俺の双子の弟は緑谷出久 ~大魔道士ポップと憑依する竜の騎士~ 作:篠原えれの
英語の授業と戦闘訓練
1-A教室、午前の英語の授業。
ドアが勢いよく開き、派手なサングラスに革ジャン姿のプレゼント・マイクが飛び込んできた。
「YEAHHHH!!!みんな元気かぁぁぁぁい!!!今日からお前らの英語の先生、プレゼント・マイクだ!!!レッツ・イングリッシュ・タイム!!!」
マイク先生はマイクを握りしめながら大げさにポーズを決めた。
「オール・ライト! まずは自己紹介からいくぞ!一人ずつ、英語で自分の名前と個性と夢を言ってみろ!Simple is best! 簡単でいいからな!じゃあ最初は……緑谷ポップ! お前からいけ!」
ポップ兄ちゃんは少し面倒くさそうな顔をしながら立ち上がった。
彼は落ち着いた声で、流暢に英語を話し始めた。
"I'm Pop Midoriya.My Quirk is 'Spell'. I can use various magic spells by chanting.My dream is to become a hero who can support and protect everyone with my spells.Also, I want to help my little brother become a great hero too."
(おれは緑谷ポップです。個性は「呪文」。言葉を唱えることで様々な魔法を使えます。夢は、呪文を使ってみんなを支え、守れるヒーローになることです。あと、弟が良いヒーローになるのを手伝いたいと思っています。)
教室が一瞬、静まり返った。マイク先生がサングラスをずらして目を丸くした。
「Whoa……! That's pretty good, Pop!Pronunciation is clean and natural!You've studied English before?」
ポップ兄ちゃんは肩をすくめながら答えた。
「まあ……昔、ちょっとだけ本気で勉強した時期があってさ。海外のヒーロー本とか読むときに必要だったから。出久も最近、おれが勉強してるのを見て影響されて始めたみたいだよ」
その言葉に、僕は少し顔を赤らめた。マイク先生が興奮してマイクを握りしめた。
「YEAH!! 兄弟で影響し合ってるのか! いいねぇ!じゃあ次は弟の緑谷出久! お前もいけ!」
僕は慌てて立ち上がり、緊張しながら言った。
"I'm Izuku Midoriya.My Quirk is 'Super Power'. My dream is to become a hero who can save everyone with a smile."
(僕は緑谷出久です。個性は「超パワー」です。夢は、みんなを笑顔で救えるヒーローになることです。)マイク先生が大きく頷いた。
「Good! Not bad, Izuku!A little nervous, but the feeling came through!」
お茶子が後ろの席から目を輝かせて言った。
「ポップくん、英語上手いね! びっくりした!出久くんも頑張ってたよ!」
飯田天哉も真面目な顔で頷いた。
「確かに! 緑谷ポップくんの発音は非常に自然だった。出久くんも最近勉強を始めたということですね。素晴らしい!」
ポップ兄ちゃんは椅子に座り直しながら、苦笑した。
「出久は最近、おれが夜中に英語の本読んでるのを見て、『僕も勉強しようかな……』って言い出してさ。まあ、影響し合ってるって感じだな」
僕は少し照れくさくなりながら、小さく頷いた。
「うん……ポップ兄ちゃんが頑張ってるのを見て、僕も少しずつ勉強するようになったんだ。まだ全然だけど……」マイク先生が再びマイクを握りしめて叫んだ。
「オール・ライト! 緑谷兄弟は英語班のエース候補だな!
これからガンガン使っていくぞ!Everybody! Repeat after me — 『I will become the greatest hero!』」
教室全体が声を揃えて復唱する中、ポップ兄ちゃんが小さく僕に囁いた。
「出久、お前ももう少し発音練習した方がいいぞ。おれが教えてやるよ」
僕は微笑みながら頷いた。
「うん……ありがとう、ポップ兄ちゃん」
マイク先生のテンションの高い英語の授業は、兄弟で影響し合いながら、少しずつ前へ進むいいきっかけになりそうだった。
◆
雄英高校 大食堂 昼休み大食堂は今日も賑わっていた。
僕とポップ兄ちゃんはトレイを持って、昨日と同じ窓際の席に座った。
ポップ兄ちゃんは今日もカツカレー大盛りを前にして、軽く息を吐いた。
「おれ、今日もカツカレーか……美味いんだけど、2日連続だとさすがにちょっと重いな」
僕は自分のトレイ(今日はハンバーグ定食)を見て笑った。
「ポップ兄ちゃん、昨日もカツカレーだったよね。お母さんが『栄養バランス考えなさい』って言ってたのに……」
ポップ兄ちゃんはフォークを刺しながら、横目で僕を見た。
「母さんの言うことはわかるけどよ。カツカレーが一番美味いんだから仕方ねえだろ」
そこへ、トレイを持った麗日お茶子が明るく近づいてきた。
「出久くん! ポップくん! またここにいたね!いい? 一緒に食べていい?」
お茶子は嬉しそうに隣の席に座り、すぐ後ろから飯田天哉も真面目な顔でやってきた。
「失礼します!昨日は自己紹介が遅れてしまいましたが、今日もよろしくお願いします!」
ポップ兄ちゃんはカツカレーを一口食べてから、軽く手を挙げた。
「ああ、座れよ。もう2日目だもんな。だいぶ顔見知りになってきたな」
お茶子がハンバーグを切りながら、目を輝かせて言った。
「ねえねえ、昨日のお昼もここで食べてたよね?出久くんとポップくん、いつも一緒にいるの?双子なのに全然雰囲気違うから、なんか新鮮だよ!」
僕は少し照れながらハンバーグを食べた。
「うん……昔からずっと一緒だったから、自然とこうなるんだ。ポップ兄ちゃんは推薦で先に入ってたけど、僕も一般入試で来られてよかった」
飯田天哉が背筋を伸ばして言った。
「確かに! 緑谷兄弟の絆は素晴らしい!特に昨日のテストでは、出久くんの超パワーとポップくんの呪文……個性の組み合わせが非常に興味深いです!」
ポップ兄ちゃんがフォークを止めて、苦笑した。
「俺の呪文は唱えないと使えないから、ちょっと面倒くさいけどな。出久の超パワーはまだコントロールが難しいみたいだけど、昨日はだいぶ頑張ってたじゃねえか」
僕は少し顔を赤らめながら言った。
「ポップ兄ちゃんが夜中に勉強してるのを見て、僕も影響されて……英語も少しずつ頑張ってみようかなって思ってるんだ」
お茶子がぱっと笑顔になった。
「えー! それいいね!出久くんもポップくんみたいに英語上手くなったら、かっこいいよ!私ももっと頑張らなきゃ!」
飯田天哉が大きく頷いた。
「素晴らしい! 互いに影響し合い、高め合う関係は理想的です!私も負けていられません!」ポップ兄ちゃんはカツカレーを食べ進めながら、ぼそっと言った。
「まあ、焦らなくていいよ。おれも出久も、まだ雄英に来たばっかりなんだから。ゆっくりやっていこうぜ」
大食堂の喧騒の中で、4人で囲む昼ご飯は、なんだかとても心地よかった。お茶子が最後に笑顔で言った。
「じゃあまた明日もここで一緒に食べようね!出久くん、ポップくん、よろしく!」
ポップ兄ちゃんが小さく笑って答えた。
「ああ、よろしくな」
僕は心の中でそっと思った。
(2日目だけど……もう少しずつ、この学校が好きになってきてる気がする)
◆
そして午後の授業、ヒーロー基礎学。
オールマイトが登場し、皆コスチュームに着替えた。
出久とポップは母お手製のコスチュームを着ていた。
ポップは母に要望していた。ポップといえばハチマキ。あのハチマキを頭につけてほとんど昔の旅をしていた時とそっくりの格好をしている。
「戦闘訓練のお時間だ。良いじゃないか皆、かっこいいぜ」
飯田がオールマイトに説明する。
「先生!ここは入試の演習場ですがまた市街地演習を行うのでしょうか!?」
「いいや!もう二歩先に踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内のほうが凶悪敵出現率は高いんだ。監禁・軟禁・裏商売…このヒーロー飽和社会真に賢しい敵は屋内にひそむ!!君らにはこれから「敵組」と「ヒーロー組」に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!」
「基礎訓練もなしに?」
「その基礎を知る為の実践さ!」
「ただし今度はブッ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ」
と話すと皆一斉に質問しだしたのでさすがのオールマイトも聖徳太子ィィっと混乱した。
「いいかい!?状況設定は、「敵」がアジトに「核兵器」を隠していて、「ヒーロー」はそれを処理しようとしている!「ヒーロー」は制限時間内に「敵」を捕まえるか「核兵器」を回収する事。「敵」は制限時間まで「核兵器」を守るか、「ヒーロー」を捕まえること。コンビ及び対戦相手はくじだ!あと、人数が一人余ってしまうので、ポップ君がもう嘱託試験に受かってるのもあって、私と対戦してもらうよ!」
「えええええ」
皆から驚きの声があがる。
「ポップ君がヒーロー側で私敵側ね!敵チームは先に入ってセッティングしなければいけないので、私はこれで!5分後にヒーローチームが潜入でスタートする。他の皆はモニターで観察しておくれ」
ポップ兄ちゃんはため息をつきながらも、軽く笑った。
「おれ、オールマイトと直接対決か……まあ、いい経験になりそうだな」
僕は少し心配そうに兄を見た。
「ポップ兄ちゃん、大丈夫……?」
ポップ兄ちゃんはハチマキを軽く直しながら、いつもの調子で答えた。
「ああ、心配すんな。おれなりに全力でやってみるよ」
こうして、雄英での本格的な戦闘訓練が始まろうとしていた。
◆
オールマイトとポップ兄ちゃんの対戦は、開始からわずか数分で激しさを増していた。
オールマイトの拳が風圧を伴って迫るたび、ポップ兄ちゃんは冷静に攻撃呪文で対応していた。
「ヒャダイン!!」
冷気の奔流がオールマイトの足元を凍らせる。
「メラゾーマ!!」
炎の塊がオールマイトの胸を狙って飛ぶ。
オールマイトは笑いながらそれらを拳で弾き飛ばし、逆に距離を詰めてくる。
「素晴らしい連撃だ!だが、まだ俺のスピードについてこれるか!?」
オールマイトが一瞬で間合いを詰め、強烈な右ストレートを放つ。
ポップ兄ちゃんはギリギリで後ろに跳び、即座に呪文を唱えた。
「イオラ!!」
中級の爆発魔法がオールマイトの目前で炸裂。
爆風と煙が視界を覆う。
その隙を突いて、ポップ兄ちゃんは大きく後退しながら次の呪文を準備した。
「……ここまでだな」
ポップ兄ちゃんは両手を前に突き出し、強く唱えた。
「メラゾーマ!!」
今までで最も大きな炎の奔流がオールマイトを直撃した。
オールマイトはそれを両腕で受け止めようとしたが、炎の勢いが強く、わずかに体勢を崩す。
その瞬間、ポップ兄ちゃんは一気に距離を詰め、右手をオールマイトの胸に押し当てた。
「バイキルト!」
力を高めた状態で、さらに呪文を重ねる。
「ヒャダイン!!」
冷気の塊を至近距離で叩き込み、オールマイトの動きを一瞬凍りつかせた。
ポップ兄ちゃんは即座に後ろに跳び、両手を広げて叫んだ。
「イオラ!!」
爆発がオールマイトの体を包み込む。煙が晴れたとき——オールマイトは片膝をつき、両腕を後ろに回された状態で立っていた。ポップ兄ちゃんは息を少し乱しながら、オールマイトの背後に回り込み、両手を軽く押し当てて言った。
「……捕縛、完了だ」
オールマイトはゆっくりと顔を上げ、豪快に笑った。
「わははは!!やられたな!見事だ、ポップ少年!攻撃のタイミング、呪文の組み合わせ……すべて素晴らしい!私の動きを読み、隙を作って一気に仕留めるとは……本当によくやった!」
ポップ兄ちゃんは少し疲れた顔をしながらも、口元を緩めた。
「運が良かっただけだよ。オールマイトが本気で来てたら、おれはもっと早くやられてたさ」
オールマイトは立ち上がり、ポップ兄ちゃんの肩を軽く叩いた。
「謙遜するな。君はちゃんと自分の力で私を捕まえた。これは立派な結果だぞ!」
モニター室では、他の生徒たちが驚きの声を上げていた。
出久(僕)は拳を握りしめ、興奮気味に呟いた。
「ポップ兄ちゃん……やった……!」
相澤先生がモニターを見ながら小さく頷いた。
「……まあ、及第点だな」
オールマイトは笑顔のままポップ兄ちゃんに言った。
「今日はありがとう、ポップ少年。君の成長を間近で見られて、俺も楽しかったぞ。これからも頑張れ!」ポップ兄ちゃんは軽く頭を下げて答えた。
「ああ……おれも、いい経験になったよ。ありがとう、オールマイト」
こうして、ポップ兄ちゃんとオールマイトの特別対戦は、ポップ兄ちゃんの勝利で終了した。
教室に戻った後、ポップ兄ちゃんは少し疲れた顔で僕に言った。
「ふう……疲れたぜ。お前も、ちゃんと見学してたか?」
僕は目を輝かせて頷いた。
「うん! ポップ兄ちゃん、かっこよかったよ!」
ポップ兄ちゃんは照れくさそうに頭を掻きながら、いつもの調子で笑った。
「まあ、おれなりに頑張っただけだ。……次はお前が頑張れよ、出久」
2日目の雄英は、兄弟それぞれが少しずつ自分の力を試す、熱い一日となった。
◆
雄英高校・屋内演習場 模擬戦闘訓練くじ引きの結果、対戦カードが決まった。
飯田天哉 & 爆豪勝己 vs 緑谷出久 & 麗日お茶子
オールマイトが大きな声でルールを再確認した。
「制限時間は15分!ヒーロー側は『核兵器』の回収か敵の捕縛、敵側は時間内の防衛かヒーローの捕縛が勝利条件だ! ……さあ、始め!」
演習場内のアジトに潜入した瞬間、爆豪が即座に突っ込んできた。
「デク!!てめえ、さっさと出てこいよ!!」
爆豪の爆破が壁を吹き飛ばしながら迫る。出久は即座にフルカウルを発動。
5%から一気に8%まで上げて加速し、黒鞭を伸ばして天井に絡ませて回避した。
「かっちゃん……本気だね!」
お茶子が慌てて叫んだ。
「出久くん! 私、重力ゼロにするから!」
お茶子が個性を発動し、出久と自分の体を無重力状態にする。
その隙に飯田天哉がエンジンを全開にして突進してきた。
「正義の名の下に! 突撃します!!」
出久は黒鞭を複数展開して飯田の進路を封じ、浮遊を併用して空中に逃げながら煙幕を展開した。煙が一気に室内を覆う。爆豪が煙の中で苛立った声を上げた。
「煙幕だと!?てめえ、そんな小細工しやがって……!死ねえ!!」
爆豪が爆破を連発しながら煙の中を突っ切ってくる。
出久はフルカウルで高速移動し、黒鞭を鞭のように振るって爆豪の側面を狙った。
「黒鞭!」
黒い鞭が爆豪の腕に絡みつくが、爆豪は即座に爆破で振りほどき、逆に飛びかかってきた。
「遅えよ、デク!!」
二人は空中で激しくぶつかり合う。
爆豪の爆破と、出久の黒鞭+フルカウルの拳が何度も交錯した。
お茶子が下から声を張り上げた。
「出久くん! 右!」
出久は浮遊で体を回転させ、飯田のエンジンキックをかわしながら、煙幕をさらに濃くして視界を奪う。爆豪が完全にキレた。
「この野郎……!ずっと煙幕と鞭で逃げ回りやがって!正面から来いよ、デク!!」
爆豪が大爆発を起こしながら突進。出久は覚悟を決め、フルカウルを10%近くまで上げて真正面から迎え撃った。
「かっちゃん……!僕も……本気だ!!」
黒鞭を右腕に巻きつけ、強化した拳で爆豪の爆破を受け止める。
二人の衝撃が演習場内に響き渡り、壁にヒビが入った。
飯田天哉がエンジンを最大出力にして突っ込んできたが、お茶子が無重力でその動きを封じにかかる。
「飯田くん、ごめんね!」
爆豪と出久は煙の中でガチの殴り合いを続けていた。爆豪が叫ぶ。
「てめえ……昔のクソデクじゃねえな……!」
出久も息を荒げながら答えた。
「かっちゃんも……ずっと強くなってる……!」
その時、制限時間のブザーが鳴った。オールマイトの声が場内に響く。
「時間終了!……核兵器はヒーロー側が回収成功!勝者は緑谷出久・麗日お茶子チーム!!」
煙が晴れると、爆豪は地面に片膝をつき、悔しそうに息を荒げていた。出久も膝に手をつき、息を切らしながら爆豪を見た。
「かっちゃん……ありがとう。本気でぶつかれて……楽しかったよ」
爆豪は立ち上がりながら、歯を食いしばって吐き捨てた。
「……次はぶっ飛ばすからな、デク」
お茶子が駆け寄ってきて、出久の腕を支えた。
「出久くん、大丈夫?二人ともすごかったよ……!」
飯田天哉もエンジンを冷ましながら、感心した様子で言った。
「素晴らしい戦いでした!特に緑谷出久くんの黒鞭と浮遊の組み合わせ……学習になりました!」
ポップ兄ちゃんがモニター室から出てきて、僕の頭を軽く撫でた。
「よくやったな、出久。爆豪とガチでやり合ってたじゃねえか」
出久は疲れながらも、少し嬉しそうに笑った。
「うん……でも、まだまだだね」爆豪は去り際に一瞬だけ振り返り、僕を睨んだまま言った。
「次は絶対に勝つ」
こうして、本格的な模擬戦は、熱く、激しく、終わった。