――――――――相澤消太side――――――――
教員室で不機嫌そうに腕組みをしている俺は、実際に不機嫌だ。
生徒の名簿を再度眺めて、溜息を吐いてしまう。
オールマイトの娘の八木イト、エンデヴァーの息子の轟焦凍、口の悪さを除けば高水準を誇る爆豪勝己、自身をも破壊しかねない緑谷出久、これらの問題児候補に俺は頭を抱えたくなっていたのである。
標準近くにいる大部分の生徒の扱いは単純だ。
だが、そこから高低問わず乖離した外れ値のような奴らは指導が極端に難しくなっていく。演習での組み合わせが危険になるケースが格段に増えるからだ。その心労を思うと今から頭が痛くなってくる。
まあ、雄英の教員の中にはそんなことを気にしない者もいる。
先を見据えればその通りなのだが、生徒は俺らが思っている以上にガキだ。そこは大人が調整をつけてやる必要があるだろう……以前こんなことを香山さん(ミッドナイト)に愚痴ったら、〝あなた本当に教師に向いているわね。推薦した私の目に狂いはなかったわ〟と笑われてしまった。
そんなことをつらつらと考えていた俺に、〝おはよう、相澤君〟と近づいてくる影がある。
見れば、暑苦しい笑みを浮かべたオールマイトだった。
「……おはようございます、オールマイト。そういえば、娘さん、ご入学おめでとうございます」
「ありがとう、さっき制服姿を眺めてきたよ……どうしたんだい? 新年度早々、何か悩み事かな」
俺は思わず、彼を見つめてしまう。
その悩みの何分の一かはオタクの娘さんのせいなんですけどね、とは勿論言わない。
「いや、大丈夫です。新学期が始まって憂鬱になっていただけですよ」
〝そうかい? 娘をよろしく頼むよ〟と笑みを深めるオールマイトに、〝ええ〟と俺は短く応じて、ボサボサ頭を掻きながら席を立った。
冷蔵庫からゼリー飲料を取り出して、吸いながら歩く。
生徒たちが好き勝手しないように、まずは痛い目を見てもらう……最初に釘を差すのが俺のやり方だ。その結果、あなたの娘さんも血祭に上げられることになるかも知れないがね。
――――――――相澤消太side ここまで――――――――
席に荷物を置いて、一くさり互いに自己紹介などをして時間を潰していると、死んだ魚の目をした無精髭が〝席に着け〟と入って来た。いわずもがな、イレイザー・ヘッドこと相澤先生だ。やはり彼が1-A担任なのである。
その相澤先生は、式やガイダンスといった入学初日のあらゆる全て無視して、〝体操着でグラウンドに集合ッ〟と私たちを一喝した。
……そして今に至る。
「「「個性把握テストォ!?」」」
個性を振るってよい体力テストと説明され、ざわめきが起こった。
これまで能力を使わず受けてきた全員にとって、初めての経験になる。良い結果を出そうと浮かれた生徒たちを前に、相澤先生はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「これは能力を測り、ヒーローの適性を見るためのものだ。だから、見込みが無いと俺が判断したヤツは除籍処分とする」
シーーーーーン
途端に訪れた静寂は、洗礼のあまりの重さが皆を絶句させたためだ。
「先生、いくらなんでも――」
「それが雄英の校風だ。除籍が嫌なら、俺に適正なしと判断されないようにするんだな」
飯田君の訴えにも、相澤先生は全く取り合わない。
「八木、今回はお前自身でやれ」
「はい」
入試の時のように人形を代理に立てようとしたら、先手を打って釘を差されてしまう。大人しく降参した私に、先生は近寄って〝糸で他人を手助けするのも無しだ〟と囁いた。そっか……推薦入試の時のことはバレてらぁ。