私、ヴィランを目指します!   作:Sano / セイノ

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じょうずな家主のつかまえ方2

――――――――トガヒミコside――――――――

 

「次はここだね!」

「ふふ、私の部屋ですね」

芦戸ちゃんの前に進み出て、私はドアノブに手を掛ける。

いざお部屋を見せるとなると、少し気恥ずかしい。〝ヒミコちゃん、可愛いの好きだからクラスで一番女子っぽいかもよ〟とお茶子ちゃんたちが囁き合っているも一因だ。

 

 

大丈夫、皆に見られて困るようなものは無いはず……あッ!

ふいに、冷凍血液を解凍のためにテーブル上に出しっぱなしにしていたのを見つけてしまう。しまった……部屋に持ち込んだ冷凍保管庫から出しておいたのをすっかり忘れていた。

 

 

私にとっては惹きつけられる血も、人によっては気持ちの良い対象ではないのだ。

その当たり前の事実に気づかなかったことが、私を孤独にしたのである。

――ど、どうしよ、また友達に嫌われちゃったら。

頭が真っ白になっている私の横から、〝では、拝見しまーす〟と皆がぞろぞろと部屋に入って来てしまった。

 

 

「「「う、うわぁぁ、可愛いー!!!」」」

「ほぉぉ……家具にはレースやフリルが掛けられ、パステル調でまとめられてる。そして所々にフワフワのぬいぐるみがアクセントを添えている部屋は間違いなく、女子部屋コーディネートの達人だね」

お茶子ちゃん達が溢れ出る心の叫びに体を震わせる中、芦戸ちゃんが唸りながら解説している。

 

 

「はぁ、はぁ、女のいい匂いがするぜぇ」

深呼吸しながらうっとりと涎を垂らす峰田君を、梅雨ちゃんがジロリと睨んだ。そして彼女はこちらを向いて首を傾げる

「でも、本当に爽やかな甘い香りがするわ。これは何?」

〝あぁ、これはザクロのルームフレグランスです〟と私は内心の怯えを隠しながら応じた。

 

 

「これって血?」

緑谷君が訝しげに指さしたのは血で満たされたいくつもの採血管だ。普通の人間には似つかわしくないそれに、私は凍り付いてしまう。

……うぅ、やっぱり見つかっちゃった。

 

 

「そ、それは、採血した血を錠剤にしようとしていたんですよ。私にとって血をもらえることって大事ですから」

「むッ、そうなのかい。トガ君、だったらいつでも言ってくれ。俺で良ければ協力できるぞ」

恐る恐る言い訳をするかのような私に、飯田君がメガネを光らせた。すると皆も当然のように、〝なんだ、俺(私)もいいよー〟と続くのだ。

 

 

たったそれだけのやり取りで、凍えていた私は体温を取り戻す。

湧き出る安心感と歓喜に、自然と涙が堰を切って溢れ出てしまった。頬を滴り垂れる雫を慌てて拭う私に、皆が目を丸くする。

 

 

「だ、大丈夫ッ!?」

「認めてくれる人たちばっかりで……なんか嬉しくなっちゃって。えへへ、ありがとうございます」

微笑む私に、〝あたぼうよ!〟とお茶子ちゃん達も笑い返してくれる。あぁ、良かった。私の個性を理解してくれる人たちに囲まれて……

 

 

そして何事も無かったからこそ、早くも透ちゃんが真面目な飯田君をからかい始めていた。

「あー、委員長なのに女の子を泣かしたー。いーけないんだー」

「ち、ちがうぞ、葉隠君!」

 

―――――――トガヒミコsideここまで――――――――

 

 

 

――――――――障子目蔵side――――――――

 

トガヒミコ、彼女の涙を見ながら俺は口元のマスクに触れる。

これは田舎の異形差別ゆえに負わされた傷を隠すためのものだ。きっと彼女もまた、傷つけられ排斥された痛みを抱えながら生きてきたのだろう。

 

 

そう思うと、トガにはどこか親近感を抱いてしまう。

片や都会の可愛らしい女の子、そして片や自身は隔絶した農村生まれの異形。だが、理解されないがために藻掻いてきた一点において、俺たちは確かに似ていた。

 

 

皆に囲まれて笑みを浮かべるトガに、俺は密かに拳を握る。

自身が田舎に作り出したい光景は、きっとこれだ。だからこそ俺も、〝トガ、俺の血も必要なら言ってくれ〟と声を上げたのだった。

 

――――――――障子目蔵sideここまで――――――――

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