「私が来た! 今日のヒーロー基礎学は、対人戦闘訓練だ!」
そう高らかに告げたオールマイト。私たちは先生の指示に従って、ヒーローコスチュームを着込んで市街地演習場に集合した。ちなみにヒーロー科のコスチュームは入学前に生徒が要望を出すことで、それに沿った戦闘服を学校に用意してもらえるのだ。
自身のコスと初めてのご対面ということで、浮足立った高揚感がクラスを包んでいる。なぜならそれは自身が目指したい未来の姿、そしてかくあるべしと表明する己の信条だからだ。
夢が形になったら、それは互いに品評会だって始まってしまうだろう……だが私のコスは、本人の希望とはかけ離れていたのである。
ヴィジュアルは勿論重要なので、私も要望書を出そうとしたのだ。
〝最強で最凶で最恐のヴィランに相応しく、見る者全ての怖気を誘うような――〟と書いたところで、それを眺めていた燈矢君にクシャクシャに丸めて捨てられてしまった。
ぶすっとしながら睨む私を放置したまま、私の要望書は燈矢君とトガちゃんの手によって勝手に作られてしまったのである。
はたして、その被害者が身に纏っているのは黒を基調としたゴスロリ然とした衣装。
本当にこれが戦闘服足り得るのか疑わしいのだが、トガちゃんからは〝イトちゃん、いい感じです〟と笑顔を送られ、目を輝かせたヤオモモちゃんには〝八木さん、本当に可愛いらしいですわ。また後でギュッとさせてください〟と謎の申し出を告げられる。
明らかに私が欲するカリスマを損なっているそれは、操る人形の意匠との親和性だけはあるかも知れない。だって私はドールにフリフリの服を着せているのだから。
ちなみに、発目さんのサポートアイテムは昨日の今日で、まだ間に合っていない。だから、とりあえずOKされている武器をドールに持たせての参加だ。
オールマイトは浮かれる生徒らを制して、対人戦闘訓練の概要を語りだす。
要するに、爆弾を有するヴィランにヒーローが対峙したシチュエーションだ。私たちはヒーロー側とヴィラン側に分かれ、ヒーローはヴィランを拘束あるいは爆弾を抑えたら勝ち、そしてヴィランはヒーローを撃退あるいは制限時間まで爆弾を守ったら勝ち、ということだ……俊典さん、ちゃんと先生出来てるじゃない(後方腕組みの私)。
「オールマイト先生、周囲の避難状況はどうでしょうか?」
ルール説明後にすかさず挙手して訊ねる飯田君。先の相澤先生の除籍指導がちゃんと効いているようだ。そんな彼に、オールマイトは白い歯を見せて頷いた。
「ナイスかつ必要な確認だ、飯田少年! 近隣住民の避難は完了していると考えていいぞ」
そしてチーム分けには、くじ引きが採用されていた。
誰とでも協力できて、誰が相手でも対処する、というのが今回の肝。だからこそランダム性を持たせているようだ。
ゴソゴソと箱からくじを引いて、対戦表中の番号と照らし合わせた。
その結果に、私の口角がゆっくりと持ち上がる。
まず第一戦、
ヒーローサイドは障子目蔵(個性:複製腕)と轟焦凍(個性:半冷半燃)
ヴィランサイドは葉隠透(個性:透明)と八木イト(個性:糸)
悪役への抜擢が私の胸を高鳴らせていた。
くくく、ついにこの時がきた! 相手がエンデヴァーの息子だからって関係ないわ。高らかにヴィランを賛美し、咲き誇るは惡の華よ。さて、ヴィランらしく、ヒーローたちを血祭に上げましょう!