣に囲まれて大変だったがルーラでうまいこと逃げれてよかった。」

 「普通はあんな風に逃げたりせんのだがな緑谷少年」

 「だって取材って面倒なんだよーーー。比較的かっこよく逃げれたと思うぜおれ」

 

 頭をかきつつ、ポップは会話を続ける。

 

 「出久。今日のことは内密で頼むわ。おれとオールマイトの関係も今ままで黙ってて悪かった」

 「ううん、それは別にいいんだけど」

 「で、だ。オールマイト。今回の件なんだけど、どうだ。おれの弟、オールマイトの後継者に向いてると思わないか」

 

 ポップの言葉にごくりと思わず飲み込む。

 

 「こここここ、後継者?!」

 「話に聞いてた通りだ。向いてるとは思うし、正直感動した。口先だけのニセ筋となるところだったよ」

 「いや、でも、そもそも僕が悪いですよ。仕事の邪魔をして、「無個性」のくせに生意気なことを言って」

 その言葉を聞いた瞬間、オールマイトの表情が少し変わった。瘦せた体でゆっくりと出久の方を向き、いつもの明るい笑顔ではなく、静かな目で弟を見つめた。

 「……後継者、か」

 オールマイトは小さく息を吐き、口元を拭った。まだ血の気が引いた顔のまま、ゆっくりと言った。

 「緑谷少年……いや、ポップ君。君は弟君のことを本気でそう思っているのか?」

 おれは腕を組んだまま、肩をすくめた。

 「おれは本気だ。おれはおれの弟こそがオールマイトの後継者に向いてると思ってる。だから、聞いてるし、実際オールマイトもおれが居なかったら動いてたんじゃねえか」

 その言葉に、ドクリとオールマイトは動かされた。確かに、緑谷ポップがあの場に居なければあの時自分がかわりに敵を倒してただろう。誰も彼以外の周りのヒーローが動かなかったあの状況で。緑谷ポップが居なければ、一人飛び出した緑谷出久はどうなっていた?

 「確かにそうだ。私は確かにあの時、感動していた。私の力を、君の弟に、託したいと思う」

 「力…?まって、兄ちゃんもオールマイトも、何の話をしているの?」

 「何って、私の力を君が受け取ってみないか、という話さ」

 

 全く、緑谷出久は二人の話を理解することができなかった。

 

 「私の個性の話だ、少年。写真週刊誌には幾度も「怪力」だの「ブースト」だの書かれ、インタビューでは常に爆笑ジョークで茶を濁してきた。「平和の象徴」オールマイトはナチュラルボーンヒーローでなければならないからね。私の「個性」は聖火の如く引き継がれてきたものなんだ」

 「引き継がれてきた…もの!?」

 「そして、次は君の番だということさ」

 「ちょっ…ちょっと待って、待ってください!」

 「君はとりあえず否定から入るな!!ナンセンス!!せっかく君のお兄さんも賛同してくれてるのにもったいない!」

 「ナ……」

 「私は隠し事は多いが、嘘はつかん!個性を譲渡する個性……それが私の受け継いだ「個性」!冠された名は、「ワン・フォー・オール」」

 「ワン・フォー……オール……」

 「一人が力を培い、その力を一人へ渡し、また培い次へ……そうして、救いを求める声と義勇の心が紡いできた力の結晶!!!」

 「そんな大層なものなんで、兄ちゃんも、なんで僕にそこまで……」

 「元々後継は探していたのだ……。そして、君になら渡しても良いと思ったのさ!!「無個性」で只のヒーロー好きな君は、あの場の誰よりもヒーローだった!!まぁ、しかし、君次第だけどさ!どうする?」

 

 ここまで言ってもらえて、僕なんかに大事な秘密まで晒してくれて!

 兄ちゃんも賛同してくれて。

 ……あるか?ないだろ……!あるわけない!

 

 「お願いします」

 「即答。そう来てくれると思ったぜ」

 「よっし、おれとしてもやっと長年のモヤモヤが終わってすっきりしてるところだ。おれの弟を後継者に選んでくれてありがとう。オールマイト」

 「なに。緑谷少年の頼みだからな。無個性と聞いて、元々弟君を候補の一人として考えてはいたのさ。おっと、緑谷少年が二人になってしまうな。どう呼ぶべきか」

 「普通に下の名前で呼べばいいんじゃねえの。ポップ少年、とか出久少年とか」

 「そうするか」

 「まあ、今日はこれで終わりだ。解散な」

 「僕、色々おきすぎて情緒が追いつかないや」

 「おれもだ。勢い余って嘱託とはいえヒーローデビューしちまったしな。帰って母さんになにかうまいもん作ってもらおうぜ」

 「うん」

 「私のことは引き続き内密に頼む」

 「もちろんです」

 

 その夜。 ニュースでは「中学生ヒーロー『大魔道士ポップ』緊急デビュー! ヘドロヴィランを氷結呪文で瞬殺!」という見出しが躍っていた。 家に帰ると、出久がリビングでノートを広げながら興奮気味に話しかけてきた。

 

 「ポップ兄ちゃん! 今日のテレビ、すごかったよ!ダイ兄ちゃんも『ポップは相変わらず派手だな』って笑ってた!」

 「……お前、またダイと話してたのか」

 

 おれは苦笑しながら、出久の頭をくしゃくしゃと撫でた。 スマホを見ると、根津校長からメッセージが来ていた。

 

 【今日は面白いデビューだったね〜。

 嘱託試験の結果も含めて、雄英でしっかり話を聞かせてもらおうか。

 大魔道士ポップくん♪】

 

 ……やっぱり、根津校長は全部見てるな。 おれはベッドに寝転がりながら、天井に向かって小さく呟いた。

 

 「ダイ……お前、出久を守ってくれてるのは感謝するぜ。でも、そろそろ直接会おう。

 俺も、お前と話がしたいんだよ」

 

 すると、ほんの一瞬——

 部屋の隅で、何か温かい風のようなものが揺れた気がした。 

 雄英入学まで、あと少し。 

 出久の入試、俺の正式入学、そしてこれから始まる本当のヒーロー生活。

 この兄弟の物語は、きっとただの「一般人」じゃ終わらない。

 

 

 

 

 おまけ

 

 その夜、おれの部屋。

 出久が寝静まった後、おれは一人でベランダに出て夜風に当たっていた。

 スマホの通知が止まらない。

「中学生ヒーロー」「呪文個性」「大魔道士ポップ」でトレンド入りしてるらしい。

 推薦入学が決まってるのに、こんな派手にデビューしちまうなんて……計算外だ。

 「はあ……面倒くせえ」 

 呟いた瞬間、背後から小さな声がした。

 「……ポップ兄ちゃん、まだ起きてたの?」

 

 振り返ると、出久がドアの隙間から顔を出していた。

 目が少し腫れてる。今日の爆豪のことも、オールマイトのことも、全部重なってるんだろう。「寝ろよ。明日も学校だぞ」

 「うん……でも、今日ポップ兄ちゃんがかっこよかったから、なんか興奮して眠れないんだ」 出久は俺の隣に並んで、星空を見上げた。

 

 「ダイ兄ちゃんもさ、『ポップは昔から派手好きだった』って言ってた。魔王討伐の時も、いつも一番目立ってたんだって」

 「……お前、最近ダイと話す頻度増えてねえか?」

 

 おれが少しむっとすると、出久はくすっと笑った。

 

 「だって、ポップ兄ちゃんが忙しくなってきたから……ダイ兄ちゃんが『ポップの代わりにおれが見てるよ』って」 

 

 その言葉に、胸の奥がチクッと痛んだ。 

 (お前は……本当にダイなのか?それとも、出久の個性が作り出した幻なのか……) 

 

 俺は出久の頭を軽く抱き寄せて、ぼそっと言った。

 

 「まあいいや。雄英に入ったら、俺もお前も忙しくなる。その前に……お前が本気でヒーロー目指すなら、俺は全力で支えるからな。」

 出久が小さく頷いた。

 「うん……ありがとう、ポップ兄ちゃん」

 その後、出久が部屋に戻った後、俺はもう一度空に向かって呟いた。

 「ダイ。お前が出久に好き勝手に話すのも、別にいいけどよ。……俺にも、直接来いよ。話がしたい」

 

 夜風が、少しだけ強く吹いた。 まるで、誰かが「わかった」と答えたみたいに。

 

 

 




今回は3:2:5(私:原作:AI作成)ぐらいです。
ヒロアカの二次創作は実話オリ主物も含めて何度も書いては消してを繰り返してるので長く続いたらいいなと思ってます。ダイの大冒険も大好き!
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