――――――――轟燈矢side――――――――
「データをとらせてくれて助かったよ、切島君」
「いえいえ、こんなことならいくらでも!」
人好きする笑みとともに、力こぶを作って応じたのは切島鋭児郎君だ。
弟に級友である切島君を紹介してもらった俺は、彼に研究の協力を仰いだのだ。依頼を二つ返事で快諾した彼にはマイトタワーに来てもらい、その個性を披露してもらっていたわけである。
そう、ここはマイトタワーの一画。
なんとイトちゃんが交渉してくれて、ありがたいことに俺はここを自分の城とばかりに研究室として使わせてもらっているのだ。狭い大学の部屋には収まりきらない機材を幾つか置くことが出来て、大変助かっている。
無事データ採取が終わり、俺は世間話を切島君に振ってみた。
「どうだい学校は? 焦凍は口下手だから、あんまりそこらへん話してくれなくてね」
「雄英はやっぱレベル高いッスね、ついてくので一杯一杯ですよ。そこらへん轟……ああ、焦凍君はすげぇ。大抵のことをアイツはできちまうんです」
焦凍自身はそんなに器用な奴じゃない。それは子煩悩な父親の教育の賜物と知っているからこそ、聞いていた俺は微笑んでしまう。
「でもこの間、市街地での戦闘訓練があったんですけど、焦凍君の悔しそうな顔は初めて見ました。いつもは何でもできて当たり前みたいな感じなんですけど、その時は相手に上手くしてやられてて」
「焦凍には良い経験になったね。ちなみに弟に一杯食わせた生徒ってどんな子なんだい?」
「小っちぇえ女の子です。糸で相手をグルグル巻きにするし、人形を動かして――」
思い当たる人物が急速に浮上してくる中、切島君が〝あ、名前は八木イトです〟と決定打を打った。
はい、我らが姫のご登場というわけである。
そして、件の姫は今ここの訓練場に君臨しているはずだ。
時計を確認して、俺は切島君に告げる。
「そういえば、ちょうどやってる時間だな。良かったら訓練場を見に行かないかい?」
――――――――轟燈矢sideここまで――――――――
――――――――切島鋭児郎side――――――――
燈矢さんの後に続いて入った訓練場、そこで俺が目にしたのは。
束ねた糸を鞭のように音高く振るう八木と、それに晒されながらも回避しているトガと爆豪だった。
俺らに気づいた八木が、振り返って手を上げる。
だが彼女が操るいくつもの鞭は残像を刻みながら空中を縦横無尽に走り、鞭頭が空気を裂いて、パンパンと爆竹が弾けるかのような炸裂音を立て続けている。
……何だ、こりゃ!?
その目にも留まらない鞭の猛攻を、二人は躱し続けているのである。
見切ったように避けるトガに対して、爆豪は手に小火を生んで、その推進力で必死に食らいついていく。
「遅い!」
八木の一喝と共に、鞭の一つが爆豪に足に巻き付いてその体を放り投げた。
勢いよく床に転がる爆豪に、俺は〝おい、大丈夫かよ〟と駆け寄る。
「うるせぇ、ほっとけ!!」
起き上がったアイツは、こっちには目もくれない。ただ八木だけ睨んで〝もう一度だぁ!〟と唸りを上げる走鞭の綾へと飛び込んでいくのである。
――――――――切島鋭児郎sideここまで――――――――