爆豪君が見せる涙、その煌めきに思わず口元が綻んでしまう。
いやぁ、男の子の青春って感じだね! これでしか摂取出来ない栄養がある、と言われているのも分かる気がするよ。
これはお姉さんとしても、目指すべきヴィランとしてもちょっかいをかけざるを得ない。そう断じた私は、彼を自身のホームにご招待することにしたのである。
――――――――爆豪勝己side――――――――
八木イトに半ば強引に連れてこられたのは、マイトタワーの上層フロア。
〝いいから、稽古をつけてあげるわ〟と導く彼女に、俺は怪訝な目を向ける。
「おい、勝手に入っていいのかよ」
「許可はもらってるから、大丈夫よ」
そう嘯いて、アイツは悪びれる様子もなく訓練場の扉をくぐっちまった。
そしてその先にはもう一人、クラスメイトの姿があった。
口でか(トガヒミコ)が俺を認めて、〝あれ、イトちゃん。爆豪君連れてきたんです?〟と首を傾げる。
「ええ、落ちてたから拾ってきたの」
「ざけんなぁ! 人を落とし物みたいに言うんじゃねぇ!」
「ねえ、トガちゃん。ちょっと爆豪君の体術見て上げて」
だが八木は食って掛かった俺を無視して、話を進めていきやがる。
〝聞けやぁぁぁぁ!〟と怒鳴る俺、その正面に〝いいですよー〟とトガが立った。八木も八木なら、トガもトガでこの俺を完全にスルーときた……こいつらぁ!
「じゃあ、とりあえずは個性なし。どこからでも掛かって来て下さい」
「あ?」
睨みつける俺の眼光にも、トガは自然体を崩さねぇ。
眼前の女は、俺を相手に体術指導する気満々だ。そもそもそんな無謀が罷り通るはずがねぇ、なぜなら筋力は俺の方が圧倒的に優位だからだ。トガを一発でノックアウトする未来しか見えなかった。
そんな俺の内心を見透かしてか、〝そんなんだと視線で読めちゃいますよ〟とトガは薄く笑う。
「一点を注視しないで、相手の全身を視野に入れます。そして初動を察知して最小の動きで避けるんです」
「うるせぇ!」
偉そうに高説を垂れるトガに殴りかかる俺。その俺の拳を、奴は分かっていたかのように危なげなく躱す。
「もしくは引いて、打ち終わりを押さえるか――」
踏み込みながら、もう片方の拳でトガを狙う。その打撃に対してトガはひらりと一歩引き、あろうことか伸びきった俺の拳にちょんッと人差し指を当てたのである。
「――あるいは打ち始めを制するかですね」
体を捻りながら、俺は矢継ぎ早に回し蹴りをお見舞いしようとした。足を振り上げるために重心が移動し始めた時、トガは俺の腿に軽く自身の足を当てたのである。
そんな簡単なことで蹴りが出せずに、俺はたたらを踏んでしまう。
「――そして攻防一体を意識します」
体勢を崩された俺は、トガの足払いで盛大にひっくり返って床に叩きつけられた。
大の字になった俺を〝大丈夫です?〟とトガが覗き込む。
クハハッハッハッ、トガとの力の差にすら笑っちまう。
俺は強さとは個性のことだとばっかり思ってた。でもそれは正しくねぇ、強さは元の身体能力とそれに上乗せされた個性のことだ。だから個性がいくらすごくても、身体能力がないと上乗せできねぇ。そして身体能力は何も筋力だけじゃねえ、そこには体裁きや動きを察知する技術も含まれるんだ。
急に歯を剥いて笑い出した俺に、トガは〝えっと……ホントに大丈夫?〟と眉をひそめる。
大丈夫か?……大丈夫に決まってんだろ。俺はもう大丈夫だ!
だって、俺はまだそんだけ強くなれるってことじゃねぇか。轟や八木だって追い越せるってことじゃねぇか。意地だけで立てた誓い、それに手を伸ばす方法を見つけたんだ。なら、やってやらぁ!
――――――――爆豪勝己sideここまで――――――――