――――――――トガヒミコside――――――――
ハイツアライアンス、私たちA組が暮らすことになった寮だ。
右側が女子棟、左が男子棟で、一階の共同スペースを除いて二階からがそれぞれの自室となる。
立派で真新しい建物の前で、芦戸ちゃんが高らかに声を上げながら両手を広げる。
「さあ、始まりました第一回A組お部屋選手権! 最も個性的なお部屋は誰のだ!! おまえら、他人の部屋を覗きたいか?」
「「「おーッ!!」」」
叫ぶ彼女に続いて私と透ちゃん、そしてお茶子ちゃんが嬉々として拳を突き上げる。
せっかく全員が入寮したのであれば、それぞれのお部屋を見てみたい!
そんな昂る好奇心により爆誕したのが、姦しい娘たちによる突発的なお部屋訪問。それは第一回お部屋選手権と称され、誠に勝手ながら我々審査員によって実行に移されたのであった。
コンコンと扉を勢いよくノックすると、〝はーい〟という声とともに家主が現れる。
「よっす、緑谷!」
「え、芦戸さんたち、どうしたの?」
「さあ、登場しました。A組お部屋選手権、トップバッターは緑谷出久選手だー!」
〝え、え!? 何?〟と狼狽する緑谷君を、私たちはニヤリと見返した。
「それでは、お部屋の拝見です!」
「それ、突撃~」「ごめんね、デク君」
家主を押しのけて部屋に踏み込んだ調査員一行、私たちを出迎えたのはオールマイト一色に染められた空間だった。壁を埋めるオールマイトポスター、棚と机上を飾る彼のブロマイドとフィギュアたち。
「わぉ、オールマイトだらけのオタク部屋や!」
「すっごい、緑谷君っぽいです!」
その熱量に圧倒されて感嘆の声を上げる私たちに、〝……憧れだから〟と家主は気恥ずかしそうに頭を掻いた。
「これって、違いあるの?」
フィギュアを眺めて芦戸ちゃんが呟くと、〝もちろん! シルバーエイジとゴールデンエイジ、それぞれの時代でもマイナーチェンジしていくコスチュームごとに並んでるんだよ!〟とオタク君が語りだす。
まさかここまで個性的だと訪問したこちらは本当に楽しいし、家主の人となりも見えてくる。
そして、しばし眺めまわして堪能した私たちは次なる標的へと向かうのだ。
「よし、次のお部屋にレッツ・ゴー!」
「「「おーッ!!」」」
そこに緑谷君も、〝僕もついて行っていいかな? 興味あるからさ〟と続く。
× × ×
「ごめんくださーい」
「何かしら?」
私たちに呼ばれて、霧吹きを手に梅雨ちゃんがぬっと顔を出した。
「お部屋の拝見に来ました。梅雨ちゃんのお部屋見せてもらっていい?」
〝ええ、いいわよ〟と彼女は私たちを涼しい顔で迎え入れた。
目を惹くのは鎮座する大きなガラス張りの水槽、そしてその中を優雅に泳ぐ色とりどりの観賞魚たち。
「わぁ! でっかい水槽です!」
「アクアリウムってやつだね!」
見慣れないネオン色のお魚を目で追いながら、私たちは〝綺麗ッ!〟と心を躍らせる。
「観葉植物もいっぱいあるね。あ、これ知ってる」
「それはモンテスラね。今、お水をあげていたのよ」
指をさす緑谷君に、シュッシュッと梅雨ちゃんが霧吹きで葉に水をかけた。
「ケロケロ、それで急にどうしたの?」
目をパチクリさせる蛙の少女に、お茶子ちゃんが〝んふふ~、実はね……〟と事情を話す。すると彼女もまた、〝面白そうね、私も行くわ〟と旅路に加わったのである。
こうして我々調査隊一行は、紆余曲折を経ながら数々の部屋部屋を巡っていくのだ。
それらをかいつまんで紹介すると――――常闇君の黒尽くめの中二病部屋とやたらと眩しい青山君のピカピカ部屋に私たちは眉をひそめ、ヤオモモちゃんの豪華ベッドと飯田君の無限眼鏡、切島君の暑苦しい漢気グッズにツッコミを入れ、焦凍君の和風部屋と瀬呂君のエキゾチックルームに手を叩き、そして峰田君部屋をスルーしてきたのである。
まるでどこかの冒険譚のように、出会った人(クラスメイト)を仲間へと変えながら、次なる一室を目指すのである。
―――――――トガヒミコsideここまで――――――――