私、ヴィランを目指します!   作:Sano / セイノ

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そしてハチマキもなくなった1(雄英体育祭 第二種目)

――――――――飯田天晴side――――――――

 

「助けてくれてありがとございます」

小柄な少女がぺこりと頭を下げると、豊かな髪がふわりと踊って肩を流れた。

〝雄英体育祭でのサポートアイテム暴走は良くあることだよ。とはいえ、ここまで大ごとになるのは珍しいけどね〟とヘルメットを外して俺も笑い返す。

 

 

眼前の女の子は天哉のクラスメイト、八木イトさんだ。

よく弟の話にも出てくる自信家の少女。何事にも物怖じしないのは、実力に裏付けられてのことだ。天哉をして卓越した個性操作を誇る少女と認める相手、勝ちたいと目標にできるライバルの一人だと言う。

 

 

自慢じゃないが、俺の弟はすごい奴だ。

中学生にして早くも飯田家相伝のレシプロバーストをものにした天才。そんな弟と鎬を削り合ってくれる仲間がどれほどいるかと不安に思っていたが、それは完全なる杞憂だった。なかなか個性的な級友たちに囲まれながら、切磋琢磨しているようだ。

 

 

「学校での弟はどうだい? すこし真面目過ぎるところがあるんだけど」

「飯田君……いえ、天哉君はあの真面目さが良いところです。彼が委員長として、あの一癖も二癖もあるようなクラスメイト達を気に掛けてテキパキ指示を出すのは、なかなか真似できないところです。まあ、本人はもう少し柔軟にできたらと思っているみたいですけど、そういう真っ直ぐ人柄が皆から信頼されていますよ」

なかなか嬉しいことを言ってくれる。

それに天哉のことをしっかりと見てくれているのが分かるコメントだ。

 

 

「そう言えば、お兄さんは天哉君よりもずっと速いですね」

〝驚きました〟と言う少女に俺は頷いた。

「まだまだ天哉には負けないよ。これでもターボヒーローって名乗ってるんだ。地上を走るスピードなら誰にも負けないよ」

「ひょっとして、お兄さんが走ったら雄英もすぐですか?」

「ああ、もちろんさ」

 

 

ぽんと手を叩いて、少女の唇が柔らかな弧を描いた。

「良かった。雄英にどうやって戻るか困ってたんです」

……なるほど、物おじせずにちゃっかりしてる子だな。

〝ははは、任せな〟と俺は笑い返したのである。

 

 

 

×    ×    ×

 

 

 

八木さんを送り届けた俺に、走り寄る影がある。

面食らったような顔で声を掛けてきたのは、弟の天哉だ

「兄さん、今日は見回りがあったんじゃないんですか?」

 

 

弟の言う通り、本来であれば保須市での警邏があった。

だが、高速道路で八木さんを回収した後のことだ。サイドキック達には〝俺らが見回っておきますからッ!〟と家族を応援してくるように半ば強引に送り出され、道中にはその少女にも弟の活躍をちゃんと見ておくように勧められたというわけだ。

 

 

「そうなんだけどな。でも天哉を応援しようと思って、見ていくことにしたよ。第二種目も頑張れよ!」

表情を緩めて天哉の肩を叩く俺。それに弟は〝はいッ!〟とやる気満々の返事を返すのだった。

 

――――――――飯田天晴sideここまで――――――――

 

 

 

「すみませんッ!」

「これはしょうがないわよ」

〝極寒環境までも含めて対策しておくべきでした〟と申し訳なさそうな顔で再び謝ろうとする発目さんを、私は手で制す。

 

 

どうやらスラスターのトラブルの原因は急激な体積変化にあったようだ。

轟君の氷結で極寒の温度まで急冷されたパーツは、その後私がエンジンを全開に吹かして急速に温められたわけである。部品ごとの温度による体積変化がわずかに異なるのが、結果として制御パーツの破損へとつながったらしい。

 

 

でも、ある意味でこのトラブルはグッジョブなのだ。

私を助けるためにやって来た飯田君のお兄さん、そのために彼はヒーロー殺しと出会うタイミングを逸したのである。まさに怪我の功名だろう。原作では、飯田兄は体育祭の裏でヒーロー殺しのステインに襲撃され、ヒーロー生命が絶たれる程の重傷を負わされてしまうのである。

 

 

「こちらこそ、ごめんなさいね。もうアイテムのアピールは出来ないわ」

流石にあんなことがあったため、私はサポートアイテムの使用禁止を言い渡されてしまった。そのため、これ以降の競技で発目さんの技術力を示す手段を失ってしまったのである。

 

 

でも見る目がある人はいるようで、既にしていくつかの会社からは問い合わせがあったそうだ。私のドールの中に小型化したアイテムをいくつも押し込んだ技術は大したもの、しかもそれらはちゃんと使える水準での性能を発揮するのである。

〝だから気にしないでください〟と彼女は嬉しそうに笑っていた。

 

 

 

――――――――拳藤一佳side――――――――

 

私はサイドに束ねた髪を撫でながら、ミッドナイト先生の説明に耳を傾ける。

「第二種目はコレよ、騎馬戦ッ!!」

個人の順位を競うはずなのに、告げられたのはチーム競技。

それにポカンとしている周囲の生徒たちを見て、私は口元を歪める。

 

 

いよいよここからが本選だ。

ルールは通常の騎馬戦のように数人で騎馬を組み、上の騎手が鉢巻を取り合う。

だがここからが異なるところ、第一種目の上位者は鉢巻に順位に応じた高ポイントを割り振られているのである。最終的に獲得した鉢巻の点数の高さで、次なる種目に進めるかの可否が決まる。

つまり次の第三種目に臨みたければ、下位の参加者は上位の者から鉢巻を奪う必要があり、既にして高ポイントを保持する生徒たちは自身の鉢巻をまずは守り抜くことが前提、ということだ。

 

 

「個性ありの下剋上ファイト! でも、あくまで騎馬戦! たちの悪い崩し目的のアタックは反則とします。ヒーロー目指してるんだから、ちゃんと騎馬戦として戦いなさいよ」

〝それじゃ、チーム決めの交渉タイムスタートよッ!〟とミッドナイト先生の鞭がぴしゃりと音高く床を叩いた。

 

 

残念ながら、第一種目の結果の高ポイント帯には夜嵐しかいない。

強いて言うなら骨抜や茨もそれらなりの順位を射止めているが、点数的には奪う側に回らざるを得ない。

だからこそ、B組がいがみ合うA組を攻めるという構図になるだろう。そして遮蔽物の無いフィールドは攻め手に有利だ。

 

 

クラスメイト達を集めた物間が、気障ったらしく髪をかき上げた。

「僕らの多くがなぜ第一種目で中下位に甘んじたか。皆、それを調子づいたA組に知らしめてやろう」

「何、カッコつけてんの。単純に私たちがスピードで負けたからに決まってんでしょ」

「あいたッ!」

物間の独りよがりを、私はいつもの如く彼の頭を叩いて黙らせる。

 

 

「でも、そのクラスを鼓舞しようって心意気は買うわよ。実際にチーム競技となれば、個々の実力だけが全てじゃない。反応速度が速いが故にそれぞれが噛み合わない、ってこともある。だから私達が先手を取ってチームワークで攻めれば、A組だって対応しきれなくなるはずよ」

「Bぐみ、なかよしでーす。だてにみんなでアニメみてませーん」

ポニーが頭上の角を陽光に輝かせて頷くと、それに誘われて皆が笑う。

寮では定期的に彼女主催のアニメ鑑賞会が行われ、それを皆であーだこーだと言いながら見るのが私達の習慣になっていた。

 

 

「よし、じゃあ戦略はこうしよう。騎馬は第一に安定感、そして遠距離や中距離でアシストやアタックができる者。騎手は第一に落ちない者、競った場合に相手とやりあえる人が望ましい。じゃあ、それを念頭に置いてチームを組もう!」

「「「おうッ!!」」」

 

――――――――拳藤一佳sideここまで――――――――

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