予選の障害物競走で一位をとった私、その次なる騎馬戦での持ち点は何と1000万p!
二位が205pであることを考えると、まるで冗談のような点数だ。だけど、この分かりやすさこそがポイントだ。私の鉢巻を奪えば目立つこと間違いなし、そして確実に第三種目に進めるのである。
だからこそ、私の鉢巻を目掛けて皆が殺到してくることになる。
騎馬戦なんて、そもそも多数相手に守り続けるのができない競技なのだ。つまり私にとっては、鉢巻を奪われる可能性が高いことが前提となってくる。
こんな状況下で私とチームを組みたい人なんかいるのかしら、と私は首を捻ってしまう。
……だけど、何かあっさり決まってしまった。
〝イトちゃん、組もう!〟とやって来たお茶子ちゃんとトガちゃん。
そして〝ちっちゃくて可愛らしい八木さんを、おんぶしたいですわ〟、とヤオモモちゃんが母性を溢れさせながら抱きしめてくる。
即ち騎手を私(1000万p)が務め、騎馬がヤオモモちゃん(175p)、お茶子ちゃん(105p)、トガちゃん(150p)となった。そして私が額に戴く至尊なる鉢巻は、チームメイトの点数合計1000万+端数430pとなったのである。
このように点数が付与されたそれぞれの鉢巻を奪い合って、上位に食い込むというのが騎馬戦の趣旨だ。
× × ×
「騎馬で戦場駆け踊れ、いざ活躍を轟かせ、さぁ上げていけ鬨の声! Yo! じゃあいくぜ、騎馬戦! ……残虐バトルロワイヤル、スタートッ!!!」
マイク先生のラップによる高らかな開始宣言が競技場に響き渡る。
その合図とともに、一斉に私たちの1000万pに向かって来る騎馬たち。まるで押し寄せる津波のような光景に、私たちが打ったのは逃げの一手だった。
「やはり狙われまくる、一位。でも、そう簡単に逃げられないぜぇぇぇ!!」
マイク先生が実況するように、早くも私たちは鉢巻を狙う皆に取り囲まれてしまっていた。
まさに多勢に無勢。敵に背を向けてもこうなるのは時間の問題だったのである。
「どうするん、イトちゃん? 囲まれてからのアイデアがあるって言ってたけど」
「ええ、任せて頂戴」
焦りを滲ませて見上げてくるお茶子ちゃんに、私は自信たっぷりに笑みを返す。
そして私は自身の鉢巻を掴んで、額からさっと取り去った。
それに怪訝な表情を浮かべるお茶子ちゃんとヤオモモちゃん、対してトガちゃんは先が読めたのか口の端を吊り上げる。
「……こうするのよッ!」
私は鉢巻をボールのように丸めて、多くのライバル達のいる方向へと全力で放り投げたのである。蒼穹に翻る白い鉢巻に、それを見上げる全員の視線が集中した。
そして私の下では、目を剥いた二人から悲鳴が上がっていた。
「ええぇぇぇぇぇえ!? 鉢巻投げたぁぁぁああ!?」
「ポイントを投げ捨てましたわぁぁぁあぁ!?」
そんな二人とは対照的に、トガちゃんは愉快げに口を大きく開けてきゃらきゃらと笑っている。
「おいおいおいおい、マジかよぉぉぉぉおおおお!!」
呆気にとられている皆を、マイク先生の絶叫が戦場へと呼び戻す。すると騎馬たちが怒号を上げて、宙を泳ぐ1000万pへと殺到し始めたのだった。
――――――――拳藤一佳side――――――――
一位を狙うA組、そしてその隙を突かんと狙っていた私達…………だったんだけど。
放り投げれて宙を舞う1000万pの鉢巻に、私は苦々し気に呟いてしまう。
「……まさかこう来るとはね」
その鉢巻目掛けて、真っ先に炸裂音と共に飛び上がったのは爆豪だ。
だが、彼が1000万pを掴み取ろうと伸ばした手が空を切る。ふわりと鉢巻は風に煽られ、彼の想定外の動きをしたのである。
そしてそのまま、風を操る夜嵐の元へと流れる鉢巻。
今度はそれを蛙吹の伸ばした蛙の舌が横から掻っ攫った。だが、それすらも常闇の影に叩き落とされて阻まれたのである。
果たして1000万pは騎馬たちが入り乱れた直中へと消え、事態は混迷を極めていた。
それをマイク先生が〝始まって早々に混戦混戦、大混戦!!〟と、楽しそうに煽っている。
「い、一位とれるかもよ!」
共に騎馬を組む希乃子が、チャンス到来に慌てたように声を上げる。
〝どうする?〟と頭上に問いかけた私に、騎手の切奈が首を振った。
「あの中に割って入るのはないね。近くを駆け抜けながら、予定通りノーガードな鉢巻を回収しましょ」
私は頷いて彼女の指し示す方向に走り出す。
切奈の個性『トカゲのしっぽ切り』は、体の一部を切り離して自在に操ることができるのだ。そして、もう一人の騎馬であるレイ子の『ポルターガイスト』は、近くの物体を動かすことができる。
こと鉢巻を掠めとるには都合の良い個性だった。
希乃子の『キノコ』は今回に関しては、今回出番はないだろう。
私を除けば真っ向勝負には向かない面々だ。
だが、私が先頭で走ればフィジカル面で他の騎馬には劣らない。だからこそ、戦場を駆けまわりながら漁夫の利を狙う、という見立てを切奈は下したのである。
現に彼女の切り離した手が、どこからか鉢巻を奪って来たのである。
〝390pゲット。ね、コレならいけそうっしょ〟と切奈は私たちに微笑んだ。
――――――――拳藤一佳sideここまで――――――――