――――――――麗日お茶子side――――――――
「昔からの友達ですけど、イトちゃんの自室って正直あんまり想像つきません」
「そーなんや。ドールやヒーローコスの感じだと、メルヘンっぽい気がするけど……」
首を傾げるヒミコちゃんに応じる私に、透ちゃんも〝そうそう〟と相槌を打つ。
「イトちゃんは服とかあんまり頓着しないので、ロリィタ系のは私がイトちゃんに着せたいって思ったのを選んでます。だからイトちゃんのセンスじゃないのです」
そう言われると分からなくなってしまう。〝でもよく本読んでるイメージがあるよね〟と芦戸ちゃんが言うと、〝あぁ、本がいっぱいの部屋はありそう〟とヒミコちゃんが手を打った。
その件の人物が住まう部屋の前まで来ると、音もなく扉が開かれる。
見ればドールが迎え入れてくれているのである。どうやら私たちの来訪を察知していたようだ。
そして室内にお邪魔して見回せば……本、本、本! 本当に本の部屋だ!!
壁際を天井まで埋め尽くす無数の本は、さながら図書館だ。未だ段ボールに入れられたままの本を、人形たちがせっせと本棚に収めている最中であった。
開口一番〝うげぇ、本ばっかだ〟と芦度ちゃんと上鳴君が顔を顰める。
そして本の国の主は物語から抜け出したかのような格好で、部屋の中央で肘を突きながら読んでいた本から顔を上げた。
「みんなして何か用かしら?」
お部屋選手権の趣旨を聞くと、イトちゃんがニヤリと愉快そうに口の端を吊り上げる。
「そう、面白そうね。私の部屋は好きなだけ見ればいいわ、といっても本しかないんだけど」
「むッ、この本は……八木君、もしよかったら借りてもいいだろうか?」
分厚い本を手に取る飯田君に、イトちゃんは首肯を返す。
「あの、八木さん。それとは別に、今日も大変お可愛いらしいのでギュッとしてもいいですか?」
気恥ずかしそうなヤオモモちゃんの申し出に、〝カァイイですよね! あの魔法学校コーデをおススメしたのは私です!〟とヒミコちゃんが胸を張る。
すると某ホグワーツ生のようなイトちゃんは、渋々といった様子でヤオモモちゃんに頭を撫でられながら眉間にしわを寄せているのだった。
――――――――麗日お茶子sideここまで――――――――
――――――――緑谷出久side――――――――
いつものようにメモを取りながら、皆の後について僕は歩く。
クラスの人たちは皆すごい人たちだ。だからこそ、そんな皆の考え方や振舞いも僕はノートにまとめるようにしているのだった。
そして今は、八木さんの追記事項を書いていたのだ。あれだけの読書量があるからこそ、彼女は先生からの難解な問にも一味違った回答をさらりと提示できるのだろう。
「はッ、下らねぇ!」
視線の先で、かっちゃんが不機嫌そうにドア閉めようとする。
次はかっちゃんの部屋となったわけだけど、やっぱり彼はこういうのには参加しないだろう。
だけど、彼に待ったを掛ける人物がいた。
「爆豪君、何事も経験。こういうものは参加してみるものよ」
「あ?」
微笑む八木さんにかっちゃんが振り返った。
「それに部屋の見せあいは公平。あなたが興味あるなら、後で私たちの部屋も見に来ればいいわ」
「……ふん、なら入れ」
鼻を鳴らしてみんなを促すかっちゃんに、僕は目を丸くしてしまう。
――あれ、思ってた反応と違う! かっちゃん研究ノートをこれまで作ってきたけど、この時は彼なら〝そんなん知るか! 帰れぇ!〟と目を三角形にするところだ。
どうしたんだろう、最近心境の変化でもあったんだろうか。
そんな疑問を抱きながら、室内に足を踏み入れると数々の山の写真が目に入る。壁には登山のリュックや折りたたんだストック、帽子などの登山ギアがきれいに掛けられている。
そうそう、山登りはかっちゃんの趣味だ。
僕も小さい頃は爆豪家の山登りに連れて行ってもらったこともある。かっちゃんのお父さんはカメラが好きで、登った山の景色を撮っていたっけ。きっとその写真が飾られているのかな。
それを見て、女の子達は〝もっと世紀末みたいなのを予想してたのに……〟〝思ったより普通の部屋や〟とちょっと失礼な感想を漏らしていた。
「お、フィルムカメラじゃん。爆豪、アナログで写真とか撮るんだな」
切島君が興味深そう机上のカメラを眺めると、〝学生生活の写真を見せろって、持たされたんだよ〟とかっちゃんは面倒そうに頭を掻いた。
――――――――緑谷出久sideここまで――――――――