俺の双子の弟は緑谷出久 ~大魔道士ポップと憑依する竜の騎士~ 作:篠原えれの
轟ヒュンケルは、轟燈矢と双子の兄としてエンデヴァーの血を引いて生まれた。
しかし、兄であるヒュンケルには個性が発現しなかった。
燈矢が「蒼炎」という強力な個性を持っていたのに対し、ヒュンケルは何も持たなかった。
エンデヴァーは「無個性」の長男に興味を失い、ほとんど目を向けなくなった。
家の中では「役立たず」「期待外れ」と陰で囁かれ、弟の燈矢だけがヒュンケルを気にかけてくれていた。
幼い頃のヒュンケルは、毎日のように孤独だった。
ある夜、激しい頭痛とともに前世の記憶が蘇った。
ヒュンケルは自分の体の中に「闘気」が眠っていることに気づいたのである。
無個性でありながら、意志一つで体を強化し、気弾を放ち、刃のように闘気を纏うことができるようになった。
しかし、その力は制御が難しく、使いすぎると体が悲鳴を上げた。
エンデヴァーの訓練は容赦なく、ヒュンケルは何度も倒れ、吐血した。
弟の燈矢は、そんな兄を必死に支えようとした。
だが、燈矢自身も個性の暴走で体を蝕まれ、幼い頃に死亡したと公式には発表された。
燈矢の死は、ヒュンケルにとって決定的な転機となった。
「もう、家族の期待などいらない。オレはオレの力で生きる」
ヒュンケルは家を離れ、闘気を極める道を選んだ。
無個性でありながら、独自の訓練と前世の記憶を頼りに、闘気を「剣」のように操る技術を磨き続けた。
数年後、彼は闘剣士ヒュンケルというヒーロー名でプロデビューを果たす。
表向きは「無個性で闘気を使う異色のヒーロー」として注目されたが、本人は決して過去を語らなかった。
エンデヴァーの息子であることも、弟・燈矢のことも、ほとんど口にしない。
そんなある日。
彼は公安の仕事で、ある中学生の嘱託ヒーローと出会う。
その少年の名は——緑谷ポップ。
そして、その弟である緑谷出久の中に、前世の大切な仲間である「ダイ」が宿っていることを知ることになる。
夜の都心部。
小さなヴィランによる人質立てこもり事件が発生した。
ポップは中学3年生ながら、公安から急遽連絡を受けて現場に駆り出されていた。
現場近くの屋上に到着すると、すでに一人のプロヒーローが待っていた。
黒いコートを羽織った長身の男——プロヒーロー**「闘剣士ヒュンケル」**。
公安の担当者がポップに声をかけた。
「緑谷ポップくん、来てくれたね。こちらはプロヒーロー・闘剣士ヒュンケル。
今日の突入で君と連携してもらうことになった」
ヒュンケルはポップの方を向き、静かに言った。
「俺はヒュンケル。前世の記憶……お前も持っているようだな。オレは無個性だが、闘気を使える。今日はよろしく頼む」
ポップの息が止まった。
「……え?」
ヒュンケルは淡々と続けた。
「驚くのはわかる。だが今は仕事だ。……ポップ、今日はよろしく頼む」
ポップは目を大きく見開き、思わず声を震わせた。
「マジかよ……お前も前世の記憶、持ってるのか……!?」
二人はしばらく無言で顔を見合わせた。
屋上の風だけが、二人の間に吹き抜けていく。
ポップがようやく声を絞り出した。
「……信じらんねえ。推薦入学が決まって、初めての大きな嘱託仕事に来たら……いきなり昔の仲間と出会うなんて……」
ヒュンケルは静かに頷いた。
「驚くのはわかる。だが今は仕事だ。……緑谷ポップ、今日はよろしく頼む」
ポップは拳を軽く握り、呆れと興奮が入り混じった表情で答えた。
「ああ……よろしくな、闘剣士ヒュンケル。アバンの使徒同士、いい仕事しようぜ」
二人は視線を交わし、現場へ向かった。
屋上から現場を見下ろしながら、二人は短く作戦を立てた。
ヒュンケルが静かに言った。
「俺が正面から壁を闘気で削る。お前は後方から補助と回復を。人質に当たらないよう、タイミングを合わせてくれ」
ポップは頷きながら、両手を軽く振りながら呪文の準備をした。
「了解。ルカニで敵の防御を弱めるから、そこに闘気をぶち込んで。ベホイミはいつでも出せる。……いくぞ」
ヒュンケルは無言で屋上から飛び降りた。
体を淡い銀色の闘気で包み、強化された拳でヴィランの作った壁に叩きつける。
ドンッ! という重い音とともに、壁に亀裂が入った。
ポップは即座に呪文を唱えた。
「ルカニ!」
淡い光が敵の強化された壁を弱め、ヒュンケルの次の打撃で壁が大きく崩れた。
「今だ!」
ヒュンケルが一気に突入する。
闘気を剣のように纏った右腕でヴィランを圧倒しつつ、人質の安全を確保していく。
ポップは後方からサポートを続けながら、内心で驚いていた。
(すげえ……無個性でここまで戦えるなんて。闘気がまるで剣みたいに鋭い……)
事件は比較的短時間で収束した。
人質は全員無事。
ヴィランはヒュンケルの闘気による近接戦で制圧された。
事件後、現場近くの路地裏。
ポップは軽く息を切らしながら、ヒュンケルに声をかけた。
「……お前、強くなったな。前より闘気の精度が上がってる」
ヒュンケルは静かに答えた。
「お前もだ。呪文のタイミングが以前より正確になっている。……緑谷ポップ、今日の連携は悪くなかった」
ポップは少し照れくさそうに笑った。
「まあ、はじめての共同任務にしては上出来だったかもな。……ヒュンケル、お前も前世の記憶持ってるってことは、俺と同じようにこの世界に来て苦労したんだろ?」
ヒュンケルは一瞬、目を伏せたが、すぐに淡々と言った。
「そうだ。無個性で生まれて、闘気を覚醒させるまで……相当な時間を要した。だが今はプロヒーローとして活動している。
お前も、推薦で雄英に行くんだろう?」
ポップは頷いた。
「ああ。弟の出久も一般入試で受かろうとしてる。無個性から頑張ってる奴だ。……お前みたいに、無個性で強くなってる人を見ると、俺も少し勇気が出るよ」
ヒュンケルは小さく頷き、夜の街を見ながら言った。
「弟がいるなら、無理はするな。家族を守るために強くなるのは、俺も理解できる。……また現場で会おう、緑谷ポップ」そう言って。ヒュンケルは黒いコートを翻し、静かにその場を去っていった。
ポップは一人残り、空を見上げて小さく呟いた。
「……こんな近くに昔の仲間がいたなんてな。出久、俺も負けてらんねえぞ」
夜風が、ポップのコートを軽く揺らした。
◆
ポップとヒュンケルは、事前に待ち合わせをしていた近所の小さな定食屋で向かい合って座っていた。
ヒュンケルは黒いコートを脱いで椅子の背にかけたまま、静かに味噌汁を飲んでいる。
ポップは唐揚げ定食を食べながら、ふと箸を止めた。
「……実は、弟の話なんだ。緑谷出久……あいつ、無個性だって診断されてからも色々あって、毎日特訓頑張ってるんだけど、実は、あいつの中に『ダイ』がいるんだ」
ヒュンケルは箸を止め、静かにポップの顔を見た。
「……ダイ?」
ポップは頷いた。
「ああ。出久は昔から『ダイお兄ちゃん』が夢に現れて話しかけてくるって言ってて、最近は夢だけじゃなくて、現実でも憑依して体を動かせるようになったらしい。出久がピンチの時に、ダイが支えてくれてるみたいなんだ」
ヒュンケルは少し間を置いてから、低い声で言った。
「……会わせてくれないのか。オレもダイに会いたい」
ポップは驚かず、むしろ当然だというように小さく頷いた。
「やっぱりそう言うと思ったよ。……実はおれも、出久に『おれの昔なじみのプロヒーローに会ってみないか』って誘おうと思ってたんだ。出久もダイのことをすごく慕ってるから、きっと喜ぶと思う」
ヒュンケルは静かに頷いた。
「そうか。なら、できるだけ早く頼む。前世で一緒に戦っていた仲間が、今もこの世界にいる……オレとしても、直接話してみたい」
ポップは笑って軽く手を挙げた。
「ああ、わかった。近いうちに機会を作るよ。……お前も、弟の出久に会ったら、意外と面白いと思うぜ。あいつ、ヒーロー好きで無茶苦茶熱いんだ」
ヒュンケルは小さく頷き、立ち上がった。
「オレはこれで失礼する。……弟のことは、大切にしろ。ダイが守ってくれているなら、なおさらだ」
ポップは笑って軽く手を挙げた。
「ああ、また現場で会おうぜ、闘剣士ヒュンケル」
ヒュンケルは静かに店を出ていった。
◆
次の日の夕方。
ポップは出久を連れて、近所の公園のベンチに来ていた。
出久は少し緊張した顔でポップの横に座りながら、小声で聞いた。
「ポップ兄ちゃん……本当に、闘剣士ヒュンケルさんが来るの?」
ポップは弟の頭を軽く撫でてやった。
「ああ。昨日話したら『オレもダイに会いたい』って言ってきたから、今日呼んだんだ。……どうだ? 会ってみるか?」
出久は少し迷った後、頷いた。
「うん、いいよ……ダイ兄ちゃんも、きっと喜ぶと思う」
その言葉を聞いた瞬間、出久の瞳の奥に明るい光が宿った。
声のトーンが少し変わる——ダイが憑依した状態だ。
ダイは出久の体で、ヒュンケルを静かに見て、柔らかい少年らしい声で言った。
『……ヒュンケル?久しぶりだね……こんなところで会えるなんて、びっくりしたよ』
ヒュンケルも、珍しく目を見開いて動揺を隠せなかった。
「……ダイ。お前が……この子の中にいたのか。昔、一緒に戦っていたお前が、今ここに……」
ダイは出久の顔で、懐かしそうに柔らかく微笑んだ。
『うん。ヒュンケルも変わったね……強くなったんだね。……会えて嬉しいよ、ヒュンケル』
ヒュンケルは静かに息を吐き、少し感情を表に出して言った。
「オレもだ。……お前がまだこの世界にいて、出久を守っているとは思わなかった……」
ダイは優しく頷いた。
『出久くんは頑張ってるよ。おれはただ、少し背中を押してあげてるだけさ。……ヒュンケル、お前も昔からそうだろ?
大変だったよね』
ヒュンケルは小さく頷いた。
「ああ。お前が支えているなら、出久は強いはずだ。……今日は会えて良かった。また機会があれば、ゆっくり話したい」ダイは嬉しそうに微笑んだ。
『うん、いつでも来てね。出久くんも、お前みたいな人に会えて喜んでると思うよ』
その言葉が終わると、出久の瞳が元に戻った。出久は自分の体を抱くようにして、興奮した顔で言った。
「ダイ兄ちゃん……今、ヒュンケルさんと話してたよね?なんか、すごい雰囲気だった……」
ポップは弟の頭を軽く撫でながら、笑った。
「ああ、話してたよ。ヒュンケルも、お前の中にダイがいるって知って、会いたいって言ってきてな。……どうだった?」
出久は頷きながら、目をキラキラさせて言った。
「うん……嬉しかった。ダイ兄ちゃんが、昔の仲間と再会できてよかった……」
ヒュンケルは静かに立ち上がり、二人に軽く頭を下げた。
「今日はこれで失礼する。……緑谷出久、また会おう。ポップも、弟を大切にしろ」
そう言って、ヒュンケルは夕暮れの公園に消えていった。ポップと出久はベンチに残り、並んで空を見上げた。出久が小さく呟いた。
「ポップ兄ちゃん……ヒュンケルさん、かっこよかったね」
ポップは苦笑しながら弟の肩を抱いた。
「ああ、強い奴だよ。……お前も、ダイと一緒に頑張れよ」
轟ヒュンケル(23歳)雄英編では24歳
プロヒーロー名:闘剣士ヒュンケル
エンデヴァーの長男で、轟燈矢の双子の兄。
表向きは「エンデヴァーの息子」として知られているが、本人はその姓を嫌い、ほとんど名乗らない。特徴無個性だが、前世の記憶を持っており、「闘気」を自在に操る。
闘気を剣のように凝縮して戦うスタイルから、プロヒーロー名は「闘剣士」。
クールで寡黙、感情をあまり表に出さない。必要最低限しか話さないタイプ。
弟の燈矢が個性の暴走で幼少期に死亡したとされ、その過去を少し引きずっている。
現在は正式なプロヒーローとして活動中。公安や雄英とも協力関係にある。
性格・人柄基本的に冷静で現実的。無個性だった自身の経験から、努力や苦労を強く理解する。
ポップに対しては「昔の仲間」として一定の信頼を置いているが、素直に感情を出すことは少ない。
出久に対しては「無個性から頑張る弟」として、静かに好意的に見ている。
ポップとの関係前世で一緒に戦った仲間(魔法使いのポップ)。
現世で再会した時は互いに驚き、以来、現場で連携したり、時々個人的に会って話す仲。
ヒュンケルにとっては、数少ない「前世の記憶を共有できる相手」。
一言で言うと
「無個性で闘気だけを武器にトップクラスのプロヒーローになった、クールで寡黙な元・双子の兄」
AI君に書いてもらいました