――――――――爆豪勝己side――――――――
13号先生と睨み合っている、黒いモヤモヤのヴィラン。アイツが移動や輸送を受け持つ敵の中核だ。
まずは後衛を倒すのが闘いの基本、狙うは奇襲だ!
疾走する俺の両手でパチパチと火花が爆ぜる。
高速で横からの体当たりを狙った俺は黒い煙に巻かれ、気づけばワープによって標的を通過させられていた……クソがッ、触れられねぇ!!
次いで突っ込んでいく切島の前にも黒いモヤが瞬く間に結ばれ、アイツの姿が覆われる。それと同時に、俺の正面から切島が勢いそのまま殴りかかってきたのであった。
「悪い!」
それを躱して、俺は〝はッ、当たるかッ!〟と鼻を鳴らす。
「良かった……君たちが無事で」
俺らと追い付いてきた麗日に、13号先生は欠けたヘルメットの隙間から笑みを覗かせた。どうやら、先生の方も相手にしてやられたらしい。
「はッ、あんな雑魚どもに俺らが負けるわけがねぇ!」
自信たっぷりに吼える俺に、切島と麗日も頷いた。
称賛するかのように手を叩く音が響く。
その出どころは、未だ余裕を崩さない黒いモヤ野郎だ。
「素晴らしい! 生徒とはいえ流石はヒーローの卵たちです。有象無象をけしかけたところで、脅かすことすらできませんでしたか。なら――」
「――私が手ずから殺すしかありません」
黒煙越しにこちらを睥睨する深紅の眼光が細まった。
ヴィランが殺意を滲ませながら両手を広げると、肌を走る悪寒に俺は思わず身構えてしまう。
果たして左右の虚空に結ばれた黒いモヤ、そこから唐突に無人の自動車が現れる。
それが俺らに向かって突っ込んできたのである。
〝なッ!?〟と驚愕に目を見開いてしまう。
鉄の塊が持つ質量は、当たれば怪我だけで済むはずがない。
だが、高速で迫っていた車体は俺らの元に届かなかった。
眼の前で動きを止めた自動車は、急速に引きのばされながら塵と化してゆく。先生が俺らを守ろうと、二台の車をそれぞれ左右の手で吸引しているのだ。
――だがその時を狙い澄ましたかのように、先生の上に生じたワープゲートから自販機がいくつも落とされたのである。
そうだ、先生は今吸引中でまともに避けられないのだ。
俺らが何とかするしかねぇ、でも俺と切島の位置は遠い……クソッ、どうする。
逡巡する俺の代わりに飛び出したのは、先生の近くにいた麗日だ。
「おりゃあぁぁぁぁああ!!」
麗日は柳眉を逆立てて、先生へ衝突直前の自販機に間一髪タッチした。すると落下していたものが、ふわりと浮き上がる。彼女の手によって、次々と触れられた自販機は思い思いの方向に飛んでいく。
でかした! 丸顔!
奇しくもそれは攻防を兼ねた一手となる。俺は宙を流れる自販機を死角にして、ヴィランの隙だらけの背に狙いを定めた。
「死ねやぁぁぁぁあああああ!!」
だが、黒いモヤ野郎は一瞥すらせずに、〝ふふ〟と小さく笑いを漏らす。
それすらも戦巧者の誘いだったのだ。またも黒煙に巻かれて俺は移動させられちまう……クソがッ!
その怒りを映すように爆破寸前の拳が盛大に火花を散らしている。
そして、それが切島を前に振り下ろされていた……やべぇ、このままじゃデカい爆破攻撃が当たっちまう。
だがアイツが見せたのは信頼の笑み、その目が全力で来いって告げているのである。
はは、かませってか……なら、行くぜぇぇえ!!
小火を散らしながら、拳がはしる。
閃光と共に耳を弄する爆発が巻き起こった。
「おバカですね。お友達を攻撃するなんて」
「……バカはてめぇだ!!」
「ッ⁉」
硬化した切島の体を足場に反転し爆発で急加速した俺が、鼻で嗤う奴の眼前に迫っていたのである。その予想外の反撃が、黒煙の守りを穿った。
はッ、俺らを甘く見たつけを払わせてやったわけだ。
驚愕に体を硬直させたモヤ野郎の胸倉を掴んで、俺は強引に引き倒した。そして煙に覆われた顔に、〝動くんじゃねえ。動くと爆破してぶっ殺す!〟と手をかざす。
「おいおい、お前がヴィランみてぇなヤツだな」
はれゆく爆煙の中から、切島が煤だらけの顔を覗かせて苦笑する。
その時、轟音を上げて天井の一部が崩壊した。
そして覗いた空へと紅炎が勢いよく立ち上がる。
デクと轟か……やるじゃねぇか。これは外部に向かって打ち上げた知らせだ。なら、もうすぐ先生たち駆けつけてくるに違いない。
――――――――爆豪勝己sideここまで――――――――