俺の双子の弟は緑谷出久 ~大魔道士ポップと憑依する竜の騎士~   作:篠原えれの

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入試

 

 「間に合った…」

 『なんか、すごい力だね。出久君の個性。このワン・フォー・オールって、色々あるみたいだよ』

 雄英校内に入って、ずっとだんまりだったダイが話しかけて来た。

 「色々ある?」

 出久は周囲に人がいないのを確認して、小声で返した。

 『ずっと中の人達と会話してたんだけど、ええと、中の人達っていうのは先代のワン・フォー・オールの使い手の人達のことなんだけど。この力をいきなり入試で使うのは危険なような気がするよ、出久君。とくにオールマイトが使う超パワーをいきなり100%使うのは身体が持たないと思う。最初はおれと使い方をレクチャーしてからの方がいいと思うんだ』

 出久は少し驚いて、足を止めた。

 「でも、どうやって?」

 『最初は黒鞭とか浮遊とかでいいと思うんだ。危機感知もおれが警告すればうまいこと使えると思う。煙幕とか便利な能力もあるし。他にも危険な能力が2つほどあるから、これは慣れてからでいいと思う。全部使えるようになったらおれのドラゴンの騎士の力も使えるようになるかも。これって、そういう力なんだって。初代の与一さんが言ってたよ』

出久の目が大きく見開かれた。

 「ダイ兄ちゃんの……ドラゴンの騎士の力も……?」

 『うん。おれの力はワン・フォー・オールと相性いいみたいなんだ。』

出久は胸の奥が熱くなるのを感じた。

 「……ありがとう、ダイ兄ちゃん。一番負担がなさそうなのが黒鞭なんだよね?まずはそれから使ってみようかな」

 『一番負担がなさそうなのは浮遊と煙幕だけど、そうだね。全く攻撃方法がないのもアレだから、黒鞭でいいと思うな。一本の線を出すイメージでいいと思う。全開で出すとオールマイトの力と一緒で大変なことになると思うからね』

 というやりとりをしていると、早速危機感知が反応した。

 「どけデク!!俺の前に立つな殺すぞ」

 「(うわ~~むちゃくちゃ機嫌悪そうかっちゃん)お、お早う頑張ろうねお互い…」

 「ふんっ」

 ガン無視である。すたこらと爆豪は通り過ぎて行った。

 『久しぶりに爆豪君と話したね。あの敵の時以来じゃないかな』

 「ビビっちゃうのもう癖だよダイ兄ちゃんってうわ」

 あまりに緊張してしまって動けなくなってしまい、出久はそのまま転倒してしまう。

 これだよ!!!せっかく浮遊っていう個性もあるはずなのに、発動しない、し…?

 「……?」

 中々地面にぶつからなかった。

 「大丈夫?」

 「わっ、えっ!?」

 女の子がーーー出久を助けていた。

 「私の『個性』ごめんね、勝手に。でも転んじゃったら縁起悪いもんね。緊張するよね」

 「へ…あ……え…と……」

 「お互い頑張ろう」

 「…(…女子と喋っちゃった!)」

 そう言って別れたあとは緊張とかどうでもよくなって、気付けば会場入りしていた。

 

 

 「広っ!」

 「街じゃん!!敷地内にこんなもんがいくつもあんのか」

 

 何でみんなそんな自信あり気なんだ!?緊張しないの!?ああ…「個性」にあわせた装備とかして…。

 

 「ん…?」

 

 ああ、あの人!同じ会場だったんだ!そうだ、さっきのお礼言わなきゃ……。

 

 『出久、君意外と目立ってるよ』

 「えっ」

 「その女子は精神統一を図っているんじゃないか?君は何だ?妨害目的で受験しているのか?」

 「ひい!こちらも!」

 

 黒髪メガネに掴まれ、思わず怯む。

 

 「あいつ、校門前でコケそうになってたやつだよな」

 「注意されて萎縮しちゃった奴」

 「少なくとも一人はライバル減ったんじゃね?」

 「ラッキー」

 

 ラッキーって思われてそう。

 

 『ハイスタート!どうしたあ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ!走れ走れ!賽は投げられてんぞ!!?』

 

 「え、えええ!?」

 

 出遅れちゃった、どうしよう!?

 

 『最初だから、おれがレクチャーするよ。憑依させてもらうね、出久くん』

 「えっ!?ダイ兄ちゃん!?」

 「トベルーラ!!」

 

 優しく、憑依した感じが伝わった。浮遊を呪文と誤魔化すためか、単なる癖か、トベルーラを唱えて空を飛ぶ。拳にドラゴンの紋章が浮かび上がったのが見えた。

 

 「出遅れても大丈夫!何ポイントか黒鞭で稼ぐよ。感覚、覚えてね出久君!」

 『うん!』

 

 最初は一本と言っていたのに、空から複数の鞭を翳すようにロボット目掛けて壊していく。

 

 「おれも初めて出したけど、結構簡単だね。落ち着けば出久君も使えるようになると思うよ」

 『すごい…!』

 「出力もだいぶ抑えたから、筋疲労はだいぶマシだと思う。ワン・フォー・オールの力を足に集中して、5%ぐらいに抑えないとこんな激しく飛べないけど。ついでに何人か黒鞭を使って助けといたよ。便利だね、ヒーローに向いてていい個性だと思うよ」

 

 ついでにアレも倒そっか。

 

(これが……僕の力……)

 

 目の前の巨大ロボットを余裕灼灼と指さして。

 

 みんなが次々に逃げていく中で、一人、出久は堂々としていた。

 

 「風圧で倒すんだ。力いっぱい握りしめて攻撃したら腕一本は持ってかれちゃうからね」

 『ケツの穴グッと引き締めて、心の中で叫ぶんだよね』

 「そう、でも今おれ達が使えるのはデコピン一発分だね。初めて使うからどうしても指はもってかれちゃう…ね。でも大丈夫、あとで治してもらったらいいさ。」

 

 そういって、風圧を生み出すように、力強くデコピンをした。

 SMASH!!

 

 その光景を大勢の受験生が見ていた。緑谷出久を馬鹿にしていたあの黒髪メガネから、出久を心配していた茶髪の女の子まで。

 

 緑谷出久 得点

 ヴィランP55 レスキューP40 95点

 

 暫定1位。指を一本犠牲にしなければ満点を貰えていたらしい。

 

 ◆

 

 「いったあああ!治してもらったらいいやとか言ってたけどダイ兄ちゃん普通にいたいよ!!これ!?」

 『ごめん、巨大ギミック倒したのに満足して憑依とけちゃった。浮遊使える?』

 「こ、こう!?トベルーラああああ!!!死ねるぅうう」

 

 すんでのところで憑依がとけ、いつもの出久に戻ったのもあり使い方をパニックで完全に忘れてしまっている。トベルーラ、と唱えても使えない。

 

 「もう、助けてくれたのにさっきまでの強さは一体何?!」

 

 茶髪の女の子がーーー落ちてきた出久にうまいこと触れて重力をゼロにすることに成功する。

 

 うまいこと出久は地面に激突しないで済んだ。

 茶髪の女の子は能力の使いすぎの反動でゲロを吐いてしまってる。

 

 「あはは……ぼ、僕の個性ってことにしといてくれると嬉しいかも」

 「それはわかるけど・・・・うええ」

 

 茶髪の女の子も、出久も動けなかった。

 

 終了の合図がなり、黒髪メガネーーー飯田天哉は緑谷出久の凄さに圧倒されていた。最後の最後に拍子が抜けてしまったが、飯田自身も出久に助けて貰ったのだ。助けてもらいながら、次々に仮想敵を倒していく様は圧巻だった。

 

 「トベルーラとか言っていたな。少年はもしかしなくとも大魔道士ポップの血縁ではないのか?彼は確か推薦入学組だろう」

 「双子の兄です……試験の最中無我夢中だったので使えたみたいだけど、急に使えなくなって……」

 「大方その指の怪我のせいじゃろう」

 「だいぶセーブしたんですけど、ずみまぜん……」

 「まるで身体と個性が馴染んでないみたいじゃないか。チューーーー」

 「ずみません゛、リカバリーガール」

 「その程度の怪我なら君のお兄さんでも治せるだろうけどここに今彼居ないからね」

 

 リカバリーガールの個性は治癒力の超活性化。雄英がこんな無茶な入試を敢行できるのも彼女によるところが多い。

 

 「ちゃっちゃっといくよ。他に怪我した子は?」

 「おれも手伝います。出久、あとで説教と説明」

 「はい、ごめんなざい」

 

 先に雄英に合格していた緑谷ポップが後からリカバリーガールを追いかけてくる。

 実話彼も試験の様子をモニターで見ていたのだが、ドラゴンの紋章やら0ポイントギミックの破壊やらで呆気にとられてすぐ反応することができなかった。

 

 この様子だけみるとほんとに兄弟かよと思われるが、入試のあの緑谷出久の実力を知ると、納得する……ことができるかもしれない。

 

 ◆

 

 試験終了後、すぐにポップから問い詰められた。オールマイトも添えて。

 

「緑谷少年……いや、出久少年。君の試験、しっかり見せてもらったよ」

 

 オールマイトの声は穏やかだったが、目には驚きと期待が混じっていた。出久が慌てて立ち上がりかけたが、ポップが肩を押さえて座らせた。ポップはまずオールマイトに軽く頭を下げてから、すぐに本題に入った。

 

 「……で?何だよ、あのドラゴンの紋章」

 出久の肩がびくっと震えた。

「試験中、空を飛んで黒鞭を何本も出して、ロボットをぶっ壊して、最後にデコピンで巨大ギミックを吹っ飛ばしたとき……手の甲にくっきり浮かんでた。あれはダイの紋章だろ?」

 出久は目を泳がせながら、小さな声で答えた。

 「……うん。 試験中にダイ兄ちゃんが憑依してくれたんだ。おれ一人じゃスタートで完全に固まって、出遅れてパニックになってて……ほとんどダイ兄ちゃんが操作して……」

その瞬間、出久の瞳の奥に明るい光が宿った。声のトーンが少し変わる。

 『……まあ、そんな感じだな、ポップ』

 ポップの目が鋭くなった。

 「……ダイ」

 オールマイトも驚いた顔で出久(ダイ)を見つめた。

 「これは……! 君が例の『ダイ』か。出久少年がよくブツブツ話してた少年か」

 『うん、そうだよ。おれはダイ。おれは、異世界の勇者だって言えばわかりやすいのかな。ポップとは昔から、親友だったんだ。おれの力は「竜(ドラゴン)の騎士」と言って、歴代の竜の騎士の経験や記憶、力が「竜の紋章」に蓄積されて、次の騎士に受け継がれるんだ。ワン・フォー・オールとすごく似てるよね。一人で積み重ねて、次の人に渡す力……だから、相性がいいみたいで、出久君に継承される前からおれは出久君に干渉することができていた。』

オールマイトが静かに頷いた。

 「なるほど……私のワン・フォー・オールは『力のストック』を次の者に譲渡するもの。君の力は『戦いの遺産』を紋章を通じて受け継ぐ……確かに、根本の仕組みが近いな。……しかし、憑依という形は危険だと思うが」

 ダイは優しく、でもはっきりとした声で答えた。

 『危険だってわかってるよ。おれも、本当はこんな形で出てくるつもりじゃなかったんだけど、力の使い方も分からないまま戦場に立たせるほどおれって薄情者じゃないからさ。救けるなら今って助けちゃった』

 ポップは腕を組んだまま、ため息をついた。

 「つい、じゃねえだろ……黒鞭を何本も同時に出して、浮遊で飛び回って、デコピンまで……お前、完全に自分の体みたいに使ってただろ」

 ダイは少し申し訳なさそうに、柔らかく笑った。

 『ごめんね、ポップ。でも出久くん、本当に頑張ってたよ。10ヶ月間、あの過酷なトレーニングをちゃんとやりきって……おれはただ、少しだけ背中を押してあげたかっただけなんだ』

 オールマイトが穏やかに口を挟んだ。

 「ダイ君……君の気持ちはよくわかる。 私も、出久少年が無茶をしないか心配だった。ただ、これからは出久少年自身の意志と体を尊重してほしい。ワン・フォー・オールはすでに重い力だ。そこに別の力が加わると、負担が大きくなりすぎるかもしれない」

ダイは素直に頷いた。

 

 『うん、わかったよ。次からはちゃんと出久くんと相談してからにするね。……オールマイト、ありがとう。出久くんに力を託してくれて。おれも、これからは影からちゃんと見守るから……出久くんを、よろしくね』

 

 そう言って、ダイの気配がゆっくりと優しく薄れていった。

 出久の瞳が元に戻り、彼はぱちぱちと目を瞬かせた。

 

 「……ダイ兄ちゃん、行っちゃった……?」

 ポップは弟の頭を軽くくしゃくしゃと撫でながら、苦笑した。

 

 「ああ、行ったよ。……お前、本当に無茶すんなよ。次は俺が近くにいるから、勝手にダイに体を貸すんじゃねえぞ」

 

 オールマイトも優しく微笑みながら頷いた。

 

 「二人とも、今日は本当によく頑張った。ダイ君……とても温かい力の持ち主だな。出久少年、これからは自分の力でコントロールできるよう、私と一緒にしっかり鍛えていこう」

 

 出久は少し照れながら、二人を見て小さく頷いた。

 

 「うん……ありがとう、ポップ兄ちゃん。オールマイトも……ダイ兄ちゃんも……みんなのおかげで、今日も頑張れたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




3:3:4(私:原作:AI)ぐらいです。楽しく書いてます~
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