私、ヴィランを目指します!   作:Sano / セイノ

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障害物競走でつかまえて1(雄英体育祭 第一種目)

「さあ、今年の第一種目は……コレよ! 障害物競争!!」

高らかに告げたミッドナイト先生は、〝ルールは簡単、コースを守ってゴールする順位を競うのよ。コースアウト以外は何をしたって構わないわ〟と不敵に笑う。

 

 

そして先生は体操着姿の参加生徒たちを、スタートラインへと導いてく。

体操着姿の上に、サポートアイテムと一目で分かる物を装備した生徒もそれなりにいる。

かくいう私も、発目さん謹製のアイテムを大量にドールに搭載しているのだ。可愛らしかったドールは今や纏った武装により、ガンダムみたいな姿となって私の周りに浮いている。

 

 

アイテムのアピールを発目さんに約束した私は、少なくとも数個はドールに搭載したいと考えた。だからあえて、却下されることを前提に大量のサポートアイテムの申請したのだ。だが意外や意外、それが全部通ってしまったのである。

 

 

たまたま隣にいた轟君が私に鋭い目を向けた。

「八木、負けねぇぞ」

その決意の籠った視線に、私の方も〝こっちだって〟と応じて笑う。

 

 

「お、熱くて良いッスね! 轟さん、自分も今度は負けませんッス!」

バチバチと視線で火花を散らしていた私たちに、臆さず割って入ってきたのは何と夜嵐イナサだ。

原作では他校の実力者として登場する彼は、雄英を蹴って士傑へと入学したのである。その理由は、憧れのヒーロー像を壊したエンデヴァーやその息子である轟君を嫌ったからだ。

 

 

――でも、そうか。

この世界線ではエンデヴァーは冷さんの尻に敷かれ、結果として心の余裕を取り戻している気の良いオジサンだ。そうなれば、夜嵐君がエンデヴァーを忌み嫌う理由もないのだ。

まさか轟家の不和が解消された影響が、こんなところにも及んでいるなんて。

 

 

「え、エンデヴァーも見に来てるんすか?」

「あぁ。家族総出で来てくれてる」

少し恥ずかしそうに頬を掻く轟君。だが夜嵐君は、そんなことなどお構いなしにテンションを上げて昂っていた。

「自分、超頑張るッス!!」

 

 

どうやら夜嵐君は無事エンデヴァーへ憧れを抱き続け、轟君との仲も良好らしい。

そんなことを考えていたら、ふいにミッドナイト先生の鞭がピシャンッと鋭い音を立てた。注目を集めた先生がスタートラインを指し示す。

「じゃあ、位置につきなさいッ!」

 

 

さあ、もうすぐスタートだ。

A組のみんなは轟君の範囲凍結を警戒している……それはそうだろう、ことレースにおいては攻防一体の嫌らしい技だ。残念ながら注意していなければ、この初見殺しは回避できない。

そのためB組や普通科生徒たちには、初っ端から厳しいところがあるだろう。

 

 

「……スタートッ!!!!」

声高く宣言された合図に、全員が我先にと飛び出していこうとする。

そして、それを阻止するように冷ややかな冷気が走り抜けた。瞬時に大地を凍結させながら広がっていく氷塊に、多くの生徒達は目を瞠ったまま回避すらできない。

 

 

だが、これには攻略法がある。

氷に囚われる前に上へと跳んで、氷撃をやり過ごせば良いのである。糸で自身を浮かせた私は、周囲に視線を走らせた。

近場ではヤオモモちゃんが長い棒を生成して棒高跳びの要領で跳び上がり、梅雨ちゃんは脚力で以てジャンプしている。芦戸ちゃんは最小限に回避し、滑走し始めていた。そして少し離れたところでは、爆豪君が爆破の勢いで跳び、飯田君がエンジンを吹かして跳躍しているのが見える。

 

 

だがここで、想定外のことが起きる。

ごうと夜嵐君を中心に吹き荒れる突風。逆巻く風が私たちを大地へと叩き落とし、追いすがる者たちを煽って大きく体制を崩させる。

本来であれば張った糸で抵抗するのだが、糸自体が断ち切られた私も墜落してしまう。

 

 

まるでタイミングを見計らったように、先行する轟君が振り向いた。そして腕を振るって、氷結の第二撃を放ってきたのである。

「1-A轟、1-B夜嵐、スタートダッシュと同時に妨害だッ!! こいつぁシヴィー!!」

悪辣な連携攻撃に、マイク先生が実況席から声を響かせた。

 

 

流石にこれを回避しきる術は無い、私は咄嗟に糸で壁を織って自身への直撃を避ける。

だけど落とされたドールの方は完全に氷に閉ざされてしまっていた。

ああ、もうッ!

当たり前だけど、糸が切られてしまった人形の装備機構を発動することはできない。ということは、まずは人形たちを氷から掘り出さなければいけないのである。

 

 

ここまでが開始直後の、一瞬の出来事。

 

 

追いかけたい気持ちを押し殺し、私は氷中からドールの回収に取り掛かる。

体内に糸を生成し、筋繊維に絡ませて筋力を強化。そして手の外側には硬糸を纏わせて氷を割り砕いてゆく。

そんな私の横を、氷の桎梏から抜け出した面々が続々と通過していった。

 

 

私が大いに遅れて人形たちを回収し終えた時には、マイク先生が〝手強いぜぇ!! ロボ・インフェルノ!!〟と愉快そうに叫んでいる。

ロボ・インフェルノ、最初の障害物だ。入試で使われた0pエネミーの大きなロボが、軍団を為して再登場してくるのである。

どうやら生徒達とロボが本格的にぶつかり始めた、ということだろう。

 

 

よし、じゃあ私も行くか……『エンジン』始動!

私の背、肩、脚に人形たちが取りつき、スラスターが唸りを上げる。

さあ、刮目しなさい。これから始まるのは華麗なる逆転劇よ。最高速度でぶち抜いてあげるわ!

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